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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
5章 ハンターの小悪党

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152話 決闘と小悪党

 本当に道場は直ぐ側にあった。うん、用意されたかのように存在していた。真新しい剣道場のようで、まだ白木の匂いが残っている。まるで今日のために建てたかのようだ。


 新築の道場なのに、修行をしている人たちはおらずに、受付の人に東光が簡単に許可を貰えるっておかしいだろ。


「明らかに罠だな、これ」


『罠じゃなかったら、なんだっていうのさ?』


『だよなぁ〜………』


 呑気なライブラですら、罠だと思う決闘だ。だけど、変なところはわかりやすい罠じゃないんだよなぁ。


「頑張ってください、ラン! 勝てるようにお祈りしています。いえ、たとえ鎧塚家が相手でもランならきっと勝てると信じてます!」


 懸命な表情でチヒロが俺の手を強く握ってくる。その姿は健気なヒロインそのもので、応援してくれるのはとても嬉しいけど━━━。


「なぁ、チヒロ。この流れるような決闘への進み方と、この道場を見て変だと思ったところはないか?」


 チヒロは弱くても、スラム街をその知恵と美貌で生き抜いてきた少女だ。生き馬の目を抜くどころか、死んだ馬を食べないと生きていけないスラム街で、彼女は決して鈍くない。これだけあからさまな罠なのに、まったく気づかずに懸命に応援するヒロインキャラを演じるなどあり得ない。


 少し真面目に考えないといけないだろうと、目を細くして、緊張感を持つ。見えない何かを仕掛けられている。ランピーチは東光達を見て、なにが行われたのか推察する。


「朱光さん。決闘とは言ったけど、形だけさ。建前と本音は違うというやつ。ほら、俺も鎧塚家の次期当主ですからね。力を見せつけないといけないんです。さっきのパターンだと、多くの家門が店内にいるのに、鎧塚家があっさり引き下がると、体面を保てないということなんだよ」


 道場の床を踏みしめて、東光が軽いノリで話しかけながら肩を竦める。その苦笑した顔からは、たしかに東光の言葉のとおりだと、普通なら考えるだろう。


「最初は譲る気じゃなかったか? 急に気を変えたように見えたが気のせいかね?」


 もっというと、三人組の一人が話しかけたら意見を翻した。その光景は違和感の塊だったのだが━━━。


(精神系の魔法を使われた形跡もなかった。催眠術と言う可能性も微レ存だが…………。チヒロも変なんだよな)


 不自然極まりない決闘の流れなのに、チヒロも違和感を覚えていないということがよくわからない。わからないので警戒のしようがない。


 なので、ここでなにが起こったのか、切れ端で良いので、見つけるつもりだ。なんとなく小悪党センスが、やばい感じをするのだ。小悪党にありがちな、何か嫌な感じがしねぇかと、化け物の巣窟に入り込んで真っ先に殺されるパターンである。


「頑張って、東光! いつもの力を見せれば負けないかんね!」

「冷静に行動すれば楽勝」 

「相手の隙を見つけなさい。あの男程度に負けると許さないから」


 東光も怪しいが、その後ろで可愛らしい笑みで応援するヒロイン三人組を見て、すぐに目を逸らす。今は決闘に気を向けないといけない。


「さて、お互いに武器がないから、たいしたダメージは与えられないけど、それでも事故はあるからね。気をつけてください」


 手足をプラプラと振って、東光が体をほぐしなから緊張感のない言葉を言う。遠回しに自分が強いと信じている模様の東光。


「あぁ、お互いに怪我のないように気をつけよう。くれぐれもな?」


 試合前の他愛ない選手のやり取り。たった一人だけ怪しんでいるランピーチがなにか企んでいるように見えるが気の所為です。


 二人は道場の真ん中で対峙すると、真剣な顔になり構えを取る。半身として拳を前に、お互いに体術に自信があるとわかる光景だ。


「それでは、決闘を開始します。負けた方は買い物を譲ること。では………」


 決闘の中でも、最もくだらない内容だが、真剣な試合だ。三人組の中でも真面目そうな一人が審判をかってでて、手を振り上げる。


 ランピーチ以外の誰もが固唾を呑んで、二人を注視する中で、審判の少女が手を振り下ろす。


「はじめ!」


 掛け声と同時に、東光が先手を取ろうと駆け出す。


「不死身の雷神の力をお見せしよう」


 東光の身体に雷が帯電すると、踏み込みがパシリと放電する。そして、瞬きの合間に、ランピーチの目前まで肉薄してきた。


『閃電手』


 文字通りの閃電のような突きが迫り、その速さにランピーチは驚き、目を見張り、東光の顔に勝利への余裕が生まれ━━━。


 東光の拳はランピーチの掌に受け止められる。まさか、自信の拳を防がれるとは思っていなかった東光だが、一撃で諦めることはなく、体をねじり、回転する勢いで閃電手を連続で繰り出す。


 東光の繰り出す拳が残像を残しながら、ランピーチを殴ろうと迫るが、ランピーチもその高速の拳を手のひらで全て受け止めていく。


「なっ!?」


 パパパと音を立てて二人の残像が重なり合い、手のひらで、拳を受け止めるごとに衝撃が音となり、道場に響く。


「この速さについてこれるなんて! 朱光家の次期当主は腕が良いらしいね」


「お前こそ、なかなか鍛えているじゃないか。俺の呼吸のタイミング、瞬きの隙、全体を観察しながらの攻撃、よく鍛えているよ」


「お褒めに預かりどうも! でも、俺の速さにいつまでついてこれるかな?」


 不敵に笑い、東光は拳だけではなく、蹴りも混ぜて攻撃を繋いで連撃を繰り返す。ランピーチの側頭を狙う裏拳、膝裏を狙う巧みな蹴り。フェイントを繰り出し、わざと隙を見せての誘いなど、人間の格闘家の中では最高レベルに鍛えられていた。


 二人の残像がいくつも道場に残り、激しさを増す。


「頑張って、ラン!」


「東光、やっちゃえー!」


 少女たちの応援を背景に、お互いに一歩も引かずに優れた体術を見せる二人。時間にして数分、だが高速で戦闘を繰り広げる二人にとっては1時間にも感じる体感時間の中で、終わらない戦闘を続ける。


 だが、終わらない格闘の中で、じわじわと焦りへと顔を歪めるのは東光だった。


「ば、馬鹿な!? 俺のスピードにこれだけついてくるなんて!? なぜだ? 俺のスピードについてこれるやつなんて、これまでいなかったのに!」


「人間の中では最高峰だろうな。褒めてやるよ、お前は強い。そこまでよく鍛えたもんだ」

 

 焦りが滲み出る東光に、余裕の表情で褒めるランピーチである。その上から目線は、苦労せずに力を手に入れた男にはとても見えない。さすがは小悪党だ。


 強化増し増しのスピードが乗った高速拳はたしかに人間の中では敵う者は少ないに違いない。


 ━━━だが、残念。ランピーチは既に人を超え、悪魔を超えている。この程度の速さは問題ない。


 拳を掌で受け止めると、そのまま拳を掴んで東光の動きを止める。東光が力を込めて振り払おうとするが、岩で固められたかのように掴まれた拳はびくともしない。


「くっ、精霊鎧も装備していないのに、なんて馬鹿力だ!」


 脇腹に蹴りを繰り出そうとする東光へと、膝を突き出し受け止めると、掴んでいる手のひらをくるりと回転させる。


『空気投げ』


 まるで弾けたポップコーンのように東光は吹き飛ぶと、空を飛んで床に転がる。たった一手で、ランピーチはその圧倒的な力を見せつけて、東光は信じられないと顔を歪めて立ち上がる。


「な、なんてことだ。ここまでの使い手が存在したなんて。どれほどの修行を続けたらそこまでの境地に至るんだ!?」


「ふ、懸命に修行を怠らないでいけば、この程度の境地には至ることができるもんさ」


 臆面もなく、ランピーチは平然と答えた。ランピーチの修行とは、スキル取得をポチリと選択するだけなのだが、ランピーチは脳内の記憶を厳しい修行の成果だと、改ざんしました。


「くっ、世の中にはこれだけの強者がまだまだいるってことか」


 装備もない状態で、相手に魔法を使うようなことはするつもりはないらしい東光は負けたと、諦めを顔に浮かべる。


 なかなか判断力のある青年だなぁと、内心で東光の評価を上げつつ、だからこそ、その行動が変だと感じる。


 周りを見ると、チヒロはランピーチの圧倒的な強さに、目を輝かせて安堵の表情だ。


 それならば、東光のハーレム三人組は悔しそうな顔をしているのだろうかと、その表情を窺い━━━。


(ん? なんだ?)


「あぁ〜、東光負けを認めるのはまだ早いよ!」


「そうだよ、まだ勝てる目はある」


「簡単に負けを認めるのは戦士としてどうかと思うぞ」


 いかにもハーレム軍団のようなセリフを吐き、顔を歪めて悔しがっていた。予想通りといえば予想通りだが━━━。


『ソルジャー、まずいよ! ソルジャーの立っている場所!』


『立っている場所?』


 ライブラの危機を示す慌てた言葉に、周りを見渡し、そのセリフの意味を悟る。


 新築の道場。その中心にランピーチは立っていた。空気投げで投げられた東光は端に立っており、チヒロも三人組も同様に壁の側に立っている。


 即ち、ランピーチしか道場の真ん中には立っていない。そして、ライブラが焦った理由も分かった。


 床に複雑な幾何学模様の描かれた魔法陣が光と共に浮かび上がり、ランピーチを照らす。


「まじかよ、これは罠? なんだってこんな自然に!?」


 東光に演技をしていた様子はなかった。三人組も怪しい行動などなかった。なのに、ランピーチは見事に魔法陣の中心にいた。誘導されたわけでもないのに、まるで決められた運命のように。


『転移罠だよ、ソルジャー!』


『そうか、無防備な時を狙ってやがったのか! 装備をなにも持っていない時を』


 最後まで言えずに、ランピーチは光に包まれると、その視界が移り変わる。東光が予想外のことに驚くのを目にしながら。


          ◇


 真っ暗闇の中、視界がまったくきかない空間にランピーチは転移していた。地面は土のようでザラザラとした感触がする。


『罠だ、罠だとは思っていたが、転移罠とはな、壁の中にいる状態にならなかっただけ良かったか?』


『ここの座標軸がわからないよ、ソルジャー。少しまずいかも』


 ライブラと二人だけとなり、警戒する中で━━━。


「強引なる招待をして申し訳ありません。ハンター」


 穏やかな少女の声がどこからか響いてくる。


「ハンター。招待をしたのは他でもありません。どうでしょう、ハンターをやめて、こちら側につきませんか? ハーケーンへと」


 そうして、誘いの言葉が続けられるのであった。

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― 新着の感想 ―
将来絶対にハゲそうな名前しておいてよく誘えるものだな
ハーケーンもやっぱり中抜きしてくるんでしょ!?
[一言] おいおい急なシリアスさんの登場じゃないか・・・ゴクリ シリアルさん呼んでこなきゃ!!
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