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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
6章 社長の小悪党

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182話 ウァプラと小悪党

 脈打つ肉塊で形成されているウァプラの死骸。復活の時が近いのだろう、段々と床が柔らかくなって、ずぶずぶと足首がめり込むくらいになっている。なにもせずにぼんやりと立っていたら、そのまま沈んで吸収されそうな予感を与える危険な様相へと変わっていた。


『ミミ。全員を撤退させろ。ここにとどまるのはもう人間には危険だ』


『わかったよぅ〜。こっちもリッチを殲滅したところだから、ちょうど良いかなぁ。それじゃ、撤退しま~す』


 まるで柔らかい泥のように変わった床でも、人外の達人となったランピーチは、まるで硬い床の上を走っているように、足跡すら残さずに駆けながら、ランピーチのふりをしているミミに思念を送る。


 ミミはランピーチ演技用パワードスーツ『小悪党』に乗って、バッカスたちと共に侵入していた。完璧な演技をしてくれたのか、誰も気づかなかった模様。それか、ランピーチ自身には誰も興味を持っていないという可能性があるが、悲しい可能性なので、選択肢からは排除しておく。


『おやぶーん、ミニライオンラビットが壊れちゃったの〜。戻って直して〜』


『帰れるかっ! このダンジョンをクリアしたらな』


『約束うさよ? テテは一日一発ミニカノンを撃たないと死んじゃううさからね?』


『段々と要求が大きくなるな………。後で新しいの用意してやるから撤退しろ』


 クスンクスンと泣くテテが鉄板を手にしているが、あれは銃の残骸なのだろうか。どうしてあそこまで解体できるのか、一種の才能なのかもしれない。


 ミミたちとの通信を終えて、前方へと視線を向ける。脈打つ肉塊のダンジョン。坑道のように複雑な道が分岐している。普通に探索すれば多大な時間を食うに違いない。


 だが、ランピーチは少しも慌てない。なぜならば切り札があるからだ。


『ライブラ、エレメンタルストリームがどこに流れているかわかるだろ? 教えてくれ、その流れが最奥まで俺たちを導いてくれるだろうよ』


『あいさーっ、それくらいお茶の子さいさいさ!』


 ライブラが前方に目を向けると、複雑な幾何学模様をその瞳に映し出し、ウァプラの内部で流れるエレメンタルストリームを解析する。この間まではそんな模様は浮かんでなかったので、新しいエフェクトを無駄に作り上げた模様。もしかして、俺の経験値を利用してバージョンアップしてないよね?


『あっちの通路にエレメンタルストリームが流れ込んでるよ!』


 すぐに解析できるのが、ライブラの凄いところだ。元サポートキャラでも、『宇宙図書館スペースライブラリ』の恩恵を受けているために人間には敵わないレベルの解析力を持っている。


『うははは、俺って天才じゃね? このダンジョンの弱点をつく天才的思考』


『あははは、たしかに複雑な通路でも、エレメンタルストリームがアリアドネの糸になってるもんね。これなら迷うこともないし、私も活躍できて良いことづくめだと思うよ』


 ナイスアイデアとありきたりな方法を思いついて調子に乗るランピーチと、自分のアイデンティティがピンチだったので活躍できて嬉しいライブラが高笑いしながら進む。


 チーターをも上回る速度で、内部を進んでいき━━━。ピタリと足を止めた。


 そこは行き止まりだった。隠し扉もなく、単なる行き止まりだ。


『………』


『………』


 無言となる二人。なんでだろうと、分厚そうな壁をよくよく観察すると、壁に通風口のような小さい穴がいくつも開いていた。


『そっか、そりゃそうだよな。エネルギーを吸収するのに通路はいらないよな。エネルギー吸収用の穴があれば十分だよな……』


『だね。ソルジャーは小人みたく小さくなれる? 雀に食べられそうなくらい小さく』


『俺は悪魔じゃないから無理だ』


『どうしようっか、あんまり時間ないよ?』


『うん………これだけ複雑な迷宮を迷うことなく短時間に最奥まで案内することができるか?』


『それなら、最奥に向かうスタッフ用通路を探した方が早いよ?』


 お互いに顔を見合わせて思う。こりゃ間に合わないなと。


           ◇


 ウァプラの心臓部。複雑にして多くの魔物が配置され、辿り着くのは難しい場所だ。時間をかければ、到達することはできるだろうが、復活するまでに辿り着くのは不可能なレベルである。


 体育館でも入りそうな広間の中心に、心臓に似た肉塊が置かれており、人の腕よりも太い血管が地面を張って広間に根っこのように広がっている。


 今も血管からエネルギーが流れ込んでおり、心臓部はますます早く脈打つ。


 そしてその心臓部を守る兵士たちの姿もまたあった。グレーのプロテクタースーツを着込んでおり、アサルトライフルを手にしている。単なる警備兵にも見えるが、ちらりと覗く肌はコウモリのように黒く毛皮で覆われている。


「ウァプラの復活は問題なさそうだな」


「あぁ、現在充填率92%。これならあと1時間もかからずに復活するだろうよ」


「やれやれ、いきなり目覚めさせられたと思ったら、ウァプラの警備かよ。なんでもう復活してるんだ? これ、会長が目覚めたら使用する要塞だろ?」


「そうなんだよな。オセは先に起きたのか、姿は見えないし、どうなってるんだ? 経過時間もおかしくないか、たった1200年しか経過していないようだぞ」


「なにか『ルナティックライブラリ』の想定外のことが起きたに違いない。だから機械の予測を信頼するなんて無理だと俺は思ってたんだよ」


「あ~、それは俺も思ってた。でも意見を口にすると反抗したとか言われて、首になるからなぁ」


「だよなぁ、俺もそれは思ってた。でも給料は良いし、不滅の身体で飽きるまで生きることができると言われたからなぁ。仕方ねぇよ」


 お喋りするのはハーケーンの警備兵たちだ。時間停止カプセルで寝ていたところ、ウァプラへの脅威を感知して、警備システムが緊張事態と判断し、スクランブルと命令し兵士たちを起床させたのである。


 その人数は30人程。ウァプラをメンテナンスしている者たちが端末を片手に状況を確認していた。


「現在の人類の文明度、技術レベルは私たちが眠った時よりも遥かに低下している。大人と赤ん坊くらいにな。予想するに、古代の技術を求めようと、現地人がどうやってかウァプラを起動させたんだろう。馬鹿な奴らだ」


 端末を手に、ウァプラの様子をモニターしていた兵が鼻で嗤う。


「このウァプラを支配しようとでもしたのだろうよ。馬鹿な奴だと言いたいが、一つ疑問がある。死体がないんだ。いや、監視カメラによれば入り込んだ青年が起動させ、その後に目覚めたウァプラに身体を掴まれてエネルギーを吸収され死亡したはずなんだが………。その死体がない」


「死体ごと食べられたんじゃないのか?」


「いやウァプラはエネルギー吸収体だから、肉は食べない。カラカラのミイラのような死体があるはずなんだけどな? どこを探してもいないんだ」


「なんだ、そりゃ。お化けが復活させたってのか? それよりもこのままウァプラが復活したら、その後どうするか考えないといけないぞ。要塞だけあっても、何をしたら良いのかわからないだろ」


「宇宙船があれば、『ルナティックライブラリ』に行くんだがなぁ。現地組織に接触するか。このままだと文明をなくした世界に取り残された文明人で映画とかになりそうだからな」


「そうだな。外はどうなってるんだ。ウホウホ叫んで、竪穴式住居に住んでるんじゃないだろうな」


「眠る寸前の時は、ほとんど文明は滅んでいたからな。ありえるぞ。そんなところで暮らしていける自信、俺はねーよ」


 自分たちは文明人であり、生活環境は半悪魔となっても変わらない。夏にはクーラーの中で鍋焼きうどんを食べて、冬にはサウナのような暑さの中で、アイスを食べる贅沢をしていたのだ。それなのに竪穴式住居で暮らせと言われても困る。


「あ~、現地の奴ら、しっかりと文明残してるだろうな。やだぜ、神殿とか作られて、邪教扱いされてたら」


「悪魔だしなぁ………。そうならないことを……ん? なにか聞こえないか?」


「あん? なにが聞こえるって………?」


 話の途中でなにかに気づき人外の聴力を最大限に解放し、耳を澄ませて………。


『乱刃拳』

『乱刃拳』

『乱刃拳』


 どこからか、必死そうな男の声が聞こえてきて、なんだなんだと周りの兵たちも気づき始めて、周囲を見渡すが、声は近くなってくるが、その姿はどこにもない。


「なにかおかしい。全員警戒をへべっ」


 警戒を促す隊長の上に、天井から落ちてきた肉塊が落ちてきて押し潰す。


 そして、天井の肉塊が賽の目に切断され、細かい肉片が落ちる中で、一人の男が落ちてきた。


「だっしゃぁ! 到着? 到着したか?」


 結構な高さから落ちてきたにもかかわらず、男はふわりと羽根のような軽さで降り立つと汗だくとなった顔をあげる。その姿を見て、兵士たちは瞬時に判断した。練度の高い兵士たちは想定外のことでも、冷静に判断し銃口を向ける。


「小悪党だ! 撃て!」

「悪巧みをしていそうな顔だ!」

「なにか盗みに来た顔だぞ!」


 練度が高くなくても、敵だと判断できたかもしれない。人相が悪すぎて、誰でも悪人だと判断できた模様。


 狡猾そうな悪そうな顔の男へと、兵士たちは容赦なく引き金を引く。ハーケーン製の軍用銃は兵士の装備する悪魔鎧と連動しており、兵士の視線から自動的に狙いを補正して、正確に敵に命中させる能力付きである。しかもその威力は上位魔物すら倒せるハーケーンのお墨付きだ。


 そのため、突如として現れた小悪党は、集弾した弾丸に蜂の巣になるどころか、肉片すら残らない予想だった。


 しかし、小悪党は冷めた目で手のひらを翳すのみで動揺する様子はない。


『テレキネシス』


 そして、豪雨のように小悪党に襲いかかった弾丸は空中でピタリと止まり、その場で回転するのみであった。


「な、なに? 精霊障壁? いや、魔法?」


「魔力を感知しないぞ!? こいつ、なにをしたんだ?」


 回避するか、迎撃するか、どちらかだろうと予想していた兵士たちはざわりとざわめく。魔法なら魔力を感知するはずなのに、微かでも魔力を感知できないのだ。それはハーケーン製の悪魔鎧を着込んだ半悪魔たちには想像することも難しい事態であることを示していた。


「お前ら、面白いことを言ってたな。これはラッキーな敵に当たったかもしれないな」


 そうして楽しそうに嗤う小悪党を前に、兵士たちは嫌な予感に慄然とするのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小悪党のドリル(手刀)は脱獄できそうなドリル(手刀)だ!
[良い点]  (^皿^;)クソややこしいダンジョンのゲームで良く思う「壁をぶち抜いて一直線に行けねーのか?」を現実でやり遂げるランピーチ!チートなバグキャラだからこそ出来るゴリ押し無理押し運営泣かせな…
[良い点] 永劫の社畜は嫌だなぁ 長生きできても楽しめ無い人生なら罰ゲームだよ ハーケーン側に超能力のデータが無いということは、かつての大戦時には未開発だった? ルナティックライブラリ、普通に考え…
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