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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
4章 混沌の小悪党

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129話 困惑する小悪党

「まったく言うこと聞いてないよな、国軍の奴ら。手を出すなって言わなかったっけ?」


 ランピーチはブリッジの椅子に座り、呆れた目でため息を吐く。ちょっと信じられない光景となっているのだ。ブリッジにはランピーチ、ライブラ、ミラ、ドライ、ノノがいる。チヒロとコウメは戦闘になるので留守番だ。


 ブリッジのモニターに映る地上。灯花やうさぎたちが特別除草剤を撒いて弱まった魔植物たちを倒さんと、国軍が戦意を漲らせて突撃していた。さっきまでは落ち込んだ顔で待機していたのが嘘みたいだ。


「鬱憤が溜まっていたんでしょ。ご自慢の兵器が通じなくてさ。ドカーンと魔法や銃を撃ちまくっているようだし」


 椅子に座って足をプラプラと振り、可愛らしい銀髪ツインテールの巫女はポテチを食べながら漫画を読んでオペレーターのテーブルを汚している。


「釘を刺したと思ったんだけどなぁ。地下街区の人間だって言っているのに、ひどくね?」


 ライブラの言うこともわかる。なぜに漫画を読みなからジュースを飲んで寛いでいるのかはわからない。この子は段々と怠惰に、人間ぽくなる。やはり銀髪キャラはこういう性格なのだろうか。


 まぁ、弱まった魔物たちは国軍でも相手にできる。数がいるしちょうどよくはあるが、密かに裏で行動しにくいので困ってしまうな。


 制圧後の遺跡探索や学園に捨てられているアイテムを回収するのに時間が必要だ。報酬として提示したのに、アイギスは何をやっているのだろうか。契約不履行と言っても良いと思うぞ。


「これは謀られたようです。私たちの攻撃後に後に続くように指示が出ています。上からの指示は出ていませんが、巧妙に指示があったかのように忖度して各部隊に偽りの指示が出ているように隠蔽されています。どうやら契約不履行だと私たちが訴えれば、魔物たちを憎む現場の暴走だと謝るつもりなのでしょう」


 できるサポートキャラの方は宙に手を振り、様々な情報を収集し、推測を教えてくれる。その表情は面白そうで、口元はニマニマと猫のような口だ。


「なるほどねぇ、考えやがったな。これなら地下街区に頼り切りだったと民衆から突き上げを受けないで済むというわけか」


「そのとおりです。大荷物を運ぶのに皆が集まり運んでいると、力を込めることもなく手を添えただけでさり気なく加わり、俺も荷物を運ぶのを手伝ったよと、文化祭でやることなくて、大道具を運ぶふりをするプーさんみたいですね」


「ねぇ、なんでそんな長台詞でディスることができるの? それに俺は文化祭は張り切って食べ物とかを差し入れしてました〜」


 まったく酷い。俺はそんなにハブられていない。それなのになんで二人共憐れみの顔になるのかな?


「話を戻しましょう。地上街区も戦闘に加わり役に立ったとのイメージを作ることと、もう一つ隠された行動をしているようです」


「それは?」


「どうやら植物園に先んじて侵入しようとする者たちがいるようです。隠れ身を使い前方で進軍を待っている不自然なパーティーがいます」


 精巧な植物園のマップが映り、光点が無数に表示される。赤と青と黄色と緑だ。


「赤が魔物たち。青が私たちの軍。緑が国軍で黄色が隠れ身を使用しているパーティーですね。まぁ、ライオンラビットのレーダーから逃れることはできませんが。どうやら四人パーティーで若い人たちです」


 黄色の光点は四つ。たしかにうさぎたちの進軍に合わせて、少しずつ進んでいる。


「こんなの簡単じゃん。先行して重要なものを盗むつもりなんだよ」


「ライブラの言う通り、そうだと思います。地上街区にしては良い隠れ身の魔道具を使用しているので、独断というわけではなさそうです」


 泥棒たちを見ても、ミラは特に怒ることもなく、ニマニマニャ~ンと口元を笑みにしている。


「即ち、契約不履行時のハンター流のやり方を教えてあげる時ですよね」


「その心は?」


「この地域の物は全て私たちの物なんです。落ちている精霊鎧や戦車、補給物資は即ち私たちの物ということです。というわけで、今日は電子の妖精をするので、回収処理が終わるまで、サポートはできないのであしからず」


 椅子に座るとミラはポチリとテーブルのボタンを押す。椅子が浮上して空中で停止すると複雑極まる立体魔法陣がミラの周囲に展開して、少女の身体に幾何学模様の光るラインが奔っていく。


「地上街区のセキュリティなど相手にならないことを教えてあげます。このライオンラビットは電子戦も想定されている万能戦艦なんですから。この戦艦から見える範囲は全て私の支配下なんです」


『サイコクラッキング』


「全ての管理権限を私に変更。口座の預金もです。ヘソクリも裏金も全部です」


 幻想的でもある光景に見惚れて息を呑むが、ミラの行動は予想よりも遥かにえげつない模様。そうか、銀行口座も帰属しちゃうのか………。恐るべきハンター流のお礼である。


「それじゃ、これからは俺の判断で戦闘を続けるしかないか。で、現状はどうなってる?」


「問題なく進軍してる。特別除草剤を鱗粉の形で自動で撒く『グラスバタフライ』は問題なく稼働しているみたい」


「うさのお仕事とっちゃだめうさよ〜。人参くれたらもっと使い方教えるよ?」

 

 オペレーター椅子に座るドライが膝の上に乗せているオペレーターうさぎから端末の使い方を教えてもらい報告してくる。


 『グラスバタフライ』は研究所で作製された追加型精霊鎧だ。触覚型ヘアバンドと蝶の翅型の除草剤散布用バックパックをつけるだけで、鱗粉型の除草剤が散布されて、デモンシードたちを枯らすことができる高性能な追加型精霊鎧である。


「灯花ちゃん………勇気あるよね………。ああいうのって、小学生の学芸会までじゃない?」


「学芸会がなにかはわからないけど、ドライもあの装備をして皆の前に出るのは無理」


 ノノとドライが地上で戦闘している灯花を見て、呆れと尊敬を込めて言う。普段は服装に無頓着のドライすらも嫌がる装備、それが『グラスバタフライ』なのである。


『あははは、ワタシハウチュウジンダー! バタフライ星人灯花〜』


 うさぎから借り受けた火炎放射器の引き金を引きつつ、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、頭につけた触角を振って、背中の蝶の翅を羽ばたかせる芸人灯花。あの歳であの格好はかなり恥ずかしい。


 うさぎなら可愛いとの一言で癒やされると愛でるが、高校生がやると病院に連れて行った方が良いかもと皆は思うだろうに、灯花はノリノリでまったく恥ずかしくない模様。


「灯花がここまでガチだったとはな………」


「彼女の精神構造は既に地球人を超えている」


「そうね、あそこまでとは思わなかったわ。人生楽しそう」


 ランピーチたちは灯花の活躍に呆れつつも、問題なく進軍できていることには安堵する。


「にしても、結構弱くない? 国軍が負けるレベルではないと思うんだけど」


 いかに古代の魔物たちとはいえ、ほとんどは量産されている雑魚だ。事実、国軍は当初は有利に戦況を運んでいたので、ランピーチは首を傾げる。


「むふふ〜、それはこのライブラちゃんが教えてあげよう! あれは芝生が問題なんだよ」


「芝生? あぁ、そこら中に繁茂しているやつか?」

 

 今は散布された除草剤により枯れ果ててはいるが、まるで絨毯のように芝生は敷き詰められていた。


「でも全然強くなさそうだぞ? 危険は感知しないし」


「ふふーん、それがあの『サイコグラス』の特徴なのさ。あの芝生は群生で一つ一つは無害に近いけど、デモンシードの意思を反映する能力を持っている。ネット用ケーブルと、魔法を発動出来る発動体の役目を持つんだよ。それに自分を踏んだ敵を解析する能力とレーダーの役割も持つ」


『サイコグラス:レベル7』


 ライブラが表示してくれた内容に、多少驚いてしまう。レベル7とはね。


「なので、サイコグラスの領域に踏み込んだ敵はその能力を解析されちゃうし、レーダーの役目もあり、その挙動を仲間に伝達するから、優れた連携による攻撃も可能。支援魔法や弱体魔法も敵に気づかれずに発動できるから、厄介な見えざる敵なんだよ」


「なるほど、無害に見えて真っ先に倒さないといけない相手。しかし、あの繁茂している様子を見るに、普通の攻撃だと駆逐できないと。やるじゃないか、ライブラ。無課金サポートキャラとか、もう役に立ないんじゃないかとか思ってごめん」


「むがーっ!」


 なぜか歯を剥いて噛もうしてくる吸血鬼ライブラを防ぎながら、このデモンシードというのが極めて倒しにくい厄介な相手だと再認識する。初見で戦えば必ず負ける相手だろう。


「親分、敵の損害が50%を超えたうさ。植物園の地下に侵入できるエレベーターが見えたうさよ」


 テシテシと叩いてくる提督うさぎの言葉に、すぐにモニターに目を映す。予想よりも早い進軍でうさぎたちは敵を駆逐していた。やはり炎による範囲攻撃が強力で延焼による影響が大きい。


「これからは量産種の魔物たちではなくて、オリジナルシードとの戦闘が予測されるうさ」


「敵の精霊力増大。『精霊粉エレメントパウダー』の濃度向上。除草剤の効果が大幅に低下するのを確認。えぇと、これで良いの?」


 ノノもオペレーターうさぎの説明を聞いて、恐る恐る報告してくる。良いうさよと、オペレーターうさぎは可愛くスンスン鼻を鳴らして親切めいているが、付き合いの長いランピーチにはわかる。あれは自分が仕事をしたくないから教育してるんだ。


 とはいえ、巨木が枯れ果てて倒れ、サイコグラスが枯れ草となっている中で、効果のない魔物たちが立ちはだかっていた。


「オリジナルだね。ちゃんとした生命体として作られた、精霊力だけで構成されてはいない魔物たちだよ。あの敵は数は少ないけど古代の戦闘力を保っている」


 火炎放射をするうさぎたちに、光る盾を構えて防ぎつつ、剣に変えた腕で斬りかかるブレードトレント。クレイモアヒマワリは種を光弾に変えて射出し、音叉草は柱のような太さのビームを放つ。


 たしかに今までとは戦闘力が違うようだ。うさぎたちは進軍をやめて、乱戦に移行していた。


「ここでライオンラビット砲を発射うさ! なんでぐるぐる巻きにするうさ!!」


 提督うさぎが予想通りの行動に移ろうとするので、ロープでぐるぐる巻きにして吊り下げておく。


「さて、それじゃそろそろ俺の出番だな。ライブラ行くぞ」


「あいさー! この回が終わるまで待って、ヒヒキガエルを召喚する伝説の忍者が負けそうで」


「それじゃ行ってくる!」


 ライブラの漫画をポイ捨てすると首根っこを掴んで、ランピーチは出撃するのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 121話と128話と、話タイトルが同じですね。 盾野さんはどこに行ったんだろう?
[気になる点] 地下街区と思ってるみたいだけどソイツらはそんな詭弁が通じる相手なのかな
[一言] あれ?俺のへそくりが!?
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