#10『友達になって!』Aパート
「っ・・!」
合宿所の女子の大部屋に居た裕子は、突如として感じた感覚に背を伸ばした。
少し前に先生が来て叱られるまで、恋愛や化粧やオシャレの話題で盛り上がっていた室内は、
先生が明かりを消してしまった為に強制的にお開きになっていた。
それぞれが布団に入ってはいたが、
スマホやタブレットを持ち込んだ子はゲームをしたり動画を観たりしていた。
昼間に夏樹から聞いた『聖女』の衝撃的過ぎる真実に混乱していた裕子だったが、夏樹に宿舎に送ってもらってから少しずつ落ち着いていっていた。
夏樹と共に湯船に浸かり、夕方から色々と行事があった後は夕食、その後は入浴時間となり、就寝時間までは自由時間だった。
何故か隠れて裕子を見守っていたニャニャンが飛んで帰る後ろ姿に小さく手を振って見送ったし、その頃には流石に裕子だって落ち着いていた。
寝たフリをしながら「隠れてたニャニャン可愛かったなぁ・・」と思っていた時に、その感覚を感じたのだ。
「・・・あの『黒いの』だ・・!」
■■OP:『Don't stop.Don't look back.』歌:斎木 夏樹■■
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アイソレイト・リリィと合流したアーカーシャ・リリィは、汽水湖の上を飛んでいた。
今は、途切れ途切れに感じる『黒』の感覚を辿っているのだ。
「魔力は大丈夫そう?」
「ん!?」
普段と変わらないくらいの声で話し掛けたアーカーシャ・リリィの声が聞き取れなかった様で、アイソレイト・リリィが大きめの声で聞き返した。
「・・・」
自分を見るアイソレイト・リリィを見たアーカーシャ・リリィは、強風が叩き付けるコトによりバタバタと激しく揺れるアイソレイト・リリィの髪の毛や魔法少女装束を見て、「・・ぁ・・そっか」と気付いた。
「・・」
今、アーカーシャ・リリィとニャニャンとアイソレイト・リリィは、かなりの速度で湖の上を飛んでいる。
合流して出発した当初は ゆっくりめだったのだが、普段のアーカーシャ・リリィの飛行速度の五分の一くらいで飛ぶ彼女を見たニャニャンが、アイソレイト・リリィに「『力』がハッキリした後、飛ぶの楽になった?」と聞いてみたのだ。
ニャニャン的には「遅過ぎるから、もう少し早く飛べない?」と直球で聞きたい所だったが、そんな言い方をしたらアーカーシャ・リリィが気に病む。
だからニャニャンはアーカーシャ・リリィに気を使って、ヤンワリと聞いてみたのだった。
「ぅん、すごく楽に飛べてるよ」と答えたアイソレイト・リリィに頷き返したニャニャンは、アーカーシャ・リリィを見てから目を逸らした。
アイソレイト・リリィに「速く飛んで」と急かしたいのは やまやまだったが、アーカーシャ・リリィが気に病まない言い方が思い浮かばなかったからだった。
そんなニャニャンを見て何か察したのか、アイソレイト・リリィは両手で胸の前に触れて目を細め・・顔を上げたと思えば「だいじょうぶ。もっと早く飛べそう」と答えた。
『力』を正しく自覚した後の彼女の実力が少しばかり気になっていたアーカーシャ・リリィは、「無理しないで」と言いかけて止めた。
例え無理を強いることになっても、基本的な技術は経験して覚えて伸ばしていくしかない、と自身の経験で知っていたからだ。
とはいえ、経験するだけではなかなか気付けないコトも少なくないモノだ。
無言でアイソレイト・リリィに向けて手を伸ばしたアーカーシャ・リリィの手を、アイソレイト・リリィが握った。
「『念話』」
「ぁ」
アーカーシャ・リリィから魔力が伝い、アイソレイト・リリィが驚いた様な顔になる。
《聞こえる?》
《ぁ、ぅんっ。スゴい、聞こえるっ・・!》
《手、離すね?》
《ぅん・・!》
《ホントはゆっくり教えたいけど、今は急がないといけないから コレで話すね?》
《ぅん》
《空を飛ぶ時はね、飛ぶ方向に向けて魔力で作った壁を作るの》
《壁?》
《そう。壁ってくらいしっかりした壁じゃなくって、網みたいな壁かな》
《・・網》
《そう。吹き付けて来る空気は防ぐけど呼吸は出来る、そんな壁を想像してみて?》
《やってみる・・!》
《ん》
アイソレイト・リリィが前を見て、目に力を込める様な顔をした。
「っ!!?」
ズバシャーンッ!!と激しい音がして、2人の前方の水面が爆ぜた。
そして、2人とニャニャンが急停止させられたかの様に止まり、真上に撃ち出すかの様にポーーーーンッと投げ出された。
「ちょっ!?」
「わわわわっ!?」
「っわぁ!?」
アーカーシャ・リリィとアイソレイト・リリィとニャニャン、それぞれが悲鳴を上げるかの様にそれぞれ叫んでいた。
「っと、とと・・!」
空中戦などに慣れているアーカーシャ・リリィとニャニャンは即座に態勢を立て直した。
アーカーシャ・リリィはキチッとスカートの乱れにも気を使う余裕があるくらいだ。
「今のは・・」
突如爆ぜた水面を凝視したアーカーシャ・リリィが片手を水面に向けて構える。
が、水面はすぐに凪いでいってしまった。
「・・攻撃された訳じゃないのね・・」
「みたいだね」
アーカーシャ・リリィの呟きにニャニャンが返した。
「多分、原因は彼女だと思うよ?」
ニャニャンが片手で指し示した方向を見たアーカーシャ・リリィがビキッ!と固まった。
「ん゛ん゛ん゛〜っ!?」
アーカーシャ・リリィの視線の先には、籠もったような呻き声を発する布の塊と、そのてっぺんから上向きに生える、アンダーウェア丸出しの下半身が見えた。
「・・・は・・?・・・ぇ・・?」
あまりに理解不能な光景に、アーカーシャ・リリィが固まる。
「わー、エッチとか飛び越えた光景だねっ」
ニャニャンが洩らした感想に、アーカーシャ・リリィがハッと正気に戻った。
「落ち着いてっ!まずは態勢を・・っ!」
アーカーシャ・リリィが飛び寄って腕を伸ばそうとするが、目の前に見えるのはアンダー丸出しの下半身で、触って良いのか、どこを触れば大丈夫なのか、オロオロとした。
ついさっきまでの『水着フォーム』だったならまだ、ここまで狼狽えなかっただろう。
しかし、今のアイソレイト・リリィの魔法少女装束は、本来のモノに戻ってしまっていたのだ。
どうやら、意識していないと『水着フォーム』は維持できないらしい。
きっと、驚いた拍子に元に戻ってしまったのだろう。
アイソレイト・リリィの基本的な魔法少女装束は、アーカーシャ・リリィに比べて、かなり、いや、とても露出が少ない。
顔が露出している以外に生身の露出が無いと言っていいくらいだ。
スカートはギリギリ足先が見えるくらいのロングだし、ポンチョにもマントにも見えそうなモノも羽織っている様に見える。
童話に出てくる『魔女』みたいに全身を覆い隠している様なシルエットなのだ。
なのに、突然の事態に動転しているらしいアイソレイト・リリィは、上下逆さま状態で浮かんでいる。
その為、スカートが完全に落ち、上半身をスッポリ隠した『逆さまのてるてる坊主』状態なのだ。
さっきまでの姿だったなら、本人的に『水着』みたいなつもりらしいし、水着に狼狽えることも無い。
ただ、魔法少女装束は本人の無意識に強く影響を受ける為、いまアーカーシャ・リリィの目には『ただの下着』にしか見えないアンダーウェアなのも、アイソレイト・リリィにとっては無意識に下着みたいなつもり、ということなのだろう。
女の子同士とはいえ、何で、いかにも下着にしか見えないのを見て狼狽えなきゃならないのか。
アーカーシャ・リリィは困った。
ものすごく、とてつもなく、困った。
アーカーシャ・リリィの正体の斎木夏樹を知る同級生が見たのなら、普段の彼女と比べて どれだけ狼狽しているのか驚いただろうくらいだ。
「アーシャ!脚じゃなくって、上半身の方をひっくり返そう!」
「ぁ、そっか、そうだねっ・・!?」
ニャニャンの提案に頷いたアーカーシャ・リリィは、光明を得たかの様にホッとした顔になり、布の塊の方に抱き付く様にしてクルリと回った。
自分のスカートがめくれ上がるより先に態勢を直したアーカーシャ・リリィの前で、目の前の布の塊がバサリと落ち、中からアイソレイト・リリィが出た。
「アーシャちゃん、ごめんなさいっ・・!」
「・・大丈夫」
少し顔を赤くしたアーカーシャ・リリィが、目を逸らしながら返事した。
「んー・・もとに戻っちゃった・・」
「気を抜いても戻らないくらいに、普段とは別のとして固定させれば、たぶん、簡単に戻らない・・と思う。ほんと、たぶんだけど」
恥ずかしさを誤魔化す様にスカートを整え直し続けていたアイソレイト・リリィだったが、恥ずかしそうな顔のアーカーシャ・リリィを見て顔が赤くなっていった。
「・・見ちゃった・・よね・・?」
答えるまでも無い様な質問をしたアイソレイト・リリィに、ニャニャンが答えた。
「バッチリ♪」
片腕を前に突き出し、満面の笑みだ。
仔猫の前脚だから分からないが、人間の手だったのなら、きっと親指を立てたサムズアップの形だろう。
「〜っ///」
「・・・大丈夫・・大丈夫だから」
顔を赤くするアイソレイト・リリィに、アーカーシャ・リリィが「落ち着いて」と声を掛ける。
「魔法少女装束は魔力で出来てるから、厳密に言えば服じゃないの。服じゃないから、スカートに見えてもスカートじゃないし、パンツ風に見えてもパンツじゃないの。ただのアンダーなの。ほら、魔法少女って、空を飛ぶでしょう?魔法少女のほとんど、スカートだよね?スカートで空を飛べばスカートはヒラヒラするし、空中に止まれば真下からはスカートの中が見えるかもしれない。アイはロングだから心配無さそうだけど、さっきみたいな事故も起きるかもしれない。でもね?違うの。ホントに違うの。あくまでも、スカートの形をした魔力の塊だし、その中に見えるのもパンツみたいに見えるだけの魔力の塊なの。だから、パンチラとか丸見えになるとかな訳じゃないし、パンツじゃないから平気なの。ね?分かるでしょ?パンツじゃないの。服で言うなら見せパンみたいな感じかな。スパッツとかスカパンとかドロワーズみたいな感じかな。見えても大丈夫なヤツだし、見られても平気なの。むしろ、見てエッチな気持ちになる人は ほっとけば良いの。だってパンツじゃないんだから。ねっ?ほら大丈夫。大丈夫だから大丈夫なの。だから大丈夫、気にならない気にならない、大丈夫大丈夫。大丈夫だから大丈夫なの。ね。ね?ね!?」
「っ・・ぅ、ぅん・・!」
まくし立てる様に話すアーカーシャ・リリィに、アイソレイト・リリィがコクコクと頷く。
完全に彼女の勢いに飲まれていた。
■
少なからず動転していたらしいアーカーシャ・リリィをニャニャンが「落ち着いて落ち着いて」となだめ、方針転換を提案した。
広がる湖面の上を飛んで探すのも手だけど、誘き出してみるのも良いのではないか、と。
アーカーシャ・リリィが「・・その方が良いかもね」と頷き、アイソレイト・リリィは特に反対する理由も無かったので、そうするコトになった。
湖面から10メートルくらいの高さに浮かぶ二人とニャニャンを月明かりが照らしていた。
アーカーシャ・リリィを照らす仄かな月明かりがわずかに増したと感じたアイソレイト・リリィだったが、それが彼女自身の魔力だと気付いた。
アーカーシャ・リリィから、周囲に放射するように魔力が放出されていたのだ。
足場の無い空中でも安定しているのはソレなのかな?と思ったアイソレイト・リリィも意識して魔力を放出し始めた。
「それで、どうやって誘き出すの?」
アイソレイト・リリィが疑問を口にした。
「それに答えるに為には確認しなきゃなコトがあるんだけど、良いかな?」
ニャニャンがアイソレイト・リリィに尋ね、チラッとアーカーシャ・リリィを見た。
それにアーカーシャ・リリィが小さく頷いて返す。
今、2人の魔法少女と1人の精霊は湖上5メートル位の高さに浮いていた。
ニャニャンに向き合う様にアイソレイト・リリィが居て、少し後ろ側にアーカーシャ・リリィが居た。
「今、ボク達が探してるのは『黒』で、その『黒』の性質を利用する。そうすれば誘き出しやすいからねっ」
「はい、質問です!ニャニャン先生っ!」
「うむ、何かな?アイくん」
「アーシャちゃんも『黒』って言ってる あの黒いの、アレは何なのかな」
普通ならお伴の精霊から真っ先に教わっていておかしくないコトだが、お伴の居ないアイソレイト・リリィでは教わるのは不可能だ。
それに、彼女がこれまでに見た『黒いの』は、森で襲われたのと、公園の砂場で倒した小さいの、その2体だけだ。
予想するにしても、サンプルが足りな過ぎた。
アイソレイト・リリィのニャニャンへの質問に、ニャニャンはアイソレイト・リリィだけを見ている様に見え、実際は、少し後ろでニャニャンを見つめ小さく首を振るアーカーシャ・リリィを見ていた。
「・・良い質問だね、アイちゃん。それに、とても大切で大事な質問だね」
ニャニャンのふざけていた雰囲気が失せ、静かにアイソレイト・リリィを見た。
「ほとんどの魔法少女は『黒』と呼ぶけど、いつからそう呼ばれているかは分からない。少なくともボクが生まれた時にはそう呼ばれていたかな」
アイソレイト・リリィがコクコクと頷く。
「『黒』はね・・魔法少女と全く逆の性質を持つ。魔法少女がプラスの性質を持つなら『黒』はマイナスの性質を持っているのさ」
「・・マイナス・・」
「そう。で、コレもいつから呼ばれだしたのかは分からないけど、魔法少女が『白』なのさ」
「・・白?」
「そう。この国の言葉の『白黒つける』とか、その辺からな気もするけど、アメリカの魔法少女が『BLACK』とか『DARK』とか呼んでるのは聞いたコトは無いかな・・大体は『eclipse』で、時々『DEVIL』とか『DEMON』とか『fallen Angel』とか呼んでるっぽいし、国によって結構違うのかもね?」
「・・なるほど」
「ニャニャン」
アーカーシャ・リリィが少し睨む様な目でニャニャンを見ていた。
「ごめんごめん、少し長くなっちゃったねっ。・・で、『黒』は魔法少女と正反対の性質を持ってるんだけど、魔法少女を敵視するというか、そんな面があってね」
「敵視?」
「ぅん。弱い『黒』なら魔法少女から逃げていくのがほとんどなんだけど、強い『黒』や、前に魔法少女とぶつかったコトがあるのかもしれない『黒』は、魔法少女に寄ってきたり襲い掛かって来たりするのさ」
「・・・そっか・・そっか・・それで・・」
アイソレイト・リリィの脳裏を、以前山奥で殺されかけた『黒い影』の姿が過ぎった。
「そ。多分、君が前に山で会ったの、思い出しちゃったかな」
「・・ぅん」
「アレは偶々かな・・きっと、アレが偶々通った場所にキミが居たんだと思うよ?」
「・・そっか」
ニャニャンが「災難だったね」といった顔をした為、アイソレイト・リリィは言えなかった。
「遠くの方に居たけど調べようとしたら方向転換して来たんです、ぶっちゃけ、自分で呼び寄せたも同然です」、などとは言えなかった。
「で、キミはずっと丸見えだけど、アーシャは少し前から『不可視』を解除して、『認識阻害』を弱めた上で、魔力を放出してるのさ。『黒』を誘き出す為にね」
「・・・丸見え?」
少し前に晒した痴態を思い出したのか、アイソレイト・リリィが脚をキュッと閉じた。
「あ、スカートの中じゃなくて、姿ね、姿☆」
空中でクルクル回りつつ薄いピンク色にした魔力をポンポンポンポンッと出していたニャニャンが、急にビクッとしたかと思えば、姿勢を正して空中で土下座っぽい態勢になった。
アイソレイト・リリィが魔力の揺らぎを感じてアーカーシャ・リリィの方を見ると、ニャニャンに向けてステッキを構える姿があった。
少し顔が赤くなっていたが、目は冷たかった。
すごく冷たい目だった。
エロ画像を見て騒ぐ男子達を見る様な、軽蔑の色合いも強く混じって見えた。
それに、ステッキの先の発射口からすでに光が洩れているのが とても物騒だった。
「ニャニャン?」
「はい、ごめんなさい」
「ニャニャン」
「はい、マジメに説明します」
「ニャニャン」
「ごめんなさい、ごめんなさい!ごめんなさいっ!」
「・・よろしい」
静かにステッキを下げたアーカーシャ・リリィに安心したのか、ニャニャンが土下座態勢を解いた。
アーカーシャ・リリィの手から、光の粒子になる様にステッキが消えた。
「・・で、続きなんだけどね。丸見えって言ったのは姿のコトなんだよっ」
「・・?」
どういう意味か分からず、アイソレイト・リリィが首を傾げる。
「アイちゃん、キミ・・宿舎から飛び立つ時とか、誰かに見られなかった?」
「ぁ・・・考えてなかった・・早く2人に追い付かなくっちゃってだけしか考えてなかったかも・・」
「どこで変身したの?」
アーカーシャ・リリィの質問に、少し気まずそうにアイソレイト・リリィが答える。
「・・宿舎の裏」
「そこに行くまでに誰かに会わなかった?」
「・・・先生に会っちゃった・・早く寝なさいね、って言われたかも・・」
気まずそうにするアイソレイト・リリィを見て、アーカーシャ・リリィとニャニャンが頷き合う。
「アーシャ、今日は早めに切り上げるしかないかな」
「それより、アイが戻った方が良いと思う」
「でも、それだと、『黒』が出たらアーシャだけで相手するコトになっちゃうよ。せっかく2人居るんだし、アーシャ1人だけで相手するのは反対だな・・それに、今回の『黒』・・きっと・・」
「ぅん。だよね・・」
気まずそうにする2人を見たアイソレイト・リリィは尋ねてみた。
「今回のって?どうしたの?」
少し言いづらそうにしてから、アーカーシャ・リリィが答えた。
「今回の『黒』・・どのくらいかは分からないけど、人間を何人も殺してるみたいなの」
「・・っ」
『殺してる』という言葉に、アイソレイト・リリィが震える。
聞いただけで背筋が凍った様だった。
「生き物を殺した『黒』は、殺した生き物の生命力を吸収して強くなるのさ。殺して吸収した分だけ、際限なく強くなっていく。ぁ、吸収って言ったけど、ちょっと違うかな・・『黒』っていう穴に、殺された生き物の生命力が流れ落ちていって溜まる、そんな感じかな」
「・・・」
「それにね、アーシャが魔力を放出してるのは、『黒』を誘き出す為だし。君もアーシャより後から放出しだしてたけど、なんでかは分かってなかったでしょ?」
「うん。アーシャちゃん、すごく自然に浮いててグラグラもしないから、浮く為のテクニックなのかなって思って」
「そっか」
「ま、結果的に、魔法少女2人分の魔力が放射されてる訳だし、きっとすぐに結果が・・。・・?・・・っアーシャ!」
「ん!」
「っ!?」
ニャニャンが気付いて叫び、アーカーシャ・リリィが目を見開きながら真下の水面を見るのと同時くらいに、水面から飛び出す様に、巨大な口が現れた。
アイソレイト・リリィがソレの接近に気付いた時には、あと数メートルで喰らいつかれそうな近さだった。
自分に喰い付こうと開かれた巨大な口と、並ぶ巨大なキバ。
アイソレイト・リリィは悲鳴すらあげられずに、恐怖から逃れる為に、ただ後方に飛んでいた。
■■■■■to B PART■■■■■




