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魔法少女 ノーブル・リリィ  作者: 散桜


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27/38

interlude #12.5 Aパート

『本編』との繋がりは限りなく希薄な為、登場人物や場所はフィクションです。

『オーディオコメンタリー版の夏樹氏』は『次回予告の夏樹氏』であり、『本編』の夏樹氏との関係はございません。

■■OP:『Don't stop.Don't look back...But just for today...』歌:斎木(さいき) 夏樹(なつき)■■


■■■■■Brought to you by these sponsors■■■■■



「やっほー♪元気ー?」


明るめの焦げ茶色の髪、ブレザータイプの制服、スカートはチェック柄のプリーツのミニスカート、紺色のソックスにローファー、いかにもな女子高生だ。


「みんなー、先週ぶりだねー♪アタシは夏樹♪斎木(さいき)夏樹(なつき)だよっ♪もちろん知ってると思うけどっ☆」


に〜っこりと笑い、ウインクした。

おまけに投げキッス付きだ。


「さーて、今週の『魔法少女アーカーシャ・リリィ』は、1クール目の12話分の総集編回なのでーす♪」


夏樹がクルッと回ると、短いプリーツスカートもふわっと舞い上がる。

残念ながら、スカートの中は見えなかった。

DVDリマスター版でのパンチラ解禁仕様に期待大だ。

リマスター版では、第1話で視聴者の話題をさらった『裕子との●●●シーン』も、『お部屋真っ暗仕様』から『薄暗い部屋仕様』になると言われている。そちらも期待大だろう。

いつか、DVDよりも画質の良い媒体が開発されれば良いのだが、未だにLDやVHS媒体の映像ソフトが発売されている現状を見るに、まだまだ先のことかと思われる。


「今回は合間合間にアタシのイメージDVDからPVも入れてくねっ♪気に入ったら買ってねー♪」


■◆■


高校生ながらグラビアアイドルとして活躍する夏樹は、すでに写真集を3冊発売している。

水着姿だけでなく、魅惑的なランジェリー姿や各種コスプレ姿もバッチリ収録されていて、各本、すでに二度の重版済みだ。

三度目の重版も近いと言われている。

夏樹は女子高生で人気グラビアアイドルで魔法少女活動もしているから、とっても大忙しだ。


「今回の水着は大胆なタイプにしてみましたー♪」


カメラ前で大胆なポーズを取る夏樹のバストアップやヒップのどアップ映像が映し出された。

更に、5作目のイメージDVDに収録されているセクシーシーンの一部が映された。


蠱惑的に微笑む表情は、とても10代の少女とは思えなかった。


■◆■


「さて、PVは楽しんでもらえたかなー?じゃ、第1話から、おさらい行ってみよー♪」

「では、我も協力しようではないか」

「お。ニャニャンも協力してくれるの?ありがと〜♪」


夏樹の身の丈を優に越す体長の精霊のニャニャンが現れ、夏樹が首筋に腕を回して顔を埋める。

長毛種の猫を巨大にして凶悪な容貌に変えた様な見た目のニャニャンだが、夏樹にとっては魔法少女になってからのかけがえのない相棒だ。


「あ〜〜モフモフさいっこ〜~♪」

「よさぬか、夏樹・・観られておるのだぞ?」

「気にしないもーん♪ぁ〜・・あったか〜・・」


ニャニャンがたしなめるが、夏樹はモフモフの堪能を止めない。

ニャニャンは諦めた様に溜め息を吐くと、夏樹が満足するまで待つコトにした。


「では、夏樹のぴーぶい?とやらを見て待つが()い」


■◆■


プールで泳ぐ夏樹の背後のローアングル映像が流れ、濡れた髪をかき上げる色っぽいシーンに続いた。


プールから上がった夏樹がお尻の水着の食い込みを直し、カメラ前を手で塞いだ。

その後は、ほっぺたを膨らませて怒った様な表情になり、上着を羽織った。

上着の前を閉める際に、ジッパーが上がるにつれて、上着の左右に挟まれた胸が寄せられてたわみ、胸の谷間を強調する様に両腕が寄せられた。


■◆■


「夏樹は寝てしまったので、我が進めていくとしよう」


ニャニャンが首を動かすと、彼の巨体の長い毛並みに埋もれて寝息を立てる夏樹が居た。


「確か1話からであったな・・アレは、あまり思い起こしたくは無いのだが、仕方あるまい・・」



夏樹の住む地域には、過去の栄光の成れの果てとでも言おうか・・廃業した工場の跡地が至るところに存在していた。

もちろん、現在進行系で業績好調の工場も数多く存在している。

好調な光射す場と、過去の残照が僅かに残る社会の陰と、そういった光景が雑多に混ざり合う街なのだ。

工業地域らしい街なのだろう。


そんな街の廃工場の1つで、純白のドレスの様な魔法少女装束を翻して、魔法少女アーカーシャ・リリィが戦っていた。

彼女の攻撃する先には、魔法少女達の敵である存在、通称『(くろ)』が居る。

『黒』は、彼女の大親友の宇津馬(うづめ) 裕子(ゆうこ)を人質に、なんとかしてこの場から逃げ切ろうとしていた。


大親友の裕子は、夏樹の幼稚園時代からの友人だ。

母親を産まれながらに亡くしていた夏樹と、育児放棄(ネグレクト)されて育ってきた影響からか人間味の希薄なロボットみたいな少女だった裕子は、何故か引かれ合っていた。

お互いの足りない部分をお互い同士で補い合うかの様にして仲を(はぐく)み、2人が小学生になる頃には親友と言える仲になっていた。

生憎と小学校の学区が違い別の小学校に通うことになったが、2人の友情は変わらなかった。

そんな2人の関係が激変したのは、2人が中学2年生の頃だった。


裕子が、ほぼ一人暮らしと言える様な家庭環境で長年放置されて過ごしていたコト。

夏樹が、唯一の肉親である父親からの重度の虐待にあい続けていたコト。


それがほぼ同時期に周囲に知れてしまったのだ。

それぞれの親が親権を剥奪され、それぞれが養護施設に引き取られるコトになったが、2人には望外の幸せとなった。

何の偶然か、同じ養護施設で共に過ごせる様になったのだから・・。

高校に入学し、アルバイトして収入を得て、養護施設の親身になってくれた職員を身元保証人に、アパートの賃貸契約をして2人で共に施設を出た。

学業とアルバイトの両立は大変だったが、2人は満たされていた。

満たされていたのだ。


そして、第2の激変が起きるのだが、それは夏樹にだけ起きた。

なんと、夏樹が魔法少女になったのだ。


それは、2人で出掛けた夏山キャンプで起きた。

奇妙な地震が起き、地崩れがキャンプ地を襲った。

大ケガをする者達が数多く出たが、2人を除いて、皆が大事(だいじ)なかった。

その例外となった2人が、夏樹と裕子だった。

2人は深い地割れに飲まれて落下した。

何か、ノドを水分が通り、嚥下して夏樹が気付いた時、地震から丸二日以上経っていた。

三日が過ぎ、四日が過ぎても助けが来る様子はなかった。

そして夏樹は希望を捨て、そう遠くない内に来る死を受け入れてしまっていた。

しかし、僅かばかりの気掛かりが残っていた。

暗くとも、すぐ真横に倒れていると分かっている裕子のことだ。

自分は死を受け入れたが、裕子は意識が戻ることすらなく死ぬことになってしまう。

裕子は意識が無いまま、徐々に、徐々に、呼吸が弱く浅くなっていっていた。

何故かノドが乾いていなかったことを除けば、何日も何も食べていないから酷くお腹が空いていた。

いつしか、このまま2人一緒に死ねるならそれでも良いか、と夏樹は納得していた。

どれくらいの時間が過ぎただろうか。

すぐ近くを水が流れていた。

どうやら、地割れの外で雨が降ったらしい。

久し振りに水分で喉を潤せると思ったら、口の周りで固まっていた何かが溶けて舌に触れた。

ひどく鉄の味がした。

過去に父親から虐待されていた際に何度も何度も何度も、数え切れないくらいに舌に触れた味がした。

血の味だった。

口の中はケガしていないハズなのに何故、懐かしい味がしたのだろう・・と思ったが、裕子にも飲ませたいと思い、自分の身体とは思えないほど重い身体を動かすと、裕子の手が見えた。

目覚めた際から夏樹の顔の側にあった裕子の手に目をやると、薄暗い中でも分かる色が見えた。

ドス黒い赤だ。


「っ・・!」


裕子の手の赤を見て、背筋が凍る。

すでに、これ以上は冷えないだろうと思っていた身体でも感じたくらいに、背筋が冷えた。

ケガなどしていないのに口の中にあった血の味、何故か潤っていた自分のノド、そして赤黒く濡れた裕子の手。

それだけ状況が重なれば、裕子が自分の為に何をしてくれたのかが分か



「はーい、暗いの禁止ーっ!!!」

「ちょっ、夏樹!ここからが見せ場であろう?お主の嘆きと祈りと願いが届き魔法少女として目覚め、その後、地震の原因となった古びた像を壊し、封印されていた我と出会う流れではないか!」

「それ、1話じゃん!総集編じゃなくって1話の再放送回になっちゃうじゃんっ!だめっ!だめだめっ!暗いのダメっ!1話分は終了〜~っ!」

「ぬぅ・・」

「はーい、暗くなり過ぎちゃったから、またイメージDVDから、選りすぐりシーン行ってみよー!」


■◆■


「ね、お兄ちゃん♪次はアレ乗りたいなっ♪」


『大好きなお兄ちゃんと遊園地デート』というシチュエーションで、夏樹のイメージDVDの中でも人気シチュの1つだ。


「今日は1日、お兄ちゃんは私が独占しちゃうんだからねっ?」


胸を思いっ切り押し付けて腕に抱きついているシーンが俯瞰で撮られていて、販売会社には「サイン会であのシーンを再現して欲しい」という要望も多数届いたそうだ。

しかし生憎と、夏樹の所属する『いづねプロ』は所属タレント達や女優達を安売りはしていない。

「写真集やイメージDVDで我慢して」で押し切るだろう。


■◆■


「どう?気分転換できたかな?」


夏樹がイメージPVと同じ様に胸を寄せてみせる。

制服姿なので、ほとんど身体のラインは出ない。

しかし、ブレザーの内側のブラウスを押し上げるたわわな双丘が眼を惹きつける。


「過去は過去、今は今だからねー。確かに昔はいっぱいヤなコトあったけど、その分取り返せる様に明るく生きるって決めたんだよね〜♪」


先程までの軽さが芝居であったかの様に静かな表情で、夏樹は苦笑した。


「じゃ、2話からのダイジェスト行ってみよー♪」



入院していた2人が退院するまでに、一月以上かかった。

正確には、裕子がまともに動けるようになるまで時間が掛かったのだ。

地割れに落下した際に何本も肋骨を折って肺が傷付いていた上に、吐血で自分の命は長くないと悟った裕子は意識が戻らない夏樹だけでも生還して欲しいと自身の腕を切り、血で夏樹に水分補給させていた。

意識を失って仮死状態になっていなかったならば、間違いなく失血死していたのだ。

夏樹が魔法少女となるのがあと少し遅ければ、治癒魔法をかけられることもなく死んでいたハズだし、裕子の生還は幾つもの偶然が重なって起きた、まさしく奇跡だったのだ。

ニャニャンと契約した後に救助隊に発見されて入院したが、裕子と同室なのが幸いし、治癒魔法で裕子の治癒を加速させた。

夏樹がそうしていなかったなら、裕子の意識が戻るのも退院も、何倍もかかっただろう。


そして退院したのだが、入院費の請求が待っているし、当然アルバイトはクビにされているだろうし、賃貸アパートからも追い出されてしまうだろう、そう覚悟して家路についた2人だった。


が、マスコミが『奇跡の生還を果たした、不幸な生い立ちの薄幸の美少女達』と報道していた為に集まった寄付金で入院費も当面の家賃や生活費も賄えた。

周囲の人々に自身の生い立ちが知れ渡ってしまったことを除けば、運命の逆転が起きたと言えた。

そして2人に寄って来る芸能界へのスカウト。

裕子は忌避したが、夏樹は『2人の将来』を見据えて芸能界に身を投じた。

恥ずかしくて堪らないグラビア撮影や、頭がおかしいのではないかと思うアングルや接写をしてくるイメージDVD撮影に耐え、明るい美少女を演じた。

生い立ちのほとんどが白日のもとに晒されてしまったのだ。

これで暗い顔などしていては、自分の生まれた意味すら無くしてしまいそうだと思ったからこそ。

いつしか、本当の自分と演じる自分が混ざり合い、現在の夏樹になっていった。

裕子は知っているが、最近の夏樹は『常に明るく笑顔』なのだ。

それはもはや『笑顔』ではない。

そして、裕子からは、現在の夏樹からは喜怒哀楽の内の『怒』と『哀』も欠落して見えた。

いつか、夏樹が壊れてしまう日が来る。

そう気付いてしまった裕子は、夏樹に寄り添い献身的に支えた。

現在の、活発に生きる夏樹と巻き込まれてしまう裕子、という図式が出来上がってしまったのも、その頃からだろうか。


■◆■


「・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・」


マラソン大会でゴールした夏樹が荒く息をしていた。

額から汗が大粒のしずくとなって落ち、ポニーテールであらわのうなじも、汗で濡れた(おく)れ毛が色っぽく見える。

体操服も汗で濡れて、夏樹の肌にしっとりと貼り付いていた。


ペットボトルを口につけ、ゴクゴクと飲みはじめる。

夏樹のノドがアップで映され、小さくコクコクと動くノドが見えた。


「はぁ・・」


ひと心地ついたのか、夏樹が吐息をもらす。

首元に触れた手が、自身の身体を撫でる様に下がっていった。


■◆■


「ぁ、アナタは誰ですか・・っ」

「ぁ゛?アンタこそ誰さ・・」

「わ、わたしっ、私はっ、夏樹ちゃんの友達ですっ!」

「へぇ〜~〜~?・・で?」

「・・・で、って・・!」

「アタシが殺るハズだった『黒』を、アンタらが横取りした。だからアタシがアレを殺した。そんだけの話でしょうが?」

「・・・死んでませんっ・・夏樹ちゃんは死んだりしてません・・!」

「はっ!死んでませんだぁ〜?・・いいか?一般人。アレは、アタシの魔力のたっぷり込もった技を喰らってアビスに落ちてった。死んだんだよ、くたばったんだ。現実を見ろ、ボケ」

「っ・・知らないっ・・アナタなんか知らないもんっ!」

「はっ!じゃあ、冥土の土産に教えてやるよ・・アタシはアルタレイション・リリィ。魔法少女殺しのアルトとはアタシのことさ!!」

「・・・そんな・・あのっ・・!?」


「きひひひひひひっ・・♪」


怯える裕子を嘲笑(あざわら)う様な、魔法少女殺しのアルトの相棒精霊のミィミィの笑い声が響いた。


■◆■


白亜の教会で、その白さよりも白い少女が映る。

純白のウェディングドレスに身を包んだ夏樹だ。


カメラの方を見た夏樹が淡く微笑む。


「・・幸せ・・私・・幸せだよ・・」


目元に浮かんだ涙を拭ったあと、夏樹が幸せそうに微笑む。


■◆■


「・・・夏樹ちゃん・・!」


『魔法少女殺しのアルト』にアビスに落とされ、彷徨った果てに、今にも命を落とすところだった裕子。

その裕子を危機一髪たすけたのは、新たな力に目覚めたアーカーシャ・リリィだった。


「お待たせ、裕子♪」

「・・夏樹ちゃんっ・・!」


夏樹が無事であったコトに感極まって大粒の涙を零す裕子。

アビスの過酷な環境でボロボロとなり、あられもない姿でいた裕子に、魔力で作ったマントをかけて裸体を隠すアーカーシャ・リリィ。


「さ、脱出しようか♪」

「出れるの・・?」

「うん。このアビスの過酷な中でね、私、新たな力に目覚めたの♪その力・・今こそ見せてあげるっ・・!」

「夏樹ちゃん・・」

「このアビスは、魔法少女としての力に向き合うキッカケをくれた・・裕子・・これが、私のホントの力よっ!!」


アーカーシャ・リリィから魔力の奔流が溢れ出し、

黒かった彼女の髪の色が白く変わっていく。


「はぁあああああ・・っ!!」


カッ!!と光が(ほとばし)り、目を開けた裕子の目に写ったのは、全身の至る所からバチバチと電化した魔力を放つアーカーシャ・リリィの姿だった。


■◆■


「ね・・今日は帰りたくない・・」


抱きついている夏樹が甘くささやく。

イメージPVを観ている者からは、デート終わりでの別れ際のやり取りの様に思うだろう。


「今日ね・・家に私1人なの・・寂しいな・・?」


夏樹が切なげに囁やき、シーンが変わると、室内になっていた。


「嬉しいな・・」


ソファに座る視界で、夏樹が隣に座る。

こちらを流し目で見た夏樹が蠱惑的に微笑む。

次の瞬間、夏樹がソファに寝転び、夏樹を見下ろす角度に変わった。


「・・・優しく・・してね・・?」


■◆■


「ここまでね、魔法少女殺しのアルト!覚悟しろっ!!」

「っ・・!」


格段にパワーアップしたアーカーシャ・リリィに圧倒され、アルタレイション・リリィが悔しさに顔を歪ませる。


「・・・夏樹ちゃん・・」


近くの岩の影から、裕子が見守る。


「・・・終わりよ」


アーカーシャ・リリィが片手を構える。

その手に濃密に魔力が圧縮され、魔力の刃が形作られていく。


「・・・開放・・!」


アーカーシャ・リリィが振り上げた腕の先に、濃密な魔力が固まって出来た武装が出現していた。


「魔力武装、展開っ・・!」


武装がアップで映し出され、その先からなめるように映されていく。


鎮魂歌(レクイエム)弐式(アンコール)来世(あすへの)希望(いのり)



「あ〜・・前半で6話まで行きたかったのに〜っ!?」

「仕方なかろう、夏樹・・」

「ニャニャンが1話だけ長くするからだよっ!も〜~っ!」

「・・我が悪いわけでは無いと思うのだがな・・(ぴーぶいとやらを合間合間に入れなければ間に合ったと思うのだが・・?)」

「もー!もー!もー!」

「仕方あるまい。・・・しかし、総集編というより、部分部分でのダイジェストのようだな」









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【オーディオコメンタリー Ver.】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「やっほー♪元気ー?」

  【夏樹:こんにちは・・夏樹です。今回はよろしくお願いします】

明るめの焦げ茶色の髪、ブレザータイプの制服、スカートはチェック柄のプリーツのミニスカート、紺色のソックスにローファー、いかにもな女子高生だ。

  【夏樹:・・・誰、この人】

「みんなー、先週ぶりだねー♪アタシは夏樹♪斎木(さいき)夏樹(なつき)だよっ♪もちろん知ってると思うけどっ☆」

  【夏樹:私っ!?この人、私なのっ!?】

に〜っこりと笑い、ウインクした。

おまけに投げキッス付きだ。

  【夏樹:ちょっ・・止めてっ!?】

「さーて、今週の『魔法少女アーカーシャ・リリィ』は、1クール目の12話分の総集編回なのでーす♪」

  【夏樹:タイトルっ!変えちゃってるし!?】

夏樹がクルッと回ると、短いプリーツスカートもふわっと舞い上がる。

  【夏樹:見えちゃうっ!押さえて!スカート押さえてっ!?】

残念ながら、スカートの中は見えなかった。

  【夏樹:見えなくて良いからっ!!見えちゃダメなヤツだから!!】

DVDリマスター版でのパンチラ解禁仕様に期待大だ。

  【夏樹:しないでっ!?ていうか、DVDって!ぁ、そっか・・この時代だと、まだ・・?】

リマスター版では、第1話で視聴者の話題をさらった『裕子との●●●シーン』も、『お部屋真っ暗仕様』から『薄暗い部屋仕様』になると言われている。そちらも期待大だろう。

  【夏樹:無いから!!ていうか、なんで私と裕子を百合関係にしたがるのっ!?】

いつか、DVDよりも画質の良い媒体が開発されれば良いのだが、未だにLDやVHS媒体の映像ソフトが発売されている現状を見るに、まだまだ先のことかと思われる。


「今回は合間合間にアタシのイメージDVDからPVも入れてくねっ♪気に入ったら買ってねー♪」

  【夏樹:な、ん・・で、すって・・っ!?】

■◆■


高校生ながらグラビアアイドルとして活躍する夏樹は、すでに写真集を3冊発売している。

水着姿だけでなく、魅惑的なランジェリー姿や各種コスプレ姿もバッチリ収録されていて、各本、すでに二度の重版済みだ。

三度目の重版も近いと言われている。

夏樹は女子高生で人気グラビアアイドルで魔法少女活動もしているから、とっても大忙しだ。

  【夏樹:この私・・何なの・・何がしたいの・・?】

「今回の水着は大胆なタイプにしてみましたー♪」

  【夏樹:わーー!!!観ないでーーっ!!!】

カメラ前で大胆なポーズを取る夏樹のバストアップやヒップのどアップ映像が映し出された。

  【夏樹:止めてぇっ!!観ないでぇ!?】

更に、5作目のイメージDVDに収録されているセクシーシーンの一部が映された。

  【夏樹:この映像のマスターどこっ!?今すぐ灼き尽くしてやるからっ!!】

蠱惑的に微笑む表情は、とても10代の少女とは思えなかった。


■◆■


「さて、PVは楽しんでもらえたかなー?じゃ、第1話から、おさらい行ってみよー♪」

「では、我も協力しようではないか」

「お。ニャニャンも協力してくれるの?ありがと〜♪」

  【夏樹:コレがニャニャン!?全く別精霊なんですけどっ!?】

夏樹の身の丈を優に越す体長の精霊のニャニャンが現れ、夏樹が首筋に腕を回して顔を埋める。

長毛種の猫を巨大にして凶悪な容貌に変えた様な見た目のニャニャンだが、夏樹にとっては魔法少女になってからのかけがえのない相棒だ。


「あ〜〜モフモフさいっこ〜~♪」

「よさぬか、夏樹・・観られておるのだぞ?」

「気にしないもーん♪ぁ〜・・あったか〜・・」

  【夏樹:渋い声で威厳たっぷりのニャニャンとか・・別存在過ぎなんですが・・?】

ニャニャンがたしなめるが、夏樹はモフモフの堪能を止めない。

ニャニャンは諦めた様に溜め息を吐くと、夏樹が満足するまで待つコトにした。


「では、夏樹のぴーぶい?とやらを見て待つが良よい」

  【夏樹:いや、止めて!?本編のニャニャンなら止めないとオカシイでしょ!!】

■◆■


プールで泳ぐ夏樹の背後のローアングル映像が流れ、濡れた髪をかき上げる色っぽいシーンに続いた。

  【夏樹:映さないで〜・・観ないでぇ〜・・・!】

プールから上がった夏樹がお尻の水着の食い込みを直し、カメラ前を手で塞いだ。

その後は、ほっぺたを膨らませて怒った様な表情になり、上着を羽織った。

上着の前を閉める際に、ジッパーが上がるにつれて、上着の左右に挟まれた胸が寄せられてたわみ、胸の谷間を強調する様に両腕が寄せられた。

  【夏樹:もうホント止めて・・ヤダ・・ヤダ〜・・っ!///】


■◆■


「夏樹は寝てしまったので、我が進めていくとしよう」

  【夏樹:いや、止めてってば!】

ニャニャンが首を動かすと、彼の巨体の長い毛並みに埋もれて寝息を立てる夏樹が居た。


「確か1話からであったな・・アレは、あまり思い起こしたくは無いのだが、仕方あるまい・・」

  【夏樹:じゃ止めよ。ニャニャンが嫌がるくらいなら止めよ!ね!?】


夏樹の住む地域には、過去の栄光の成れの果てとでも言おうか・・廃業した工場の跡地が至るところに存在していた。

もちろん、現在進行系で業績好調の工場も数多く存在している。

好調な光射す場と、過去の残照が僅かに残る社会の陰と、そういった光景が雑多に混ざり合う街なのだ。

工業地域らしい街なのだろう。

  【夏樹:ココは変わんないんだね・・ちょっと安心したよ・・】

そんな街の廃工場の1つで、純白のドレスの様な魔法少女装束を翻して、魔法少女アーカーシャ・リリィが戦っていた。

  【夏樹:いいなぁ・・大人っぽいなぁ・・】

彼女の攻撃する先には、魔法少女達の敵である存在、通称『(くろ)』が居る。

  【夏樹:『黒』も居るのか・・・】

『黒』は、彼女の大親友の宇津馬(うづめ)裕子(ゆうこ)を人質に、なんとかしてこの場から逃げ切ろうとしていた。

  【夏樹:あれ・・裕子が魔法少女になってない・・?】

大親友の裕子は、夏樹の幼稚園時代からの友人だ。

母親を産まれながらに亡くしていた夏樹と、育児放棄(ネグレクト)されて育ってきた影響からか人間味の希薄なロボットみたいな少女だった裕子は、何故か引かれ合っていた。

  【夏樹:・・・・】

お互いの足りない部分をお互い同士で補い合うかの様にして仲を(はぐく)み、2人が小学生になる頃には親友と言える仲になっていた。

生憎と小学校の学区が違い別の小学校に通うことになったが、2人の友情は変わらなかった。

そんな2人の関係が激変したのは、2人が中学2年生の頃だった。

  【夏樹:・・?】

裕子が、ほぼ一人暮らしと言える様な家庭環境で長年放置されて過ごしていたコト。

夏樹が、唯一の肉親である父親からの重度の虐待にあい続けていたコト。


それがほぼ同時期に周囲に知れてしまったのだ。

  【夏樹:・・・】

それぞれの親が親権を剥奪され、それぞれが養護施設に引き取られるコトになったが、2人には望外の幸せとなった。

何の偶然か、同じ養護施設で共に過ごせる様になったのだから・・。

高校に入学し、アルバイトして収入を得て、養護施設の親身になってくれた職員を身元保証人に、アパートの賃貸契約をして2人で共に施設を出た。

学業とアルバイトの両立は大変だったが、2人は満たされていた。

満たされていたのだ。

  【夏樹:・・・・良かった・・】

そして、第2の激変が起きるのだが、それは夏樹にだけ起きた。

なんと、夏樹が魔法少女になったのだ。

  【夏樹:この世界だと遅めなんだね・・】

それは、2人で出掛けた夏山キャンプで起きた。

奇妙な地震が起き、地崩れがキャンプ地を襲った。

大ケガをする者達が数多く出たが、2人を除いて、皆が大事(だいじ)なかった。

その例外となった2人が、夏樹と裕子だった。

2人は深い地割れに飲まれて落下した。

何か、ノドを水分が通り、嚥下して夏樹が気付いた時、地震から丸二日以上経っていた。

三日が過ぎ、四日が過ぎても助けが来る様子はなかった。

  【夏樹:・・・】

そして夏樹は希望を捨て、そう遠くない内に来る死を受け入れてしまっていた。

しかし、僅かばかりの気掛かりが残っていた。

暗くとも、すぐ真横に倒れていると分かっている裕子のことだ。

自分は死を受け入れたが、裕子は意識が戻ることすらなく死ぬことになってしまう。

裕子は意識が無いまま、徐々に、徐々に、呼吸が弱く浅くなっていっていた。

何故かノドが乾いていなかったことを除けば、何日も何も食べていないから酷くお腹が空いていた。

いつしか、このまま2人一緒に死ねるならそれでも良いか、と夏樹は納得していた。

どれくらいの時間が過ぎただろうか。

すぐ近くを水が流れていた。

どうやら、地割れの外で雨が降ったらしい。

久し振りに水分で喉を潤せると思ったら、口の周りで固まっていた何かが溶けて舌に触れた。

ひどく鉄の味がした。

  【夏樹:・・まさか・・】

過去に父親から虐待されていた際に何度も何度も何度も、数え切れないくらいに舌に触れた味がした。

血の味だった。

口の中はケガしていないハズなのに何故、懐かしい味がしたのだろう・・と思ったが、裕子にも飲ませたいと思い、自分の身体とは思えないほど重い身体を動かすと、裕子の手が見えた。

目覚めた際から夏樹の顔の側にあった裕子の手に目をやると、薄暗い中でも分かる色が見えた。

ドス黒い赤だ。

  【夏樹:・・やっぱり・・】

「っ・・!」


裕子の手の赤を見て、背筋が凍る。

すでに、これ以上は冷えないだろうと思っていた身体でも感じたくらいに、背筋が冷えた。

ケガなどしていないのに口の中にあった血の味、何故か潤っていた自分のノド、そして赤黒く濡れた裕子の手。

それだけ状況が重なれば、裕子が自分の為に何をしてくれたのかが分か



「はーい、暗いの禁止ーっ!!!」

  【夏樹:ちょっ!何やってるの、この世界の私!?】

「ちょっ、夏樹!ここからが見せ場であろう?お主の嘆きと祈りと願いが届き魔法少女として目覚め、その後、地震の原因となった古びた像を壊し、封印されていた我と出会う流れではないか!」

  【夏樹:ぁー・・そういう出会いかー・・】

「それ、1話じゃん!総集編じゃなくって1話の再放送回になっちゃうじゃんっ!だめっ!だめだめっ!暗いのダメっ!1話分は終了〜~っ!」

  【夏樹:何でよ!イヤらしいPVなんかより大事でしょ!?】

「ぬぅ・・」

「はーい、暗くなり過ぎちゃったから、またイメージDVDから、選りすぐりシーン行ってみよー!」

  【夏樹:や〜め〜て〜~〜・・!】


■◆■


「ね、お兄ちゃん♪次はアレ乗りたいなっ♪」

  

『大好きなお兄ちゃんと遊園地デート』というシチュエーションで、夏樹のイメージDVDの中でも人気シチュの1つだ。

  【夏樹:吐きそう・・吐いて良い?】

「今日は1日、お兄ちゃんは私が独占しちゃうんだからねっ?」

  【夏樹:勘弁して〜・・ほんと止めて〜・・】

胸を思いっ切り押し付けて腕に抱きついているシーンが俯瞰で撮られていて、販売会社には「サイン会であのシーンを再現して欲しい」という要望も多数届いたそうだ。

しかし生憎と、夏樹の所属する『いづねプロ』は所属タレント達や女優達を安売りはしていない。

「写真集やイメージDVDで我慢して」で押し切るだろう。

  【夏樹:『いづねプロ』って・・まさか『いづね様』が・・?】


■◆■


「どう?気分転換できたかな?」

  【夏樹:できません。吐きそうです・・!】

夏樹がイメージPVと同じ様に胸を寄せてみせる。

制服姿なので、ほとんど身体のラインは出ない。

しかし、ブレザーの内側のブラウスを押し上げるたわわな双丘が眼を惹きつける。

  【夏樹:もしかして、私、嫌がらせされてる・・?セクハラって言葉知ってる?知らないよね?】

「過去は過去、今は今だからねー。確かに昔はいっぱいヤなコトあったけど、その分取り返せる様に明るく生きるって決めたんだよね〜♪」

  【夏樹:・・それで、なの・・?】

先程までの軽さが芝居であったかの様に静かな表情で、夏樹は苦笑した。


「じゃ、2話からのダイジェスト行ってみよー♪」



入院していた2人が退院するまでに、一月以上かかった。

正確には、裕子がまともに動けるようになるまで時間が掛かったのだ。

地割れに落下した際に何本も肋骨を折って肺が傷付いていた上に、吐血で自分の命は長くないと悟った裕子は意識が戻らない夏樹だけでも生還して欲しいと自身の腕を切り、血で夏樹に水分補給させていた。

  【夏樹:ホントの世界の裕子でも、やりかねないなぁ・・】

意識を失って仮死状態になっていなかったならば、間違いなく失血死していたのだ。

夏樹が魔法少女となるのがあと少し遅ければ、治癒魔法をかけられることもなく死んでいたハズだし、裕子の生還は幾つもの偶然が重なって起きた、まさしく奇跡だったのだ。

ニャニャンと契約した後に救助隊に発見されて入院したが、裕子と同室なのが幸いし、治癒魔法で裕子の治癒を加速させた。

夏樹がそうしていなかったなら、裕子の意識が戻るのも退院も、何倍もかかっただろう。


そして退院したのだが、入院費の請求が待っているし、当然アルバイトはクビにされているだろうし、賃貸アパートからも追い出されてしまうだろう、そう覚悟して家路についた2人だった。

  【夏樹:私も裕子も世界から嫌われてるのかなぁ・・私達が何をしたっていうの・・?】

が、マスコミが『奇跡の生還を果たした、不幸な生い立ちの薄幸の美少女達』と報道していた為に集まった寄付金で入院費も当面の家賃や生活費も賄えた。

周囲の人々に自身の生い立ちが知れ渡ってしまったことを除けば、運命の逆転が起きたと言えた。

  【夏樹:良かった・・!】

そして2人に寄って来る芸能界へのスカウト。

裕子は忌避したが、夏樹は『2人の将来』を見据えて芸能界に身を投じた。

恥ずかしくて堪らないグラビア撮影や、頭がおかしいのではないかと思うアングルや接写をしてくるイメージDVD撮影に耐え、明るい美少女を演じた。

  【夏樹:・・・】

生い立ちのほとんどが白日のもとに晒されてしまったのだ。

これで暗い顔などしていては、自分の生まれた意味すら無くしてしまいそうだと思ったからこそ。

いつしか、本当の自分と演じる自分が混ざり合い、現在の夏樹になっていった。

裕子は知っているが、最近の夏樹は『常に明るく笑顔』なのだ。

それはもはや『笑顔』ではない。

そして、裕子からは、現在の夏樹からは喜怒哀楽の内の『怒』と『哀』も欠落して見えた。

いつか、夏樹が壊れてしまう日が来る。

そう気付いてしまった裕子は、夏樹に寄り添い献身的に支えた。

  【夏樹:・・裕子・・ありがとう・・】

現在の、活発に生きる夏樹と巻き込まれてしまう裕子、という図式が出来上がってしまったのも、その頃からだろうか。


■◆■


「・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・」


マラソン大会でゴールした夏樹が荒く息をしていた。

額から汗が大粒のしずくとなって落ち、ポニーテールであらわのうなじも、汗で濡れた(おく)れ毛が色っぽく見える。

体操服も汗で濡れて、夏樹の肌にしっとりと貼り付いていた。

  【夏樹:・・・ねぇ。さっきまでの感動返してもらえないかな・・?・・空気読もうよ・・?】

ペットボトルを口につけ、ゴクゴクと飲みはじめる。

夏樹のノドがアップで映され、小さくコクコクと動くノドが見えた。


「はぁ・・」


ひと心地ついたのか、夏樹が吐息をもらす。

首元に触れた手が、自身の身体を撫でる様に下がっていった。

  【夏樹:・・イヤらし過ぎるっ・・!】

■◆■


「ぁ、アナタは誰ですか・・っ」

「ぁ゛?アンタこそ誰さ・・」

  【夏樹:・・あれ・・?】

「わ、わたしっ、私はっ、夏樹ちゃんの友達ですっ!」

「へぇ〜~〜~?・・で?」

  【夏樹:ぇ・・?・・この声・・まさか・・?】

「・・・で、って・・!」

「アタシが殺るハズだった『黒』を、アンタらが横取りした。だからアタシがアレを殺した。そんだけの話でしょうが?」

「・・・死んでませんっ・・夏樹ちゃんは死んだりしてません・・!」

「はっ!死んでませんだぁ〜?・・いいか?一般人。アレは、アタシの魔力のたっぷり込もった技を喰らってアビスに落ちてった。死んだんだよ、くたばったんだ。現実を見ろ、ボケ」

「っ・・知らないっ・・アナタなんか知らないもんっ!」

「はっ!じゃあ、冥土の土産に教えてやるよ・・アタシはアルタレイション・リリィ。魔法少女殺しのアルトとはアタシのことさ!!」

「・・・そんな・・あのっ・・!?」

  【夏樹:どの!?まさかと思ったけどホントにアルトの声だったっ!?】

「きひひひひひひ・・♪」


怯える裕子を嘲笑(あざわら)う様な、魔法少女殺しのアルトの相棒精霊のミィミィの笑い声が響いた。

  【夏樹:ミィミィこんなんじゃないからっ!!こんな悪意の塊みたいな生き物じゃないからねっ!?】

■◆■


白亜の教会で、その白さよりも白い少女が映る。

純白のウェディングドレスに身を包んだ夏樹だ。


カメラの方を見た夏樹が淡く微笑む。


「・・幸せ・・私・・幸せだよ・・」

  【夏樹:・・・きれい・・】

目元に浮かんだ涙を拭ったあと、夏樹が幸せそうに微笑む。


■◆■


「・・・夏樹ちゃん・・!」


『魔法少女殺しのアルト』にアビスに落とされ、彷徨った果てに、今にも命を落とすところだった裕子。

その裕子を危機一髪たすけたのは、新たな力に目覚めたアーカーシャ・リリィだった。

  【夏樹:ぇ。・・ウェディングドレス姿・・終わり・・?・・・ウソでしょ・・?】

「お待たせ、裕子♪」

「・・夏樹ちゃんっ・・!」


夏樹が無事であったコトに感極まって大粒の涙を零す裕子。

アビスの過酷な環境でボロボロとなり、あられもない姿でいた裕子に、魔力で作ったマントをかけて裸体を隠すアーカーシャ・リリィ。


「さ、脱出しようか♪」

「出れるの・・?」

「うん。このアビスの過酷な中でね、私、新たな力に目覚めたの♪その力・・今こそ見せてあげるっ・・!」

「夏樹ちゃん・・」

「このアビスは、魔法少女としての力に向き合うキッカケをくれた・・裕子・・これが、私のホントの力よっ!!」


アーカーシャ・リリィから魔力の奔流が溢れ出し、

黒かった彼女の髪の色が白く変わっていく。


「はぁあああああ・・っ!!」


カッ!!と光が(ほとばし)り、目を開けた裕子の目に写ったのは、全身の至る所からバチバチと電化した魔力を放つアーカーシャ・リリィの姿だった。

  【夏樹:・・格闘マンガ?・・私、スーパー何とか人みたくなっちゃってるし・・】

■◆■


「ね・・今日は帰りたくない・・」


抱きついている夏樹が甘くささやく。

イメージPVを観ている者からは、デート終わりでの別れ際のやり取りの様に思うだろう。


「今日ね・・家に私1人なの・・寂しいな・・?」


夏樹が切なげに囁やき、シーンが変わると、室内になっていた。


「嬉しいな・・」


ソファに座る視界で、夏樹が隣に座る。

こちらを流し目で見た夏樹が蠱惑的に微笑む。

次の瞬間、夏樹がソファに寝転び、夏樹を見下ろす角度に変わった。


「・・・優しく・・してね・・?」

  【夏樹:・・無視。もう知らないよ。こんなの知らない・・無視無視無視無視無視・・】

■◆■


「ここまでね、魔法少女殺しのアルト!覚悟しろっ!!」

「っ・・!」


格段にパワーアップしたアーカーシャ・リリィに圧倒され、アルタレイション・リリィが悔しさに顔を歪ませる。


「・・・夏樹ちゃん・・」


近くの岩の影から、裕子が見守る。

  【夏樹:ぃゃぃゃぃゃぃゃぃゃ・・何で居るの・・おかしいでしょ・・魔法少女でもない裕子居たら死んじゃうでしょ・・!見守るより逃げようよ!】

「・・・終わりよ」


アーカーシャ・リリィが片手を構える。

その手に濃密に魔力が圧縮され、魔力の刃が形作られていく。


「・・・開放・・!」


アーカーシャ・リリィが振り上げた腕の先に、濃密な魔力が固まって出来た武装が出現していた。


「魔力武装、展開っ・・!」


武装がアップで映し出され、その先からなめるように映されていく。


鎮魂歌(レクイエム)弐式(アンコール)来世(あすへの)希望(いのり)

  【夏樹:ぉー・・・ちょっとカッコイイかも・・・】


「あ〜・・前半で6話まで行きたかったのに〜っ!?」

「仕方なかろう、夏樹・・」

「ニャニャンが1話だけ長くするからだよっ!も〜~っ!」

「・・我が悪いわけでは無いと思うのだがな・・(ぴーぶいとやらを合間合間に入れなければ間に合ったと思うのだが・・?)」

  【夏樹:じゃあ止めよ?分かってるなら止めようよ!】

「もー!もー!もー!」

「仕方あるまい。・・・しかし、総集編というより、部分部分でのダイジェストのようだな」

  【夏樹:ぃゃ・・フィクション過ぎでしょ。今日エイプリルフールなの?】



■■■■■to B PART■■■■■

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