この雪だるまが溶ける頃
貴方はいつも笑顔で私の側に居てくれた。貴方が側に居るだけで、私の中にある不満や不安は消えてしまう。貴方は私をいつだって支えてくれていた。
貴方が笑ってくれていれば、私はそれだけで幸せ。だけれど、公爵家の一人娘である私と侍従の貴方は身分違い。貴方の幸せを、私の恋心が喰い潰すことになるのは目に見えていた。
貴方に想いを伝えたら、貴方はきっと笑って受け入れてくれる。きっと何処か遠くに連れ去ってくれる。苦労も全部一人で背負い込んで。けれど、私は貴方には何も告げずに、涙も嗚咽も飲み込んで貴方ではない人との縁談を受け入れるの。いつも私を守ってくれた貴方は、私が守りたいから。
いつかこの恋を笑顔で思い出せるような日が来るかしら?貴方に似合いの、素朴で可愛い人と貴方の幸せを心から祝えるのなら、それだけで私は充分なの。充分なのに…どうしてこんなに心が痛いの?
いつかこの恋も薄れて消えてしまうのかしら?この悲しくて優しい気持ちも、無かったことに出来るのなら楽なのにね。それでもきっと、私はこの恋心を捨てられないまま貴方じゃない人に嫁ぐのでしょうね。
それでもね、貴方が笑ってくれる日々が私の宝物。だから、私は貴方に何も告げないまま嫁ぎます。笑顔で見送ってね?
私と貴方をイメージして作った雪だるま。二人で作ったそれは、現実の私達と同じようにそっと寄り添っていて。
この雪だるまが溶ける頃には、私はもう貴方とはさようなら。だからせめて、今だけはずっと一緒に居て。夢は夢のまま終わらせるから、だからどうかこの手の温度を記憶に残して。




