123話 用意と小悪党
ランピーチマンションに到着すると、足早でランピーチは自室へと向かう。
「おかえりなさい? お帰りが早かったですね、ラン。それと後ろの方々は? また女の子が増えているようなんですが?」
「ただいまチヒロ。ハーレムとかモテモテ展開とかからは遠いから安心しろよ」
哀しいかな、小悪党を恋愛的に愛する人は連れてきた人間には誰一人としていないのである。
「僕の名前は楯野真奈だ。よろしく、ここの管理人かな?」
何故かついてくる真奈。兵士たちに東光は引き渡したから、一緒に帰れば良かったのに、気持ちの良い笑顔で自己紹介をしていた。
「あたちコウメ。いまパパしゃんのうしろにいりゅの」
背中にべったりと張り付いたコウメがふんすふんすと話に加わる。羽のように軽いけど、驚異的な力だなと思ってたら、そのお尻をうさぎが押さえています。
まぁ、そんなことは気にしなくても良い。優しく降ろしてあげれば良いのだ。
「俺は少し、あーっと地下街区の基地に行ってくる。だから、誰も通さないでくれ」
「基地にですか?」
「あぁ、転移するから少し離れてるんだ」
自室に入ると中心に立つ。
「私たちは先に行ってます」
「なんで先に言うのさっ!」
ミラが告げると姿を消す。ライブラもプンスカ怒りながら姿を消して、ランピーチもすぐにコロニーに移動を選択する。
「コウメもいくね!」
背中に張り付いていたコウメは離れない。
「あ~っ! 宇宙基地に行くんでしょ! 私も私も行きまーす!」
「ドライももちろんいく」
灯花が部屋に飛び込んでくると、タックルを仕掛けてくる。その灯花の腰をドライが掴む。
「それなら私も」
「義兄さん、私を置いていこうって、そうはいきませんよ!」
「千載一遇のチャンスを逃すほど僕は間抜けじゃないよ」
チヒロもノノも真奈もドライたちに掴まり、テレポートは行われちゃうのであった。
◇
「おおおおおおお! ここが宇宙! 星になったお父さん、私は遂に宇宙に出ることができました」
灯花の親は亡くなっていないはずだが、手を組んで灯花は目を潤ませて感動して、コロニーの透明な外壁に張り付いていた。
外は広大な宇宙。星の光は数え切れないし、眼下に見えるのは青い地球だ。ターミナルは広大でホログラムが流れており、極めて未来的な場所である。一般人でもこの光景を見たら興奮するのだから、灯花にいたっては今まで想像していた世界が目の前にあって大興奮だ。
「そうか、地下街区の地下は空間が歪んだ世界でどのくらい広いのかと論じられていたが、地下街区自体は小規模で、本当の居住区は宇宙にあったのか。納得だよ、それならいくらでも土地はあるものね。技術力の差を痛感してしまうが」
真奈は早速周りを見て思考している。ターミナルをおのぼりさんのようにキョロキョロと見ていた。
「お饅頭買ううさ? ペナントもあるうさよ」
「ご飯食べていくうさ? ラーメン美味しいうさよ」
「写真一枚撮らないうさ? 記念になるよ」
久しぶりのお客様だとターミナルうさぎたちが目を輝かせて、わらわらと皆に集まってくる。ここぞとばかりに客引きをして大張り切りだ。
でも経験値が無いと買えないだろ?
『大丈夫です。経験値で買える物以外にもエレメタルで買える物があります。そうしないとコロニーの住人が餓死してしまうじゃないですか。一般人が買える物は買えます。即ち武器などの軍需物資は買えませんけど』
しっかりと説明してくるミラだけど、その目はジト目でなんで連れてきてるんですかと、非難の目だ。ごめん、大きなカブがあったから皆で引っこ抜いてたんだよ。
『あー、なるほどね。たしかにそのとおりか。というか、くっついていれば転移できたのか』
『皆が融合しないで良かったね、ソルジャー。まったくもう私がいないと迂闊なんだから』
『離れていたのは数秒だと思うよ?』
そして、物凄く嬉しそうな笑顔でライブラが腕にしがみついてくる。ランピーチの失敗がとても嬉しい模様で、今日もライブラの胸はとっても柔らかい。
「ラン、ここが地下街区の基地なんですか?」
ライブラが胸を押し付けているのを見て、チヒロも対抗して反対側の腕にしがみついてくれる。うんうん、仄かな柔らかさも良いね。やはり世界に大小は関係ないと思います。
「お饅頭屋さん、お饅頭はいくらかな?」
「5000エレメタルになるうさ」
「一箱ください!」
「きゅー、毎度ありうさ。久しぶりの売り上げうさよ」
灯花はなけなしの通貨を躊躇うことなく饅頭に変えた。饅頭は経験値50のはずだからボッタクリの匂いがします。うさぎはぴょんぴょんと飛び跳ねて千年ぶりの売り上げうさと大喜びだ。
「むぅ、その通貨はなんだい? 灯花君はどこでその通貨を手に入れたのかね?」
「あたしも食べてみたいけど、エレは使える?」
早くも箱を開けて饅頭を食べ始める灯花に、悔しそうな顔で真奈が尋ねて、ノノも食べたそうにする。たしかにハンターギルドの依頼をクリアしないと手に入らないから、見たことはないだろう。
「プーさん、彼女たちはプーさんを眼中に入れてないので、今のうちに研究所に移動しましょう」
「了解だ」
皆がターミナルを見学している間に、そそくさとその場を離れるランピーチだが、哀しいかな、誰も気づかなかった。
◇
「ターミナル以外は一般人は入れません。使えるのは『宇宙図書館』が承認した存在だけですね」
「コウメはパパしゃんといっしょ!」
なるほどね、超越者は入れると。コウメが背中に張り付いていたのを忘れてたけど別にいいか。
テレポートポータルを使い移動すると、研究所だ。清潔な内装で、様々な器具や開発中の兵器などが置かれており、白衣うさぎたちが白衣を着て、椅子に丸まり寝ていた。
ランピーチたちが入って来たことに気づくと、顔を上げてスンスンと鼻を鳴らす。
「あ~っ、ようやく来たうさね! いつ研究を開始するか待っていたうさよ!」
「すまん、そういや放置していたな。経験値が足りなかったんだよ、ごめんな」
「海よりも広大な寛容さで許すうさ」
きゅーきゅーと責めてくる白衣うさぎたちに人参を渡して頭をなでてあげる。ふわふわもふもふでとても触り心地が良い。ミミとコウメの頭も撫でてあげる。
「では、プーさん、研究を開始しましょう。ここは経験値1000を使用し、『特殊除草剤』です。これはデモンシード関連の植物に大ダメージ、即死効果を与えることができます」
「了解だ。白衣うさぎたち、『特殊除草剤』を研究せよ!」
「ラジャーうさ! 開発開始するうさよ〜!」
ようやく出番だねと、嬉しそうにうさぎたちが手を挙げると、ポテポテと机や隔離された部屋に向かい、難しそうな顔でフラスコに液体を入れて煙を吹き出したり、ギーコギーコと金具を叩く音や端末のキーボードを押す音が唱和して、いかにも研究が始まりましたという感じ。
「この子たち、本当に研究してる? してるふりをしているゲームっぽい光景に見えるんだけど」
少なくとも薬剤を研究するのに、作りかけの精霊鎧をいじる必要はないと思うんだけど? ゲームだと思えば納得だけどな。ゲームではこういういかにもな光景だから驚くことはないんだが……。
「『宇宙図書館』が補助しているので、問題なく研究できます」
「ほとんどのうさぎたちは働いているふりなのね………」
こっそりと人参をコリコリと食べているうさぎもいるけど、研究に問題ないならいいんだろうな。
『特殊除草剤の開発終了まで三日間』
「なんというか、本当にこの世界ってゲームだよな」
眼前に表示されたゲームでは見慣れた光景に苦笑するランピーチだった。
「それじゃ次は宇宙船ドッグを解放しようよ、ソルジャー。経験値5000だよ。解放すれば、初期宇宙船が一隻手に入るから、地上戦で使えると思うのさ」
「ライブラは一応サポートキャラだったのか。とはいえ、少し待ってくれ。経験値を使う前に、スキルを上げておきたい。精霊戦もあって、パワーアップは不可欠だからな」
上げるスキルは既に決めている。最強ビルドに一直線だ。
『気配察知レベル5、集中レベル5を取得』
『取得しました。気配察知、集中がレベル5になったため特殊スキル『超感覚』を取得しました』
『超感覚:世界の流れを感じ、アクションの成功率を30%アップ』
『超感覚』はゲームではあまり人気がなかった。経験値が足りないので他のスキルを取得するのが定石だったのだが………この世界だと使い道がありそうなんだよな。まぁ、戦闘でわかるだろう。
『体術レベル7、銃術レベル6を取得。特技は『光拳』、『銃弾高速化』、『白光魔弾』だ』
『光拳:光に近い速さで敵を打ち抜く』
『銃弾高速化:銃弾の速度が大幅に上昇し、命中率30%アップ』
『白光魔弾:銃弾をビームへと変えて、薙ぎ払いも可能となる』
『最後に身体強化をレベル5だ』
『身体強化レベル5を取得しました』
ピコンとログが表示されて━━━。
「おぉ? これは……すごいな!」
取得した瞬間に『超感覚』が、教えてくれた。自身に対する影響力が次元を超えてわかるらしい。まさしく『超感覚』と言えよう。そして、体を鍛えた世界線の力をランピーチへ経験値が流し込むのを感じるのだ。
アホみたいに身体能力だけを鍛えた世界線の俺だ。
(なるほどねぇ。どうやってスキルや身体能力を精霊力でなくて、運命の力で上げているかと思えば、こういうカラクリだったのか)
無限に存在する分岐した世界。その力を写し取っていたのだ。
今までとは違う感覚、そして自身の身体能力が倍になったことによる万能感。グーパーと手を握り、大幅に強化されたことを確信する。次元が変わった感じがする。これなら、この間の精霊たちとも互角に戦えるかもしれない。
ランピーチ・コーザ
経験値:7000
HP:168
CP:236
体力:84(+42)
筋力:84(+84)(+42)
器用度:108(+54)
敏捷:88(+44)
精神:136(+68)
超力:118(+59)
固有スキル:小悪党レベル10、宇宙人レベル5、超越者レベル5
スキル
体術レベル7、銃術レベル6
超能力レベル7
気配察知レベル5、集中レベル5、看破レベル1
身体強化レベル5、偽装レベル2
錬金術レベル1、解体レベル1
拠点防衛術レベル6、機械操作レベル2、電子操作術レベル5
装備
G1突撃銃:攻撃力6
DG5アサルトライフル:攻撃力21
BD:攻撃力52
アイスマグナム:攻撃力38 氷属性
フレイムマグナム:攻撃力38 炎属性
精霊の篭手:攻撃力は筋力と同等、筋力2倍
G1防弾服:防御力4
モノタリウルスの革鎧:防御力9
時空の指輪
因果混沌のサングラス
剣聖の衣:防御力150。攻撃力50%アップ、身体能力50%アップ、スキル『剣聖』使用可能
だいぶステータスは変わって、残り経験値は7000。
「よし、これならオーケーだ。それじゃ宇宙船ドッグを解放する!」
「あいさー! 宇宙船ドック解放!」
ライブラがくるりと回転して、巫女服を翻して叫ぶ。その叫びと共にゴウンと音がして、新たなる施設、宇宙船ドックが解放されるのであった。




