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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
4章 混沌の小悪党

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128話 草刈りと小悪党

 空は青く、風は段々と暑くなってきているなと出雲は空を仰いで、ぼーっとしていた。椅子代わりに座っているのは、半壊した戦車であり、回収されることもなく放置されているが、それはこの戦車だけではないので、しばらくはこのままだろう。


 金属の勇士は、街の至るところに残骸となって転がっており、もはや戦場に復帰することはない。


「少尉、何を黄昏れてるんですか。仕事中なのですが」


 注意をしてくる部下の声に、少しだけ顔を歪めて嘆息する。


「ここまで酷い戦場もしばらくぶりだと思ってな。最近は部下を失うことはなかったから、久しぶりに落ち込んでた」


 真田丸隊200名。一昨日の戦闘で32名が死亡し、11名が負傷していた。死者の数が負傷者よりも多いのは、それだけ敵が容赦なく確実に殺しに来たからだ。


「以前もダンジョン攻略で部下は死亡したはずです」


 部下の死亡は慣れているでしょうとの遠回しの言い方に、怒ることもなく、韜晦するように空へと息を吐く。部下が死ぬのは日常茶飯事だ。魔物たちは強く、油断すれば人類圏などは簡単に崩壊する。それを防ぐために戦場を渡り歩く兵士たちが一生誰も死なないなんて夢物語はない。


 200名を率いる出雲だって、部下の死亡という経験を乗り越えているのだ。だが、しばらく戦闘評価としての楽な戦場で戦っていたので、その感覚は薄れてきてもいた。


「部下の死亡も悲しいが、それよりもやりきれないのは、制圧した区域がすぐに取り返されたところなんだ。これこそ兵士たちが一番やる気を失うことだからな」


 5キロまでは進軍していたはずなのに、撤退時の混乱で、あっという間に制圧した区域も敵に取り戻されて、現在は二日前と同じ距離で防衛ラインを引いている。死亡した兵士たちの頑張りは全て意味をなさなかった無駄死にとなったわけだ。


「油断していた……。もっとしっかりと情報を集めておけばよかったのに、色眼鏡をかけて戦場に出ちまった」


 後悔が頭によぎり、出雲が頭をガリガリとかくと、部下は悲しげにため息を返すことで意思表示を見せる。油断していた上に罠だったのだ。


「どちらにしても、上からの命令に拒否権はありませんし、仕方ないことかと」


「隊長となると、そう簡単には諦められないんだ。戦車隊の隊長に一言でも声をかけていれば違和感を感じたはず………いや、忘れてくれ。妄言だ。タラレバは禁忌の言葉だからな」


 不敵な顔をして、冷静さを保ってみせる出雲に、部下は安堵の息を吐く。戦場で部下が死んだからと悲しくてウジウジしている上司などいらない。冷たいようだが、大事な駒として冷静に統率してくれる上司の方が戦場では頼りになるのだ。


「隊長の気鬱が治ったところで、新たに命令です」


「うん? また、突撃するのか? メンテナンスの予定があるから真田丸隊は遠慮しておくと答えとけよ」


 前方に映る草原と奥に見える森林。極めて平和そうな牧歌的な光景に見えるが、その恐ろしさはたっぷり味わった。突撃するには、今の百倍の兵力が必要だ。


「いえ、どうやら司令官は鎧塚の副当主から入れ替わったようで、アイギス大将に代わりました。そのアイギス大将から、地下街区の装甲車が突撃し道を作るから、後に続くようにとのことであります」


「地下街区? そんな伝手があるなら………そうか、本来は地下街区案件だったのを無理やり地上街区案件としたんだな! だからあれだけ中将は焦ってやがったのか!」

  

 生半可な魔物相手に地下街区の軍が出張ることなどない。少なくともそんな話は出雲は聞いたことがない。なのに地下街区の軍がこんなに簡単に支援に来るということは、すでに用意されていたということだ。この話の裏を悟り、忌々しげに出雲は唸り声をあげる。


「察しが良いですね、隊長。どうやらそのとおりのようで、危険な古代の魔物たちなので地下街区が駆逐する予定だった。しかし、国軍は地上街区の問題は地上街区で片付けると答えたようです」


「面子と利権の問題かよ、ふざけやがって! 頭が痛いとはこのことだな」


「最近は強力な魔物が地上街区を襲うこともなかったので、平和ボケしてきたのでしょう」


「もしくは、勢力争いは自身の命よりも大事だと考えているんだろうよ」


 戦車の残骸を強く叩くと、不穏な空気を撒き散らし、怒りを溜めていく出雲に、部下は慣れているので、ため息を軽く吐くだけに留める。


「暴れるのは酒場にしましょうよ。それよりも地下街区の装甲車がやってくるらしいですよ。期待して良いんですかね?」


「さあな、そこまで地上街区と地下街区の技術力に差があるとは思えないが、数両の装甲車くらいで、この植物の要塞を制圧することができるのか?」


 魔植物たちと戦った経験から、かなり手強いと知っている。最初は弱い魔物を前面に出して、こちらを油断させつつ、対応策を考えて反撃に移るのだ。知性があり、対応力が高すぎるので、本当に駆逐するつもりなら、国軍全てを投入する必要があるのではと、出雲は疑っていた。


「ん? どうした?」


 全軍での決戦を考えて、その危険度に落ち込む出雲だが、部下がポカンと口を開けて空を見ていることに気づく。


「た、隊長。どうやら地下街区の装甲車という代物が来たようです」


「どこを見て言ってやが………」


 出雲も釣られて空を仰ぐと言葉を失う。


「なぁ、地下街区の装甲車ってのは、空を飛ぶのか?」


「………隊長。装甲車は空を飛びません」


「それじゃ、あれはなんだ?」


「あれは装甲車ではなく………宇宙船というものではないでしょうか?」


 出雲たちの真上に現れた、いや空から飛んできて、影を落としてきたのは戦艦だった。SF映画にでてくる宇宙船というものを連想させる船だった。ライオンのようなたてがみを持つうさぎに見えるが、砲門が備え付けられているのが見え、戦闘用だと一目でわかる。


 周りも突如として現れた宇宙船に騒然となり、空をあおいで指差しながら、その威容を目にして目を剥いて驚愕し叫んでいた。


「な、なんだあれは?」

「船だ、船だぞ?」

「どこからあんなものが……どこの家門の兵器だ?」

「あれは地上街区の兵器じゃないぞ、地下街区だ。きっと地下街区の戦艦だ!」


 混乱する兵士たちだが━━━。


『あ~テステステス。こちらは宇宙人鶴木灯花です。このたび晴れて宇宙人に……あ、私がファーストコンタクトを取りたいのに、マイク取らないで』


 聞き覚えのある少女の声が聞こえてきて、すぐに他の人の声となる。


『こちらはライオンラビットのランピーチ・コーザだ。地上街区の要請に従い、今から除草作業に移る。邪魔なので、軍は手を出さないように』


 上から目線の口調で偉そうな物言いをする男の声が聞こえてきて、ライオンラビットから無数のミサイルが噴煙を残しつつ、発射されて空を飛ぶと、地上へと落ちていく。そして、空中で爆発すると、キラキラと光る雪のようなものをばら撒く。


 なにをしたんだと、疑問の声をあげるまでもない。雪のようなものは地上に降り注ぐと、魔植物たちを枯らしていく。


 雪のようなものに触れたブレードフラワーやクレイモアヒマワリ、音叉草や芝生はまるで火に炙られたかのようにのたうち回ると、みるみるうちに茶色の枯れた草に変わって死んでいった。


 聳え立つ巨木も自重に耐えられなくなり、幹の半ばから折れて、対空チューリップも萎れて花びらを散らしていった。


「あれは………薬か!? 地下街区の連中め、除草剤を持ってやがったのか!」


「そうみたいですね。しかもあの魔物たちに特化した特注品らしいですよ」


「はっ、俺たちが馬鹿正直に戦いを挑み、地下街区は除草剤で草刈りってわけだ。これを知ってて、中将は無理な戦争を強要しやがったのか」


「中将の更迭は間違いないでしょう。これは戦力差がある云々の話ではないです。この除草剤があれば、きっと子供でも倒せたはずですから。あ、でも枯れていない魔物もいますね」


 全てが枯れたと思いきや、ほんの少しが弱まってはいたが、生き残っていた。対空チューリップが光弾を放ち、宇宙船ライオンラビットを撃墜しようとし、ブレードトレントたちがライオンラビットの真下に移動を開始する。


 少しといっても膨大な数の全体から見て少しだ。即ち数千匹は残っていた。


 しかしヘリを簡単に撃墜した対空光弾は宇宙船に命中しても、強力無比な精霊障壁があっさりと防ぎ装甲までも届かない。


 そして、ライオンラビットの水晶で作られた毛皮の先端が光ると、空へと光線が撃ち出される。細い光線は空中で直角に曲がると地上へと落ちていき、光線は雨のように降り注ぎ魔物たちを薙ぎ払っていく。


 恐るべきエネルギーを内包しているのだろう光線は、触れた魔物や建物をバターのように切り裂くと、その場を爆発させて炎逆巻く世界へと変える。


 そうして、ライオンラビットから、兵士たちが飛び降りて━━━兵士たち?


「ヒャッハー、雑草は焼却うさー!」

「種一つ残さないうさよ」

「ワレワレハウチュウジンダー」


 火炎放射器を担いだうさぎたちが、蝶々の翅を背中につけて、パタパタと翅を羽ばたかせて降りてくるのであった。というか、一人だけ人間だが、見覚えがありすぎる。


「えーっと、灯花ちゃんかい?」


 なぜか前回のようにレジストファイアを使ってこないブレードトレントたちを簡単に焼いていくうさぎたちに混じる人間に出雲は声をかける。


「コノチキュウハワレワレガ、あれ、出雲のおじさんこんにちわ」


 それは師匠の孫娘の、変人で有名な鶴木灯花ちゃんだった。とても良い笑顔で火炎放射器の引き金を引いて、敵を燃やしていたが、出雲の声に振り向く。


「なにをやってるんだい?」


「あのね、私……異星人に魂を売ったの。今の私はエイリアンの尖兵なんだ!」


「あ、そう………良かったね………」


「というわけで侵略に邁進しまーす。ワレワレハウチュウジンダー!」


 そうして灯花ちゃんは高笑いをして突撃していくのだった………。


「隊長、あの装備が配備されないで良かったですね………」


「だな」


 たぶん魔植物退治専用なのだろうが、蝶々の翅を背中につけて戦闘するのはおじさんには厳しい。あれは少女やうさぎたち専用なのだろう。


「とはいえ、これは攻勢のチャンスだ。今度こそ反撃といくぞ!」


「了解であります!」


 厳しかった戦況がひっくり返り、出雲たち国軍も殲滅に加わるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 話は面白い!けど灯花は邪魔するだけのウザい存在に思えるんだけど。
[気になる点] 厳しかった戦況がひっくり返り、出雲たち国軍も殲滅に加わるのであった。 手を出すなって言われてなかったか!?
[一言] ランピーチにも蝶々の羽を生やすんですね
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