#11『夏樹ちゃんとデート♪』Bパート
「アーシャちゃん・・コレ・・ホントに、大丈夫なの・・?」
「うん、大丈夫。なぜなら、ここは魔法少女専用保養施設だから」
「・・専用・・?」
アイソレイト・リリィがカウンタの女性を見る。
「はい。アーシャ様の仰られた通り、当旅館は魔法少女の方々専用の宿泊施設となります。そのため、一般の方々の来館や宿泊はお断りしております。いえ、ご協力頂いている魔法少女の方に設置して頂いた術式により、一定以上の魔力を持たない者が地上から辿り着くのは不可能な仕様になっている、が正しいでしょうか」
「・・・」
驚いたアイソレイト・リリィは言葉が出ず、カウンタの女性を凝視してしまう。
「でも・・専用って・・じゃあ、あの人達は・・」
アイソレイト・リリィが、エントランスホールに設置されたソファに座る数人の女性達を見遣る。
よく見れば、浴衣姿の女性に混じり、総レースのミニスカートみたいな浴衣?の女性も居た。
魔力製なのだろうか。
「もちろん、同じく魔法少女の方々でございます。我々スタッフ一同以外、全て、魔法少女の方々ですので」
「そーそー。あたしらも魔法少女だよー。よろー♪」
マッサージチェアに座っていた薄い蛍光グリーンの髪色の女性が、片手をプラプラ振りつつ言う。
そのヒザには、ピンク色のウサギ型の精霊が座っていた。
アイソレイト・リリィが他の宿泊客を見回していると、エントランスホールから伸びた通路の1つをフワフワと浮いて横切る浴衣姿の少女が見えた。
「・・・ホントなんだ・・」
「それでは、アイ様。新規御登録ということで、魔力登録をお願いしております」
「ぁ、はい」
カウンタの女性が促した先には、大人の女性がギリギリ持ち運び出来るくらいの大きさの機器が出されていた。
こちら側には、半球状の透明なガラス球の様なモノが出ていて、タブレットくらいのサイズのモニタが設置されていた。
「では、そちらの半球状の魔石に触れて頂いて、魔力を込めて頂けますでしょうか」
「はいっ」
アイソレイト・リリィが野球のボールくらいの大きさの『魔石』という半球に触れ、手に魔力を込めると、透明な半球が変色していった。
全体的に濃い目の乳白色になったが、時折、新緑の様な鮮やかな薄緑色がマーブル模様の様に混ざって見えた。
ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!
「ぇ」
少し甲高い音が連続で鳴り響いた。
カウンタの女性が機器のモニタを覗き込み、近くに控えていた女性スタッフも寄ってきて、モニタを覗き込んだ。
アーカーシャ・リリィも、モニタを覗き込む。
「・・・ぇ?」
アーカーシャ・リリィが見たモニタには、【すでに登録されています:ペネトレイション・リリィ】と表示されていた。
「・・・ペネトレイション・リリィ・・?」
「アーシャちゃん知ってる?」
「ぅぅん、知らない・・」
「・・」
「失礼致しました。一組前の方の魔力が残留していた様ですね。機器を再起動致しますので、もう一度魔力を流して頂いてもよろしいでしょうか?」
「ぁ、はい。大丈夫です」
女性が機器を再起動操作し、改めてアイソレイト・リリィが機器の半球状の魔石に触れた。
本人だけでなくアーカーシャ・リリィもモニタを覗き込む。
アイソレイト・リリィが魔石に魔力を込めると、今度は濃い目の乳白色だけの色合いになった。
ピピッ!と音を立てた後、モニタに【新規:】と表示された。
「大変失礼致しました。新規魔力登録がされましたので、正規登録完了となります。ご迷惑おかけしました。深くお詫びいたします」
「ぁ、いえっ。大丈夫ですっ」
「これで魔力登録されましたので、『逢庭』系列の施設全てを24時間、年中無休、無料で御使用頂けます」
「・・はぁ」
『系列』と言われても、アイソレイト・リリィはそもそも、『逢庭』というのが何か分からない。
「アーシャ様、アイ様、逢庭ノ湯宿 伊豆・天城別館へおいで頂き、誠にありがとうございます。ごゆるりとお過ごし下さいませ」
■
「二人部屋の確認を致しますので、少しお待ち下さい」と言われ、アイソレイト・リリィとアーカーシャ・リリィはカウンタを離れ、ロビーをブラブラしていた。
「ね、アーシャちゃん。『アイバ』って何なの?」
「『逢庭』はね、魔法少女活動を色々と助けてくれる家なの」
「・・家?」
「そう。すごく昔、魔法少女に助けられた人がいて、その子孫が代々、ずーっと、魔法少女を手助けしているらしいの。今じゃ日本全国隅々まで拡がってるんだって。海外は分からないけど、日本国内ならどこに居ても協力してくれるらしいよ」
「すごい・・」
「逢庭の施設内に置かれた端末で調べれば、自分の活動地域近くの逢庭関連施設の場所も分かるし」
「そっか・・てことは、端愛市の近くがココなの?」
「ぅぅん。隣りの浜松市内に有るよ。けっこうおっきいホテルが浜松市の拠点で、市内各地に出張所がいくつか有るかな」
「端愛にもあれば良いのに」
「ま、しょうがないよ。浜松市、端愛の10倍くらいの大きさだし、静岡県内でもおっきな拠点は浜松と静岡と熱海にしかないみたいだし」
「そっかー・・ん?」
「?」
「じゃ、今日はなんで伊豆だったの?」
「ぁぁ・・それはね・・せっかくの連休だから、自然が多くって温泉でゆっくりできる所でアイと過ごせたらなぁ・・って思ったの」
「アーシャちゃん・・///」
「ゆっくりしよ」
「ぅん・・///」
「Hi, Asha!」
「?」
「Long time no see, Asha.」
「・・ミア。久しぶり。・・言葉」
「!・・おっと・・ごめんごめん。うれしくって、つい」
「んーん、大丈夫」
「でもホント久しぶりよね、アーシャ♪あと、そちらは?お友達?」
「そう。成り立てだから、今日は『逢庭』体験に」
「なるほどね〜♪たしかに初々しい感じするわ〜♪」
「そう?」
「そうよ。で、紹介してくれないの?」
「・・アイ。紹介しても大丈夫かな」
「ぁ。ぅん。大丈夫」
アーカーシャ・リリィに話し掛けて来た子が居たと思ったら、金髪の外人さん。
アイソレイト・リリィはアーカーシャ・リリィの後ろに隠れる様な位置にこっそり移動していた。
「貴女、アイって愛称かしら?私はミアハ・レジット。気軽にミアって呼んでくれて大丈夫よ♪魔法少女バインディング・リリィをやってるわ♪」
「ぇ?・・ぁ、はい・・。ぇと・・アーシャちゃん?・・ぇと・・こういう場合?・・どう、したら・・?」
アーカーシャ・リリィに紹介を促したのに、紹介される前に、矢継ぎ早に魔法少女名どころか本名らしい名前まで名乗った金髪の少女の自己紹介に、アイソレイト・リリィはテンパった。
だって、アーカーシャ・リリィからは『魔法少女名は能力に直結してるから愛称で名乗るもの』と教わったのだ。
初対面の挨拶で魔法少女名フルと本名?まで名乗られるとは思っていなかった。
「ミア!魔法少女の常識守って!?」
「え〜〜?魔法少女名ボヤかすってヤツ〜?でもそれって、この国の魔法少女の常識でしょ?アメリカじゃ、魔法少女どうし、本名まで名乗るもんよ?」
「ここ、日本!守る、常識!分かった!?」
「なんでカタコトなのー。ウケるー♪」
「ぁ・・えっと・・」
迷ったアイソレイト・リリィは、ミアハ・レジットに近寄り、内緒話みたく口元に手を寄せ、ミアハ・レジットの耳元に寄せ小声で自己紹介することにした。
「アイソレイト・リリィです。えっと・・宇津馬裕子って言います」
「お。よろしくね♪呼び方はアイで良いのかな♪」
「ぁ。はい・・それでおねがいします」
「ん♪アイ、よろしく〜♪」
そのまま、ミアハ・レジットはアイソレイト・リリィの頬に触れる程度のキスをした。
「ふぇえっ!?」
「ミア!ここ日本!挨拶のキスとかしないからっ!」
「え〜?ハグはガマンしたよ〜?」
「ハグかキスならキスの方をガマンしてっ!?あと、出来たら両方ガマンで握手とかにしてっ!」
「かた〜い。堅いよアーシャ〜・・」
「堅くないっ!絶、対、堅くないよっ!」
「堅いひとは大概そういうんだよね〜?」
「え。ぇと」
急にミアハに話を振られたアイソレイト・リリィがアタフタとする。
「落ち着いて下さい」
アイソレイト・リリィの後ろから、両肩にそっと手が置かれた。
「ミア。アナタのフレンドリーさは美徳だと思いますが、この国の初対面時の距離感ではないと判断します」
「そーかなー。フィーラの時もこんなんじゃなかったっけ?」
「私は・・この世界の『普通』の物差しを測りかねていた頃だったと思いますが」
「だったっけ?」
「はい。でした」
肩に触れる柔らかい感触からジンワリとしみてくる温もりに、アイソレイト・リリィが落ち着いていく。
後ろから支えられるくらいの距離で、かなりの美少女だ。
中性的な雰囲気で、男装したなら、さぞや女子が殺到するだろう。間違いない。
「ミアがフレンドリー過ぎでごめんなさい」
「ぁ。ぃぇ・・」
「私はフィーラ。ロンギング・リリィです。リリスとお呼びください」
耳元に口を寄せ、ささやく様に自己紹介された。
吐息がくすぐったかった。
「はぃ・・宇津馬、裕子です・・///」
「よろしくお願いします。私もアイと呼んで構いませんか?」
「ぁ、はいっ。よろしくお願いしますっ」
「よろしくお願いします」
「アイ。この子はガブ」
アーカーシャ・リリィが紹介してくれたのは、彼女より少し背が低いくらいの少女だった。
後ろからアーカーシャ・リリィが両肩に手を置き、後ろから覗き込むように紹介してくれた。
浴衣姿でもハッキリわかる華奢さで、肩に掛かるくらいの長さの自然なブロンド、そして目がとても特徴的だった。
オッドアイで、碧眼の左目と角度によって色を変える虹色の右目がとても綺麗だった。
にっこりと笑い、すっと片手が差し出された。
アイソレイト・リリィが握手に応じる。
[初めまして。私はホープ・リリィ。ガブリエラ・エルヴィーナです。気軽にガブと呼んで下さい]
「ぁ・・・念話・・ぇと、アイソレイト・リリィ・・宇津馬裕子です。アイって呼んでください。よろしくね、ガブちゃん」
[はい、よろしくおねがいします、アイ♪]
念話で挨拶したガブと小声で返したアイソレイト・リリィ。
傍目から見れば違和感たっぷりだが、ホープ・リリィを知る面々ばかりなので、アイソレイト・リリィ以外は「いつものこと」といった様子だ。
「3人共、日本語すごくうまいね」
「ん?」
「ん」
「・・」
アイソレイト・リリィとしては、いかにも外人といった感じの3人がとても流暢に日本語を話しているのを、純粋に褒め称えたつもりだった。
しかしミアとリリスとガブはキョトンとした顔をした後、アーカーシャ・リリィを見た。
「ぁ・・えっと、アイ・・ソレも『術式』なの」
「え。そうなんだっ・・!?」
「うん。『言語翻訳』。ある程度の聞き取りは必要なんだけど、一度記録された『言語』なら不自由なく使える様になるよ」
「すごい・・!」
「そ。だからアタシも厳密には日本語喋ってる訳じゃないんだよねー。でもフィーラとガブは自力で日本語勉強中だったよね?」
「はい。私の場合、この世界で初めて接した言語が日本語なので、ベースといえるでしょう。私の母国語はアステカ文字とかヒエログリフとかという言語体系に近い構成らしいですが」
[私は父が牧師で共に来日したもので、今はインターナショナルスクールに通っています。日常会話はまだ不可能なので、魔法少女同士の場合は無難に念話で話すことにしているの]
「すごーい・・」
「アーシャ様、アイ様、お部屋の御用意が出来ましたので御案内致します」
ミアとリリスとガブと、「後で時間を合わせて露天大浴場に行こう」と約束してレインIDを交換して別れた。
アイソレイト・リリィは、新たに魔法少女友達を3人得たし、宿泊中に再確認して必要な『術式』を新たに複数得た。
そして、土日と宿泊し、月曜の午前中にチェックアウトして伊豆を飛び立った。
帰りに浜松市に寄って浜松市内の『逢庭』の拠点を確認してから端愛市に戻ったのだった。
■
「お疲れ様。交代ね」
帰宅した夏樹は、身代わりをしてくれていた『人形』を停止させ、消した。
「おかえり、夏樹」
「ただいま。ニャニャン」
「デートどうだった?」
「ぅん。楽しかったかな・・」
「そっか・・良かったね」
「ん」
「誰か、知り合い居た?」
「リリスとミアとガブが居たよ」
「ぁー・・あの3人かー・・あの3人、よく一緒に居るよねー・・」
「外人友達だからかな」
「1人、外国どころか異世界人混じってるじゃん」
「変わらなくない?日本の外から来たって意味じゃさ」
「そうかな」
「そうだよ」
「そういうものかな」
「そう。・・・」
「夏樹?」
「ニャニャン、分かったの?」
「ん?何のことかな」
「ニャニャン」
「・・」
「ニャニャン」
「・・ん」
「紫は?」
「・・・」
「・・居なかったんだね」
「・・・・居なかった」
「ミィミィも?」
「・・居なかった」
「・・・」
■■ED:『希望の一歩』歌:宇津馬 裕子■■
■■■■■This program is brought to you by the following sponsors.■■■■■
裕子「ふわぁ〜・・♪」
夏樹「裕子、どうしたの?」
裕子「お肌がスベスベなんだよっ♪あそこの温泉、美肌の湯なのかなっ?」
夏樹「どうだったかな・・ニャ、どうだったかな・・」
ニャニャン「ちょっ!?なんでボクに聞くの止めたのっ!?」
夏樹「どうせ、またエッチなこと言い出すに決まってるし」
ニャニャン「そんなコトないって!?」
夏樹「はいはいwww。さ、裕子、次回は?」
ニャニャン「夏樹が冷たい〜!『夏』樹なのに冷たいよ〜っ!」
夏樹・裕子「「うっわ、寒っ・・!」」
ニャニャン「ひっどい!2人してヒドいよ〜!」
夏樹「さ、裕子♪気にせず次回予告して」
裕子「うんっ♪次回、第12話♪『ドキドキ!夏の日差しと魔法少女達!』」
ニャニャン「来た来た来た〜〜!ついに来ました水着回っ!!待ってた!この回を10年待ってたよ〜!」
夏樹「まだ1クール目なんだけど」
ニャニャン「分かってないな〜夏樹は〜♪一日千秋の思いってヤツだよ!」
夏樹「・・そこまで?ちなみに裕子、『一日千秋』って、『一日三秋』って言葉が元らしいよ?」
ニャニャン「ちなみに裕子ちゃん、夏樹は魔法少女になってから、まだ3年経ってないんだよ?」
夏樹「ちょっと、ニャニャン・・今は関係なくない?」
裕子「スゴいっ!夏樹ちゃん、なのにあんなに強いんだねっ!ほんとスゴいよっ♪」
夏樹「・・///」




