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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
5章 ハンターの小悪党

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150話 招待状と小悪党

「招待状? もちろん持ってるわよ新。あらあらようやく次期当主として社交活動をやる気になったのね」


「そうだな。私もそろそろ次期当主として、新を各方面へ顔見せさせないとと考えていたのだ。パーティーでも、新がいないことを残念がる声が大きくてな」


 人の良さそうな顔で、一見言動は普通に見える二人。誰あろう、朱光新の両親だ。言動は普通だが行動が厄介な、いわゆる動かないほうが平和で助かるといった困った相手である。


 だが、今回はランピーチの目的を叶えるために屋敷を訪れていた。屋敷である。


 支払った百億エレを全て使い、屋敷を建設するつもりだと聞いて、金遣いの荒さにランピーチは悪知恵を働かせて、ハタラカンチュアに建設させたのだ。費用は百億エレ。渡したお金は全て返ってきた。実際の費用はハタラカンチュアの餌代豚肉ニトン程度と建材だけとなった。


「いやぁ〜、助かるよ、父さん、母さん。で、一番近い日時のパーティーはいつになるのかな? できれば武装家門の当主たちが出席するやつがいいんだけど」


 新築の匂いが薫ってくる応接室にて、両親へとお願いをしていた。小野寺バッカスがいれば目的は達成できるが、名前を出して吹聴されるのも困るため、遠回しに尋ねていた。


 ランピーチの他にチヒロとノノも同席している。両親は満面の笑みで、ランピーチの提案を嬉しそうに聞き、お互いに顔を見合わせて、ウンウンと頷く。


「あらあら、社交界デビューをするのだから、特別に大きなパーティーでないと駄目よ?」


「そうだな、朱光家の復活を大々的に示さないといかんしな。君、家にくる招待状を持ってきたまえ」


「畏まりました、お館様。大きなパーティーを厳選してお持ちいたします」


 部屋の隅に静かに待機していた老齢の執事が恭しく頭を下げると、部屋を出て行く。礼の仕方も慣れた風で、なんちゃって執事ではないらしい。


 失礼致しますと、中年のメイドがコトリとコーヒーとケーキをテーブルに置いてくる。置く際に皿の音は一切せずに、こちらもベテランだ。


 招待状を持ってきてくれる間、手持ち無沙汰のため、応接室を見渡すが、絵画からテーブルまで全て一級品だとわかる。その上、メイドさんは中年メイド一人に、年若いメイドさんが2名、この部屋に待機していた。部屋の外には執事やメイド、庭師にコックと、大勢確認している。


「ねぇ、父さん。義兄さんから貰ったお金はもう使い果たしたんじゃないの? この召使いの数はなに? 給料の支払いどうするの?」


 その贅沢さに耐えきれなかったのか、ノノが身を乗り出して両親を睨む。そこで、気まずそうに目を逸らしたりすれば、まだ救いようがあったとは思うが、この二人は筋金入りの心臓を持っていた。


「ノノ、この人たちのお給料は新にお願いしているに決まってるでしょ? この人たちは分家から独立していた家門だったけど、頭下げて許しを求めてきたの」


「これも我が家が一時的に勢力を弱くしたからだからな。二度と裏切りは許さぬと強く言い含めておいて赦したのだ。寛容さを見せなければ、分家もついてこないからな。そのかわりに彼らは腕の良い召使いや、家族を召使いにと差し出してきたのだよ」


 寛容さを示すように、おおらかに笑う二人に絶句してしまう。給料を俺に回すなら、そりゃいくらでも寛容になれるよ!


「あぁ、少し裕福な家門のことか。もしかして、牧場経営には加わっていない家門?」


「そのとおりだよ、新。そこまで寛容になるには、やはり信用と信頼が必要だ。この二本の柱が倒れぬと感じたら、改めて仕事を任せるつもりだ」


 えへんと、偉そうに胸を張る父親のワレタのセリフにランピーチは顰め面になり、ノノは申し訳無さそうにランピーチを見てくる。


 その無駄な寛容さを俺にも向けてほしい。


(チクショー! 他の分家が戻ってきたのか。くそっ、一網打尽に追い払うつもりだったのになぁ)


 クリタからは、牧場経営を任せた分家は揃いも揃って横領を始めたと聞いていたので、とりあえずは分家は片がつくと考えていただけにショック。うう~ん、召使いを送り込むだけで満足すりゃいいけど、そんなわけないよな。目端の利くものは、ランピーチがどう出るか様子を見ているのだろう。


 これについては、今は実害はないので戻ってきた分家は様子見とすることにして━━━両親が給料の支払いを振って来たのは予想外だった。ぬぬぬ、これも必要経費か。とりあえず、招待状に意識を戻そう。


「お館様。若様、こちらが招待状でございます」


 そうしてさり気なく、どの程度金を使っているのかヒアリングしていたところ、執事がドサリと招待状を持ってきて、テーブルに置いてくれた。ドサリというのは過言ではない。本当にドサリと山を作ったのだ。


「こんなに来てるの!? 前はお情けで送られてきた一つか二つだったのに!」


 ノノが驚くが、俺も驚いた。こんなにパーティーを開く金持ちがいるわけ? 年賀状みたいなものなのか?


「ハッハッハ。これはノノへのお茶会の招待状もあるぞ? 屋敷が建てられて体裁が整ってきたから、ノノもそろそろ社交をすると良い」


「お茶会」


 パウダーオブエレメントは日本風味の背景なのに、お茶会とな? 茶道の方か、イギリス式アフタヌーンティーか、はたまた異世界ファンタジー風なのかわからないが、お茶会とはね。


「ノノのドレスから注文しないといけないから、それは後でとすることにして、これが良いわ、新。小野寺家の主催する『七夕祭り』のパーティーよ。これはここ最近では一番大きなパーティーだし、武装家門なら出席するに違いないわ。新のデビューにちょうど良いわね」


 招待状の中でも金の縁取りがあり、紙質も立派な物を嬉しそうにヨネが渡してくる。


 ━━━小野寺家とはバッチシだ。七夕祭りというと浴衣かな? 焼きとうもろこしが食べたいなぁ。お好み焼きも屋台で売ってるかしらん。


 祭りイコール縁日と脳内で変換されるランピーチは、まだ見ぬ屋台に思いを馳せる。実に安く済む小悪党である。


「うんうん、七夕祭りならちょうど良い。最高のスーツを仕立てるんだぞ。それとエスコートする女性は誰にするんだ?」


「エスコートする?」


「独身なんだから当たり前だろ?」


 エスコートするとか、ファンタジーかなと思うが、これは予想していた。なので、隣で一言も口を聞かずに、黙々とケーキを食べているチヒロの肩に手を乗せる。


「もちろん、恋人のチヒロです。なっ?」


「は、はい! ランの隣に立つものとして、立派に勤めさせていただきます」


 慌てて口の中に入れたケーキをコーヒーで流し込み、笑顔で挨拶をするチヒロ。エスコートする云々がもしかしたらあるかもと言っておいたのに、いざとなったら少し動揺していた。


 だが、ランピーチの予想では、両親は反対はすまいと、前回強く答えたから大丈夫だろうと楽観的に考えていたが━━━。


 二人とも渋面を作っていた。


「ねぇ、新。チヒロさんと付き合っているのは母さんは反対しないわ。これまでの苦労を分かち合ってきたのでしょうからね。でも、七夕祭りは各家門の中でも選りすぐりの者たちが多いの。礼儀作法はもちろんのこと、出自やなにやらで、きっとパーティーをチヒロさんは楽しめないと思うわ」


 優しさを見せるふりをして、反対するつもりだ。


「そうだぞ。鶴木家の娘さんとも付き合っているそうじゃないか。今回は鶴木家のお嬢さんと一緒に出席しなさい。その次はチヒロさんとパーティーに出席すると良い」


 両親の言葉には、息子を心配する気遣いが感じられる。ノノも不安そうに見てくるので、そのとおりかもと言い含められそうだ。


 たしかに一般的な思考で言えば、その選択を取るべきなのだろう。果たして灯花がチヒロより上手くやるかは不明だが。それでも出自ははっきりしている。


 だが、それは一般的であり、チヒロへの気遣いはまったくない。気にしないと答えようとして━━━。


「私はランの恋人として、パーティーに出席したいと考えております、お母様」


 ランピーチが口を開く前に、固い意志を込めてチヒロが告げた。真剣な目で不退転の決意を感じさせる強い目だ。


「これはチヒロさんのためもあるのよ? 好奇の目ならまだしも、酷い陰口を叩かれる可能性もあるのよ?」


「構いません。これからも同じように言われるでしょうし、そのたびに逃げていたら、ランの隣にはいられませんから」


 チヒロは胸に手を当てると、強い口調で意思を示す。その態度に両親は一瞬鼻白み、どうするかと眉を顰める。


 チヒロにしたら、このパーティーはチャンスでもあり、ピンチでもあった。大きなパーティーで、恋人とアピールするのはチヒロにとって、大きな戦果だ。


(灯花さんが欠片もランのことを恋愛的に好きではないことは、ちょっと調べればわかるわ。そして、金持ちのパーティーは怖いと私が下がったら、きっと女性たちがランを狙うはずよ)


 チヒロは、壁に立つメイドたちをちらりと横目で見て思う。ランは全く興味がないのか気づかないが、若いメイドたちのランを見る目は肉食動物のようだった。


 いや、ここだけではない。ランピーチマンション内でも同様だ。チヒロはたまたまスラム街で恋人になれたラッキーガール。その立場を追い落として、自分が恋人に、ひいては妻になれると考えている女性たちが大勢いるのだ。


 それに地下街区のライブラという強いライバルもいる。ここで弱気になれば、ランのそばにいるだけのその他大勢となるに違いない。そんなのは嫌だ。


「うーん、でも、家門の人たちが」


「ここで立派にやり遂げれば、私はランの確固たる恋人だと認識してくれるでしょうから、出席は絶対にします」


 ワレタの反対意見に言葉をかぶせて、チヒロは譲らない気持ちを込めて、しっかりと二人を見据える。


 そこで、ワレタとヨネは不機嫌そうに嫌な顔となる。息子のことを思いつつ、体面も気にしてきているのだ。


 ━━━その不機嫌そうな顔を見れただけでも、ランピーチ的には楽しいと、にやりと笑ってしまう。


「そのとおりだぜ、チヒロ。そうと決まれば、早速ドレスを買いに行こう! 父さん、母さん。俺も同じ気持ちだ。チヒロを連れて行く予定なので、招待状は貰っていくよ」


 そうして、ゲラゲラと小悪党は笑って、チヒロとノノを連れて立ち去るのであった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] うーん、ご破算につながらないといいね
[一言] チヒロがんばってー!
[一言] コロニー産の最高級ドレス着せとけば勘違いしてくれるでしょ
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