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魔法少女 ノーブル・リリィ  作者: 散桜


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#7『自分に出来るコトを探して、裕子の挑戦!』Bパート

「・・・」


夏樹が教室の窓から、裕子の学校の方角を見ていた。

もちろん、裕子の姿が見えたりはしない。

しかし、『マーカー』により、そちらに裕子が居るコトはハッキリと感じられていた。



そんな夏樹の居る端愛(はまな)市立 山上(やまがみ)小学校の校舎めがけて、少し迂回しつつ低空飛行する仔猫が見えた。

その仔猫は校舎の側面を滑る様に上昇し、夏樹の佇む窓から飛びこんで来ると、夏樹の胸元に受け止められた。


《・・おかえりなさい、ニャニャン》

《ただいまー♪》

《ゴハン、食べよっか》

《うん♪》


念話を交わしながら、夏樹とニャニャンが教室を出て行く。

傍目から見れば、夏樹が1人で教室を出て行く姿しか見えていないが、そんな彼女を目で追うクラスメイトは何人もいた。


クラスの中では静かで目立たない方の夏樹だが、暗い訳ではない。

その有り様は、静か。

その為に、逆に目立つのだ。

大声で笑い「映える〜」「ウケる〜」「ヤバ〜」と騒ぐ女子達より、目立っているかもしれない。

そのコトが一部の女子達からは妬み ひがみ やっかみの対象となっているのだが、夏樹は知らない。


夏樹とニャニャンは、昼休みが終わるまでの時間限定で開放されている屋上に来ていた。

もう寒さは失せ、程良い暖かさだ。

心地良い風が吹き、夏樹の髪とスカートを軽く揺らした。

すでに給食を終えていた夏樹が購買で買った菓子パンを、夏樹の身体の影に隠れる様にニャニャンが食べている。


《・・どんな感じだったの?》

《んー・・開けっぴろげだったね〜》

《そんなに?》

《うん、そんなに。例えるならねー・・んーー・・?》

《・・》

《そうそう、こんなかな。えっとね、周りに いっぱい人が居る昼休みの校庭のど真ん中でね》

《ぅん》


ニャニャンが、屋上から見える校庭を前脚で指し示す。


《ひとりだけ真っ裸な子が大声で叫んでるみたいな、そんな感じ》

《・・・そこまで?》

《うん、そこまで。そんくらい開けっぴろげだったね♪》

《・・・》

《・・まだ、少し疑わしい感じも残ってるけど。間違い無いかもしんない》

《ね?言ったでしょ》

《ん〜〜・・》

《・・そんなに、有り得ないコトなの・・?》


《ボク達 精霊だけが使える情報交換方法があるのは知ってるでしょ?》

《ん》

《その中で共有されてる限り、自然発生的に顕現して1人だけで行動し続けてる魔法少女なんて、ここ100年以上は存在しないんだ》

《・・それだと、顕現だけはしてたんじゃないの?》

《うん。かもしれない。でも、事前兆候は有るんだ。夏樹、キミみたいにね》

《・・》

《彼女の場合、その兆候もなく、顕現してる》

《・・》

《何より決定的だったのが、こないだの彼女の言葉だよ》

《・・》

《彼女はこう言ったよね・・魔法少女の名前、早く決めるね、って》

《・・ん》

《それがおかしいんだよ。彼女は自分の魔法少女名を知らない、自分で考えたりするモノだと思ってるってコトなんだから》

《・・》

《魔法少女の名前は、自分で考えたり誰か他人(ひと)に決められるモノじゃない。魔法少女になった時には、名前は在るんだ》

《・・》

《もう間違い無い・・彼女は、エタニティ・リリィ以来の、ボクら精霊が感知せずに顕現した魔法少女なんだ》

《・・・エタニティ・リリィ・・》

《そう。・・彼女の悲劇を繰り返す訳にはいかない。早く、何とかしないと》

《・・・分かった》


夏樹は、裕子の学校の方角を見て目を細めた。




月明かりの照らす夜の街の上空を、ひとつの影が横切った。

その影は、コウモリやフクロウなどではない。

ヒトの形をしていた。


その影は夜の住宅街を超え、1つの建物の敷地内に入っていった。

その建物は、夜間巡回の警備員が時折姿を見せるが、昼間とは逆の静寂に包まれていた。


昼間は数多くの小学生が居て、休み時間や昼休みや放課後ともなれば喧騒に包まれる。

ソコは小学校だった。


端愛(はまな)市立 平原(ひらはら)小学校。

裕子の通う小学校だ。


そして、暗い校舎の中の懐中電灯の明かりが遠ざかると姿を表した影は、裕子だった。

闇に包まれた夜の山での魔法少女特訓で死にかけた裕子は、安全かつ人目につかない場所を授業中に考えに考え、結果、「ココなら・・」と気付いたのだ。

特訓に飛んでいた山奥と違い、自分の通う小学校なのだから、自宅マンションからは当然ながら近い。

何かあっても、山奥よりは明るい場所にすぐに飛び出せる。

頼れば後で叱られるのは間違い無いだろうけれど、夜間巡回の人や当直室の夜勤の先生に助けを求めるコトも出来る。

何よりも、注意さえして見つからない様にしていれば、ほぼ無人なのだ。


魔法少女服姿の裕子が居るのは、校舎と校舎の間にある中庭だ。

昼間でも人気の少ない中庭には、飼育小屋と、隣接した飼育池があるが、その周りにベンチがいくつか並んでいるだけだ。

それ以外は、低い高さの木や、小学生から見て高いと思えるくらいの高さの木、それらが植えられているだけだ。

卒業生の卒業記念として植樹された木々だが、ある程度の高さになれば学校を囲む林に植え替えられる。

しかし、今の高さなら、小学生の女子である裕子が身を隠すのに問題は無い。

巡回員や夜勤の当直教員が来たら、それらの影に隠れれば良いのだ。


校内の各所に設置された防犯用のカメラも、中庭に設置されているカメラは、飼育小屋の中を映すカメラ以外は夜間は切られる。

本来、このコトを生徒が知っていては ならないのだが、

考え方の古い年配の教員や、人気取りに気が行った若い新任教員が洩らすコトにより、入学して数ヶ月もすれば、知らない訳が無いくらいに知れ渡っていた。


遠ざかって行った明かりは、もう見えない。

しかし、明かりが通り過ぎるのを待つ間に裕子が思いついたコトを試すのにはもってこいの状況になった。


中庭の中程に立った裕子は、目を閉じると、何回か深呼吸した。

両足を肩幅くらいに広げて立ち、両腕を胴体の真横に向けて伸ばした。


ただでさえ暗い、夜の校内。目を閉じた裕子には夜風に揺れる木立のざわめきくらいしか聞こえないし、当然ながら何も見えない。

真っ暗闇だ。

しかし、少しすると、裕子には周囲の様子がありありと把握出来る様になった。

裕子を中心に半径5メートルくらいに有るモノを、手に触れている様に、目で見ている様に、ハッキリと。


裕子が今日の特訓に選んだのは、魔力を放出して周囲の状況を感知するコトだ。

以前、自宅マンションで感じた感覚を確かなモノにする為にだった。

そのまま5分くらい、裕子は微動だにせず、そのままで居た。

が、突然、裕子は崩れ落ちる様に その場に座り込み、そのまま横倒しに倒れた。


そして、パタリと倒れた裕子を見下ろす視線が2つ。

座っていた屋上の柵から、視線の主達が中庭に降りて行く。


「ムチャなコトするよねぇ」

「・・しょうが無いよ・・誰も教えてくれないんじゃ・・しょうが無いよ・・」

「ま、それもそっかー」


裕子を見据えたまま急ぎ飛び寄るアーカーシャ・リリィと反対に、ニャニャンは周囲をキョロキョロと伺っていた。



「・・・ん・・」


目を覚ました裕子は、目の前に広がる夜空を見て、自分が特訓中に倒れたのだろうと気付いた。


「ぁ。ヤバ・・」


どのくらいの間、気絶していたのか分からない。

巡回の先生が戻って来ていないか、起き上がろうとし、裕子は違和感を覚えた。

中庭で倒れたハズなのに、頭の下が柔らかいのだ。それに何だか温かかった。


「・・見回りの先生なら大丈夫」

「!」


驚いた裕子が飛び跳ねるように身体を起こし、振り返った。


「・・?」


暗くて見えない。

ただ、夜闇の中でも分かったのは、自分と同じくらいの大きさの誰かが居るというコトだった。

必至に見ようと、裕子が目を細めたり開いたりを何度か繰り返す。


「・・・目に魔力を集めて。そうしながら、見ようと思ってみて」

「・・・ぅん」


目を覚ましたばかりの時よりは夜目に慣れてきたようだ。

星明かりの下、自分と同じくらいの年頃の女の子が座っているのだと気付いたし、その女の子の姿勢からして、多分、自分が膝枕されていたのだとも気付けた。

段々と落ち着いてきて、そもそも女の子の声だと気付いた。


魔力が集まって来たのか、少し目が温かいと感じる。

そして、スゥッと・・視界がハッキリとした。


「・・・アーシャちゃん」

「ん」


静かに こちらを見る目と、ミニスカートのウェディングドレス、そして膝枕してくれていたのだろう太ももが見えた。


「・・・スゴいんだね。魔法って、こんなコトも出来るんだねっ。・・わー。スゴい・・!夜なのに、あんな遠くまで・・あれ・・屋上・・?」


自分には見える様になったばかりだけど、きっと彼女からは ずっと、そんな自分の姿がハッキリと見えていたのだろう。

きっと、昼間だったのなら、恥ずかしさで顔が真っ赤に見えて、ううん、コレだけ見えるなら彼女には見られてるハズ。

アーカーシャ・リリィに背を向けて、誤魔化す様に周りをキョロキョロしていた裕子だったが、中庭に居たハズなのに屋上に移動しているコトに気付いた。


「アナタが倒れて少ししてから、見回りの先生が来たの。『不可視化』で見れない様にはしてたけど、屋上の方が誰も来なさそうだったから・・」

「・・重くなかった・・?」

「ぅぅん、大丈夫だった」

「・・良かった・・」


少し恥ずかしそうに裕子が安堵の息を吐く。

しかし、すぐに別のコトが気になった。


「・・見てたの・・?」

「・・ぅん」

「ぁはは・・恥ずかしいなぁ・・みっともなかったでしょ?」

「・・そんなコトないよ」

「・・そっか・・」


「・・・ごめんなさい」

「ぇ?」

「・・・精霊・・・居ないんでしょ・・?」

「・・・」


裕子が無言で小さく頷いた。


「・・知らなかった・・気付かなかったの・・・あんなヒドいコト言って、ごめんなさい・・」

「・・」


裕子が「大丈夫、気にしないで」とばかりに苦笑しながら、首を横に振った。


「魔法少女に必要なコト、私が教えるわ」

「ボクも教えるよー♪」


アーカーシャ・リリィの肩に乗るニャニャンが右手を振りながら言った。


「・・ぃぃの?」

「ぅん。・・・エタニティ・リリィの悲劇は繰り返されちゃダメだから・・!」

「・・エタニティ・・?」

「ぅん。一般的には魔法少女名は知られてないみたいだけど・・『聖女』は知ってるでしょ?彼女の魔法少女名よ」

「そうなんだ・・!スゴい!初めて聞いた・・♪」

「・・」


『聖女』。

そう聞いて、宗教で そう呼ばれる聖女よりも、魔法少女の『聖女』をすぐに思い浮かべる者の方が多いハズ、そう言い切れるくらいに有名な魔法少女だった。

裕子も、直に見たコトは無いけれど、TVやネットで見ない日は無い程だった。

裕子の持っている魔法少女名鑑にも当然ながら掲載されている。

ただ、正式名称が不明で『聖女』として掲載されている。

魔法少女名鑑には各魔法少女の略歴や活躍記録が掲載されている。

実は毎年刊行されていて、新たに活躍しだした魔法少女の項目が増えたり、ここ数年の活動記録がパッタリと途絶えて掲載されなくなる魔法少女も居る。

そんな中、『聖女』だけは別格だった。

毎年毎年、何年何月何日、どこの場所で、どんな活躍をしたのか、彼女の記録だけは僅か1行に略さなければ間に合わないくらいに膨大に増え続けているのだ。

1年に365行、どころか、1000行以上記載された年もあったくらいだ。

その年は国際的に紛争や内戦やテロ活動、自然災害や人災などが偶々重なり合い過ぎた年だった。

とある地域の1つの内戦で1つの『都市』を救った、と(まと)められずに個人毎に別行にしたならば、きっと、その年の魔法少女名鑑は彼女個人だけの分厚い増刊別冊にしなければならなかっただろう程に。

ワイドショーや朝夕のニュース番組に、個人で特集コーナーが常設されている程に有名な魔法少女なのだ。



「有名だよねっ!スゴいよねっ!キレイだし!マスコットもスッゴくカッコいいしっ♪」

「・・」


「私も、あんな風な魔法少女になりたいし!」

「ダメ」

「?」

「彼女みたいになるのだけは、ダメ」

「・・アーシャちゃん?」

「絶、対、ダメ」


アーカーシャ・リリィの目は裕子を見据えたまま有無を言わさない雰囲気だ。


「・・・どうして?」

「・・それも教える。全部・・教えられるコト、全部教えるから・・そしたら、どうしてなのか分かるから・・」

「・・ぅん。・・分かった」


自分が「ああなりたい」と言った直後に「絶対にダメだ」と止められたのだが、アーカーシャ・リリィの静かだけれど強い意思の籠もった目に見据えられ、裕子は自然と頷いていたのだった。




■■ED:『希望の一歩』歌:宇津馬(うづめ) 裕子(ゆうこ)■■


■■■■■This program is brought to you by the following sponsors.■■■■■

裕子「も〜・・ニャニャン〜~。私、ほんとビックリしたんだからね〜?」

ニャニャン「ごめんごめん〜♪ついネッチョリ♪」

裕子「反省してないっ!?」

ニャニャン「てへっ☆」

裕子「アーシャちゃん!アーシャちゃんも何か言って!?授業中に急に居られたらビックリするよねっ!?」

アーカーシャ・リリィ(以下、アーシャ)「私にもやったら、握り拳を思いっ切り振り落とすからね?」

ニャニャン「絶対しませんっ!絶対にですぅ!ごめんなさいっ!!」

裕子「アーシャちゃん怖っ!?」

アーシャ「さ、ニャニャン。振って?」

ニャニャン「じっ、じかいわわわわわわ・・っ!」

裕子「アーシャちゃん!握り拳振りかぶったまま言ったら怖いからっ!?ぇと。次回、第8話!『目覚める魔法少女。その名はアイソレイト・リリィ』です!」

ニャニャン「新しい魔法少女 登場なの?」

夏樹「次回、刮目せよって回ね」

裕子「刮も〜く♪」

ニャニャン「かっつも〜~~くっ♪」

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