177話 ウァプラ侵入準備と小悪党
「悪気はなかったうさよ?」
「助けて〜。ヘルプラビット〜」
「だから悪乗りするのはやめようって言ったのに〜」
お仕置きとして、ロープでグルグル巻きにされて、ぶらんとぶら下げられたうさぎたち。しかし、すぐに気が変わる。
「あ、これ楽しいうさ。ぶらぶら揺れるうさよ」
「うさはもっと揺れることができるよ」
「負けないうさ。うさの揺れ方が一番うさ〜」
きゅーきゅー鳴いて哀れさをアピールするが、吊られるのも楽しいようで、すぐにブランコのように体を揺らして、きゅーきゅーと楽しみ始めた。どんなことも楽しむもふもふたちだ。
「ミノムシうさぎよ〜、見てみて可愛い〜」
「レアなイベントなのかしら?」
「写真撮影しなくちゃ!」
その姿を観光客が目敏く気づきカメラを向けて、騒ぎ始める。どうやらイベントだと考えた模様。
「はいはい、今日は特別イベントレアラビットミノムシバージョンの日だよ。写真撮影したい方は特別デラックスシートを買ってください」
そして、パンパンと手を打ち、商魂たくましいおっさんがさらなる金儲けを企んでいた。
「あいつらは本当に仕方ないな。懲りると言う言葉を辞書に書き込むつもりはないのかね」
「あ〜、なにか楽しいことしてりゅ! ぱぱしゃんたちが遊んでりゅよ!」
「お父様、あたちも、あたちも。ぶらーんしたいでしゅ」
雛のような可愛い声が聞こえてきて、ふんふんとほっぺを膨らませて、興奮に目をキラキラさせた幼女たちが奥からやってくる。
嘆息してその場を離れようとしたら、見つかってはいけない子たちに見つかったようだ。廊下の奥からテテテと走ってくる幼女二人とライブラに苦笑いしてしまう。ぶらーんをしないと泣きそうな予感がします。
「きゃー、幼女よ。幼女のぶらーんよ」
「こっち見て〜、可愛い幼女よ」
「笑ったわ、癒されるわね」
「小悪党みたいな人は撮影に邪魔ね。コンセプトは誘拐犯と捕まった幼女かしら」
「が~ん、うさたちの人気が掻っ攫われた!?」
そして、うさぎブームは幼女ブームへと移り変わったのかもしれない。最後の発言者よ、俺も一応傷つくんだけど。
「まぁ、良いや。ライブラ、ちょうど良かった。コロニーに行くぞ、装備を整えないとな」
「えぇ~、私はぶらーんされないの? 忙しいのに仕方ないなぁ」
幼女と遊ぶのに夢中だった巫女が忙しいと言って、ニマニマして体をくねらせる。まったくもって人工精霊らしくない子だ。
銀髪ツインテールで色白の肌、そしてあざとく可愛い巫女服を着たこの子も見た目は見たこともないほどの美少女だ。ミノムシにしたらファンクラブができるかもしれないから禁止です。
「ほら、馬鹿なことを言ってないで、早く行くぞ」
「少し私と離れただけで寂しくなっちゃうソルジャーのために、付き合ってあげるかぁ。もぉ〜、デレ期? 小悪党デレ期?」
「新語を作るんじゃない。ほら、行くぞ」
キャッキャッと笑って、コウメたちはうさぎに揺らされている。あとはうさぎたちに任せるから、コウメたちに悪影響を与えないようにな。
◇
テレポートポータルからコロニーへと移動する。全ての施設が回復したコロニーは作物収穫から研究まで、なんでもできる万能施設だ。
ターミナルと農園エリアだけは人間に解放されており、お土産屋やレストランは盛況だ。だが、ターミナルに用はない。
目指すは研究所だ。
「あんまり研究所には来ないけど、しっかりと研究してるんだな」
「えっと、うん、たしかに意外だね。サボってゴロゴロしてると思ってたのに、ちゃんとお仕事してるや」
きっと寝てるか遊んでるだろうと思ってたのに、白衣を着ているうさぎたちは席について忙しげに端末を叩いたり、組み立て中の精霊鎧を前に議論をしたり、戦艦の模型を持ってキャッキャッと遊んでいたりしていた。
最後のうさぎたちはともかくとして、他のうさぎたちは正直意外だ。
「おつかれ〜。ほら、差し入れのチーズケーキ」
「ありがとうございます。それでは皆で分けますね。あ、うさね」
食べ物を出すと、どこからか必ず湧き出す黒兎さんにチーズケーキを手渡して、白衣うさぎたちに近づく。ちゃんと皆に分けるんだぞ。
「あ、親分こんにちはうさ」
「おぅ、頑張ってるようだな。何をそんなに頑張ってるんだ?」
端末には複雑な数式が表示されており、なにか大変な研究をしているようだ。白衣うさぎはコクンと頷くと、むふんと短い脚で組もうとして、ころりんと落ちた。
もふもふのアホかわいさに癒やされながら助けると、キラリと白衣うさぎは目を光らせる。
「そううさね。これは親分の能力をフィードバックさせて、新装備を開発しているところうさ。今までは不滅の悪魔を倒しても、すぐに復活するのでやられるばかりだったけど、このシステム、名付けて『小悪党システム』の能力を使えば、消滅させることが可能となるうさよ」
「その名前変えてくれない? 最初に名付けた名前が永遠に続くかもだろ」
「それは検討していくことにして、そのために装備が一新されるから忙しいうさね」
エッヘンと胸をそらす白衣うさぎ。なるほど大変なのだろう。
「そうか、とっても忙しいんだな。ちょっとESCキーを押しても良いか?」
「うさぎはESCキーを押されると死んじゃううさよ?」
耳をへにょりとしおらせて、うるうると瞳を潤ませるので止めておく。画面を切り替えたら、なにが出るか興味があったんだけど武士の情けだ。
だってそういう開発は『宇宙図書館』が知っているからな。白衣うさぎたちはスキルや装備の販売担当なんだ。
「それじゃ本来の仕事を見せてもらおう。まずはライブラの残りのスキルを取得する」
「え、私? そういえば私のスキル枠が三つも残っていたや!」
「一つしか取得してないと言い直してくれても良いんだぜ?」
ライブラ
『スキルスロット:全ステータス二倍』
『スキルスロット:なし』
『スキルスロット:なし』
『スキルスロット:なし』
完全に自分の役目を忘れただろう巫女さんのセリフにもはや驚くこともなく、スキル一覧を表示させる。
「今の取得できるスキルはこれうさ」
「あぁ、これからの戦闘に必要なスキルは、と………。ゲームに無いシステムだから、どれを選ば良いか迷うよな。『宇宙図書館』に攻略サイトって無い?」
「現実でそんなものが手に入ったら、攻略サイトの奴隷にならない? ソルジャーはどうせ攻略サイトを見ながら生きていくでしょ? 意思が皆無になっちゃうじゃないのさ」
「ゲームだと攻略サイト通りに進めてそうなることが多いよな。全然ストーリーが頭に入ってこないパターン。でも現実はコマ割りの人生じゃないから、そうはならないだろ」
「どうかなぁ。きっと攻略サイトの選択肢通りに生きていくと思うんだけどなぁ」
自分で考えることを拒否するランピーチである。こういうゲームは数回やり直してようやく最適なスキルがわかるんだよな。ライブラは腕組みをして微妙な顔だ。
「よし、残りのスキルはこれにしておく」
「毎度あり〜。新スキルは一つ五千経験値になるうさ〜」
「値段が跳ね上がってないか? 買うんだけどさ」
相変わらずのボッタクリの値段だ。こちらの足元を見てやがる。だが、強力なスキルを取得できた。
というわけで取得したのはこんな感じ。
ライブラ 現在スロット4
『スキルスロット:全ステータス二倍』
『スキルスロット:アイテムドロップ率大幅アップ』
『スキルスロット:状態異常完全無効』
『スキルスロット:ライブラ技の威力大幅アップ』
このスキル構成が最適だと信じたい。
「ソルジャー………。アイテムドロップ率大幅アップ?」
「プレイヤーの性根なんだ。これだけは外せん」
ジト目のライブラさんが見てくるのでそっぽを向く。状態異常完全無効は貫通属性も防ぐようだから、もはや即死系統を恐れることはない。即死だけ怖かったんだよな。
そして、最後のスキルは戦闘系にしたかったんだが………。ライブラ技の威力大幅アップとか、ゲーマーの興味を引くスキルだったので仕方ないのだ。選ばないという選択肢はない。
「私の技が大幅アップ………。ふふふ、遂に私の時代がきた! 試し切りをさせてもらおうか、今宵の私の手刀はうさぎを求めているのさ!」
『ウルトライブラチョーップ!』
ぺちん
「痛っ。ちょっと痛いうさよ」
高笑いをして、白衣うさぎに脳天チョップを入れるライブラ。調子に乗った一撃に白衣うさぎは、いたたと頭を擦り、その途方もない威力に、得意げだったライブラの顔はスンと無表情へと変わった。
「ライブラ技がかなり大幅アップしたか。前までは相手は喰らっても痛がりもしなかったもんな」
「……………う、うわ~ん! 全然役に立たないスキルじゃん!」
「おお、よしよし。だいたい予想通りだったな」
滂沱の涙を流してぽかぽかと八つ当たりをしてくるライブラさんであった。気持ちはわかるけど、こういうのは一見使えないスキルが高威力になるもんなんだよ。後でわかるだろうよ。
「それじゃ、残りは俺の精霊鎧だ。良いのないか?」
気を取り直して、鎧について尋ねる。もう剣聖の衣じゃ弱いんだよ。戦闘中に破れても小悪党だと誰も得しないんだ。
白衣うさぎはう~んと困った顔になる。
「親分のフルパワーに耐えられる精霊鎧は現状ないうさよ。『超越』スキルはとんでもない負荷を精霊鎧にかけるので、この間も壊れなかったのが奇跡レベルうさね」
「ということは、俺の装備はない? それだと困るんだけど?」
「精霊の籠手を参考にした『神霊の鎧』うさね。これは親分の超力と同様の防御力になるけど、親分が弱くなると同じように弱くなるから注意うさ。あんまりおすすめしないうさけど、これしかないかな?」
「硬いけど、デメリットも大きいと………まぁ、仕方ないな。それをくれ」
「毎度あり〜。経験値八万になるうさよ」
壊れないだけでマシだろうし、俺の力が十全ならとんでもない性能の精霊鎧となる。選択肢はないが、経験値八万かぁ………。
「それじゃ、精霊粒子を体に染み込ませるうさ。この鎧は精霊の籠手と同じで体内で融合させる防具うさよ」
なんだかアイアンメイデンのようなカプセルが床からせり出してきた。なんというか、ゴツい………。
「これ、俺は死なないか? 大丈夫?」
「大丈夫うさ。検証のためにライブラで試したけどピンピンしていたうさよ」
「こいつは三秒で復活できるだろ! こら、押すな、押すなって!」
「押せ押せうさ〜」
「押しくらまんじゅううさ」
「てーい、えーい」
白衣うさぎたちが群がってきて、楽しそうにグイグイと背中を押してきて、ランピーチは哀れアイアンメイデンに放り込まれるのであった。
◇
『神霊の鎧:超力と同等の防御力』




