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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
5章 ハンターの小悪党

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165話 七夕祭と小悪党

 七夕祭は地上街区にとっては大イベントだ。武装家門がそれぞれ資金を出し合い、豪華さとその規模の大きさで、力を見せつけている。


 地上街区の各地に七夕祭の会場が作られて、住人たちは七夕を祝っている。しかしながら、祭りの中でも格差はしっかりと存在しており、名門の家門だけが出席できる会場から、一般人が参加できる会場まで配置されていて、金を持っている人間ほど、自身が参加できる会場の種類を気にするのだ。なのでどんなことをしてもより良い会場に参加せんと各家門は鎬を削る。


 そう、七夕祭で他の家門からも目に見えてわかる立ち位置が会場によって周りからも認知されてしまう祭りとの名目の重要なイベントなのであった。

         

 最高の会場とは、もちろん武装家門が出席する会場のことだ。最高の料理、BGM代わりの有名な音楽隊、一般人では身に着けている宝石一つで一生暮らせるだろう高価な宝石をアクセサリーとして着飾り、オートクチュールのドレスや着物を着込む絢爛豪華な装いの出席者たち。それぞれが有名な企業を率いており、強力な私兵を抱え込んでいる。


 彼らは祭りとは名ばかりで、楽しむことよりも、現在の地上街区の勢力争いを具現化したように、他家門の噂話や投資の話、精霊鎧の技術提携から人脈作りなどに夢中で、魑魅魍魎が欲望という料理を食べているようだった。


 その中でも今年は少し様相が違った。いつもなら笑顔の下にナイフを隠し持ち、相手をいかに出し抜き、自分の利益になるか行動している人々は一人の人間が来るのを虎視眈々と待っていた。談笑の中でも会場の入口をチラチラと見て、何者も見逃しはしないと言わんばかりだった。


 その顔に浮かぶのは羨望と妬み、恐怖と畏れだ。武装家門相手でも対等になろうとする名門家門たちが待つ人間。


 それは今年になって彗星の如く現れた男、朱光新、またの名をランピーチ・コーザを待ち受けているのである。


         ◇


 テーブルにずらりと並ぶ豪華な料理。その料理を背景に、まったく口をつけないことで余裕を見せて、多くの人々が談笑している。談笑とは語弊があり、その中身は剣を持たない言葉の斬り合いだが、今年はその中でも一際多くの人々が集まっている集団がある。


「いやぁ〜、息子さんは立派な人物となって羨ましい。錦を飾るとはこのことですな」


「本当ですわ。これほど成功した人物を私は知りません」


「羨ましい。我らも息子さんをどうやって育てたのか、その秘訣を教えてもらいたいものです」


「新は昔からできる自慢の息子でしてな。この数年は音信不通となっておりましたが、だからこそなにか大きなことをしているのだと私は信じておりました。わっはっは」


「新のお陰で朱光家も安泰ですわ」


 わかりやすいお世辞を前に、我が世の春と高らかに大笑いをするのは朱光ワレタとヨネだ。つい先日までは没落しても無理矢理金を作りパーティーに参加する愚か者だと皆から軽蔑と嘲笑を受けており、誰も相手にしていなかったのに、今は多くの人々がこぞっておべっかを口にしている。


 当然だろう。なにせ、朱光新はスラム街を支配して一つの大きなエリアのボスとして君臨している。しかも、その防衛能力は極めて高く、魔物が自然発生する場所へと先回りして駆除をするので、この地上街区でも最高の安全を提供する地区となっているのだから。今や誰もが移住を考えている1番人気の場所だ。


 治安を守る技術力は地下街区のものであり、地上街区では到底追いつけないものだ。自我を持つ人工精霊は、地上街区でも最強を名乗る各家門の当主すら上回ると噂され、人工精霊を操る当人はそれ以上の力を持っていると推測される。


 ━━━そう、朱光新は今まで武装家門がいかなる苦労をしても手に入らなかった地下街区の技術力を手にしているのだ。しかも地下街区の全面的バックアップが成されており、その武力と財力はどこまで高まるのか想像もできない。


 わかることは、今や武装家門が束になっても敵わないということだ。


 小野寺バッカスはウィスキーグラスを揺らし、氷がカランと鳴るのを聞いて、冷静に現状を分析していた。


 このテーブルに並ぶ料理一つとってもそうだ。肉類や魚介、ふんだんに使われている香辛料も全て天然物であり、昨年まではなかったものだ。その全てはランピーチシティから仕入れている。食料関係の企業は合成食料が売れなくなる可能性に青ざめているし、妨害工作を行っているらしいが、成功したとは聞いたことがない。しかも大規模な襲撃があったとの話も聞かないので、裏で密かに片付けられているのだ。


(これ一つとっても、敵を防げる武力と、天然物を大量に用意できる技術力を持っておる。………しかし、ランピーチが地下街区と組んだのは最悪の中でも良かったのかもしれん。もしも他の武装家門が地下街区と組んでいたなら、儂らはまっさきに排除されていただろうからな)


 元々没落していた朱光家だからこそ、この程度で済んでいるのだ。


 バッカスは目を細めて皮肉げに口端を吊り上げる。


(付け入る隙がある。なにせ、朱光家は没落していた。有能な分家は裏切り背を向けている。残った分家は有象無象の雑魚ばかり。ランピーチの周りには数えるほどしか有能な人材は存在しない。儂と提携し人材を受け入れる可能性は高い)


 これからランピーチは大きくなって行くだろう。その力はこの地上街区『エルダージュ15』だけではなく、他の地区にまで手を伸ばすに違いない。その時に手を組んでいる必要がある。


 それは、この会場にいる者たちに共通した考えだ。それに気づかない愚か者はこの会場に出席することもできないだろうから。


 だからこそ、屋敷や大金を渡されて遇されているランピーチの両親に媚びを売っているようだが━━━わかってない。


(あの両親はいわゆる毒親だ、しかも甘い毒を持って相手を蝕む厄介な奴らだ。あの両親は本心からランピーチが何かをやり遂げるために音信不通だったと信じていそうだ。息子を思う優しい両親だが、それは独りよがりの優しさで、相手のことなんざ考えていねぇ。子猫のことを可愛がりすぎて殺す輩と同じだ。まぁ、ランピーチは子猫じゃなく、毒蠍のようなやつだが)


 バッカスの集めた情報によると、ランピーチは朱光新と名乗っていないし、両親と距離をとっている。金は渡すので好きにしてくださいという感じであり、両親に対する愛情などなさそうだ。あの両親と縁を作る必要はない。いや、反対に縁を作ることで悪いことになるかもしれないので、バッカスとしては挨拶程度で抑えておくつもりだ。


 だからこそ、ランピーチがこの会場に来ると聞いて、周りにもわかるように友好的な挨拶をしようと考えている。ウァプラの件もあり、ランピーチと一番親交を持つのは小野寺家とのアピールをしようとの計画だ。


 武装家門の当主たちは朱光ワレタとヨネへ一言挨拶して離れていったので、同じ情報を持っており、やはり両親には価値なしと判断しているのは間違いない。


 なので、ランピーチを待っているのだが━━━。


「アイギス殿、今日は随分と落ち着きがないな」


 目についた知り合いに暇つぶしに声をかける。アイギスは冷静沈着であり、妖艶な女性でその顔の奥にはなにを隠しているのか分からない女史だ。


 だが、珍しく周りから見てもイラついているのがわかる。ランピーチの存在に苛立ちを持っているのだろうかと、探りをいれると際立った美しさを持つ顔立ちの女性は切れ長の目を向けてくる。その鋭い眼光がナイフのようにバッカスへと突き刺さり、わずかに驚きを持つ。


「どうしたのだ? いつもと違って、やけに苛立っている。これから来る相手をそんなに警戒しているのかね?」


「そうではないわ。少し別のことがあってね。ちょっとイライラしているだけよ」


 髪をかき上げて、苛立ちを隠さないアイギスに、バッカスは困惑してジロジロと見る。


「なにかしら、ドワーフさん。あまり女性をそうやって不躾に見るのは止めたほうが良いと教育を受けなかったのかしら?」


「それはすまんの。だが、ちょっとしたことで苛つくお主ではあるまい? なにがあったのだ? なにか助けがいるのならば言ってくれ。これでも長い付き合いなのだからな」


 どうやらランピーチの件ではないらしいと、バッカスはアイギスが苛立ちを見せている内容に興味を持って親切の押し売りをする。


「はっ、誰が口を開けている狼に肉を与えると言うの? 私の方で片付けるから結構よ」


「まぁ、困ったら言ってくれ」


 だが、鋭い眼光はそのままに鼻で笑われる。まぁ、それはそうだろうと、駄目元で提案したのだから、バッカスも肩を竦める程度に抑える。


 だが、落ち着きがなくなるほどの事柄とはなんだろう?


 ━━━そして、当たり障りの無い会話を続けていると、ざわりと人混みが騒然となる。


「おっと、ランピーチが来たようだな。誰もが待っていた人物の到着だ。………ん? やけに付き添いが多いな。子供もいるぞ」


 入口にはランピーチが入場してきていた。だが、ランピーチは数人の美少女をエスコートしていた。一人はチヒロだが、他にも知らない少女がいる。しかも、二人の幼女も連れていた。


 少女も幼女も着飾っており、ドレスもアクセサリーもよく似合っている。


「なんだ、ありゃランピーチの子供か? 自分の恋人や愛人を全員連れてきたのか? なんつーか行動が似合いすぎているな」


 ランピーチの小悪党スマイルは成り上がった小物の笑みであり、それがまたランピーチに似合っている。成り上がって調子に乗ってますと行動で体現している男だ。


「まぁ、あの顔に騙されると痛い目に遭うのだがな。さて、俺はあいつとは親友だからな。挨拶に行くが、アイギス殿はどうす━━!?」

 

 さり気なく親友だとのアピールをしようとするバッカスはアイギスへと顔を向けてぎょっとする。その目が血のように紅くなり、顔が一瞬恐ろしげに見えたからだ。


 だが、それは気の所為だったのか、次には普通の穏やかな笑みとなっていた。


「バッカスの言う通りね。私も知り合いだし挨拶はしないとね」


 そうして二人はランピーチへと挨拶に向かうのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白くなってまいりました!!
[一言] 怒っちゃや〜よ 小悪党ウインク(^_-)-☆
[気になる点] なんかランピーチシティーの人間の方が名家の分家クラスより良いもん食ってる可能性すらあるな、コレ [一言] ふざけるなぁ!バッカス!つけ込む隙はそこじゃないだろが、奴はオッパイ星人だぞw…
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