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幸せな夢を壊しましょう  作者: 説那
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第九話 この地について

 そして、その夜。

 ヴァルッテリが自室で、お茶を入れて待っていると、いつの間にかアメリアが椅子に座って、お茶を飲んでいた。

「いい香りね。」

「いつもは自分のためにしか入れませんが。従者ではないので。」


「ヴァルッテリはここでは何をしているの?」

 アメリアの問いかけに、ヴァルッテリは首を傾げた。

「なんですかね。。宰相ではないし、従者でもないし。いろいろ命令されることを行っているだけなので。」


「ここの魔王は、貴方の素性を知っているのよね?」

「自動人形であることは知っていますが、創造主がエンダーン様であることは知らないと思います。」


 エンダーンは別の魔人を介して、各地の魔王に自動人形を売りつけていた。だが自分が造ったものとは言わなかった。

 造られた自動人形は、一見すると、普通の魔人に見えるが、容姿は整っており、自我はなく従順。元になっている魂は、人身売買で買われた者で、価値を吊り上げるために、一通りの教育は受けてきている者が多く、ある程度の仕事はできてしまう。

 ただ、魂を作成した器に移した段階で、記憶はすべて消えてしまうから、自動人形自身が元々何者であったのかは分からないのだが。


「創造主がエンダーン様だと知っていれば、私にカミュスヤーナ様を任せることはしなかったでしょう。」

「カミュスヤーナ様は、ここに来てからずっと眠った状態なの?」

「いえ、ここに来て、魔王様とイヴォンネ様にお会いするまでは、起きていらっしゃいました。イヴォンネ様がカミュスヤーナ様の魔力の味見をしようとしたところ、抵抗されたので、魔力を引き出す以外の時は眠らせておくことにしたそうです。」


「抵抗できたの?」

「ええ、それは私も驚きました。魔王様の術を受けて、抵抗した方はカミュスヤーナ様が初めてです。」

 魔王ラーファエルは、術をかけて、相手に夢を見させる。その夢を使って、相手の行動を操ることができるのだ。術にかかった者は、自動人形のように魔王様の命令しか効かないはずなのだが。

「イヴォンネ様をカミュスヤーナ様の伴侶と思わせて、ようやく魔力の味見ができたようです。」

「貴方。見てきたように詳しいわね。」

「見ていましたから。部屋の入口の近くで待機していました。」

 きっと、自動人形だから、見たことを誰かに話すことはないと思ったのだろう。残念ながら創造主の指示は絶対なのだ。魔王よりも上になる。


「なるほど、カミュスヤーナ様には、そこでもテラスティーネ様の縛りがあるわけね。」

「どうかされましたか?」

「なんでもないわ。次は魔王とイヴォンネという人について教えて。」

「魔王様は30年くらい前に、魔王の座に就かれました。イヴォンネ様は前魔王の御息女です。イヴォンネ様は魔王様と協力し、前魔王を討伐したと聞いています。本来であれば、イヴォンネ様が魔王に成るところですが、ラーファエル様に魔王の座を譲られました。」


 ヴァルッテリの話に、アメリアは頬に手を当てて首を傾げる。

「なぜ?魔王の座は討伐した者が継承するのでしょう。」

「それがよく分からないのです。結局その後、イヴォンネ様はラーファエル様を兄と呼ぶようになり、この地の結界を張ったり、土地の開墾をしたり、建築物を建てたりと、魔力を大量に消費する行為を全て引き受けられています。ただ、魔力の回復が消費に追いついておらず、魔力の高い者を贄としてさらってきて、贄から魔力を得るようになりました。」


「それで、今回カミュスヤーナ様に白羽の矢が立ったと。」

「さようでございます。」

「ラーファエルは、魔力の保持量が少ないのかしら。だから、本来魔王にはなれなかったけど、魔力量の多いイヴォンネを術で操って、魔王の座に就いたとか。」

「そうかもしれません。ラーファエル様の夢を使った術は強力ですから。」


「カミュスヤーナ様を取り戻したいけど、術にかかった状態で連れ帰っても、しょうがないのよね。イヴォンネがカミュスヤーナ様の魔力の味見をした時、カミュスヤーナ様は、気分が悪い様子はあったかしら?」

「いえ。まったく影響はないようでしたよ。」

「ということは、イヴォンネはそれほどカミュスヤーナ様から魔力を奪えないということかしら?」

「イヴォンネ様の方が、顔を赤くされ、気分を悪くされていましたから。」


 アメリアが、ヴァルッテリの話に考え込むように、空中を見つめた。口の中で何事かを呟いている。頭の中で考えを整理しているのかもしれない。

「分かったわ。ひとまずこの情報をもって、エンダーン様と相談してみます。ヴァルッテリにも協力してもらうかもしれないけど。」

「問題ありません。創造主の命令は・・。」

「絶対!だからね。」

 ヴァルッテリは、アメリアと視線を交わして、お互いニッコリと笑った。

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