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最強ですが彼らには及びません  作者: 影冬樹
第一章 ランク候補生編
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決闘後の行方/試験開始

「そいつも言っているように、弱い者はいらないのだよ。お前はそいつに勝ったと言う事は、強者の仲間入りだ。そんな奴は無視して、仲間になるのだな」

 と、大剣を持った若者が言った。どこまでも男を見下すように。


 レオは拳を握って、若者を睨み付けた。彼の気持ちがその言い方に許せない、と思っていたのだった。

「……却下する。子供の俺に大人の訳分からない、ルールなど押し付けるな」


 若者は仲間と笑いながら、レオを指差した。

 だが、周りの人達はその異常さに気付いた者の方が、多かった。ハンターとして彼らは面倒事に巻き込まれないようにする、耐性があった。狩り場で何かに巻き込まれば、死を意味する事が多いので。

「子供と言われるのが嫌いなくせに、ここでは子供気取りするのか? 本当にお子様だなぁ。ふん、俺がお前に強者と言うものを教えてあげるぞ」

 と、若者は後ろから大剣を抜いて、仲間と共に走り出した。


 レオは握っていた拳を開くと剣を抜いて、一瞬にして彼らを押し倒した。若者達は床で動かず、剣が音を立てて手から落ちる。人々が立ち止まっているとレオは、剣を静かに直した。感情的になれば、彼は真の力が解放されるのだと思った。彼なら仲間が背中を預ける事が出来そうだ。

 男の佇んでいる所まで行くと、レオは彼に言った。

「もう、ここで誰もお前を邪魔にする者はいない。いたら、逆に俺が倒そう。だから、試験を受けて欲しい。お前も何かのために受けるのだろう、俺みたいに?」


 男はレオの言葉に下を向いた。少しして、彼が泣いていると声から分かった。が、誰も何も言わない。レオが彼の安全を保証したから、言ったのなら彼と戦う事となる。

 涙を拭くと、男は綺麗さっぱりした顔で見上げた。

「ありがとうな、少年。お前にはいつまでもお世話になった」


 レオはその言い方に反応した。

「俺はレオだ」


 男は笑いながら、頭を掻いた。

「あぁ。そうだったな。済まない、レオ。俺はシエル・ジェイスだ。よろしくな」

 と、シエルはレオに自己紹介した。


 二人の和解に周りの人々は歓声を上げた。その平和的な光景に僕はほっとした。下を見れば、あの若者達は退出していた。正直に言えば気付いていたが、こう言う時はいつの間か、と彼らの名誉のためにも言っておく。恥ずかしく負けた所から、また表に現れる事はないだろう。彼らが潔く負けを求める者であれば。

 血の後が少し残っていたので、僕は詠唱魔法で消し去った。試験会場となる所が血で塗れているのは、自分が嫌だった。綺麗な所で受けたいものだ。


「ほんとに二人ともお人好しだなっ」

 と、姿は見えないが女と思われる人が呟いていた。

 きっと輪に入っていない、会場の端にいる方向からだった。他の人とは違う反応の声は自然と耳に入りやすかった。その人を見下す気はないが、圧倒的強者に出会ったこののない、未だ若い者だと自然と感じた。〈世界の監視者〉の序列(ランク)のような者に。


 横目で素早く探すと、群がる人々の向こうにその女はいた。壁にもたれながら、何とも面白くなさそうに辺りを見ていた。その瞳から感情が冷え切っているとして良く分かった。見ていて少し悲しくなるほどの光のなさだった。

 手は常に剣の取りやすい所に置かれている。女は全体からして、人と群れるのを嫌う一匹狼だった。が、大きな課題を解決する上では人との交流は不可欠である。人が沢山いれば、解決出来る問題も増えるから。

 僕は早々と視線を戻した。本物の狼のように噛んで来られても、困るからだ。女のような人ほど、後が面倒かもしれない。


 レオが僕の方に近付いて来た。そして、耳元で囁いた。

「先程の決闘はヴォルフが助けてくれたのか?」

 と、シエルの剣を防いだ時の事を聞いて来た。


 僕は頭の後ろで手を組みながら、答えた。

「あぁ。そうだな」


「何だヴォルフも強いのか。これは試験で楽しみだ。これからもよろしくな」

 と、レオが僕の肩を軽く叩いた。


「こちらもよろしく」


 幸い試験は序列(ランク)で必要となるチームワークも、問われるのでパーティーで戦う事になる。処理する必要のある任務をこなしながら。試験を受ける人は気付いていないと思うけど。だから、レオともちゃんと試験中に仲間となれる。パーティーは大体三人から五人ぐらいなので、シエルも参加するかもしれない。普通に考えば、一番入りそうだ。




 それから少し待つと、試験会場の試験官がボードを引きながら、中央に現れて説明を始めた。誰もがこの発言を聞くために、静かになる。

「今から〈世界の監視者〉の序列(ランク)候補生試験を開始する。まずは三人から五人のパーティーを近くの者と組む。そして、ボードから行う課題を選ぶ事。なお、課題に失敗すれば、そのパーティー全員が試験を受ける資格を失う。自分のパーティーに合うのを選び事をお勧めする。課題を終わらせるごとにこの会場に戻って来る事。質問があれば、手を上げてくれ」

 と、一人の手が上がった。


 試験官に指差された男が言った。

「この試験に受かれば、あの有名な序列(ランク)の一人になれるのですか?」

「そうだ。だが、試験は今回限りではない」

 試験官の言うように試験はまだまだ続いて行く。この試験だけでは、数人に絞れないからである。だが、それを知らなかった者達は、驚いていた。

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