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幸せな夢を壊しましょう  作者: 説那


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第二十一話 彼の記憶

 目を開けたら、一人の少女が眉をしかめて私を見つめていた。髪の色は私と同じプラチナブロンド。瞳の色は金。

「ひどい顔。」

 テラスティーネ・・ではない。

 目の前の少女は、テラスティーネに似ているようで似ていない。私に似ているようで似ていない。現で会った覚えはないが、私は彼女をどこかで見たような気もしていた。

 彼女は、私の頬に手を当てる。


 私は床に仰向けになっている彼女に覆いかぶさっていた。深紅のワンピースを着た彼女は、そのまま私に向かって言葉を続ける。

「貴方・・成長している?」

「叔父上の力を取り込んだのでな。成長も促された。これでも齢に合った見かけではない。」

 彼女の問いかけに対し、私の口がよどみなく答えを発していく。自分で考えたものではない。どうやら、この身体は他人のもので、私はそれを遠くからこの身体の視点で見ているだけのようだ。


 彼女とこの身体のやり取りを聞いていることしかできない。私の力でこの身体は動かせないらしい。

 しばらくやり取りをした後、彼女が私に抱きついてきた。私の服や手には血が付いた跡があって、辺りには血のにおいが立ち込めている。それを打ち消すように、私は彼女のぬくもりを求めている。


 一瞬で、背景が切り替わる。

 次は雪深い森の中だ。私は同じように彼女を抱きかかえている。私の腕の中の体温が急激に失われている。彼女の顔色は白を通り越して、青ざめている。金色の瞳には涙がにじんでいて、こちらを見ているようで見ていない。

「私は幸せだった・・。貴方を愛しているわ。」

「私も君を愛している。だから、だから、私を置いていかないでくれ。」

 私は泣いていて、彼女の頬の上で、私と彼女の涙が混じり合う。彼女はほころぶような笑みを私に向ける。


「私を好きになってくれてありがとう。」

 彼女の瞼が閉じて、腕や膝にかかる重さが強くなる。

 あぁ、いま彼女は息絶えたのか。

 彼女の口の前に手をかざし、その後首筋や手首に手をやる。彼女が生きている証はどこにもない。

 私は、慟哭して、腕の中に彼女を抱え込む。


 次に私たちは寝台の上にいる。

 寝台に横たわった彼女に触れても冷たく、でも今にも目を開いて、起き上がってきそうだった。

 その胸に耳を当てても、鼓動は聞こえなかった。

「私が食べてもいいのだろう?」

 私は自分の腰に差した剣に手を伸ばし、鞘から抜き放った短剣の切っ先を彼女の胸に当てる。


 彼女はテラスティーネではない。そして、もう生きてはいない。

 私は何をしようとしている?食べる?冗談だろう?

 私は早くこの身体を抜け出して、テラスティーネに会わなくてはならない。

 私が助けないと、テラスティーネも彼女のように。目が覚めることなく。青い瞳が私を見ることなく。身体が冷たくなって。失ってしまう。

「駄目だ!」

 辛うじて声を発することはできたが、身体の動きは止まらない。


 私の手が動いて、目の前の彼女の胸を引き開こうと動く。剣の切っ先が彼女の肌を切り開く前に、後ろから首に腕がかかり、私の身体が後ろに引き倒された。

「!」

「そなたが触れていい者ではない。」

 私を見降ろした金色の髪、赤い瞳の男は、私の首から腕を外して、そう告げる。


「なぜ、そなたがここにいる。そなたはこのことを知らないはずだ。」

 彼は、私に寝台から退くよう身振りで示す。先ほどまで動かせなかった身体は、容易に動かせるようになったので、彼の隣に立ち上がった。軽く首を絞められたので、咳をして息苦しさを逃がす。


 彼は私のことを知っているらしい。じっと顔を見つめると、彼は顔をしかめた。どこかで見たことのある彼の顔は、私にもエンダーンにも似ている。私と同じ色の瞳、エンダーンと同じ色の髪。寝台に横たわる彼女の髪の色は私と同じ。瞳の色はエンダーンと同じだった。

「・・父上?」

「質問に応えろ。なぜここにいる?」

「私の伴侶のテラスティーネを目覚めさせるためです。夢に捕らわれたまま目が覚めない。」


「残念ながら、ここには彼女はいない。ここは私の記憶というか夢の中だ。」

 もうこの記憶は思い出したくなかったのだが。と父は呟いた。

「あの・・先ほど、寝台にいた女性は、母上ですか?」

「そうだ。」

 振り返ると、寝台は横たわった彼女と共に消え失せていた。

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