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魔法少女 ノーブル・リリィ  作者: 散桜


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#12『ドキドキ!夏の日差しと魔法少女達!』Aパート


裕子の小学校が夏休みに入り、すでに8月になっていた。

今日は、夏樹と2人で市民プールに来ている。

2人共、合宿の際に着ていた水着だ。

今はプールのフチに座り、足を揺らしていた。

時折、足でパシャリと水がはねた。

周りには水着の老若男女が行き交う。

しかし、裕子の水着はともかく、スクール水着姿の夏樹は少し浮いていた。

スクール水着だから浮いているのではない。

少し見渡しただけでも、スクール水着の男子や、小学校低学年くらいの女子も居た。

しかし夏樹のスクール水着姿が浮いて見えるのは、本人の魅力が大きいだろう。

水着だけで比べたなら、隣に座る裕子の水着はカラフルで露出もスク水よりは多い。

しかし、隣に座る夏樹の方が少しばかり大人びていて落ち着いた雰囲気の為に、目を引くのだ。

目を引くのに野暮ったいスク水なのだから、ギャップは更に増すのだろう。


2人は色々話していたが、今はニャニャンの話になっていた。

夏休みに入ったことにより、学区が隣で違う小学校だから平日は会う時間が限られてしまう問題が取り払われているのだ。

夏休みに入り ほぼ毎日会っているからこそ、気付くこともある。

ここしばらく、裕子はニャニャンの姿を見ていなかったのだ。


「何か、ニャニャンが居ないのに慣れてきちゃったかも」

「・・私も。最近は裕子と一緒の時以外は1人で魔法少女活動してるから、少し寂しいけど」

「ニャニャン、どこに行ってるんだっけ?」

「昨日の夜、連絡があったんだけど、京都に着いたみたい」

「京都かー・・。来年、修学旅行で行くの楽しみだなー・・」

「私も」

「うん♪・・そういえば、ニャニャンは京都で何やってるの?」

「ある魔法少女に会いに行ってるんだって」

「・・どんな人?」

「んー・・・。『聖女』を抜かせば、この国で1番強いかもしれない人かな・・?」

「へぇ・・。有名な人?」

「ん〜・・名前はあまり知られてないかも・・?」

「そっか・・」

「裕子はデイドリーム・リリィって聞いて分かる?」

「分かんないかも」

「じゃ、イナリ様」

「んーん」


裕子が首を振る。


「じゃ、和服みたいな格好で、キツネ耳とキツネ尻尾の魔法少女」

「あ。その人?」

「そう」

「その人なら見たことあるよっ!TVで見た!何かカワイイな〜って思った。小さくて可愛かったもん♪尻尾がフリフリしてたのも可愛かったな〜♪」

「・・そっか」


夏樹が少し苦笑する。


「あのキツネの耳と尻尾も魔法少女装束の一部なのかな?」

「あの耳と尻尾は・・。・・?」


夏樹が離れた場所を見て眉をひそめた。


「裕子。耳に魔力集中して。あそこの人達の話を聞こうと意識してみて」


夏樹が、離れた場所でスマホを手に話し合う数人の大人達を指差す。


「ぅん。・・・・・・・ぇ?」

「裕子、行こう。どこかで変身しないと」

「うんっ・・!」




■■OP:『Don't stop.Don't look back.』歌:斎木(さいき) 夏樹(なつき)■■


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『認識阻害』を少しずつ強めながら歩いて更衣室の中を経由しつつ変身した2人は、更衣室の出入口を出てすぐに飛び上がった。

周囲に居た一般客や、プールに居た際から裕子に熱い視線を向けて尾行していた男子小学生などには気付かれなかっただろう。



[アーシャちゃん、さっきの人達が話してたのってコレかな]


飛びながらスマホでSNSを検索したアイソレイト・リリィが、画面をアーカーシャ・リリィに向ける。

動画で、撮影されているのは阿鼻叫喚の様子だった。

その動画は、東海地方沖合いで船同士の衝突事故に遭遇したという乗客の投稿したものだった。


[ぅん・・間違いないと思う]


先程、プールに居た2人が耳にしたのは、「静岡県沖合いで大型船の衝突事故が起きて、片方の船が沈没間際」という話だった。

施設内での規制が緩く、女性の水着姿を盗撮していた男達の持っていたスマホに、たまたまポップアップされたニュース速報だったのは、かなりの皮肉ではあったが・・・。


2人の出せる最速の速度で飛行し、海を目指していた。

今は2人共、『認識阻害』を切って飛んでいる。

『魔法少女が救助に向かっている』と地上の人々に見せる為であり、ニュースなどを耳にしていない魔法少女の目に触れれば救助に向かう魔法少女の数を増やせるかもしれない、という意味でもあった。

アーカーシャ・リリィが先輩魔法少女のアルタレイション・リリィから教わった、多くの魔法少女の手が必要そうな場合に取る方法だった。



[アイ、見えてきた・・!]

[ぅん!]


沿岸から離れしばし飛んだ2人の視線の先に、その光景が見えてきた。

かなりの数のコンテナを積載したコンテナ船と、そのすぐ横には横倒しの大型客船が見える。

周囲には、コンテナ船から落ちたらしい大量のコンテナが浮かび、少しずつ少しずつ沈んでいっている。

そのコンテナの間には、小型救命ボートが何隻も浮いていたし、それに泳いで向かう人々や溺れかけでもがく人々などが無数に見えた。


[行こう!時間との勝負!全員助けるよ!]

[うん!]


2人も救助の輪の中に向かって飛び込んでいった。



「そこの人達!この辺の色変わってる辺り固めたから、船来るまでココで待ってて!?」


1人の魔法少女が海面の一画を指差す。

たしかに、彼女の言う通り、その辺りの海水の色が変わっていた。

濃い目の黄色で、揺れる海面の10センチくらい下にあるのだが目立っていた。


彼女に声を掛けられた人々が続々と、その辺りを目指して泳いでいき、その足場の上に這い上がっていく。

あっという間に、海上の足場は十数人でいっぱいになってしまった。


「それ、あんま動くと壊れて海水に戻っちゃうから、あんま動かないでねー!?」


海中の足場に乗った人々に叫びかけつつ、新たな足場を次々と作っていく。

途中で、波の勢いを打ち消す小さな防壁の様なモノも、いくつか作っていた。

彼女が居る辺りは、見る間に足場と波消し防壁でいっぱいになっていった。



「いくよ〜!?」


1人の魔法少女が間延びした舌っ足らずな叫び声をあげ、両手を真上に上げた。


彼女の上に、かなり網目の大きな、魔力製の巨大な光の網が出来ていく。

25メートルプールくらいの大きさまで広がっただろうか。


「皆さ〜ん!この網に掴まって下さ〜い!」


叫ぶと同時に、海面に網を投げ込む。

海面に浮く人々が網に寄って行くと、網目が伸びて、近寄った人を巻き込んでいく。


そして、網目が見る間に縮まり、網目の内側に居た人々をガッチリとホールドしていく。


そして、網が真上に引き上げられる様に持ち上がった。

人々をホールドした網が海上1メートルくらいの場所に停止する。


「救助まで、そのまま待ってて下さいね〜!」


叫ぶと、次の救助に向かっていった。



アーカーシャ・リリィも、空中に魔力で足場を作り、海面から人々を次々と引き揚げていく。


次はどこかと周りを見回すが、到着直後より遥かに要救助者が減っていた。

周りでも何人もの魔法少女達が救助しているのだ。

大型客船の船体が完全に海中に没してからかなり経つ気がするが、救助の終わりは見えてきたと言って良いだろう。


少し気が抜け、落ち着けたことから、周りをよく見渡せた。

アーカーシャ・リリィの近くの海面にはもう、要救助者は見当たらなかった。


「・・アイ・・どこだろ・・」


最初はアーカーシャ・リリィとアイソレイト・リリィは近くで救助活動をしていたが、船体の水没間際に、船内からギリギリ脱出できた人々の救助の方に向かったのを見たのが最後だった。


到着直後と違い、周囲には様々な船舶が来ていて、救助活動を手伝っている。

視界が開けていないので見えていないだけで、きっとどこかの手伝いをしているハズだ。


「そこの魔法少女さーん!」

「っ!」


いつの間にか、近くに船が止まっていた。


「ぁ、はいっ!」

「そこの方々を船に移しても大丈夫ですかー?」


海風にさらされる中、アーカーシャ・リリィに叫んで確認する船員さんに了承の返事をし、魔力の足場を伸ばして船につなげた。



「もう大体助け出せたよな!?」

「うん・・でも・・・」


アイソレイト・リリィも含む、沈降する船に乗り込んでいった魔法少女達のうち、船内に残るのはすでに3人になっていた。

他の魔法少女達は、要救助者達を抱えて徐々に徐々に船内から脱出していっていたのだ。


生命力感知に長けた魔法少女が各魔法少女に念話を送り指示出ししていた。

彼女が感知出来た生存者のほぼ全ては救助されて、魔法少女と共に船外へと脱出できていた。

しかし、船の中層階下部から感じられた生命力は、依然、その位置から動いていない。

つまり、脱出できていないのだ。

だが、大型客船の中層階、しかも下部の方だ。

大型客船の広大さと入り組んだ構造から、今更向かって間に合う場所では無いのだ。


「〜~っ!」


ダン!!と音を立てて、片方の魔法少女が殴りつけた壁が歪む。


「・・・行こう。逃げないと」

「でも!!」

「もう間に合わない・・今から向かったって、辿り着けたとして、私達も船と運命を共にすることになる・・!」

「くそっ!くそぉっ!くそっ!!ちくしょうっ!!」

「私だって悔しい・・!でも、もう魔力が残り少ないから行けないの・・!行きたくても行けないのよ・・!」


静かに、内にたぎる悔しさからか、顔が悲痛に歪んでいた。


「・・・他の魔法少女も、もう居ないよな?」

「・・たぶん。最後にビーコン飛ばせたのが5分くらい前だけど、私達以外は奥の方の2人と魔法少女が1人、それで最後で間違い無いハズ・・」

「・・そいつも脱出したよな・・?」

「・・・たぶん」

「・・」

「・・行こう。2人助けられなかったけど、その悔しさの分、次は全員助けるの・・!」

「・・ぁぁ」


2人の魔法少女達も船外へと出て、海面に向かって浮上していった。



広大な船内を飛び回っていたアイソレイト・リリィは、少し前に念話が途切れてしまう前に把握したおおよその位置の目安を元にまっすぐ、『領域』で進路を斬り開いて直進し続けていた。

『領域』は、アーカーシャ・リリィに協力してもらって完成した、今の彼女の最大の防御技であり、同時に最大の攻撃技でもあった。

アーカーシャ・リリィに教わった『リアクティブ・アーマー』にアイソレイト・リリィの『力』の『隔絶』を混ぜ込むことで、防御する際は『領域』の前後空間を隔絶して絶大な防御力にし、攻撃する際は細めてぶつけることにより空間を隔絶して空間ごと斬り裂くことが出来る、かなり協力な攻防一体技なのだ。


アイソレイト・リリィは、空中や海面に魔力の足場を作る技術がまだ無かった。

最初はアーカーシャ・リリィの側でアーカーシャ・リリィの作った足場に海面から引き揚げた人々を乗せていたが、大型客船が完全に水没する間際にも少しずつ船内から脱出してくる人々が居るのに気付いて、10人弱の魔法少女達と共に、水没間際の船内に飛び込んだのだ。

沈降し続ける船内、魔力に余裕のある者が船内奥まで飛び、魔力残量ギリギリの者が要救助者と共に海面を目指し、戻って要救助者を待つバトンリレーだ。

魔力の残り少ない者から少しずつ減っていき、

魔力容量の大きかったアイソレイト・リリィは最後の最後まで残っていた。

そして、今に至る。


「見つけたっ・・!」


客室や遊戯施設をいくつも斬り裂き貫通孔を開け、進んだ先にあった一際広い娯楽施設のホールの片隅に、ついに目標の生存者2人を見つけた。

この2人で、船内の生存者は最後のハズだ。

その2人は、高校生くらいの女の子と小学校低学年くらいの男の子だった。

姉弟に見えた。

姉が弟を護るように抱きしめ、うずくまるように座り込んでいた。


「助けに来たよっ!」


アイソレイト・リリィが叫びながら飛んで接近するも、姉弟は動かない。

その姿を見て、アイソレイト・リリィの背筋が凍る。

間に合わなかったのではないか。

助けられなかったのではないか。

すでに死んでしまっているのではないか。

考えたくもないコトが次々と脳裏をよぎる。


姉弟のすぐ側、2人まで1メートルも無いくらいの床に着地したアイソレイト・リリィが、一歩踏み出す。

更に一歩踏み出す。

が、一歩が重い。

身体がとても粘度が高く密度の濃い液体に浸っているかのように、重かった。

自分の呼吸と心臓の鼓動がハッキリと聞き取れるくらいに、何もかもの音が遠く感じられた。

2人に向けて片手を伸ばすも、指先は激しく震え、2人に触れるのを拒否しているかのようだった。

が、その時。


「・・ん・・」


弟を抱きしめる姉の腕が微かに動き、指先が微かに握り締められた。


生きてる。


それが分かり、それまでの身体の重さがウソだったかの様に、2人に更に一歩、歩み寄れた。


「・・」


姉の首に触れると、トクントクンと、確かな脈拍が感じられた。

そして、「死んでいるのではないか。間に合わなかったのではないか」と恐怖から冷え切ってしまっていた指先に、姉の熱い体温が染み入ってきた。

弟の首筋に触れると、同じく脈拍が感じられた。


「・・・よかった・・」


アイソレイト・リリィの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。


「よかった・・っ!」


姉弟を抱きしめる様に腕を回した。


「よ゛かったぁ・・っ!」


涙が次から次へと溢れ出て止まらない。


「よ゛かったよぉ・・っ!」


姉弟を抱きしめる腕に力がこもる。

その時、船体全体を振動が襲った。そして、船の中いっぱいに耳障りな金属のきしむ音が響き渡った。


「・・・はやく、出ないと・・っ!」


驚いたからか、涙は止まっていた。

先程の大きいきしみ音に続く様に、きしむ音は止まない。

こうしている間にも、大型客船は沈降し続けていて、船体各所からは船内に残っていた空気が激しく漏れ出し続けているのだ。

アイソレイト・リリィがまっすぐに突っ切って来た貫通孔も、船外への空気の流出を加速させていたし、船内深くへの浸水を加速させていたのだ。

さらに、深度が増してきたからか、水圧で船体がきしんで浸水量も増す一方だ。


「出ないと・・!」


涙を拭いながら、アイソレイト・リリィが立ち上がる。

が、姉弟の横に立ち上がった直後、目の前がボヤけ、足が震え、全身から力が抜けていった。

ヒザから崩れ落ち、両手が床につく。

身体を支える力も抜けていく。


「な、に・・こ、れ・・?」


アイソレイト・リリィが自身の手を見ると、激しくボヤけて二重に見えていた視界が徐々にモノクロに変わり、ついに真っ白に染まり切ってしまった。


「な、つ・・き・・ちゃ・・・」


アイソレイト・リリィは酸欠から意識を失って、姉弟の傍らに崩れるように倒れた。


■■■■■to B PART■■■■■

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