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魔法少女 ノーブル・リリィ  作者: 散桜


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#15『新たな出会い!』Aパート

とある日曜日の朝、裕子のクラスメイトの加茂鴨(かもがも)遥斗(はると)は、平日の朝とはまた違った静けさの街中の公園に居た。


自身の学区から少し離れた場所の公園で綺麗な空気を深く吸い、彼女は座っていたベンチから立ち上がる。

ここ2週間くらい、ほとんど病院で検査漬けの身だった為、ただ普通に街中に居るだけでも、格別の気分のように思えた。


スカートのお尻を軽く払い、公園の出口の方に向かおうとして、咄嗟に身を隠した。

誰かが公園の前を通ったからだ。

もし知り合い・・クラスメイトなどに今の自分の姿を見られたりしたら、学校に行けなくなってしまうかもしれない。


一応、まだ戸籍上は男子なのだ。

色々と整うまでは、自分のことは出来るだけ伏せておきたかった。


「・・・あれは・・」


公園前を横切る小さな姿を見て、知り合いだったので少し驚いた。


「・・・宇津馬(うづめ)さん?」


あまり特徴的ではないクラスメイトだが、今の彼女にとって裕子はかなり印象深くなっている。

それに、たぶん、彼女にとって裕子は人生の恩人といえる存在かもしれなかった。


「・・・」


知り合いに遭遇したら顔を隠せる様に持っていた大きめのキャスケットを目深にかぶり、裕子の後をこっそりと追った。




■■OP:『Don't stop.Don't look back.』歌:斎木(さいき) 夏樹(なつき)■■


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日曜日、いつもはスマホのアラームを解除して少し遅い時間まで寝る裕子だが、この日は何故か、かなり早い時間に目が覚めた。

自宅のベランダから見た綺麗な朝焼けの空に見惚れること(しば)し、二度寝する気分でもなかった裕子は、シャワーを浴びると、身支度を整えて出掛けた。


少し寒かったので、もう少し長めのスカートでも良かったかと思ったが、冷たい空気を深く吸い込み、ほぅ・・と吐き、早朝の住宅街へと歩き出した。


「こっちかな」


「あっち行ってみよっかな」


「こっちだね」


「次はこっち」


「よし、こっち」


「えっと・・・こっちかな!」


気の向くまま歩いていると、少しすると知っている道でなくなり、初めて歩く道ばかりになっていった。

大通りに出たら、少し先の小道から裏通りに戻り、また知らない道をゆく。

肩を揺らし、時にスキップし、くるりと回ってみたり、道路標示の白線から白線にジャンプしてみたり、気持ちのままに、楽しく歩いた。


また大通りに出て、少し歩くとバス停があった。

味のあるベンチが気になり座ってみた。

座り心地は良かった。

少ししたらバスが来た。

気の向くまま、気の向くまま、何となく。

迷いなく、初めて乗る路線のバスに乗り込んだ。

発車直前に、自分と同年代くらいの女の子が乗り込んできた。

可愛い格好で、帽子を深くかぶった女の子だった。

ショートカットなのか、まとめて帽子の中に収めているのか、髪の毛はよく見えなかったが、その女の子にはよく似合っている気がした。


窓の外に目を移し、車窓からの流れる景色を楽しんだ。

どのくらい走ったか分からないけれど、何となく気が向いたので降車ボタンを押し、停まったバス停で降りた。


バス停の名前を見たが、当然、初めて降りたバス停だった。

気になりスマホで調べてみたが、端愛(はまな)駅より少し南側くらいの場所だった。

もう少しだけ乗っていたら端愛駅に着いていたくらいの場所だ。


「ん〜・・」


少し考えて、「ま、いっか」と歩きだした。

今日は気の向くままに行ける所まで行ってみよう、と決めたのだ。


「えっと・・・よし、こっちかな」


キョロキョロと周りを見て、何となく気の向いた方に歩きだした。

考え無しに進む裕子だったが、お財布の中のお金はまだ大丈夫だし、たまたま通った公園にあったトイレで用も足した。

コンビニで軽食を買って、食べながら歩いた。


どこまで行くか、何時まで出歩くか、全く考えていなかったが、裕子的には手持ちのお金が無くなっても問題なかった。

魔法少女に変身して飛んで帰れば良いのだから。



「・・?」


何かを感じ取った裕子が、その『何か』の感覚を手繰り寄せる。


「・・・これ・・『黒』?」


夏樹と共に何度も戦った『黒』の感覚に限りなく近いと思った。


「・・・」


その感覚を頼りに、裕子がそちらに向かう。

近づけば近づくほどに、その感覚が強くハッキリと感じ取れるようになってくる。


どのくらい歩いたか・・10分くらいか、20分くらいか、気付けば幅2mくらいの小道を歩いていた。

そして、見つけた。


「・・・」


立ち止まった裕子の視線の先に、茶色っぽい毛並みの猫が居たのだが、その姿は異様だった。

猫の左前脚から肩辺りまで、黒いモヤの様な何かが滲み出していたが、それ以外は何の変哲もない、ただの猫の身体だったのだ。

そして、モヤの滲み出る前脚を搔くようにも、押さえつけるようにも、千切り取ろうとしているようにも、どのようにも見え・・ただ、苦しみ悶えているのは確かだった。

その姿を見て、以前に夏樹が言っていたことを思い出した。

『巻き込まれてああなった』

『周りが大変なコトになる』


「・・」


こういうコトか・・『黒』を放っておくと、こういうコトになってしまうのか・・裕子は改めて、『黒』を倒さねばと心に決める。

裕子が地面に横たわり身体をよじる猫の傍らに膝をつき、両手に魔力を込めて猫に触れた。

荒い息をしていた猫が裕子を見上げるように見たが、その切なげな目は、ただただ救いを求めていた。


「だいじょうぶ・・だいじょうぶだからね・・?」


猫をいたわる様に優しく触れ、モヤの滲み出る前脚の上から、モヤを払う様な、拭い去ろうとする様な、そんな風に黒いモヤを猫から少しずつ少しずつ剥がしていく。

黒いモヤが減っていくほどに、猫の息が落ちついてくる。

モヤが滲み出さなくなり、モヤの滲み出していた辺りを重点的に、全身を優しくさするように、毛並みに沿って撫でた。

その間も裕子の手からは魔力が出続け、猫の身体に染み入る様に入ってゆく。

猫が、快感に身を委ねる様に気持ち良さげに身をよじる。


「これで・・だいじょうぶかな・・?」


裕子に撫でられ至福の顔の猫は、すっかり落ち着いてみえた。


「・・もう だいじょうぶかにゃ?」

「んなぁ〜・・」


裕子の問いかけに、猫が「ありがとう」と言ったかのように鳴いた。

裕子がホッと肩の力を抜く。


パチパチパチパチパチパチ・・・


「ぇ」


突如、拍手が聞こえた。


「良かった良かったー・・可哀想に『黒』になりかけてた猫ちゃんは無事助かりましたー」


拍手と声の聞こえる方を見た裕子は、裕子を見下ろせる屋根に座り拍手をしている姿を見つけた。


「いやー・・自分の担当でも無い場所であっても人助け、いや今回は猫助け?にも手を抜かない。『黒』の影響は残さない、しっかりしたもんだー・・尊敬しちゃうねっ。で・・」


拍手の音が消えた。


「ナワバリ荒らし?」


それまでニヤけた感じの笑みを浮かべていたが、無表情になり、感情の全くこもっていない問い掛けがされた。


「・・・ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの。ただ、この子を救けてあげたくて・・っ」


身体を起こし、裕子を見下ろす影を警戒する猫は、まるで裕子を守り立ちはだかっている様に見えた。


「あらら。猫ちゃんに嫌われちゃったかなー?」


屋根に座っていた者が軽やかに飛び降りてきた。

ストッと軽い着地音が小道に響く。


逆光で見えにくかったが、シルエットで薄々は気づけたが・・。


「・・・魔法少女・・」

「おうよ。初めましてでもないけど初めまして?」

「・・?」


裕子にとって初めて見た魔法少女のハズだが・・相手は裕子を知っているらしい。


「・・・ぁ・・」


変身していない。

素顔を見られて、魔法を使っているところを見られてしまった。

いや、裕子の場合、変身していても髪の色や長さ、目の色や顔つきとかがガラッと変わるわけではない。

変身中は常に自動発動している『認識阻害』の術式ありきで身バレを防いでいるようなものだ。

しかし、それでも一定以上の効果はある。

魔法少女同士であっても、魔力総量や出力の差で効き目が変わる。

が・・今は変身してもいなければ『認識阻害』術式も発動させていない。


「・・・どこかで会いましたか・・?」


見たところ、相手は自分より歳上、中学生くらいに見える。

とりあえず、手遅れ感は否めないけれど、不快感を与えない様に敬語で話しかけてみた。

変身していなくて素顔丸だしなのはもう諦めて、そのまま押し切ることにした裕子だった。


「夏な。沖合いで衝突事故あったろ?アタシも救助に加わってたからな。少ーし話したけど、覚えてないかー・・・ま、さすが、奇跡の使い手様々だぁな。ちっさい事は気になさらないってワケだ」

「?」


『奇跡の使い手』とか意味不明な呼ばれ方をしたが、裕子には、そんな呼ばれ方をされる意味が分からない。

裕子的には、沈降する船内で酸欠で倒れて、気付いたらアーカーシャ・リリィに背負われた帰路だったのだ。

それに、あれ以降、沈没船はニュース以外で見るコトも無かったし、あの海域に行ったことすら無かった。

だから、報道規制されて伏せられている情報などは知りもしない。

海上に突き出た樹木状の船体と、海底に至るほどに伸ばされ沈降を止めている樹根状の船体、そして海中に固定された海中墓所となっている大型客船。

そんな現状や、それを成したのがアイソレイト・リリィだと思われているなどと、知りもしない。

もし現場海域に行っていたなら、海域警備中の海上自衛隊艦や、乗艦している『逢庭(あいば)』の関係者に接するコトも出来たハズだが・・。

裕子には一切心当たりの無いコトだった。



「おい。そこに隠れてるの精霊だろ?」


刺々しい態度を隠そうともしない魔法少女が、裕子と彼女の居る小道の、彼女を挟んだ裕子の反対側に向かって強い口調で言った。


「出て来いよ。隠れるにしたって、その精霊独特の魔力たれ流しでバッレバレだぞ?少しは隠せよ」


裕子も気になってそちらの方を見てみるが、精霊が出て来る様子はない。

というか、『精霊独特の魔力』というようなこと自体、初めて意識した。

今度ニャニャンに会ったら意識してみようと思う。


「ちっ。痛い目みなきゃ分かんねーのか・・」


その魔法少女が片手を軽く上げ、力を込めていくと、その手を包むグローブが硬質化してゆき、指先が鋭利なカギ爪状になっていく。


「アタシは精霊相手でも甘くないからな?」


その鋭利なカギ爪から禍々しい魔力がジワリと滲み出してくる。

その魔力が触れた空気がイヤな感じに()ぜはじめた。


「半殺し以上は覚悟しろ」


その魔法少女の放つ気配が『刺々しい』から『(まがまが)々しい』に変わるのを見て、裕子も黙ってはいられない。


「待って!?精霊って。敵じゃないんだよっ!?」

「味方じゃないんなら敵だろーーがよ」


裕子に殺気の籠もった視線が向く。

視線だけでなく、その魔法少女から殺気のこもった圧力(プレッシャー)が放たれる。


「っ・・」


裕子のこれまでの人生に於いて、殺気を向けられたのなんて数えるくらいしかない。

殺す気満々の『黒』が数体と、裕子の覚悟を試す為に敢えて殺気を向けたアーカーシャ・リリィくらいしか居ない。


「まっ、待って・・!」


その時、壁の影から、ひとりの少女が出て来た。


「・・ぁ?」


出て来た少女を見た魔法少女が疑問の声を上げる。

そして、裕子も、その少女を見て驚いた。


「・・か、加茂鴨(かもがも)ちゃん・・?」


そう。

現れた少女は、華奢な肢体に可愛らしいワンピースを着ていて、手にはキャスケット帽を握りしめて、ヒザが恐怖からかガクガクと小刻みに震えていたし、恐怖に引きつった顔をしていたのだが・・。

その顔は、裕子の知るクラスメイトの顔だった。

5年生に進級のタイミングで京都から転校して来て、とても特徴的な容姿をしていて、

とてもとてもとても男子には見えないのに男子で、

でも女の子みたいな、

そんなクラスメイトだった。

ただ、女の子にしか見えないとはいえ、女の子にしか見えない服装だったのを見たことはなかった。

男女どちらでも違和感ない感じの服装が多いイメージだったが、いま目の前に立つ姿は、どう見ても女の子の服装だった。


全く違和感なく女子の服装を着こなした、裕子のクラスメイトの男子の加茂鴨(かもがも)遥斗(はると)が居た。



「・・・普通の人間?・・ぃゃ・・この感じは・・」


怪訝な顔をした魔法少女が加茂鴨ちゃんの方に1歩踏み出す。

裕子は加茂鴨ちゃんを守る様に、魔法少女の横を駆け抜け、2人の間に割り込む。


「お前、混ざりモノか」


魔法少女が加茂鴨ちゃんを睨みつける。


「ひっ・・!」


圧迫感すら伴う殺気を向けられた経験など無かったであろう加茂鴨ちゃんが、その場にへたり込んでしまう。


「答えろ。お前、なんで精霊と混ざってる?」


敵意のたっぷり篭もった声で加茂鴨ちゃんを恫喝する魔法少女。

裕子は少し身体を斜めにして、魔法少女も加茂鴨ちゃんも見える様にする。

自分が何を言われているのか全く分からない加茂鴨ちゃんが「何を言われているのか分からない」とばかりに首を振った。

身を守る様に胸の前で腕を交差させ、肩を抱く。

閉じられた脚も、敵意しか向けていない魔法少女の方との間に挟む様に立てられる。

裕子から見ても、ただの弱々しい小学生の女の子が怯えている様にしか見えなかった。


「・・・あの・・」


加茂鴨ちゃんが震える手を少し上げながら、ささやくように掠れた声を上げる。


「・・・えっと・・」


加茂鴨ちゃんは目に大粒の涙を溜め、何か言おうにも言えないという感じで俯き、スカートをキュッと握りしめた。

少し離れている裕子にも分かるくらいに小刻みに震えて怯える加茂鴨ちゃんの姿に、裕子は護り切らねばと決意する。


「あの・・!」

「あぁん?」


魔法少女というよりもチンピラとか(やから)と言った方がしっくりくる態度の魔法少女に、裕子も対抗するように魔力を放つ。

ただ、誰かに向けて殺気を放ったことはもちろん、敵意を込めて魔力を放ったことも無い裕子には、目の前の魔法少女やアーカーシャ・リリィの様に相手を怯ませる様な魔力の使い方は出来なかった。


だから、ただ魔力をこめた。


今の魔力残量全てをこめ、目の前の魔法少女に向けた。


「っぐぅ・・っ!?」


魔法少女が驚愕に目を見開き、身を守る様に腕を交差させた。

シュー・・・と音を立て、魔法少女の魔法少女装束から煙の様なモノが噴き出し、形を変えていく。

ただでさえ魔力総量の底知れない裕子が、ほぼ万全状態の全魔力を叩きつけたのだ。

相手の魔力障壁を突き破り、ゴソッとえぐり飛ばしていた。


「・・・ウソだろ・・?」


自分の目に見えて目減り、いや、全く違う姿に変わった様にも見えるほどに変わった自身の魔法少女装束を見た魔法少女が、信じられないモノを見るように裕子を見た。


「・・・お前っ・・」


いまや、加茂鴨ちゃんに向けられていた意識は完全に裕子に移っていた。

「今だよ!逃げて!」とばかりに、魔法少女から見られないように背後にまわした片手を振る裕子。

が、裕子の言わんとすることを察せはしても、加茂鴨ちゃんは逃げなかった。

いや、逃げられなかった。

完全に腰が抜けていたし、まだ脚は恐怖にガクガク震えていたし、立ち上がろうにも腕は恐怖に冷え切って力も入らなかった。


いくら手を振って「逃げて」と示しても一向に動かない加茂鴨ちゃんに、裕子は振り返って確かめた。

そして察した。


きっと、殺気を向けられたのなんて初めてだったのだろう。

恐怖に身がすくみ動けなくなっても仕方無い。


「・・」


裕子は深く空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出していく。

夏樹に教わったコトを実践するのは、今だ。

『黒』を倒す為で、同じ魔法少女と争う為では無かったのだが・・護るという意味では同じだろう。


「ふぅ・・・」


もういちど深呼吸した。


「・・覚悟」


意思をこめて、魔力をこめて、目の前の魔法少女を見据える。


顕現(けんげん)


裕子の姿が魔法少女に変わる。

ジリジリと少しずつ後ろに下がり、加茂鴨ちゃんに近付いていく。

加茂鴨ちゃんを抱きしめられるくらいに近付けたら、『認識加速』で時間感覚を加速して、魔力を振り絞って動いて加茂鴨ちゃんを抱きしめ、魔力を振り絞って飛び去るのだ。


自分ではよく分からないが、夏樹に何度も言われていた。

「裕子は魔力総量と容量がすごく多い」と。

その魔力を逃げに全振りすれば、魔法少女同士で戦わずに済むハズだし、きっと逃げ切れるハズだ。

先程、魔力を目一杯叩きつけた。

別人?ってくらい、目の前の魔法少女の魔法少女装束は様変わりしている。

たぶん、少なからず魔力を削れたハズだ。

きっと逃げ切れる、きっと。

あとから加茂鴨ちゃんに色々聞かれるだろうけれど、目の前で変身してしまったのだ。

あとのことは、逃げ切ってから考えよう。



「あーー、もーーいーよっ!わーった!分かったよっ!」

「!?」


突然、目の前の魔法少女が投げやりに叫んだのだ。

アイソレイト・リリィは目をパチクリとした。


「お前に争う気がないのは分かった。悪かった、悪かったよ!謝る!アタシが悪かった!ごめんっ!」

「ぇ・・・ぁ、ぅん・・?」

「悪かった!そのさ、アタシさ、けっこう活動範囲が広いんだわ!で!勝手に入ってきて勝手に活動して、都合よく『いつも自分が守ってるから』みたくSNSに上げるヤツ多くってさ!ただでさえ あの日でイライラしてた時に感知しちまって、つい喧嘩腰で来ちまった。悪かった!ごめんっ!」

「ぁ・・ぅん・・?」


突然の相手の変わりように唖然として、まだ理解の追いつかないアイソレイト・リリィは、軽く首を傾げた。

とりあえず、魔法少女同士で戦わずに済んだのかな?と。


アイソレイト・リリィは、へたり込んだままの加茂鴨ちゃんを見て、優しく声を掛けた。


「戦わずに済んだみたい」

「・・・宇津馬(うづめ)さん・・」


カツカツカツ、と足音がして、相手の魔法少女が近付いて来た。


「お前も悪かったな、巻き込んじまって」


先程までの敵意丸だしの刺々しい声とは打って変わった様な、フレンドリーな声だった。


「悪かった。どっかで話さないか?お詫びも兼ねて、アタシのオゴリで良いからさ」

「ぁ、ぅん・・私は良いけど・・」


勘違いはあるものだ。

さっき聞いた様なコトが度々起きていたのなら、イライラするのも仕方無いだろう。

アイソレイト・リリィだって、アーカーシャ・リリィの活躍や活動を踏みにじられる様なことをされたら怒り狂うかもしれない。

ただ、魔法少女の事情も分かり、すんなり納得できた自分と違い、部外者の加茂鴨ちゃんは納得出来ないんじゃないかなぁ・・とアイソレイト・リリィは加茂鴨ちゃんを見た。


加茂鴨ちゃんは落ち着いたように見えるが、座り込んだまま動こうとしない。

まだ腰が抜けたままなのか、許せないから動かないのか、それは分からない。


「加茂鴨ちゃん、立てそう・・?」

「・・今はちょっと・・」


目をそらし、気まずそうな、恥ずかしそうな、そんな顔をしている。


「悪かった。立てるか?」


魔法少女が手を差し出すが、加茂鴨ちゃんはその手を取ろうとはしない。


「・・・着替えたいなぁ・・って」

「・・・あ・・・ぁぁ、そうだな・・わりぃ。ほんと、ごめん」


加茂鴨ちゃんがへたり込んでいる地面を見た魔法少女が、少し気まずそうに顔をそらしながら謝った。

アイソレイト・リリィも、加茂鴨ちゃんが座り込んだ地面が濡れているのに気付いて、急いで『空間収納』の扉を出現させた。



■■■■■to B PART■■■■■

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