147話 双星の悪魔と小悪党
「ヒャッハー! やった、やったよな? 少なくとも大ダメージは確実だよね?」
「うん、間違いないね。大ダメージ確実だよ! さすがソルジャー。せこい攻撃をさせたら右に出るものはいないね、」
小悪党は不意討ちが成功して小躍りする。ドタバタと見苦しい踊りだが、隣で銀髪ツインテール巫女が可愛らしく踊っていたので、相殺されていた。小悪党が踊っていなければ、可愛らしい踊りだけなので、小悪党はとても邪魔だった。
とはいえ、作戦は成功だ。題して『力を手にした小悪党、強者に攻撃が効かずに恐怖する』作戦だ。アニメなどで、そこそこ強い小悪党が主人公のライバルとか、ラスボスへ自信満々に攻撃をして、攻撃がまったく効かずに恐怖するというシチュエーションを逆に利用した作戦であった。作戦名にネーミングセンスがないことを抜かせば完璧だった。
爆煙がおさまる前に、ピコンとウィンドウが開く。
『風と土の精霊王を解放しよう。レベル9』
『双精霊の神殿を破壊しよう。レベル9』
『ボス戦:レラジェとグシオンを倒そう。レベル9』
「………なんか盛大なネタバレが表示されたんだけど」
胡乱げな顔で表示されたクエストを見て、爆煙のおさまらない祭壇を見てため息をつく。まぁ、一撃で倒せるとは思ってはいなかったが、希望は残して欲しかったよ。
「外面が破壊できただけでも良いと思います。ほら、変身前の敵と戦うのってダルいじゃないですか。こちらの体力や魔力を削るだけのせこいだけの変身前の敵とか」
「それは同意できるけど……。悪魔というのに、悪魔らしい姿をとってなかったもんな。エルフとドワーフだったし」
「そういえばそうだったね。あれで終わりだと思ってたや」
巫女ダンスをやめて、ライブラがふわりと浮くとランピーチの肩に乗る。
爆煙がゆっくりと消えていく中で、予想通りに怒声が響く。
「っ! 貴様ぁぁぁ、どんな手品を使ったのだ? なぜ我らに傷を負わせることができるのだ!」
爆煙の中からペタリと足音を立てて現れたのはリザードマンのような姿をした悪魔であった。二足歩行のトカゲのようで、鱗は緑ではなく赤い。そして首は蛇のように長く、細長い二本の角を生やしている。その瞳は爬虫類の縦長の瞳で、先端が二つに分かれた長い舌を出している。その手には骨を固めたような捻くれた弓を持っていた。
「うぬぬ、なんということだ? どういうことだ? 傷が治らん。いや、『外れていた』ことにはならん。どういうことだ?」
もう一人も唸りながら現れる。やはりリザードマンのような姿で、鱗が茶色であることと、ドクロが柄頭につけられている不吉そうな斧を手にしているだけだ。
レラジェとグシオンの真の姿。悪魔の姿ということだろう。二人とも傷だらけで、黒い血を流して、しっかりとエネルギー弾は効いたようだ。
二人とも怒りに震えているが、自分から攻撃を受けたんだろ。
「もちろん、対抗手段を持ってきたに決まっているではないですか。トカゲの足りない頭に告げましょう。ハンターギルドより勧告します。その技術は違法であり、速やかに土下座をして全財産を差し出しなさい」
鬼畜な言い回しをして煽るミラ。さりげなく全財産も奪おうとしていたりする。
とはいえ、そんな警告を聞くわけもなく、それどころか、ハンターギルドの名を聞いた途端に、器用に蛇の顔色を青く変える。
「は、ハンターギルドだとっ! 未だに残っていたのか! あり得ない」
「そうだ。どうせ昔のハンターギルドではなく、名前を真似しただけのものであろう」
二人が怒鳴るのを受け流し、ミラは髪をかきあげて、ふふっと微笑む。
「『宇宙図書館』所属のオリハルハハンターギルドのハンターミラです。これで理解しましたか?」
「本物………なのか? ならば、本当に我らへの対抗手段を手に入れたというのか? 『ルナティックライブラリ』の未来予想では、その可能性はないとされていたのに!?」
焦るレラジェだが、ミラは余裕の微笑みで無言で返す。その態度こそが真実を現していると悟った二人はそれぞれの武器を構える。
「ならば、その技術とやらを破壊させてもらおう」
「悪魔の力を見せてやろうぞ!」
先程までは余裕の態度だったのに、その程度で小者極まりない。
「まぁ、チート行為で無敵を楽しんでいたら、そりゃそうなるか。垢バン決定だな。運営からのお知らせをあげてやるぜ」
ランピーチは軽蔑するように悪魔達を見て、片手をあげる。
「よし、いくぞ、ライブラ」
「あいさ、ソルジャー!」
『神霊融合』
二人の身体が重なると、閃光と共に銀髪を腰まで伸ばした精霊戦士へとランピーチは変身を終える。油断するつもりはない。相手は7人の悪魔らしいからな。
「!? その姿は? いや、偽装であろう。この一撃を受けてみよ!」
『腐り落ちる果実』
弓を構えて、レラジェが瘴気を集めると弓を放つ。毒々しい色を持つ矢であり、空気を腐らせて腐臭を持って迫ってくる。
「あれに当たると腐ってしまうので、注意してください。加齢臭がもっと酷くなりますよ」
「加齢臭なんてないですぅ〜。それにあの程度は簡単に防げる」
ヘイズを構えると硫化エネルギー弾を撃つ。直線的な矢など、目を瞑っていても撃ち落とせる銃の腕前はある。
エネルギー弾が矢に命中し、あっさりと砕く。
「ちっ、エネルギー弾など小癪な」
「物理弾だと腐って溶けてしまうってオチだったんだろうが残念だったな」
「ならば、撃ち落とすことのできぬ数を放てばよいだけのこと!」
レラジェがまるでマシンガンのように弓を番えて高速で矢を撃つ。ランピーチとミラは二手に分かれて、矢の雨から逃れると、祭壇を円を描くように回りながら登っていく。
「ふん、儂のことを忘れてもらっては困るな!」
グシオンが祭壇頂上から飛び降りてくる。ハンマーを背中が折れるかというほどに反らして、全力を込めて振り下ろす。
『肉塊となりて墓場に沈め』
ハンマーが暴風を巻き起こし、ランピーチは肉薄してくる隕石のようなグシオンを前に、ステップを踏み、ジグザグにステップを踏むと、狙いを定められないように回避行動をとる。
グシオンのハンマーが祭壇の床に沈み込むと、陥没するのではなく、砂漠のように砂へと変わってしまう。
「おっと、厄介な魔技を持ってやがるな。いわゆる防御無効というやつかね?」
タタタとヘイズを撃ってグシオンを狙うが、エネルギー弾を前に、見かけの怪力から鈍重そうなイメージとは違い、軽くジャンプをして、弾丸を避けて祭壇の周囲を走り始める。エネルギー弾は音速に達しているのに、その弾丸を躱すグシオンに舌を巻く。
『その田園は腐れし』
レラジェが弓を撃つのを諦めて、パチリと指を鳴らす。レラジェの足元から瘴気が周囲へと波紋のように広がっていく。祭壇も巨人もなにも起こらないように見えるが━━━。
「全体範囲魔法です。触れると腐りますよ」
「範囲攻撃で即死攻撃とかあり得ない悪魔らしい攻撃だこと」
『ソルジャー、あいつの魔法攻撃の構成を解析するよ。指示する箇所を攻撃して!』
『オーケーだ。魔法攻撃を破壊するんだな!』
ライブラが思念でサポートキャラっぽいセリフを伝えてくる。視界に様々な情報が映し出されて、その中でレラジェの身体が拡張されて強調される。
ピピピと拡張表示されたレラジェの心臓と頭を狙えと表示されました。そこを狙えば誰でも倒せるだろ!
「弱点の意味が違う! 狙うけど!」
ヘイズに魔力を込めて、その銃口に神々しい光が粒子となって集まっていく。
『白光魔弾』
カッと眩いレーザーがヘイズから放たれて、辺りを巻き込む暴虐の極太の白光となって、空間を食い尽くしながら、レラジェへと飛んでいく。
その途上にある瘴気を呑み込み浄化しながら、レラジェを狙い、レラジェは魔法が力技で破られたことに目を見張り、回避行動を取る。
「逃すかよ。これはただのエネルギー流じゃないんだぜ」
引き金を強く引いたまま白光を維持して薙ぎ払うようにレラジェを追いかける。
「くっ、人間? エセ精霊戦士ごときなのに、内包するエネルギーは今までの敵よりも遥かに強い!」
『腐り落ちる果実』
駆けながら弓を撃つレラジェだが、その矢は虚しく光に呑み込まれて消滅していき、白光を押し留めることができない。
「グシオン、あいつを止めろっ!」
「わかっとる! 小僧、この技で沈めっ!」
『創造:魔剣投出』
焦るレラジェの声に、グシオンが立ち止まり、手をかざすとグシオンの周囲に魔剣が空間から抜き出すように姿を見せる。一本一本が鍛え抜かれたとわかる鋭い刃と内包する魔力の凄まじさを感じさせる。
「ドワーフの魂を使いし魔剣たちよ! これを受けて生きていられたものはおらぬ!」
グシオンが手を振り下ろすと、魔剣たちはミサイルのように射出されて、ランピーチを狙ってくる。
「プーさん以外にも私がいることをお忘れでは?」
反対側に走っていったミラがランピーチの影から現れると、迫る魔剣へと目を向けて手を翳す。
『創造:魔剣投出』
そして、驚いたことにグシオンと同じ魔法を使う。同じ数の魔剣が生まれると、対抗して射出するミラ。
「なに!? なぜ儂の秘奥を使えるのだ?」
「それは私が鏡のミラだからです。私に敵が見せる技は鏡のように使えるようになるのですから」
平然とした顔でチートな能力を口にするミラ、驚きで目を見張るグシオンを他所に、魔剣同士がぶつかり合い砕け散ってゆく。
━━━グシオンの作り出した魔剣のみが。
「な、なぜ? なぜ儂の魔剣のみが砕ける?」
「私の魔剣は精緻な動きをするのです。ただ投げるだけの貴方の魔剣とは違うのですから、当然の結果でしょう」
魔剣同士がぶつかる瞬間、ミラの操る魔剣は達人のように剣先を揺らして、敵の魔剣の刀身へと刃を当てて砕いていった。複数の魔剣の複雑な動作を制御するなど、『宇宙図書館』の支援を持つミラにとっては容易いことであった。
「ぬ、ぬおおぉぉ!」
そうして魔剣は乱舞して、グシオンの周囲を飛び回り、蜂のように鋭い突きを繰り出して、切り刻むのであった。
「グシオン!? そんな馬鹿な。こんなに簡単に我らが負けるなどぉぉ」
レラジェは追いつかれた白光に呑み込まれて、断末魔をあげて消滅していくのであった。
『風と土の精霊王を解放しようをクリアしました。経験値45000を取得』
『双精霊の神殿を破壊しようをクリアしました。経験値45000を取得』
『ボス戦:レラジェとグシオンを倒そうをクリアしました。経験値9000を取得』
『精霊王達を現世から解放するために経験値50000を使用しました』
そしてログが表示されると、神殿が嫌な感じで震動を始めるのだった。




