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魔法少女 ノーブル・リリィ  作者: 散桜


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15/38

#8『目覚める魔法少女。その名はアイソレイト・リリィ』 Aパート


「・・・ごめんなさい。何回も・・」

「大丈夫・・なんか、慣れてきたから」


裕子とアーカーシャ・リリィは、小学校の屋上から裕子の自宅マンションに移動していた。

ただ、裕子は飛ぼうとした時に魔力切れで魔法少女服が消えてしまい、飛ぶコトが出来なかった。

アーカーシャ・リリィにお姫様抱っこされて自宅マンションのベランダに戻った裕子の顔は、室内の明かりに照らされて、赤くなっているのが丸分かりだった。


「ぁ・・ぇと・・何か飲む?」

「・・ぅん」


裕子が冷蔵庫からジュースのペットボトルとコップを3つ、持って戻ると、アーカーシャ・リリィの魔法少女装束から光の粒子が出始めていた。

そして、パンッ!と弾ける様に魔法少女装束が消えた。


「ぁ・・」

「・・改めて、はじめまして。斎木(さいき)夏樹(なつき)です」

「ぁ・・ぅん・・はじめまして?宇津馬(うづめ)裕子(ゆうこ)です」


手を差し出した夏樹に、裕子が握手して答えた。



■■OP:『Don't stop.Don't look back.』歌:斎木(さいき) 夏樹(なつき)■■


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裕子に勧められてソファーに座った夏樹がジュースを飲んでいた。

その横に座るニャニャンも、裕子が見つけられた一番小さいコップを前脚と尻尾で支えながらチビチビと飲んでいる。

傍目から見ればヒドく危なっかしい姿に、普通のネコに出す様に お椀にでも入れれば良かったかなと裕子は少し気になった。


「・・」


裕子もチビチビとジュースを飲んでいるが、飲みながらも夏樹に興味津々といった様子は隠し切れていない。


「気になる?」

「ぁ・・ぅん・・」


夏樹から聞かれ、裕子は慌てながら頷いた。


「ぇと・・どう呼べば良いかな・・?」

「・・二人っきりの時なら、好きに呼んで大丈夫」

「ん・・二人っきりじゃない時は・・?」


そう聞かれ、夏樹は首を傾げた。

夏樹自身、魔法少女としても斎木夏樹としても付き合いのある魔法少女など、これまでに1人しか居なかった為、どうするのが正解なのか分からないのだ。


「ニャニャン、こういう場合、どうするのが正解なのかな」

「ん〜・・夏樹と(ゆかり)ちゃんの場合と同じで大丈夫だと思うよ?ボクが精霊仲間に聞いたコトあるのも、同じだし」

「・・そっか」


ニャニャンは自然に返したが、夏樹は少し悲しそうな顔に見えた。


「えっと・・裕子って呼んで良いかな」

「うん」

「じゃ、裕子。私と、私に色々と教えてくれた友達の場合で説明するね」

「うん」

「魔法少女の姿の時には魔法少女の名前で、普段の姿の時には本名で、で大丈夫だと思う。その方が魔法少女だってコトがバレないし、本名もバレないと思う」

「なるほど・・」

「あと、魔法少女の時も、渾名(あだな)みたく呼んだ方が良いと思う。私の場合、アーカーシャ・リリィだからアーシャ、みたく。・・何でかっていうと、魔法少女の名前は本人の能力に直結してるからなの。名前を知られただけで、どんな基本能力なのか、大雑把にバレちゃうから」

「・・そっか。・・私はどうしよう・・まだ決めてないし・・」


首を捻る裕子を見て、夏樹とニャニャンが視線を交わして頷き合った。


「ね、裕子」

「ん?」

「裕子が初めて魔法少女になった時、何か頭に浮かばなかった?」

「ぅぅん」

「じゃ、コレが自分の力だ、ってハッキリ分かったり・・」

「んーん・・全然・・」

「・・・裕子。初めて魔法少女になった時のコト教えて欲しいんだけど、大丈夫かな」

「んっ。大丈夫」

「じゃ、・・・・どう聞こう・・」

「じゃ、ボクが聞こっか」


いざ質問となったら困った夏樹に、ニャニャンが代わりを申し出た。


「じゃ、裕子ちゃん」

「うんっ」

「初めて魔法少女に変身したのは、あの廃工場で間違い無いかな?」

「・・・・ぅん」


驚いて「何で知ってるの?」という顔になった裕子。


「実はね、キミが魔法少女になってからココに帰って行くまでの姿、ボク達見てるんだよね」

「・・そうだったの?」

「うん」


裕子がニャニャンから夏樹に視線を移すと、夏樹も頷いた。


「魔法少女が新しく誕生する時にはね、天高くまでの光の柱が立ち昇るんだ。ボクら精霊は『現界』って呼ぶんだけどね」

「・・」

「あの時、あの場所で、君は魔法少女として目覚めた。ソレは間違い無いハズなんだ」

「・・ん」

「ただ・・」

「ただ?」

「ここ100年以上、ボクら精霊は細心の注意を払って魔法少女の新生を察知して来た」

「・・」

「魔法少女になる本人にとっては突然のコトでも、精霊にとっては前兆が察知出来るんだよ」

「・・」

「その前兆が分かるのは、担当になる精霊だけじゃない。近隣に居る精霊全てが察知出来るのさ」

「・・」

「でも、キミの現界の前兆は察知出来なかった」

「・・」

「新しい精霊の誕生も無かった」

「・・?」


頷きながらニャニャンの話を聞いていた裕子だが、「新しい精霊」という言葉に疑問符を浮かべた。


「ね、裕子ちゃん。魔法少女のお伴、マスコットとか呼ばれるボクら精霊はドコから来るか知ってるかな?」

「ぅぅん」


裕子が首を振って返す。


「ボクら精霊はね、この星から産まれるのさ」

「・・・星・・?」

「そう、星。この星の中を循環する『力』の経路レイライン、その経路から溢れ出た『力』の可能性が形を変えたモノ。それがボクら精霊なのさ」

「・・そうなんだ・・」

「うん。でね、キミ達人間が『神様』とか呼ぶ存在から『力』が流れ込んだのが、キミ達『魔法少女』なのさ」

「!」



「ただ、その『力』は一度に一気に流れ込む訳じゃない。魔法少女になる本人が発する可能性の輝きが『神様』と呼ばれる存在に届き、一定時間、か細い線の様に繋がったままになる。まぁ、一定時間とは言っても、キミ達人間には感知出来ないくらいの刹那の時間でしかないんだけどね」

「・・」

「その繋がった一定時間が前兆なのさ」

「・・」

「その前兆が、キミの場合、察知されなかった」

「・・・」


床を見る様に俯いた裕子に、ニャニャンが尋ねる。


「その理由・・キミには心当たり、ありそうだね・・?」

「・・・ぅん」

「聞いても大丈夫なコトかな」

「・・・たぶん・・私は魔法少女になれなかったの・・」


裕子が絞り出す様に溢した言葉が、静かな室内でも夏樹とニャニャンには聞き取れた。


「・・・二人は・・私のこと・・魔法少女になったこと・・どこまで分かるの・・?」


床を見たまま静かに聞く裕子に、夏樹が答える。


「アナタがココのベランダに着くまでは見てた。その後、アナタがあの廃工場の地下から出て来たのは見えてたから、二人で地下に行ってみたの」

「ぅん」

「たぶんアナタが上がって行ったハズの場所・・あそこに何が有ったのか・・何となく想像は出来るし・・たぶん、合ってるとは思ってる」

「・・・そっか・・」

「アナタは何を見たの?」

「・・想像出来たんでしょ・・?」

「・・・魔法少女の死体、だと思ってはいる・・」

「・・・・・正解・・」

「・・」


ゆっくりと顔を上げた裕子の顔は、微かに微笑んでいる様にも、泣いている様にも見えた。


「・・・怖かったんだー・・」

「・・」

「あの廃工場で、いきなり真っ暗な場所に落ちて・・小さな、小さな、すっごく小さな、光の粒を見つけてね・・?」

「・・」

「真っ暗闇の中・・ゆっくり・・光の粒について行ったの・・」

「・・」

「そしたらね・・?」

「・・」

「座ってる人が居たの・・」

「・・」

「助けて欲しかった・・明るい場所に出たかったの・・」

「・・」

「でもね・・・また光の粒が見えて・・・分かっちゃったの・・」

「・・」

「初めて見た・・・怖かった・・っ」

「・・・」

「すごく・・すっごく・・泣いてたと思う・・・」

「・・」

「きっと・・あの人が助けてくれたんだと思うの・・・」

「・・あの人・・?」

「ぅん・・」

「・・」

「私の魔法少女の服ね・・あの人のと同じなんだー・・」

「同じ・・?」

「ぅん・・あの人が着てたのと同じデザインなの・・」

「・・そうなんだ・・」

「・・・本物の魔法少女って、スゴいね・・?」

「・・」

「だって・・死んでたんだよ・・?」

「・・」

「なのに、泣いてる女の子を助けてくれたんだから・・っ」

「・・・」

「私ね・・?」

「ぅん」

「・・考えない様にしてたの・・・でも・・ホントは分かってたんだと思うの・・」

「・・」

「きっと、あの魔法少女さんからの贈り物なの・・」

「・・」

「泣いてる女の子を助けてくれて・・・本当なら魔法少女になれなかった女の子を、魔法少女にしてくれた・・っ」

「・・・」


俯いた裕子の声は震え、垂れた前髪に隠れた顔からポタリポタリと、静かに涙が落ちる。



小刻みに震えながら泣く裕子を思わず抱き締めてしまった夏樹は、声を押し殺して泣き出した裕子の頭を撫でる。

他に誰も居ないのだから、大声で泣いても良いのではないかと思い・・裕子以外誰も居ない、ガランとした静かな室内を見て、下唇を噛んだ。

見ず知らずの魔法少女の死体は彼女を助けようとしたというのに、泣く娘をほっぽり出して、彼女の両親は何をしているのか・・。


裕子を抱きしめる夏樹の腕に少し力が入った。



「ぁはは・・ごめんねっ・・?いきなり泣いちゃって、恥ずかしいなー・・困っちゃったよね・・ごめんね・・?」


泣き止んだかと思えば、裕子は夏樹に気を使い、謝り始めた。

泣き腫らした目元が痛々しい。


「大丈夫・・魔法少女だから・・泣いてる人が居たら、助けたいと思うから・・大丈夫・・っ」


本当に色々とフォローが必要なのは裕子のハズだ。

なのに、そんな彼女が気遣ってフォローしようとしていた。

夏樹なりに気遣い返した結果、まだ裕子は夏樹の胸元に抱き寄せられたままだった。

裕子が少し腕に力を入れて「もう大丈夫だから離して」と示すが、夏樹は素知らぬ顔で抱き締めたままだ。


裕子とあまり変わらないが、裕子よりは若干ばかり発育の良い夏樹の温もりに、「人前で泣いちゃった」より気恥ずかしくなる裕子だった。



「さ、では若輩ながらボクが仕切りまして〜♪」


気遣いし合って進まない二人をニャニャンが からかって、二人はソファーに座り直した。

ただ、最初はソファーに向かい合っていたのに、今は裕子の隣にピッタリとくっついて座る夏樹が居る。

しかも、裕子の手を優しくキュッと握り締めていた。


「んんっ!じゃ、続きねっ!」

「うん!続き!続きね!」


何とも初々しい微笑ましさで、何とか話が再開される。


「・・・」

「・・・」


とは言っても、夏樹とニャニャンが知りたかったコトは大体は知れた。

どうしようか悩む夏樹に裕子が尋ねる。


「ね、アーシャちゃん、じゃなかった・・夏樹ちゃん」

「ぅん・・っ」


ニャニャンがプルプルと震えながら笑いを堪える。

「付き合いたてのカップルか!」とツッコミたいのを我慢して、二人を見る。


「夏樹ちゃんはどうして正体を教えてくれたの・・?」

「・・私ばっかり知り過ぎてたから・・不公平かな・・って」

「そっか・・」

「・・それに・・。・・・」

「それに?」

「裕子になら知って欲しいかな・・って、何となく・・」

「・・そっか」

「ぅん・・そう」


「付き合いたてのカップルか!」


堪らず、ニャニャンが突っ込んだ。


「えぇっ!?」

「っ・・!?」


裕子と夏樹、二人してボンッ!と顔を真っ赤にしたが、裕子はすぐに落ち込んだ顔に変わってしまった。


「・・裕子?」

「・・・ホントにカップルなら、同じくらいか近い何かがなきゃだもん・・・私なんか・・おこぼれで魔法少女にしてもらえたニセモノなんだから・・・」

「そんなコトないっ!」

「・・・夏樹ちゃん・・?」

「アナタ、頑張ってたじゃない!1人で、何も教えてもらえなくっても、頑張ってたじゃない!私、何人も魔法少女と会ったけど、何でこの人が?ってくらい いい加減でヤル気の無い人もいたよ!精霊と仲悪くって、いっつも別々に居た子も居た!攻撃に失敗して私に当てた子も居たよ!全然考えないで、努力しないで、文句ばっかの子も見たよ!あの人達より、裕子の方が何倍も何倍も何倍も、魔法少女で居るべきだよ!」

「・・・夏樹ちゃん・・」


一気に思いを言葉にして吐き出し、肩で息をする夏樹。

そんな彼女に驚いた後、裕子は嬉しくって堪らなくなり、夏樹に抱きついた。


ギュウ〜ッと抱き締められた夏樹は裕子の背中を擦りながら、ニャニャンを見た。

無言の視線は「どうにか出来ないの?」と問い掛けていた。


星に暮らす生き物の『良き隣人』である精霊のニャニャンは、泣く子供や困っている誰かを放ってはおけない。


「それなら、ボクが力を借すよ♪」

「・・ぇ?」


裕子がニャニャンを見る。


「今のキミには間違いなく魔法少女としての『力』が宿ってる。どんな力なのか分からないだけなんだよ、きっと。なら、ボクが手助け出来るハズさ♪」

「・・手助け・・?」

「そう♪キミの中の『力』と直に繋がれば、活性化させたり分かりやすい状態に整えたり出来るハズだよ♪」


ニャニャンが裕子の前で両前脚を広げて、「任せて!」とばかりに笑う。


「・・・」

「どうしたの、裕子」

「んん?ボクの万能さに惚れちゃったー?」


二人の前に浮くニャニャンが胸を張るが、ちっちゃな仔猫が「ドヤァ・・」してても、威厳などカケラも見当たらない。


「えっと・・ゴメンね・・?」

「何が?」

「・・・マスコットキャラって、可愛いだけじゃないんだね・・?」

「ヒドいっ!?」


ニャニャンが空中で身悶えてクルクル回る。


「ごめんなさい・・アニメとかドラマだと、みんなそうだったから・・?」

「アレは作り話っ!ボクは本物っ!!一緒にしないで〜っ!?」

「ごめんなさい・・」

「よしっ!ホンモノの精霊の力を見せてやるんだからっ!」

「・・・」


ニャニャンがヤル気を(みなぎ)らせるが、反対に裕子は元気を失くしていく。

そんな裕子を見て、ニャニャンは裕子の気持ちを察する。


「心配しなくても大丈夫っ♪みんな違って、みんな良い・・!キミがどう魔法少女になったかより、どんな『力』が有るか無いかより、魔法少女になって何をするか、したか、ソレが大事なんだよっ!」


ちっちゃな前脚を振り上げて力説したニャニャンに、裕子がポカンとした顔になる。


「さ、見ちゃいましょ」


夏樹が微笑みかけ、裕子は照れて、無言で何度も頷いた。

また少し涙ぐんでしまったが、胸にいっぱいの気持ちは悲しさではなかった。

涙も少し暖かく感じられた。


■■■■■to B PART■■■■■

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