表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
4章 混沌の小悪党

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/214

142話 両親と小悪党

 ランピーチマンションに作った訓練用の部屋で、ランピーチはミラと対峙していた。


 二人とも一般人が見れば、いや、達人が見ても隙だらけの自然体で立っているように見える。しかしながら、人間の枠を超えた二人はお互いに隙がないとわかっていた。


「えぇ〜…………それは地上街区のジョークとかじゃないのか?」


 ランピーチは軽くステップを踏み、数人の残像作りながら、銃弾よりも速い拳撃を突風を巻き起こし打ち出す。残像効果も相まって、何発もの拳撃に見える。


「ジョークにしても面白くないですよ。どこのグランプリに出るつもりかはわかりませんが、一回戦で敗退は確実ですね」


 キュキュッと床を擦り、つま先立ちでミラが木の葉を掴むように、拳を受け止めると回転しながら懐に入ってきながら、肘打ちを横腹に打ち込もうとする。


 残像を見抜き、本物の拳撃を受け流しながらのカウンター攻撃。慌てて体を捻り肘打ちを躱すと、ハイキックに切り替えてカウンターへとカウンターを返すランピーチ。


 だが、ミラはバレエのように回転しながら肘でハイキックの始点に攻撃を入れて防ぐ。その後も二人は劇の演者のように、お互いに当たらない攻撃をしあい、交差する拳や蹴りを見せて終わるのであった。


 お互いの攻撃が入らずに、トンと軽くバックステップを踏み、ランピーチは構え直しながら、報告をしてきたセイジに顔を向ける。


「で、百億エレだっけ? 他にはえぇと」


「仕事ですよ。きっとハンターになりたいんだと思います。なかなか向上心がある人たちなんですね」

 

「うおっ!?」


 対峙しているミラがなんでもないように言うのと同時に、ランピーチは足払いをされたかのように体勢を崩し倒れそうになる。


 すぐに立て直そうとするが、またもやグラリと足に衝撃が奔り━━━その隙に間合いを詰めてきたミラに鳩尾を蹴られてしまい、倒れてしまうのだった。倒れたランピーチは大の字に寝転び苦笑する。見ると足元にミニチュアミラの影がちょこまかと纏わりついていた。


「……これが本当の使い方だったわけか?」


「そのとおりです。イビルナイトストーカーは自分と同じサイズの影人形を作るのではなく、小さな幼女レベルの影を作り、敵の動きを阻害することや影と自身を入れ替えることに留めるのが正解です。とはいえ、見抜かれたら弱いので、イビルナイトストーカー自体弱い悪魔なんですけど。あれはあくまでも不意打ち、奇襲に特化した悪魔ですので」


 鴉羽のように艷やかな黒髪をかき上げて、ミラは胸を張る。


「やだやだ、悪魔とあくまをかけたんだろ?」


「ふふふ、私はグランプリ優勝ですね。今日の夕飯はおかずを十品増やしてください」


 胸を反らして、反らしすぎて、ワヒャアと後ろに倒れるドジな少女だ。


「そうか………チェフェイとやらは未熟な悪魔だったんだな。素直に分身を作って攻撃してきたからなぁ」


 今回、ミラと組手をしていたのは、悪魔の恐ろしさを教えてくれると言って、ミラが稽古をつけてくれることになったからだが、予想以上に悪魔のスキルは面倒くさいと分かって嘆息してしまう。


「悪魔になりたてで戦闘経験が圧倒的に不足していました。私が同じスキルを持っていれば、これまでのようにプーさんは永遠に無職でしたでしょう」


「俺は無職じゃないからね? ハンターになっただろ。ほら、無職じゃない」


「そういえばそうでした。ハンターって名乗りたい年頃の」


「本当におかず10品増やそうかなぁ」


「わかってました。プーさんは料理人を目指すつもりだって。信じていた私にフルコース料理を用意してくれるって。デザートはツバメの巣を使った至高のものでお願いします」


 コロコロと丸い小石のように意見を変えるミラである。そのことに苦笑しながら、ランピーチはヨッと立ち上がる。


「それしても、予想外すぎる行動だな。予想だと、四、五年は贅沢に暮らしてると思ってたんだけど、まさかの浪費。ちょっと両親を甘く見てたよ」


「私も武装家門のやり方を甘く見てました。元とはいえ、かつて隆盛していた頃を記憶していた方たちです。同じやり方を覚えていたのですね」


 部屋の端で稽古を見ていたセイジも困ったように苦笑する。それはそうだろう。元は10億エレ渡すつもりだったのだ。ランピーチが反対の立場なら、喜んで怠惰に暮らす自身がある。社交? 知らんな、そんなつまらないことをしてどうするんだと蹴り捨ててしまうのは間違いない。


「お疲れ様でした、ラン。えぇと、物凄く速くてなにをしていたのかわかりませんでした」


 テテテと近づいてきて、タオルを渡してくれる甲斐甲斐しくお世話をしてくれるチヒロ。


「ありがとう、チヒロ。まぁ、一般人には視認はできないから無理はない」


 タオルで汗を拭きながら答えるが、たしかに視認は不可能だったろう。なにせ『超感覚』を使用しての時の流れが遅い中で高速に動いていたのだ。


「お疲れ様、ソルジャー。えぇと、このスポドリ飲む?」


「ありがとうございます、ちょうど喉が渇いてたんです。渇いてなくても飲みますが。お茶請けはどこですか?」


「ミラのために用意したのはのこっちの1.5リットルサイズだよ。あぁ、両方飲むなぁ〜!」


 なぜかミラがライブラの用意したスポドリを素早く受け取り、さらにデカい方も小脇に抱えて、チューチューと飲む。怒ったライブラが掴みかかろうとするが、ステータス3のライブラではミラに触れることもできないのであった。


 この二人、コロニーの再活性化が終わったと思ったら、ランピーチマンションに住み始めたのだ。曰く、コロニーにいなくても、もう大丈夫のようになったのだとか。


 チヒロは警戒モードになっており、最近はベッタリしてくれるので嬉しかったりする。特にライブラはボディタッチが多目なので、最高レベルでライバル視している模様。


 まぁ、放置していても良いだろうと、直近の厄介な問題に頭を悩ます。金は別に良い。今の俺にはほとんど必要がない上に、たくさん余っているからだ。百億エレだって、ポンと渡せる余裕はある。


「問題は仕事だなぁ。あいつらをコロニーには入れたくない」


 今回のコロニー再活性化に伴い、農園や牧場も解放された。それにより大量の作物や乳製品が手に入るようになったことを確認している。問題はどうやって、輸出するかで迷っているところであった。


「お話にあった作物を輸入するということですが、お聞きしたとおりなら、恐らくはエルダージュ15の食料品関係を独占できると思います。それだけの金額が動くものに………」


 言い淀むセイジに、頭をかきながら、苦笑してしまう。


「信頼できない奴らに任せるのは嫌だよな。きっと横領とか汚職をするのが目に見えてるし」


「それなら放置すればいいじゃないと言いたいけど、父さんも母さんもきっとうるさいわよ………」


 強気のノノも両親の行動を読んで、重苦しい顔だ。


「門前払いをすれば良いだけだけど、正面玄関で騒がれるだけでも迷惑なんだよな。それに騒ぐ方法はいくらでもある。叩き出したら、きっと他の武装家門やらが保護をして、いちゃもんをつけてくるだろうしなぁ」


 無能だけならともかく、足を引っ張る存在に辟易する。この世界から退場して貰う方法を取れば後腐れないが、さすがにランピーチもそれは罪悪感からできない。


「こんなことで、頭を悩ます時間はないっつーのにどうするべきか………」


 仲間にしたら弱体化させるキャラなんかいらないのである。


「良い考えがある。牧場ポータルを任せれば良い。ピーチお兄ちゃんの言う通りなら、コロニーの食料品があるんだから、あの牧場はもういらない。でも、お金を稼げるから文句は言われないはず。そして、ミラは次は私と組手をする。賞品はカルメラ焼き」


 ドライがてこてこと入ってきて、部屋の真ん中で構えて、ミラは誘蛾灯に近づく虫のようにふらふらと後ろに続いて構えを取るのだった。


 とはいえ、なるほど。それは良いかもしれない。


「コロニーのことは知らないから、うちのメインの仕事は牧場ポータルの食料品販売だと思っているはず。ナイスアイデアだ、ドライ。いかにも重要そうな仕事を任せるかのように渡せば、納得するだろ。実際に金を生む仕事だし」


 うけけけと笑う小悪党。仕事を与えるのはとてもとても嫌だが、放置しても良いことはないので仕方ない。


「それじゃ、百億エレだっけ? 渡しておいてくれ。それと大きな屋敷に、今言った仕事もお任せしますと。俺は忙しいから会えないとも伝えてね」


「畏まりました。では、そのとおりに」


「え~っ! 義兄さん、少し甘すぎだよ! お金は渡さなくて良いんじゃない? 百億だよ、百億!」


 素直に頷くセイジとは別に、ノノは反対するが、俺だって嫌だよ。だからこそだ。


「甘い汁を吸うには、ストローで細く長く飲むのがコツなんだよ。だけどそいつらはそもそも甘い汁を吸うことがなかったら加減を知らないだろ」


「それは罠を仕掛けるという意味ですか?」


「そのとおり。両親は単に当主ムーブをしたいだけみたいだろうが、今までの暮らしと一変する金を手に入れた分家の奴らはどうだろうな? しばらく見ていればわかるだろ。どこかのクリタが横流しをしようと悪巧みを持ちかけると思うぜ?」


 チヒロの言葉に頷き、早けりゃ半年で結果は出るだろうと、ウケケと悪辣な笑顔を見せる小悪党である。


 ━━━それは予想以上にうまくいき、追い出すのは僅か1か月後となるのだが、それは別の話だ。


「この件は時間が解決してくれるだろうから、さて、本来の仕事に移るか。コロニーの様子を見てこないとな。新しいポータルはコロニー大農場とターミナルのみに行けるものにするつもりだ」


 作物とかを収穫できる広々とした農園を見てみたい。なにせ、宇宙コロニーだ。空にも農場があったりするのかな。


「ハッ! なにやら私の感覚がピキーンと鳴ったよ! 宇宙に行くんでしょ? おじさん、私も勿論ついていくよ!」


 宇宙のこととなったら、新人類並の感覚を発揮する灯花が扉を勢いよく開けて入ってきた。さすがは宇宙人に魂を躊躇いなく売る少女だ。


「ねーねー、パパしゃん。くみてにかったら、おやつもらえりゅの?」

「そううさよ。うさの情報に間違いないうさ」

「あっさりと勝って、ケーキ作ってもらううさ」

「ふふふ、娘を前にすればきっと負けてくれるうさよ」


 そして、幼女を案内する邪悪なる笑いでキューキューと鳴くうさぎたちも入ってくる。そーゆーことだけは耳聡いうさぎたちである。そして、ドライはデコピン一発で負けて、カルメラ焼きは奪われていた。もう少し手加減してほしい。


「負けたところだからな。それじゃ組手をするか」


「コウメからやるね! コウメぱーんち!」


「うわぁー、負けた〜。コウメは強いなぁ」


「キャ~、かっちゃた。コウメつおい!」


 構えを取るランピーチに、コウメがちっこい拳を握って、テテテと走ってくるとポフンと叩いてきた。なので、ランピーチは強力なパンチを前に倒れ伏すのでした。親ばかここに極まりない。


 と、強いコウメには負けたけど、うさぎたちには本気を出さないとなと、後ろでピコピコハンマーを構えているうさぎたちに、振り返って笑みを見せるのであった。


「うさーっ! 全員でかかるうさー!」

「ヒャッハー、人参フルコース料理作ってうさー」

「我らの三位一体の攻撃をうけ、キャ~!」


 もちろんうさぎたちはミノムシへと変身した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あーやっぱりコウメちゃんにはかてないかー
[一言] 再活性化が済めば自由に行動できる精霊ズの謎… 大量の点数を使っただけの価値はあるような無いような
[良い点]  (^-^)よくあるなろうなら『主人公さまの稼ぎを掠め取る寄生虫は身内でも殺す』となるところを「ん?百億?どうせ溜まってても自分の強さにならないくだらないモンだからやっとけやっとけ、あーそ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ