不器用人間と要領良い器用な人間
昨日 結局 幼馴染みのおふくろさんからの連絡は無かった。
凄く不安だ。
いや、本当は、高千穂に居る時から、不安を感じていたんだ。
幼馴染みが俺の待ち合わせの遅刻程度の事で、そんなに怒る筈が無いし、スマホ中毒の幼馴染みが、ずっとスマホの電源を切り続ける訳が無いんだ。
何しろ、沢山のスマホやタブレット端末を持ち歩いている程、何が有ってもスマホやタブレット端末でインターネットが利用出来る環境にしている程のスマホ中毒者だから。
自分で「俺 スマホ中毒だから」と言い切る様な奴が、全部のスマホやタブレット端末の電源を切り続けるって、どう考えても変だろう?
「おはようございます」
「あら、おはよう。朝から来てくれたんだ?」
おばさんが、幼馴染みのおふくろさんが、優しい言葉を掛けてくれる。
「あいつから連絡は・・・・・・まだ無いですか?」
「そうなのよ。どうしたのかしらね?まあ、やっと苦労して入社が決まった会社への出社の日までには、きっと帰ってくるでしょう」
「はぁ・・・・・・ そうですよね?」
おばさんは、凄く不安そうな表情をしながら、そんなに心配していない様な言葉を・・・・・・
「連絡が入ったら、必ず伝えるから安心してね?」
「はい!お願いします!」
幼馴染み 明日 初出社の日なのに、まだ帰らないって変だ。
普通の携帯電話会社への就職に失敗して、それでも格安携帯電話会社の社員募集に最後の望みを繋いで、やっと遅くなって決めた就職先なのに・・・・・・
そんな苦労して採用された所を、初出社の日に自宅にさえ帰らないって、無いよな。
きっと今日中には帰るよな。
俺は、親がやってる店の手伝いをしながら、仕事を覚えて、跡継ぎになる事になっている。
俺が望んだ事じゃない。だから、まだアルバイト感覚で良いって言われてて、仕事に出るのは、明後日で良い事になってる。
地元民なら誰でも知っているどころか、テレビでたまに紹介される程の知名度の店なので、経営も上手く行ってて、小遣いは会社勤めのサラリーマン以上に貰ってる。
俺 本当は幼馴染みと仕事がしたかった。
家業を継ぐにしても、幼馴染みが一緒に働いてくれたら、安心なのにって思ってた。
幼馴染みが志望の携帯電話会社への就職に失敗したと聞いた時、正直 嬉しかった。
他に就職活動をしていない事を知ってたから、俺と一緒に親父の所の仕事を手伝う様に、言おうと思ってた。
俺が失敗しても、いつも不機嫌になりながらも、尻拭いしてくれてきた幼馴染み。
親父もそれを知っているから、幼馴染みが一緒に手伝うって言えば、絶対に反対はしなかっただろうと思う。
幼馴染み 凄く天才的なんだよね。
俺って要領が悪い。人より覚えが悪いんだ。
でも、幼馴染みは、俺より後に始めても、いつの間にか要領を覚えて、俺より上手く出来る様になってる。
それでいて、俺は幼馴染みより上手く出来ない事が嫌で、幼馴染みより出来る振りをするのに、幼馴染みは傲らない。自慢しない。
それでいて、解らないからと聞くと優しく教えてくれる。
俺 幼馴染みが居なくても、親の仕事を継いで、上手くやって行けるのかな?
親父がたまに言う。
「お前は良い幼馴染みが居たんだから、その縁を大事にしろよ」
と・・・・・・
跡を継ぐ話の時にも、幼馴染みの話が出る。
きっと、親父は幼馴染みが俺と一緒に働いてくれるって思ってるんだ。
俺独りじゃ頼り無くても、幼馴染みが一緒なら大丈夫だって思ってるんだ。
幼馴染みは、俺と違って、面倒見も良いから・・・・・・
幼馴染みは、俺と違って、他人に好かれる人間だから・・・・・・
俺は決めた。
もし、明日中に幼馴染みが帰って来なかったら、俺は宮崎まで、幼馴染みを探しに行く。
絶対に俺が見付けてやる!
そして・・・・・・
頼むんだ。
『俺と一緒に親父の所で働いてくれ』
って、土下座をしてでも頼むんだ。
この小説は、「異世界『ながらスマホ』事情」と言うタイトルの小説の派生の物語です。
宜しけれ「異世界『ながらスマホ』事情」も読んでお楽しみ下さい。