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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
4章 混沌の小悪党

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134話 ガンラビィと小悪党

 ライオンラビットの艦内は大騒ぎだった。うさぎたちはワタワタとブリッジ内を走り回り、コテンと転倒し、コロコロと床を転がっていくものもいた。


「大変、大変うさ」

「予想解析と違っちゃったよ?」

「あわわ、落ち着いて人参でも食べるうさ」

「ドーナツも持ってきた。チョコやクリームもある」


 人参スティックを取り出して、落ち着こうと車座になってコリコリ齧っちゃう子もいたりする。うさぎは群れをなして押しくらまんじゅうをするのが大好きなのだ。


 うさぎたちが集まって食べる姿は可愛らしく、約1名青髪の少女も混じっていて、ドーナツの方が良いうさと、うさぎたちが纏わりついたりもしてた。


 大混乱のうさぎたち。まるで狼が巣に入ってきたような騒ぎだが、それでも落ち着いているうさぎたちはいる。


 ポフポフと、もふもふなおててでモニターを叩いて、騒ぎをおさめたのはテテだった。やるときはやるうさぎ。それが提督たるテテなのだ。


「落ち着くうさ! テテの巧妙な話術で敵を降伏させるから少し待つうさよ。悪魔艦を停めないと、ひどい目にあううさよ? だめっぽいから、ライオンラビット砲ハックション」


 巧妙なる話術にて、どさくさ紛れに主砲を撃とうとする提督うさぎは先端にボンボンがついているうさぎじゃらしで鼻をくすぐられてくしゃみしちゃうのだった。その代わりにうさぎじゃらしを持ったうさぎがふんすと声を張り上げる。


「真面目にするうさ。司令官、予想と違う結果になったうさよ?」


 真面目に働くうさぎは5羽のうち1羽。その1羽はサイコクラッキングを止めたミラを仰ぎ見る。さすがのミラも深刻な顔をして、厳しい声音だ。


「予想では残党の一個中隊でした。まさか次元潜航悪魔艦『フォルネウス』を隠し持っているとは……。どうやら嘘の情報で偽装できるだけの駐屯地だったようですね」


 悪魔艦はまだ問題はない。極めて厄介な敵なのはその艦を操る艦長がいることだ。艦長ということは佐官レベル。これまでの敵とは次元が違う。プーさんでは勝てるかどうかわからない。


「『地球図書館アースライブラリ』の予測エンジンが遂に外れましたか。この出会いは難易度高めではすみません。本来は中隊を倒してプーさんを鍛える予定だったのですが………」


 キャロットスティックをテテのポケットから取り出してカリカリと食べながら考える。今のプレイヤーの戦闘力と敵との彼我の差を。


「あ、あの、義兄さんがなにか危険なの?」


 焦った顔でミラを見てくる少女を見返して、ふむとキャロットスティックを全て口に放り込み、テテが潤んだ目できゅーと泣く。なんだかんだ言って、この少女はランピーチ・コーザを家族として愛していることに感心する。


「━━━問題ありません。プーさんの能力は余裕を持ってスパルタ地獄で鍛えたので、勝率はトップバッターの打率レベルで高いです。それにエージェントミチビキとラビット隊もいますしね」


 人に好かれる優しい笑みで、ミラはニコニコと嘘をついた。


「そ、そっか。そうよね、義兄さんは外で植物に蔓で絞められてるし。安全よね」


 ホッと安堵して胸を撫で下ろす。どうやらサングラスのせいで、因果が誤魔化されて苦戦している国軍の兵士がプーさんに見えているらしい。触手に絡まれてギブギブと叫んでいるおっさんだが、面白い芸風がプーさんにそっくりだから良いだろう。


 それにそんな事を気にする余裕もない。


「しょうがないですね。フォルネウスの拿捕と敵部隊を撃破すれば、たくさんの報酬が手に入りますし、私はプーさんを信じてます。明日、北から太陽が昇ると言われるくらいに信じてます。大黒字確定です」


「司令官の目が金貨袋に見えてるうさ?」


 ジト目のうさぎが上目遣いで疑いの表情になるが、私は常にプーさんの心配をしているのに心外です。順番でいうと、キャロットスティックと同じくらいに大事にしてます。


「キノセイデス。負けたら私が出張るぐらいに私は期待をしています。………ちょうどよい感じに戦場も煮つまって来たようですし」


「あぁ〜! あ、あたしの学園が!?」


「おぉ……苦労して転入したのにパーとなった」


 前面に映る地上の様子を見て、ノノが頰に手を当て絶叫し、ドライがドライな目で淡々と言う。


 ノノが絶叫した理由、ドライが呆れた顔で嘆息する理由。地上の学園はせり上がった地面によって押し退けられていた。地面ではない、何キロにも及ぶ巨大な隔壁が外へと開いていく。かなりの質量がある建物も体育館も全てずれていき、ガラガラと転がっていき、残骸の山となっていく。


「司令官、敵基地の隔壁が開放されているうさ。上の障害物はぜーんぶ粉々うさね」

「あれだけの建物が壊されたうさよ」

「もったいないうさね〜」


 オペレーターうさぎたちは哀れみの目で崩壊した学園を見て、地上部隊は慌てて戦場から離脱をしていた。もはや学園の再建は不可能となった瞬間である。


「まぁ、邪魔な障害物がなくなったことは良いことです。切り札の1枚を切ります。ガンラビィ隊を出撃させてください」


「ラジャー、ガンラビィ隊出撃せよ。目標地下内部、フォルネウス他邪魔な部隊の排除です」


 ミラの言うことに従い、オペレーターうさぎが指示を伝えると、可愛らしいもこもこうさぎのパイロットスーツを着たパイロットうさぎたちがモニターに映し出される。スンスンと鼻を鳴らして、戦意は十分の模様。


「そのシステムは第七世代プレイヤーシステムを導入したガンラビィ試作機です。10機しかないので、壊したらしばらくおやつは抜きにします」


「ガーン! 絶対に破壊されないうさ。対悪魔用親分システムも搭載されているし負けはないうさよ!」


 グッと親指を立ててパイロットうさぎは自信満々だ。人ならば死亡フラグだが、うさぎだから死亡フラグではないのだろう。


「それでは、タギョウ隊、マギョウ隊、出撃してください!」


 オペレーターうさぎの声に合わせて、ガンラビィが動き出し、ハッチから飛び出していくのであった。


          ◇


「タギョウ隊、全機出撃するうさ!」


「マギョウ隊、同じく出撃するうさ!」


 丸みを帯びた撫で肩のどこか可愛らしさを感じさせるガンラビィ。全長2.5メートル、細身の人型ロボットで、各部にスラスターを搭載させて、ウイングバインダー型バーニアを背中に搭載。武器はレイピア兼魔法杖のラビィレイピアと、強固な精霊防壁を展開できるカイトシールドだ。装甲は薄いがその分精霊障壁が強力である。


 精霊晶石のエンジンを搭載しており、その出力は地上街区の精霊鎧の出力など相手にならない。攻撃力は400を超えて、防御力も同等だ。


 マギョウ隊の隊長、マァはレバーを握り全天モニターに映し出される地上を見ながら滑空していた。


「エンジン出力問題なし。精霊石で全部作られたって凄いうさね」


 背部スラスターを軽く噴き、角度を調整しながら、操作性に舌を巻く。うさぎなのでチロッとなので可愛らしい。


「全機ついてきているうさ?」


 レーダーを横目に見て、なんでだろうとコテリと首を傾げて、不思議な顔になる。マギョウ隊は五機いるはずなのに、一機足りない。


「ムゥはいるよ〜」

「メメもついてきているうさ」

「モモも後ろにいるかな」


「……ミミがいないうさね?」


 モニターに映る部下を見て、スンスンと鼻を鳴らす。ご不満なマァはおヒゲもゆらゆら揺らしちゃった。


「ごめんねぇ。ミミは追加パーツを付けてるから後から行くよぉ。むにゃむにゃ」


「さぼるつもりうさね! 後で軍法会議で減俸うさ! いつもいつも寝すぎ━━━」


 プンスコと怒ろうとして、警戒音がコックピットに響き、すぐに地上に目を戻す。開いた隔壁から大勢の兵士の反応があった。


「迎撃にきたうさね! ふふん、今のガンラビィは昔の旧型とパワーがダンチと言う事を教えてやるうさ。各機攻撃開始!」


「了解うさ! 人参畑のうさぎと呼ばれたムゥの力を見せるうさ!」

「頑張ろううさよ!」

「攻撃開始〜」


 空を滑空していたガンラビィがそれぞれ腰に取り付けてあったラビィレイピアを引き抜く。


「敵はハーケーン兵士! 遠慮することはないうさ!」


 視界に映るハーケーンの兵士たち。捻れた生き物のような漆黒の悪魔鎧を着込んだ兵士たちがこちらへと魔法杖を向けてくるのが見える。


 マァはレバーをグッと握り込み、親指でトリガーを引く。


『魔に染まりし光』


精霊光エレメンタルビーム


 漆黒の光が帯状となって、マァに向かってくるが、ラビィレイピアから放たれたビームが迎撃して二つのエネルギーを相殺し、空中に火花を散らす。だが、『精霊光エレメンタルビーム』は敵の魔法が消えたのに対して力を失っておらずに、兵士へと向かう。


「!!!」


 予測外であったのだろう、兵士が目を剥いて驚きながら、旋回してビームを回避するが、マァはその隙を逃さずにトリガーを引く。


 レイピアから光が放たれて、予測された地点に回避していた兵士を貫き、胴体に風穴を開けられて兵士は鮮血を散らし地下へと再び落ちていくのであった。

 

「想定通りうさ! 親分の精霊石をせっせと中抜きしていた甲斐はあったうさね」


 背部スラスターを噴き出し、さらなる加速をして、マァは敵の兵士たちに対して周囲を回るようにしながら『精霊光エレメンタルビーム』を撃ち続ける。敵も対抗してビームを放ってくるが、各部のスラスターを噴かせて、軽やかに旋回して回避をして、反撃の一撃を喰らわす。


 火力も機動性もガンラビィの方が圧倒的に上であり、マァ以外の部隊たちも優勢に戦況を運んでいた。


「うさーっ!」


 ビームを受け止めて、加速するとレイピアで兵士をついてムゥが倒す。メメが脚部のスラスターをちょんと一瞬噴かせて機体をズラして攻撃を回避すると同時に反撃のビームで撃墜する。モモが上空を右に左にと飛行して敵を翻弄させて、その隙をタギョウ隊が攻撃する。


 ガンラビィ隊は損害を出さずに、敵を駆逐していった。


「やるじゃないか。千二百年の間に強くなったようだな!」


 ハーケーンの兵士たちの後方から艦長らしき他の兵士たちとは違う悪魔鎧を着込んだ兵士が不敵に口を歪ませて上昇してくるのが見える。


「だが、これからが本番だ! お前たち、ハーケーンの強さを見せてやれ!」


「はっ! 了解であります!」


『悪魔化』


 艦長に従い、兵士たちから漆黒のオーラが生まれて空間を占めていく。そして、兵士たちの頭に拗くれた角が生えて、背中から蝙蝠の羽が突き出てきた。魔力が膨れ上がり、鈍い者でも兵士たちの戦闘力が数倍に膨れ上がることを感じるが━━━。


「昔と違って、今は親分システムを搭載しているうさよ。親分の力を解析して作られたこのシステムの力を思い知るが良いうさーっ!」


 こんなこともあろうかとと叫んでマァはポチリと端末のボタンを押下する。


 マァのガンラビィにだけ搭載された機械。ウイングバインダーの羽が割れて、精霊粉エレメンタルパウダーが散っていく。


『エレメンタルパウダーコントロール!』


 辺りを精霊粉エレメンタルパウダーが侵食していくと、変身していた兵士たちが元の人間の姿へと戻っていく。


「なにっ! 対悪魔用か!」


「ふふふふ、その通りうさ! 悪魔鎧も変身できなければ少し良い性能なだけの精霊鎧うさよ! 勝った!」


 驚く艦長へと、スンスンと鼻を鳴らして、マァはブイと指を向けるのであった。

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― 新着の感想 ―
勝ったな!風呂食ってくる
[一言] 露骨なまでにフラグを立ててやがる…
[一言] >予想では残党の一個中隊でした  あ、やっぱりこっちでもハーケーンは亡国になってたのね。
感想一覧
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