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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
5章 ハンターの小悪党

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157話 幼女と小悪党

 幼女だ。どこからどう見ても幼女だ。お団子に髪をまとめており、幼女サイズの特注スーツを着込んでおり、その背丈は一メートルに満たない。ぷくぷくとしたほっぺに愛らしいおめめにレンズを嵌めていない伊達メガネを乗せている。


「どうかしましたか、朱光様?」


「どーか、ちまちたか、しゅこーしゃま」


 重なって声が聞こえて、ぺたんこな胸をそらして、ウフンと腰をくねらせる幼女。その姿は背伸びした大人に憧れる幼女にしか見えない。くねくねと幼女ダンスを見せて、得意げだ。


『プーさん、接続が切れて心配しましたが、無事に脱出できたようで何よりです』


 元の世界に戻ったので、ミラが姿を現すが、それどころではない。未だかつてない驚きに襲われているのだ。


『なぁ、なぁ、幼女だよ、幼女! え? なんで幼女? どうして周りはおかしく思わないわけ?』


 指を指して叫びたいがなんとか我慢をして、薄笑いだけで耐える。生きてきた中で一番我慢した瞬間だった。


 えいえいと、ちっこい腕を振って、東光が無罪であることを話しているが、その音源は幼女の真上から聞こえており、幼女は劇を頑張ってますと懸命なので、拍手をしたくなる様子を見せていた。会話は全然耳に入ってきません。


 ミラもライブラも幼女を見て、目を疑っているが、最初に立ち直ったのは予想通り冷静沈着なミラだった。


『プーさん。ここは知らぬふりをして、大人の女性を相手にするように、目線を上にしてください。ライブラ、その幼女の上に移動して、プーさんの視線を受ける的になってください』


『ラジャー。ここでいい?』

 

 恐らくは大人の女性の顔がある位置にライブラがふよふよと浮いて移動する。これでライブラを見れば誤魔化せるだろう。


『どういうことなんだ、幼女だぞ、幼女!』


『…………噂にはあったのです。ハーケーンの孫娘は幼女だと。運命を操り、不滅の存在の中でも最強格な幼女は孫娘だと』


『いや、ミラも動揺してるだろ。孫娘が幼女だろ? でも、運命を操る? なんで副音声みたいに声が聞こえてくるんだ?』


 真剣な顔でも、ミラも動揺している模様。そうですねと頷き、ミラもチラリと幼女を見る。


『彼女は多種多様な未来の自分を呼び出して操ることができます。プーさんの記憶を確認するに、ヘッドハンティングをされたようですが、ヘッドハンティングに慣れた未来の自分を呼び出したんでしょう』


『な、なるほど。人の記憶を読めるミラに抗議をしたいことはおいておいて、場面場面に合わせた自分を呼び出せるわけか。でもなんで幼女?』


 パターンに合わせた自分を呼び出すとかチートだが、幼女の意味がわからない。


『それは本体が一番死ににくい最強の存在を選んだ結果幼女だったのでしょう。都市伝説的なフェイクだと思ってたのですが、本当だったんですね』


 わかりたくない理由だった。


『おいいいい、ふざけんなよ! ラスボスとか、俺は人間をやめたぞぉと叫んで石仮面をつけて幼女になったら主人公困るだろ! 殴れねーだろ。遂に神の力を手に入れたとか言って、皇帝がクリスタルに触って幼女になったら、そこで主人公たちはゲームオーバーだよ。殺せないよ!』


『だからこそ、無限の可能性の中で幼女を選んだんだと思います。ですが、プーさんには間接的にも運命の影響は受けないと判明しました。本来は『できるエリート秘書』の運命の影響を受けていたはずですが、具現化すると処理が大変だから、きっと目に見えない運命の流れをメイは周りに見せているために、影響を受けないのでしょう。そして、プーさんに連なる私たちも影響を受けないとわかりました。そして、これは大きなチャンスです』


『ぬぐぐ、聞きたくないが大きなチャンスとは?』


『これは運命の悪魔メイの本体です。不滅の存在を殺せるプーさんなら、ここで殺せます。油断しているようですし、ここで殺しましょう。この幼女が消滅すれば、これからの戦闘は楽になります。代償はプーさんの社会的立場ぐらいです』


 非道な手段をあっさりと口にするミラだ。チャンスなのはわかる。俺も迷わずにその手段をとるだろう。わざわざ間抜けにも俺の前に来るのが悪いのだ。ここで殺せばかなり有利になるだろう。


 相手が幼女でなければ!


「へいへい、あたちの正論に反論もできないよーでしゅね。ふふふ、あたちの能力は無敵でしゅ」


 周りはライブラのいる場所に視線を向けて、聞こえてくる声に悔しそうにしている。なので幼女は暇なのか、ポテポテと歩き出して、ランピーチのズボンをペチペチと叩いて悪戯そうにクフフと笑う。


 これが大人なら、容赦なく攻撃をしていたのだが、気づかないふりをしていないといけない。どんな我慢大会なのだろうか。

 

 攻撃できないので、亜空間ポーチから飴を取り出して、手のひらに乗せてみる。コウメにあげるようにお菓子を持っているのだ。ちなみにグレープ味だ。


 さり気なく、飴を乗せた手を広げておく。コロニー製なので、美味しさには定評がある。コウメも大好きな飴ちゃんなのだ。


 幼女は目敏く飴に気づいて、ちょろちょろとランピーチの周りを彷徨く。


「飴しゃんでしゅ。グレープの包装紙でしゅね」


 美味しそうと、口元によだれを垂らして、ランピーチの顔と手のひらを交互に見る幼女。


 むーむーと唸り声をあげて、眉をしかめて、とっても迷ってしまう。


「だ、大丈夫。だいじょーぶ。えっと、『飴しゃんがなくなっても気づかないうんめー』を選択!」


 そして、なにかをつまむように空中にちっこい指を伸ばすと、魔法を使う。


「直接的な運命の選択は効かないと、頭の良いあたちが言ってまちたが、飴くらいなら気づかない、気づかない。でしゅよね?」

 

 どうやら飴を前に我慢できなかった模様。餌を窺う子猫みたいだ。


 ランピーチの手のひらに手を伸ばすと、慎重に飴をつまんで、顔を窺ってくる。もちろんランピーチはまったく気づかずに、聞こえてくる声だけに集中しています。


 包装紙を取って、飴を口の中に入れて、コロコロと転がすと、幸せいっぱいの顔になる幼女。


「これはオリハルハ製でしゅね! うーん、とっても美味しいでしゅ。お菓子は悔しいでしゅけど、オリハルハ製が一番でしゅね。ハーケーンは食べ物はレーションだけで良いと工夫もない不味いものばかりだから、ラッキーでしゅ」


 ぽてんと床に座って、飴を味わう幼女です。


『プーさん! 貴重な飴を奪われました! ここは反撃しないといけないと思います!』


『そうだよ、ソルジャー。ここは心を鬼にして、敵を倒そう! だいじょーぶ、小悪党ならできるって!』


 好戦的なサポートキャラたちだ。合理的とも言えるが、とりあえず一口ドーナツの袋でも取り出すか。


『ここは見逃して、お菓子をどんどん出せば良いと思います。ライブラ回収しておいてください』


『えーっ! 意見を翻すのが早すぎるよ! やるけどさぁ』


 どうやらホログラムだけを送りつけてきたミラは自分では回収できないので、ライブラにお願いする。渋々とドーナツをしまっていくライブラだが、この子の存在はどうなっているのだろうか。


「あ! ドーナツもでてきまちた! うー、飴しゃんは食べないでおけばよかった………」


 飴を舐めているので、ドーナツが食べられないやとしょんぼりする幼女。だが、お子様サイズのスーツにポッケがあることを思い出して、顔をパアッと明るくする。


「しまっておいて、後で食べればいいでしゅね! あたち、頭いー!」


 きゃあと嬉しそうに一口ドーナツの袋に手をいれる幼女。でも半分ほどライブラがしまったので、一口ドーナツは奥底にしかないので、短い腕の幼女では手が届かない。


 うぅ、と涙目になり背伸びをするが、それでも届かない。


「あー、少し疲れたな」


 その可哀想な姿に耐えきれないので、不自然に腰を屈めるランピーチだ。皆は真面目にエリート秘書の相手をして喧々諤々の意見の言い合いをしているので不真面目に見えてしまうが、小悪党なので問題はない。


「やったぁ。幸運でしゅ。やっぱりあたちは持っている女。よーえんなるできる女性なのでしゅ」


 ラッキーとドーナツをせっせとポッケにしまう幼女である。ランピーチの不自然さにはまったく気づいていない。幼女的な楽観主義の模様。


 そうしてドーナツをしまって、パンパンになったポッケをペチペチと叩いて満足そうに笑顔となる。


 その様子を見て、ランピーチは推測する。

 

 この子はアホだなと。とするとおかしなところがある。


『なぁ、ミラ。この子が罠を仕掛けたのに、なんでこんなアホなんだ? もっと頭良くないと罠を仕掛けることができないだろ』


『………それなんですが、段々わかってきました。古代戦争当時も運命を操れるのに、なぜ勝てる運命を常に選ばないか不思議だったんです。これを見るに必要なときだけ、他の自分を呼び出していたんだと思います。その時間もそこまで長時間は無理なのでしょう。活動が長い存在が本体に変わってしまいますからね』


 深刻な表情でミラが考え考え、推測を口にする。


『なるほどな、とすると、使い所を指示する幼女をサポートする存在がいるんだな。ふむ………そうか』


 受け身でしか行動できない弱点があるようだ。とすると………。この子ではなく、指示を出している奴をなんとかすれば良いのかも。ふふふ、妙案がピカリと来たぞ!


「なぁ、チヒロ。今度のんびりとスイーツパーティーでも開こうぜ。具体的には1週間後の2時からランピーチマンションの食堂で。景気よくあらゆるスイーツを用意してバイキング方式にしような」


「へ? それはなにかの暗喩ですか? 今はそれどころではないと思うのですが、良いですよ」


 エリート秘書からなんとかして賠償を分捕ろうとしていたチヒロだが、不思議そうにしても頷く。


「暑いからな。アイスも山のように用意して、ケーキアイスも良いな。チョコの滝とかも作ろう」


 楽しそうなスイーツバイキングになりそうだと笑う、空気を読まない男ランピーチだ。


「すいーつばいきんぐ! なんでしゅか、その楽しそうな響きは! メモメモ。メモメモ。あたちもケーキとかアイス食べたいでしゅ」


 ランピーチの自然なるセリフを聞いて、ふんふんと鼻息荒くちっこいメモ帳にカリカリと書き込む幼女。スイーツバイキングと聞いて、絶対に参加するぞと決意していた。


 その様子を見て、お嬢さん、お菓子をあげるからちょっとおいでと、クククと嗤う誘拐犯の顔をする小悪党であった。


 ちなみに無罪ではあるが、巻き込んだお詫びということで、チヒロは数億エレを鎧塚から分捕ってました。

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― 新着の感想 ―
今まで見てきたバッドさんの作品の中でも最強の敵じゃないか……
[一言] 確かにラスボスが変身して(非力な)幼女になったら、ゲームならともかく現実で攻撃するのは無理だわ。 ぅゎょぅι゛ょっょぃ
[気になる点]  運命を権能とする悪魔とか“運命力”を糧にする小悪党の天敵っぽいのに実際にはランピーチが完封してるのは小悪党の保持する運命力が悪魔のそれを上回ってるって事では?スペースライブラリの中抜…
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