#16『不思議な転校生は、もしかして……?』Bパート
夏樹の通う端愛市立 山上小学校の5時間目、急遽、全校集会が行われた。
4時間目の終わった後、昼休みの始まりに全校放送で知らされてはいたが、それでもかなり突然決まったことの様だった。
夏樹のクラスの担任の女性教師、測尺先生も、掻き込むように給食を食べ終えると学級委員の2人に連絡事項を伝え、グラウンドでの引率を任せて職員室に向かって行った。
どうやら、教師達にとっても急遽決まったことらしい。
「………という訳で……」
グラウンドに並ぶ全校生徒の前で、進行役の教師が進行していく。
どうやら、山上小学校の大規模な改築と、それに合わせての一部のクラスの移動、そして新任の教員の紹介らしい。
広いグラウンドには寒風が吹き、予定になかった全校集会の為に、短めのスカートの女子が脚をモジモジさせていたり、生徒達の前に並ぶ教員達も「もっと早く前もって連絡しとけよ……!!」という不満が雰囲気で察せられた。
ただ、教員達がチラ見(というか睨んでいる)している校長と教頭は、何故か余裕そうというか、良いことでもあったかの様な様子だった。
周りのブルブル震える女子達の中、夏樹は平然として見えた。
ただ、みっちり厚着しているという訳でもない。
暖かそうなコートを羽織ってマフラーを巻いてはいたが、コートからは厚手のキュロットスカートが出ていて、その下は40デニールくらいのタイツを履いているのが見える。
寒そうではないが暖かそうでもない微妙な感じだ。
しかし、夏樹は魔力で自身の肌から1cmくらいの厚みの力場を張って防寒対策していたので、まったく寒くない。
周りを見ながら適度に『寒そう』な感じの動きをして誤魔化しているくらいだ。
「……で、次に……新任の先生を紹介します……」
少し俯いてマフラーに顔を埋めていた夏樹が顔を上げる。
「………?」
教員達の並ぶ中央の少し前の朝礼台、その近くに2人の女性と1人の男性が出て来たのだが……。
2人の女性から魔力が感じられたのだ。
その2人は、主従関係の様に見えた。
全身を包み込む様に魔力が感じられる女性と、申し訳程度の魔力に包まれていて輪郭がわずかにボヤけて見える女性。
後者の女性は間違いなく、魔力で作られた『人形』に近い何かだろう。
だとすると……強く魔力を感じられる方の女性は・・。
「………では、次に、産休に入られる桂先生の代わりの養護教諭の方が来られるまでの短期間の繋ぎとなりますが、保健室にこちらのお二方・・逢庭魅兎先生と、相羽英里紗先生です」
夏樹が軽く目を見開いた。
『逢庭』は知っている。とてもよく知っている。
日本国内で活動する魔法少女の多くが知っていて、むしろ知らない者の方が少ないであろう『逢庭』。
いくつかの分家はあるらしいが、そのいずれの家も、読みは『アイバ』だと以前に逢庭の施設で聞いたことがある。
ということは、あの2人は『逢庭』の関係者で間違いないだろう。
ただ……これまでにも『逢庭』の関係者というか、施設関係者には接したことはあったのだが、『逢庭』本家関係者らしい雰囲気のプンプンする者に接したことはなかった。
しかし、魔法少女を支援する者とは知っていたが、ハッキリと固有色が分かるくらいの魔力を放っているのはどういうことなのだろう……?
「………」
朝礼台に立ち着任の挨拶をする逢庭魅兎と相羽英里紗をジッと見て観察した夏樹だったが、
相羽英里紗が人間ではないのだけは確かだろう、と確信を得たのみだった。
紹介された通りならば、某医大で教授も務めている逢庭魅兎と、長年 仕えてくれている助手の相羽英里紗、2人は教育委員会からの要請により短期間だけの着任、ということらしい。
まぁ、そういう『設定』なのだろう。
ニャニャンが居れば何か聞けるか確かめられたかもしれないが、ニャニャンは今日、朝から出掛けていた。
登校の為に身支度していた夏樹のそばでくつろいでいたニャニャンが、いきなりビクウッ!!として窓の方に飛んでいき、窓がカタカタいうくらいに震えだしたかと思えば、「精霊として御挨拶しなきゃマズい御方がいらした」とかで飛び出して行ってしまった。
ニャニャンは言う間も無く飛び出して行ってしまったが、ニャニャンが震えるくらいに恐れる存在とか、ひとり、いや一柱だけ心当たりがあった。
『いづね様』だ。
京都を中心に近畿圏を活動範囲にする魔法少女デイドリーム・リリィの正体であり、国内に三柱だけ存在しているという現人神の一柱、神性存在である『いづねこん』。
なぜ端愛市に来たのかは分からないけれど、問題なく終われば良いなぁ……と思いながら登校したのだ。
そして今、ニャニャンのことを思い出して、裕子に知らせなければマズいかもしれないと気付いた。
裕子には相棒の精霊が居ないのだ。
たぶん、『いづね様』に挨拶に伺うとかは必要ないハズだが、裕子はたしかデイドリーム・リリィを「可愛い」と言っていたハズだ。
もしかしたら単に見たがるかもしれないし、もし会うことがあるなら失礼があったりしたらマズい。
というか、夏樹自身、少し会ってもみたかった。
『魔法』の当たり前に存在する世界だが、使える者と使えない者との厳然とした違いは存在する。
『精霊』と毎日すごしている自分だが、普通は精霊と日常を共にしたりなど気軽にできるものではない。
『神』という位相の異なる存在が実在するのは確かなのだろうけれど、そうそう接する機会など巡って来たりはしないものだ。
大人びてる、クールでカッコいい、自分たちとは違うし、などなど……夏樹自身が地味に気にすることは時折言われたりはするが、
夏樹自身、まだまだ成熟にはまだ遠く、年相応に幼さも残し、持ち合わせてはいるのだ。
だからまぁ、そういうことなのだ。
そう、ただ、そういうことなのだ、と夏樹は自身を納得させる。
「………」
少し憂鬱な気持ちになってしまったので、教員達の並ぶ方の逢庭魅兎を見てみた。
とても綺麗な魔力色が、澄み渡った蒼穹の空のようで、少し口元が綻ぶのだった。
■
『いづね様』のことと『逢庭』のこと、その話は早い方が良いだろうと夏樹は全校集会が終わると即、『人形』を起動して身代わりにし山上小学校から飛び立っていた。
ただ、『人形』との入れ替わりと変身の場を探すのには手間取った。
寒風吹き荒ぶ寒空の下での集会だったのだ。
校内のあらゆる場所の女子トイレが女子で埋まり、間に合わないと悟っての行動か……中庭の木立ちの影や物置き小屋の裏側などまで埋まっているという事態に、本当に時間が掛かったのだった……。
で、裕子の通う平原小学校に到着したアーカーシャ・リリィだったのだが……。
裕子のクラスの教室の中に、裕子以外に魔力反応のある者が2人感じられ、コソッと覗いてみれば、
たしか運動会の日に幼女化していた自分を撫でてくれた女子の1人だったハズの女子が、何故か精霊っぽい魔力波動を放っていて、
少し前に飛び立ってきたばかりの山上小学校に居るハズの逢庭魅兎を幼くした感じの女子がいて、
「???????」と混乱してしまった。
■
お分かり頂けるでしょうか……。
儚げな美少女を演じて、かわいこぶりっ子していたら、何か視線を感じたのです……。
ふと視線を感じる方向、窓の外を見たら、自分を憐れむような目で見る魔法少女が浮いていたのです……。
『分割思考』術式を使っているので、今ここで小学生女児のふりを頑張る自分と、隣の山上小学校で養護教諭として潜入した自分自身と、混乱せずに同時行動が可能なのです……。
なのに、驚きのあまり、あやうく『人形』術式を切りかけてしまいました……。
山上小学校でイヤガラセかと思う寒空の下での集会での教師としての自己紹介を終えて、
トイレに向かえと叫ぶ身体に『遅延』術式をかけて、女子小学生達に先を譲り感謝されて慈愛を振り撒いているつもりで、
念入りに重ね掛けして尿意を抑え込んでいる『遅延』術式まで解除しかけてしまいました………漏らしてませんからね、ええ、ほんとに本当ですとも……。
片や、小学生のフリが解けて『素体』が晒され阿鼻叫喚の教室内に変えてしまいかねない事態……片や、着任初日に社会人としても大人の女性としても社会的に死にかねない事態に……。
頑張りましたよ。
ええ、頑張りましたとも。
頑張って『人形』術式を維持しました。
頑張って漏らさずに再度『遅延』術式を念入りに重ね掛けしましたとも。
「潜入なんて、気をつけていれば、そう難しくはないよねっ」とか気軽に考えた過去の自分に渾身のフルパワーで攻撃を加えてやりたいと考えたって、間違ってないですよね……?
お分かり頂けるでしょう……?
■
「………」
間違いない……アレ……間違いなく、逢庭魅兎先生だ……。
魔力の色が全く同じで、はっきりとしたアクアブルーだ……。
なんで、別々の小学校で『保健室の先生』と『小学生』をやってるのかは分からないけど……。
教室内から自分を見てビクッとした瞬間、教室内のその女子の身体がボヤけた。
すぐにボヤけは収まったけど、「お願い、何も言わないで」と言わんばかりの懇願の眼差しで見られて、無言で頷いていた。
帰りのホームルームが終わったようで、校舎の屋上の柵に座っていた自分の見る先、裕子が帰っていく後ろ姿が見えた。
「………」
裕子に伝えることがあって来たというのに、何をしているんだろうと思う。
ただ、『いづね様』のことは警戒してもしなくても、成るようにしかならない。
しかし『逢庭』のことについてなら、これからすぐにでも解決できそうな予感がした。
だから待っていた。
帰る前に職員室に寄っているらしい『逢庭魅兎』を幼くした容姿の女子が帰路につくのを。
「失礼します」
職員室から1人の女子が出て来た。
「……お待たせしました」
まるで自分が待っているのを察していたかの様に、職員室近くの壁に寄りかかっていた自分に、華奢な女の子がペコリと頭を下げた。
「……ぃぇ」
「……たぶん……聞きたいこと……ありますよね……?」
「……まぁ。……はぃ、でも……『アナタに』聞いて大丈夫ですか……?」
「ぇぇ。『分割思考』術式を使っているので、この『人形』も、保険の先生として潜入した私本体自身も、私であることは確かですから。今は『認識阻害』も発動していますので、普通に話して頂いて結構ですよ」
「………『人形』に『分割思考』……『認識阻害』まで……アナタは魔法少女なんですか・・?」
「………。……ひっじょ〜〜に不本意ではありますが、私自身、魔法『少女』でもあります……ぇぇ、はい」
少し前まで弱々しい雰囲気も漂わせていたとは思えない程に苦々しく顔を歪めて、『少女』の部分のイントネーションを強めに、目の前の少女が答えた。
「……アナタは たしか、山上小学校に居ましたよね?朝礼台の上から、力場で防寒対策してるのが見えて、心底羨ましかったです……」
「……アナタもそうすれば良かったのに……」
「一応、潜入している身ですから……」
潜入と魔力を使わないコトに何の関係があるんだろう。
それに、潜入というのならば…。
「……先に苗字を隠した方が良かったんじゃ……?」
「其処はそこ、下手に隠すより堂々と晒しておいた方が良い場合もあるものなのですよ」
「……そういうものですか……?」
目の前の『女の子』が苦笑しつつ頷いた。
「……アナタは何の為に、ウチの学校と この学校に潜入したんですか?」
「………。貴女と同じコトが気になっているからだと思いますよ?」
「?」
「少し前に、精霊と共に浜松市の支部で調べ物をしていませんでしたか?……そう、たしか……『ペネトレイション・リリィ』、でしたか」
「……」
無言で頷いた。
「一応、『逢庭』本家の者なので、ある程度の情報は最優先で回してもらえるのですよ。ましてや、調査開始したばかりの重要事項に関したことなら尚のこと」
「……なるほど」
『逢庭』の施設内で、そんなに気は抜けない…と。
「アナタはアーカーシャ・リリィで間違いありませんね?」
「………こちらだけが答えるのは不平等だと思います」
「これは失礼。……この『身体』はツテで用意した特製のモノなので、中に仕込まれている魔石と機構との合わせ技で、ある程度の術式の行使が可能ではあるのですが……さすがに変身までは出来ないのです」
「……」
「私自身が逢庭本家直系の血筋の者であるのは確かです。そして、記録にある限り初の、逢庭から出た魔法少女なのです」
「……」
「魔法少女としての名は、ラビリンス・リリィ。精霊のキロロから聞いています。通常は名を隠すものだと……それを知っていて、敢えて名乗ることを、こちらからの誠意と思って頂ければと」
「……本当かは分かりませんよね」
「………そうですね」
逢庭ミトが苦笑しながら、お手上げ、とばかりに肩をすくめてみせた。
「……アナタと、あの宇津馬裕子さんのご関係をお伺いしても構いませんでしょうか?」
「……友達です」
「なるほど。友達………お友達ですか……なるほど………良いですね……ぅん…良いなぁ………羨ましい……」
「……えっと…?」
急に羨ましげな様子になった逢庭ミトに、戸惑ってしまう。
「すみません、お見苦しい所をお見せしまして…!」
「……ぃぇ。その姿でなら、別に……?」
逢庭ミトが少し悲しそうな感じで口を開く。
「魔法少女を助ける一族、などと言った所で、助けられる限界はあります。出来ないこと、分からないこと、どうしようもないこと、それらがどれだけ有るか……」
「……」
「私自身が魔法少女になる、という事態に直面して、逢庭本家内は阿鼻叫喚の有様でした……共の精霊のキロロが現れただけで、どれだけ救われたか知れないくらいなのです……」
信じ難い話だった。
自分が生まれるよりも遥か昔から存在していて、ずっとずっと、ずっとずっとずっと、魔法少女を助けてきた一族が、『魔法少女』を本当の意味では知らなかった、だなんて。
ただ、よくよく考えてみれば納得できることもあった。
『逢庭』の助けてくれるコトは、『普通の人々』の出来る範疇までで、それ以上でも以下でもなかったのだと。
「ちなみに、私の正体にはいつ気付いたんでしょう……?」
「?………教室に居るのを見た瞬間に、ですけど……?」
「ぇ?」
「……ぇ?……いや、ほら、魔力の色とか……集会で挨拶してる時に見えてた色と、教室で見た色とか……同じだったからで……?」
「…………魔力の……色?」
………まさか。………ぃゃ…まさか……。
「……ちなみに……魔法少女がひとりひとり、魔力の色合いが違うのは知って…ます……か?」
「………」
逢庭ミトが無言でフルフルと首を振った。
「……精霊から聞いてませんか」
「………聞いて………ない…です……」
唖然とした顔をされて、少し哀れむ気持ちになってしまっていた。
最初から精霊が居なかった裕子と違って精霊がついてたハズの人が知らないってのは、どういうコトなんだろう。
手から魔力を放出させて、また輪郭のボヤけている逢庭ミトの前に差し出してみる。
「これが私の魔力色です」
「……」
無言で片手を出した逢庭ミトの手がボヤけて、小学生の華奢な手が消え、その下から骨と筋肉だけで出来たような若干、いや、かなりグロテスクな手が見えた。
そのグロテスクな手を、魔力が覆っていく。
まだ『人形』の形になっていないけれど、やけに違和感の無い『人形』であった理由が分かった。
実物としての素体の上から、薄くとも密度は濃い『人形』のガワを被せているから違和感がなかったのだろう。
「…………ほんとだ……色……違う……」
唖然とした顔の逢庭ミトの顔を見て、初めて裕子と話した時のことを思い出していた。
共の精霊に言ってやりたい…!!
必要なコトを!しっかり!!教えろよ!!!!と!!
「………」
目に見えてションボリした感じになった逢庭ミトの様子に、どうフォローしたものかと焦ってしまう。
「えっと……ほら、まだ魔法少女になったばっかりなら、しょうがないですよ!ね!」
「………もう、1年以上…経ってるかなぁ……」
ボソリと呟く声に、次だ!次のフォロー!と内心で自分を励ます。
「ぃ…」
ダメだ。
意識すれば分かると言おうと思ったけれど、個人個人の魔力色の違いなんて、見た瞬間に分かる。
むしろ、1年以上なんで気付いてなかったの!言われなくても気付くでしょ!?とツッコミたい…っ!
「……魔法少女になる前は、魔力自体、あんまり見えなかったし……」
自分が言い掛けたことを察してくれたらしい。
「魔法少女になった後は……バカみたいに大切にされて……出産の時以外……屋敷から出してもらえなかったし……」
意味が無いっ!て、出産っ!?
子持ちなのっ!?
……くっ……次から次へと……。
「…」
普段、裕子に「魔法少女モノのアニメやドラマの影響受けすぎ」みたいなコト言っておいて、自分も『魔法少女』という存在に対しての固定観念があったらしい。
そういえば、幼稚園の頃、お母さんに何か言ったような…ぃゃ……
「…ぇと……普段は、魔法少女を見る機会って……?」
「………モニター越しとか…」
それじゃ、魔力の色なんか分からないに決まってるし…!
いつもは感謝してる『逢庭』の人達だけど、すごく色々と言いたい……!
「……他には」
「………鏡の中かな……」
「……?………ぁぁ…」
自分のコトを言ってるのか……。
……。
「アナタは、魔法少女になった時……ぃぇ、なる前かな……どんな気持ちでいたんですか」
「……」
ションボリ呆然としていた顔が、持ち直したように引き締まって見えた。
「哀しかった……ただ……ただ……哀しくて……哀しくって……ただ、願った……」
「……その願いが届いたのでしょう。アナタが恥じることなんて、何もないと、私は思いますよ」
「………ありがとう…」
「ぃぇ」
■
平原小学校から飛び立ったアーカーシャ・リリィは、別れ際に逢庭ミトから渡されたモノを見た。
長さ2センチほどの、オーバルブリリアントカットされた魔石に逢庭の家紋が刻まれた物だ。
特殊な術式が込められたりしている訳ではなく、逢庭の施設で提示すれば逢庭の本家に直通で連絡を入れられるそうだ。
早急にお願いしたい重大なことがあるので、と渡されたのだが……。
けっこうなモノを渡されてしまった気がして、アーカーシャ・リリィは僅かに眉を顰めた。
ひとまず、今はそれも含んで、優先しなければならないことがある。
とりあえず裕子の自宅に向かわなければならない。
先程 逢庭ミトに言われたことの確認が必要だ。
『私という存在自体が、撒き餌というか、これ見よがしに見せてボロを出さないかどうか測る為の道具の役目を兼ねています。なので、私自身から宇津馬裕子さんに『逢庭』として接触する予定は、今のところはありません。主目的としては、彼女の人柄なりを確認するのが主なものですから。なので、精霊との融合特殊事例被験者の加茂鴨遥さんを、逢庭の魔法少女専用施設にお連れ願いたいのです。お願いできますか?』
精霊との融合事例?
少し考えて、ふと思い出す。
「たぶん、教室に居たあの女の子のことだよね……」と思いつつ、アーカーシャ・リリィは裕子の自宅マンションへ向けて飛ぶ。
到着まで、おおよそ1,2分。
色々話してから『やらかしちゃってた』コトを裕子が しどろもどろに言い訳しだすまで、おおよそ10分くらい。
■
「ただいま〜……」
逢庭魅兎が、端愛市内の拠点に用意されたマンションに帰宅した。
元から『本家』の令嬢として箱入り気味だったが、魔法少女になってしまってからは軟禁に近いくらいに本家邸宅から出してもらえなくなっていた。
過剰過ぎなほどに大切に扱われているのは理解しているのだが、食傷気味なのだ。
魔法少女として人助けしたり『黒』と死闘を繰り広げたりした経験はなく、主な活動は逢庭家内の最終決裁や魔法少女の活動把握、それと『魔法少女狩り』……ろくな活動をしていない自覚はある。
今日だって、夏頃に起きた沈没事故での大活躍をした魔法少女と出会ってしまう事態に、余裕ぶって接するのが精一杯だった。
しかも、それだって満足に出来ていたとは思えない。
小学生の女の子に心配されて気を使われてしまった。
「……もっとしっかりしないとなぁ……」
頑張らないとと思いつつ、今の彼女を誰かが見たのなら、「頑張る気ないだろ?」と真顔で突っ込まれそうだった。
すでに帰宅して機能を最低限に抑えている為に完全無表情の『逢庭ミト』人形と、本家で右腕として常に側に付いている分家筋の幼馴染を模している『相羽英里紗』人形が、2体で魅兎の着替えを手伝っている。
その周囲にも、本家で常に付いてくれている侍女達10人を模した『人形』が待機している。
着ていた服を丁寧に脱がしてもらった彼女は、ブラトップに着替えた上半身とショーツだけの姿で、フカフカのソファに身を投げ出して丸まった。
自宅の本家では「はしたない」と叱られ決して許されない姿だが、「魔法少女として単身潜入」と強硬に言い張って出て来たことと合わせて、勝ち取った自由を満喫していた。
まぁ、拠点マンション内各階に密かに逢庭の護衛が何人も転居してきているし、
マンション周囲の賃貸が何物件も逢庭に買い取られて護衛の待機部屋に改装されたり、拠点マンション自体が買い取り交渉を持ち掛けられている真っ最中なのだが、
そんなことなど まだ知らない彼女は疲れてソファで寝落ちしていた。
その腕に、抱き枕代わりに『逢庭ミト』人形を抱きしめながら。
その無表情の目は、気のせいか、呆れつつも目が離せない幼子のされるがままになっている様に見えた。
■■ED:『希望の一歩』歌:宇津馬 裕子■■
■■■■■This program is brought to you by the following sponsors.■■■■■
夏樹「今回も、ニャニャン、ほとんど出番なかったね〜」
裕子「そうだね……ニャニャン、いづね様と何してたの?」
ニャニャン「……言えない……まだ……ぃゃ、こっちでは もう、何もかも……」
夏樹・裕子「?」
ニャニャン「…さ、次回は?」
裕子「ぅ、ぅん……。ん?……え?」
夏樹「裕子、どうしたの?」
裕子「え、だって、これっ……え?」
夏樹「あれ、これって……裕子、ひとまずタイトルコールした方が…」
裕子「ぅん…次回!第17話っ!『加茂鴨ちゃんは最強!?』ですっ!えっと……ホントにこのタイトルで合ってるんだよね…?」
夏樹「加茂鴨教授に確認した方が良いんじゃないかな…」
裕子「ぅん。紅葉ママにも聞いてみるっ」
ニャニャン「行ってらっしゃ〜い」
裕子「行かないの?」
ニャニャン「ぅん。ボクは此処から出られないからねー……」




