表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬまで君達を愛したい  作者: 保坂奏多
1/4

1.染谷栄至35歳

第一章 染谷栄至

「えっ…?」

 1ヶ月前に健康診断のレントゲン検査で再検査と引っかかり気づけば精密検査を受けて

 医者から肺がんと宣告され栄至はとても動揺していた。

 別に長生きしたいとは思っていなかった。

 親より少し長生き出来たらいいと思っていたくらいであった。

 そんな親も3ヶ月程前に見送ってこれからどう生きようかとは思ってはいたけれども

 まさかこんな早くに命の危機がくるとはさすがに予想していなかった。


 職場に診断結果を報告し、治療行いながら働きますがご迷惑おかけするかもしれませんと施設長に伝えた。

 施設長は心配そうな顔で「無理はしないでね」と優しく言ってくれた。


 職場は栄至が介護を始めた時からずっとお世話なっていて8年くらい勤めている。


 皆いい人ばかりで"ばんちゃん"というあだ名で親しまれている。

 あだ名の由来は同じ"えいじ”という名前でゆで卵が好きな有名人からもじってきている。


 職業柄か給料は同年代に比べたら低い方ではあるが一人暮らしにはじゅうぶんな金額のため生活には満足している。


 俺に足りないのは恋愛運だけだなと栄至自身も思っていた。


 がんの治療方法は放射線治療を行った。

 身体に(あざ)ぽいのが増え、終わった後は吐き気がした。

 吐き気が続く時は休んだり早退することもあった。

 人手が足りなかったりするだろうに職場の人たちは「ばんちゃん大丈夫?」と気にかけてくれ、仕事のサポートをしてくれた。

 

 そうして半年ほど治療を頑張ったが

「胃に転移してますね」

 医者はどうしたもんかという感じの困った様子でそう告げた。

 やはり35歳という比較的若い年齢で出てきたがんは治療しても進行が早かった。


 栄至は職場にはそのことを報告しないまま治療をやめた。

 そして、半年間治療のために我慢していたタバコを吸い始めた。

 半年ぶりのタバコは煙を肺に入れた瞬間とてつもなく()せて肺から気管支の範囲が痛かった。

 それでもやめれないのがニコチン中毒である。

 さて、これからどうしようか

 そう思いながら肺にあまり入れない程度にタバコをふかしながら考えていると

 母がよく言っていた「悔いのないように生きろよ」という言葉を思い出した。


 ある程度やりたいようにやってきたつもりだ。

 だけど悔いのないような人生にするのなら…


 栄至は思い立ったように山浦佐恵(やまうらさえ)という女性に電話をかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 淡々とした語りの中で主人公の諦観がにじんでいて良いです。 [一言] 続きを楽しみにしています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ