パーティー結成
何も話し合う事なく、僕とレオとシエルとでパーティーを結成する事にした。幸いこれまでの経験から仲も深まり、一緒に行動しやすい。三人共剣士のようだが、僕は魔法使いにもなれる。通常のパーティーなら魔法使いが自衛出来ないので、中で守る必要がある。だけど、僕は剣士兼魔法使いなので、守られる必要はない。
ふと気付いたレオが聞いて来た。
「ヴォルフは魔法を使えるようだけど、剣も使えるのか?」
と、腰の剣を見ながら言った。
僕は使えなければ、意味のない飾りをしているだけだろ。と頭の中で呟いてから、答えた。
「うん。自分を守るぐらいなら」
と、僕に剣を教えてくれた序列1位の剣聖、キルトンを思い出した。少年であろうと彼は手加減をしてくれなかった。最初から本気で殺そうと切り掛かって来ていた。
「そうか。なら、まずは安全そうなのから始めるか…」
と、レオは冷静に呟いた。すっかりパーティーのリーダー的存在である。
「そうだな」
と、シエルも同意した。彼はリーダーの補佐的な立場にいそうである。あの決闘から、知らぬ間に仲が深まったようだ。
ボードを見るとまだまだ人々が群がっていた。僕らは残った余り物でも、確実にやろうと考えていた。大半のパーティーは背伸びをして、難しいのに挑戦しているようだが。少年二人がいるパーティーらしく、その命は無駄にしたくない。外から見れば、シエルがリーダーぽく見えると思うけど。
あの悪口の女は、どこかのパーティーにくっ付いて、丁度去って行くのが見えた。見た感じからして、パーティーに馴染めてなさそうだけど。人は変わる事もあるかも、しれない。
人が散るのを待つために、僕は聞いた。
「パーティー名は決めたのか?」
それはさほど重要ではないけど、団結するためにはいるのかもしれないと思った。彼らが集まり、〈世界の監視者〉と言う機関を立ち上げたように。
「考えた事ないなぁ。名前の頭文字から、【ヴォレシの剣】? シエルからシルバーのイメージ、レオからライオンとヴォルフから狼のイメージで、【シルバーライオンと狼】? 剣士の素早い動きと若者のイメージで、【黒鷹の後継者】?」
と、レオは悩みながら言った。
「これは若者が好きなように考えたらいいぞ」
と、シエルは僕とレオに譲った。
僕は誰も少しピンと来ないと思った。けど、名前を頭で言い直していると、いいのが思い付いた。
「……【ヴォレシの剣】…【ヴォシーレの剣】。──そうか。分かったぞ、レオ。【ヴォシーレの剣】だ。一番名前が言いやすくて、響きがいい」
レオとシエルも納得したように、頷いた。
「「いいんじゃないか?」」
名前が決まったと思ったボードを見ると、人は随分といなくなっていた。僕らも一団でボードに近付いた。人々のハンターとしての強さを見るために、魔物退治をする課題が用意されていた。レオは一枚一枚を見比べていた。
「難しいのも多いけど、コツコツと少しずつやるか…けど、色々あるな。まずは小型の魔物で準備運動をしよう。そしてから、中型で大型と挑むので、どうだ?」
と、レオは僕とシエルに数枚の課題が書かれた紙を見せた。
準備運動に小型のホーンラビット。次に中型のホーンウルフ。そして、手応えを感じたら、大型のマジックベアを倒す作戦だった。
僕ら【ヴォシーレの剣】の実力をおおよそ、確認するためにも大切な事である。他のパーティーは、受かる事だけに注目して、最初から大型に挑んでいるのもあった。が、大抵はその魔物を知らない内に挑んで、失敗するのが目に見えていた。
レオの提案に僕とシエルは頷いた。更に仮りで仲を深めるためにも、最初から必死になっていれば交流が出来ない。
課題は終わらした後にやった結果と一緒に見せるので、リーダーのレオがボードから紙を取った事で課題を行うと決めた事になった。課題は幾らでも取っていいが、成功しなければ意味がない。なので、取り過ぎも注意であり、自分達のパーティーに合う量の課題を取っては、熟す必要がある。
良く考えたら、この試験の終了日がない事に気付いた。ボードのが消えたらいいのだろうか。でも、それだと量が明らかに少ない。試験官が足す気配も見せない。後で、ポケットに入れてある通信用の魔導具で秘書に確認を取ろうと決めた。少し狡いかもしれないが、上に立つ者としてはしっかり細部まで理解して置く必要がある。もし、何か起きたら全ては唯一の上層部である、僕の責任が問われる。だから、そうならないためにも、調べる必要がある。
僕らはそのまま試験場の外に出て、狩り場に行こうとした。が、背後から人が声を掛けて来た。振り返ると、柄の悪そうなパーティーの男達だった。
「お前らはこのまま行けると思うのか?」
と、リーダーと思われる人はあの大剣を持つ若者だった。
逆恨みは面倒臭いと思い、僕らは無視をして歩き続けた。レオもシエルもその事を決闘の後から、理解していた。
「おいっ。待て、言う事を聞け!」
と、若者は叫んだ。
が、僕らは一斉に狩り場へと走り出した。途中から面白くなって、笑い出した。僕も少年の心に戻れた気がして、その笑いに参加した。