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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
6章 社長の小悪党

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184話 炎のウァプラと小悪党

 どうやらウァプラは炎の精霊王を吸収したらしい。予想だけど、テンプレ的展開だとランピーチは内心で舌打ちしていた。


「エネルギー吸収タイプが危険を感じて抜けだしていたってところか。ログで討伐したと表示されていたのにバグかよ、この展開」


 たぶん本当にギリギリでウァプラを倒したのがいけなかったのだ。既に半分目覚めていたウァプラはその場を逃れて、エネルギー吸収に向かったに違いない。なにしろ上等のエネルギーたる炎の精霊王が地下には封じられていたはずだしな。


『精霊王を封印している魔法式ごと吸収したと思われます。恐らくはウァプラは数日で身体が耐えきれなくなり自壊するでしょうと、私の勘が囁いているよ。明日のおやつは特盛りパフェにしてね』


『その先は言わなくてもわかる。放置すれば良いでしょう。ただしこの街は消滅するでしょう、とか、そんな感じの話が続くんだろ! そーゆー展開、アニメや小説でたくさん見てきたから。これは選択肢は実質ないよな』


 ライブラの勘へと抗議をしながら嘆息する。街が消滅するとか、もう脅しでしかない。選択肢はここで倒す一択だろ。あと、おやつにパフェは難易度高いだろ。あれはお店で食べるものだよ。


「ひょえー、俺の頭が一瞬で溶けた! し、死ぬかと思った」

「俺も灰になった! え、なんで悪魔の体が元に戻ってるんだ?」

「こいつやべーぞ。早く逃げないと!」


 どうやって戦うか考えていたら、ウァプラにやられて死んだはずの兵士たちが復活していた。その姿は普通の人間の体に戻っている。


「こいつら、精霊融合、いや、悪魔融合してたのか!」


 そのあり得ない光景にピンときて驚く。精霊融合と同じく、一度死んでも解除されるだけらしい。


『どうやら下っ端は悪魔との同化はしていなかった模様ですね。あれです、不滅不滅詐欺。この人たちは不滅の体になれると言われて、実際は安い悪魔融合で誤魔化されていたに違いありません、だってさ』


 意地でもミラとの直接通信はさせないライブラさんが教えてくれた。なるほど、ありがちな詐欺だなぁ。でも、それが今回は幸いした模様。


「ひ、ひえ~、今度は死んじまう。あぁ、た、助けて………ん? そういえば………」


 逃げ惑う元悪魔兵士たちが、なにかに気づいたように俺を見てくる。なにか嫌な予感に襲われるんだけど?


「ハンター、助けてくれ! 依頼料は弾むから!」

「そうだ、ここにはハンターがいた!」

「頼むよ、俺は死にたくない!」


 足にしがみつくレベルで、兵士たちがお願いしてくる。なので怒りと呆れで兵士たちの頭を押さえて怒鳴る。


「お前らふざけんなよ? さっきまで殺し合いをしてた相手に助けを求めるか?」


「求める! ハンターは依頼をすれば敵味方関係なく助けてくれるだろ? 敵からは毟り取り、味方からも毟り取るのが、ハンターなんだろ?」


「うわぁ、それに納得してしまう自分が悲しいぜ」


 必死すぎる兵士たちの言葉に反論できない。だって、そういうことをしそうなハンターが一人思い当たるからな。というか、一人しかいない。


「財宝があったら、それを狙う敵の装備は剥ぎ取り、味方も流れ弾で気絶させて装備を剥ぎ取る。そんな悪魔をも上回る強欲なのがハンターだろ?」


 ハンターの悪評ひど過ぎである。


「わかった、わかった。後は俺のマネージャーが契約するから、さっさと逃げてろ。ウァプラは倒して構わないだろ?」


「あぁ、もちろんだ。緊急事態時に管理権限を残しておかないのは、俺たちが死んでも構わないってことだからな、もうハーケーンは辞めることにする」


 憤る兵士たちだが、そんなの遥か昔に決断してろよ。明らかにブラック会社だろうが。


「とはいえ、だ」


 兵士の顔の横にヒョイと手を差し出すと、パシッと火花が散る。


「一度就職すると、なかなか辞められない空気になるってのはよくあるもんな。そう思わないか?」


 ランピーチの手はウァプラの拳を受け止めて、不敵な笑みを向ける。ウァプラの炎が拳を覆い、逆巻く熱気が襲ってきて、空気がゆらゆらと蜃気楼のように揺れていく。


「侵入者の脅威度を上げます。即時排除対象」


「話し合いはお断りってか!」


 ニヤリと笑い、受け止めている手の力を抜き、後ろへと下がる。全力で力を入れていたウァプラが突然抵抗がなくなりつんのめり体勢を崩したので、横っ面にフックを喰らわす。


「む!?」


 だが硬い感触が返ってくるだけで、ウァプラの頭は砕けるどころかヒビも入らず、ライオンの顔は表情を変えずに右足でのローキックを放ってきた。膝を合わせて蹴りを防ぎ、身体を泳ぐようにずらすと回転しながらの肘打ちで反撃するが、やはり硬質的な感触のみで、ダメージを与えたように感じない。


「排除」


「むおぉっ!」


 それどころか肘打ちを繰り出した腕を掴まれて持ち上げられると、そのまま地面に叩きつけられてしまう。ズンと体に鈍い衝撃が走り、地面が大きく凹む。


「こいつっ、なんつー、怪力だよ!」


 ウァプラが燃え盛る炎を拳から吹き出して、振り上げると、杭打機のように落としてくる。ランピーチは慌てて横に転がり避けるが、空を切った拳が地面を穿つと、周囲がどろりと溶けて溶岩のようになってしまう。


『ウァプラの解析かいしー!』


『炎のウァプラ:レベル11』


 その様子を見て、普通の敵ではないとライブラが解析するが━━━。ちょっとログがバグってないかな?


『うげ、こいつ限界突破してるよ、ソルジャー!』


『見て見ぬふりをしたかった!』


 なんと早くもレベル11ですデス。死の予感するデス。もうゲームのラスボスどころか裏ボスも楽に上回っている予感!


 ウァプラが拳を引き抜き、どろりとした溶岩を手にくっつけて、再び迫ってくる。その速さと先程の怪力は俺のステータスを超えている。悔しいけど。


「もぉ〜、パワーアップした次の戦闘ではもう敵は強くなってるとかやめてくれ! バトルインフレ反対!」


 ため息を吐きたいのを我慢して、仁王立ちとなり力を引き出す。ランピーチ難易度大嫌いだ。


「フルパワーだっ! 装備変更!」


『神霊の鎧装着』


 剣聖の衣から神霊の鎧へと装備を変更する。剣聖の衣によるステータスアップは使えないが、そもそも既にフルパワーは出せなかった。出したら剣聖の衣はビリビリに破れるだろうから。


「排除しまぁす!」


 先ほどよりも感情の籠もった声で、ウァプラが拳を繰り出す。その高速の拳は音速へと入り、衝撃波を生み出して迫ってくる。


「だりゃあ!」 


 俺も拳を繰り出すと、ウァプラの拳にぶつける。風の壁が貫かれて、ドンと突風を巻き起こすと、周囲に衝撃波を撒き散らし突風にてめちゃくちゃにし━━━ウァプラを弾き返した。


「さて、ここからが本番だぜ、ウァプラ」


 吹き飛んだウァプラへと突風の中で銀髪を靡かせて、ランピーチは軽い口調で言う。突風がおさまり、その姿が見えてくる。


 蒼き装甲で複雑な魔法陣が意匠された流線型の鎧を着込んでいた。その鎧の内包する力は凄まじく、兵士たちは目が潰れそうだと、その威圧感に恐れ慄いていた。


「ふ。これが俺の完全体だ。ウァプラ、君にはもう勝ち目はないよ」


 今度はどこかのセリフを真似る小悪党。小悪党の顔面偏差値では似合わないことこの上ない。


『その鎧って、綺麗すぎて女の子か、女の子のように綺麗な男の人しか似合わないよね』


『そーゆー薄々気づいていることを言わないでくれる? わかってるよ、俺にはゴツい鎧のほうが似合ってるよな………』


 優美な鎧すぎるのだ。これ、たしかに俺に似合わない。


『この鎧、着る人を選ぶよな。主人を選ぶ鎧って、こーゆーのを言うんだろうな』


『絶対に違うと思うけど………あ、見てみて! ウァプラの腕、うで!』

  

 呆れた声のライブラだが、ウァプラを見るように忠告してくる。


 弾き返した際にウァプラはその反動に耐えきれず、その腕は関節部分が何個も増えていた。いや、ポキポキに折れていたんだが。


 だが、ウァプラは痛覚を感じないのか平然としており、その腕は一瞬どろりと粘土のように柔らかくなると、元の腕へと回復した。


「こいつ、再生能力持ちか。いや、もっとヤバい能力っぽいぞ?」


 再生能力は別に良い。よくある能力だし、再生能力を超えるダメージを与えれば良いからだ。だが今の再生の仕方は単なる再生能力ではない気がする。


「おぉ、これがハンター……我らハーケーンの敵。なるほど凄まじい力」


 そして再生した腕を見ながら感心の声をあげるウァプラは段々と自我を持ち始めてる気がする。

 

「ですが、このウァプラが排除する!」

 

「やってみろ!」


 地面を溶岩へと変えて撒き散らし、ウァプラが格闘戦を仕掛けてくる。そのライオンの顔は先ほどまでの機械的な無表情から、傲慢そうな愉悦の顔へと変わっていた。


 炎の拳が真正面から迫るが、その高速の拳を前にしてもランピーチは慌てない。身体を半歩踏み出して、蛇が巻きつくように、その腕を絡め取る。


「腕をもらっていく!」


 身体を押し下げて腕を極めると、そのまま体をひねり、ウァプラの腕を引きちぎる。今のランピーチのステータスと体術ならば、ウァプラのように強力な相手でも通用する。


「むむ!? 手応えが軽い?」


 だが、その結果に違和感を感じて顔をしかめる。まるで粘土を引きちぎった感触で、ウァプラの抵抗が感じられなかったのだ。


 事実、ウァプラの引きちぎられた断面は、粘土のように水滴状に残っており、とてもではないが、ダメージを与えているように見えない。


「愚かなハンターめ!」


『炎の蛇は絡め取り、敵を呑み込む』


 ウァプラのライオンの口が牙を覗かせて、力ある言葉を口にする。ランピーチの手が抱えたウァプラの炎の腕がグニャリととろけて、細長い蛇へと姿を変えると、身体に絡みついてくる。


「く! こいつ、やっぱり粘体の身体なのか、要塞とか言われてた癖に!」


「ふふふふ、我、ハンターを排除したり!」


 身体が動けないランピーチへと、ますます感情を剥き出しに、ウァプラが残った腕を持ち上げる。その腕がドロリと溶けると、腕全体を刃へと変形させる。


「そら、最強の要塞悪魔ウァプラの一撃を喰らえ!」


『ブレードボンバー!』


 そして、その刃にてラリアットを繰り出して、ランピーチの胴体に命中するのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] セィントセイヤー♪ 小悪党のよぉ〜に〜♪ [一言] 液体ター◯ネーターとバーニング◯ジラの合せ技みたいなの来たな。
[良い点] 社畜社員生きてたー! よかったー! これで過去のことも少し分かるかな? 守秘義務を強制で守らせるような仕掛けも有りそうだけど、過去時点での一般常識や敵から見たスペース側の情報が知れるだけで…
[一言] ランピーーチィィィ!!!
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