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魔法少女 ノーブル・リリィ  作者: 散桜


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#7『自分に出来るコトを探して、裕子の挑戦!』Aパート


宇津馬(うづめ)裕子(ゆうこ)は、軽くパニックになっていた。


しかし、落ち着く為に、状況を整理するコトにした。

現実逃避とも言う。


裕子の通う端愛(はまな)市立 平原(ひらはら)小学校、その授業中なのは間違い無い。

1時間目、今日は国語で、読書感想文を書く為の読書時間だ。

とはいえ、ゆっくりと読んでいる時間は無い。

1時間目を使って読み、自習になっていた2時間目を使って感想文を書き、2時間目の終わりに提出するのだ。

渡されている原稿用紙は1枚だけなので、そう難しくは無いだろう。

教室の中はシンとしていて、皆がタブレットでの検索に集中していた。

タブレットで検索して程良い作品を見つけるのも、今回の課題のひとつだ。


そんな静かな教室の中、多分、裕子だけが内心で軽くパニックになっている。

なぜなら、裕子の机の上に仔猫がチョコンと座り込んでいるからだ。



■■OP:『Don't stop.Don't look back.』歌:斎木(さいき) 夏樹(なつき)■■


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キョロキョロと周りを見て、「・・自分も早く選ばないとなぁ・・」と思いながらタブレットの画面に目を戻したら、タブレットの画面の上に仔猫が座り込んでいたのだ。

ビクリ!!と震えてしまったと思うけれど、思わず両手で口元を押さえてしまったからこそ、悲鳴を上げるコトはなかった。



そこまで状況整理して、目を瞑って、軽く深呼吸してみた。

目を閉じたまま何度か深呼吸してから、ゆっくりと目を開いた。

机の上には、正確にはタブレットの画面の上には、いまだ仔猫が座り込んだままだった。


しかし、机の上に仔猫が陣取っているのに周りは静かなものだった。

教師以外、小学生しか居ない教室だ。

愛らしい仔猫が居るだけで賑やかになるのは間違い無い、そんな状況のハズなのに、静かだった。

それに、仔猫も静かだった。

小学生の裕子の小さな手でスッポリ隠せてしまいそうな、そんな小さな仔猫なのだ。

普通、ニーニー、ニーニー、ニーニーと、何かを求めて鳴き声を上げているものだろう。

なのに静かだった。

ただ静かに、裕子を見上げていた。


教室内が愛らしい仔猫で賑わわない。

それは当たり前ではあった。

裕子の机の上に陣取る仔猫が『不可視』の魔法を使っていた為、そもそも見えていなかったのだ。

それに、仔猫にしては随分と落ち着いて見えたのも当たり前ではあった。

不可視の魔法を使っていなかったとしても、小ささも合わさって、裕子の後ろや斜め後ろからは見えなかっただろう。



まだ心臓はバクバク言っているが、裕子は仔猫をしっかりと見つめた。

ひとしきり混乱する裕子を見上げていた仔猫と、しっかりと目が合った。


裕子は、その仔猫に見覚えがあった。

よく見れば、普通の仔猫とは色々違う気はしたが、今はソコじゃない。

その仔猫に見覚えがある理由の方が大事だった。


その仔猫は、とある魔法少女の肩に乗っている姿を何度も見た。

その魔法少女は、仔猫自身からアーシャと呼ばれていた。


そう、その仔猫は、魔法少女アーカーシャ・リリィのお供のマスコットの精霊だった。

名前は・・・・・・ニャニャちゃんだったか、ニニャンちゃんだったか・・。


《どうしたの?選ばないの?周りの皆、もう読み始めてるよ?》


裕子の頭に直接、響く様に声が届いた。

再びビクッと震えた裕子が目を丸くして周りを伺うが、周りは読書していてタブレットの画面に集中している。

離れた場所から見れば、裕子ひとりだけ挙動不審気味なのが分かったかもしれないくらいだ。

実際、教壇でイスに座っていた見六(みむい)先生からは裕子の様子が悪目立ちして見えていた。


《心配しなくても、今のボクは魔法少女にしか見えないから大丈夫だよ?》


裕子は頑張って、なるべく目だけ動かして周りをキョロキョロ窺っていたが、斜め下から見上げる位置に居る仔猫からは、裕子の動揺しきった顔がハッキリ見えていたらしい。

可愛らしい前脚で裕子の手をポムポム叩く。


《だから落ち着いて落ち着いて〜♪ほら、深呼吸〜♪はい、ひっひっふー、ひっひっふー♪》


裕子が「私の気持ち察して!?」と言わんばかりの顔で仔猫をムムッと睨む。


《今の、ツッコむトコだったのに〜?》


「裕子の気持ちなど知らん!」とばかりに、仔猫は気軽な様子だ。


《ねーねー、何か言ってよ〜。無視されてるみたいで悲しーなー?》


うずくまる様な態勢で居た仔猫は寝転んで、4本の脚をフリフリ動かした。

すごく可愛い。

動転から焦り、そして和みへと、裕子の内心は目まぐるしく変わっていた。


和みつつ仔猫を見下ろしていた裕子だが、すぐに、悲しそうな顔になっていった。


《・・・もしかして、『念話』、使えないのかな?》


悲しそうな顔になった裕子を見上げた仔猫が尋ねると、裕子がゆっくりと頷いた。

周りに見られない様にでなく、本当に悲しそうに、ゆっくりと。

目も、とても悲しそうな目になってしまった。


《・・。ボクに話し掛けるつもりで、念じてみて?》


コクンと頷いた裕子は、仔猫を凝視し始めた。


《・・もうやってる?》


裕子がコクンと頷く。


《ん〜〜・・・コレならどうかな。軽く触ってみて?》


態勢を変えて座り直した仔猫が、前脚を裕子に差し出し、裕子は怖々と その小さな前脚に触れた。

仔猫の前脚に、裕子の左手の人差し指の先が触れている感じだ。

と、仔猫のもう片方の前脚が動いて、裕子の人差し指の指先を包む様に挟んだ。

そのあまりの可愛らしさに、裕子の顔が(とろ)ける。


「・・ふぁ・・///」


宇津馬(うづめ)さん?」

「はぃ・・っ!」


ひとり挙動不審な裕子をチラチラ見ていた見六(みむい)先生だったが、小声とはいえ声まで出し始めた裕子に、ついに声を掛けていた。


「どうしたの?」

「ぁ、ぃぇ。ぇと・・その・・?」

「面白い部分だったのかしら?」

「ぁ。です・・。はぃ・・」

「じゃ、感想文に期待しちゃうわね」

「ぁー・・・がんばります・・」

「ぇぇ。頑張って・・♪」


見六先生が指先を口元に当て、「しー」とジェスチャーをした。

裕子は頷き、タブレットを覗き込む様な態勢になる。


《ごめんごめん〜♪いや〜可愛過ぎてゴメンね〜?》


裕子は少し微笑んでから、改めて仔猫に左手の指先を向けた。

その指先を包む様に仔猫が触れる。

指先からジワリと温もりが()みて来て、適温のお風呂に肩まで浸かった時のような気持ち良さが裕子を満たしていった。


《いま、ボクの魔力で繋がってるハズなんだけど、今度はどうかな?》

《・・・こぅ・・かな・・?》

《そうそう♪出来たねっ♪褒めてあげよう♪よく出来ました〜♪》


仔猫が片方の前脚を上げたので、裕子も右手の人差し指を出し、チョンと触れた。

仔猫とハイタッチするという、なかなか体験出来ないコトをして、裕子の口元が緩んだ。


《ちょっと聞きたいコトがあって来たんだけどねー。読むの決めちゃいなよ、さっきから見られてるよ?》

《ぇ・・ほんと・・?》


仔猫が教壇の方をチラリと見てから裕子に視線を戻した。


《ぅん。今のキミ、すっごく落ち着きが無い子に見えるし》

《・・・私のせいなのかなー・・違うと思うんだけどなー・・?》

《ま、気にしない気にしない。さ、選んじゃお♪》

《・・ソコに居られると選べないんだけどなー・・?》

《おっと。ゴメンゴメン〜♪》


仔猫が軽やかにタブレットのモニタ上から避ける。


《どんなの選ぶの?》

《・・迷ってるの・・》


何とも釈然としない気分で、裕子はタブレットをスクロールさせる。


《これ、ネットに繋がってるの?》

《ぅん。でも、今は図書室のデータベースに繋げてるんだって》

《へぇ・・学校によって色々違うんだね・・》

《・・・アーシャちゃんって、どこの学校なの?》

《ん?隣だよ、たしか》

《・・・そっかー・・》


「隣・・どれだろ・・?」と裕子が呟く。

『隣』と言っても、裕子の小学校から歩いて30分以内くらいの距離に、別の小学校は3校有る。

しかし、アーカーシャ・リリィの姿を思い浮かべた裕子は「中学生なのかな・・?」と ふと思った。

自分よりだいぶ発育が良かった気がしたのだ。

中学校なら、隣と言えそうな近さに1校あるのだ。


《・・アーシャちゃんって、中学生なの?》

《んーん?小学生だよ?》

《・・・そっか・・そっかー・・》


首をガックリ落とした裕子が「・・・ふこーへーだ〜・・・」と呟く。

その呟きに、仔猫は裕子を見上げて頭を傾げた。


《・・何でもない・・何でもないよ・・》


裕子が自嘲気味に苦笑する。


そこそこ目立ちそうだが、今は そうでもなくなっていた。

さっき裕子が声を上げた後くらいから、教室のアチラコチラで微かな話し声がする様になっていたのだ。

教室のアチコチからボソボソと聞こえるが、教壇の見六(みむい)先生は注意しなかった。

1時間目も半ばを過ぎ、そろそろ、小学生なら私語がガマン出来なくなる頃合いだと分かっているからだ。

大騒ぎさえしなければ、1時間目が終わるまでは このままだろう。


《・・・》

《ん?なに?》

《ぇ?》

《ぃゃ、何か、「聞きたい」みたいに思わなかった?》

《・・思ってる》

《何かな?アーシャの3サイズ?今日のパンツの色?》

《・・そんなの聞きたくないし。男子じゃあるまいし・・!》

《あはは♪分かってて言ってみた♪》

《・・・》


裕子が軽く仔猫を睨む。


《ゴメンゴメン、ふざけ過ぎたかな。で、何が聞きたいの?》

《・・アナタの名前・・知らないなー・・って》

《あれ、言ってなかったっけ?》

《アーシャちゃんが何度か名前呼んでたと思うけど、覚えられる状況じゃなかったと思う・・》

《ぁー・・そだね・・そいえば、自己紹介してなかった・・かな?》

《ぅん》

《そっか・・ん〜・・そだね・・そーいえば・・?》


仔猫が頭を抱えたり首を捻ったりしている。

ものすごく可愛い。

教室内、授業中じゃなかったなら、裕子は仔猫を持ち上げて頬ずりしていただろう。


《・・アナタの名前は?》

《んーー・・何回か入れ替わってから聞きたい質問だねっ》

《・・・映画とか観るんだ・・?》

《うん。アーシャと観に行ったよ♪》

《・・・そっか・・》


裕子がアニメやドラマで何度も見た、魔法少女とマスコットの『普段のやり取り』だ。

目の前の仔猫と映画を観ているアーシャの姿を想像した裕子が、悲しい顔になる。

そして、そんな裕子の「良いなぁ・・私にはマスコット居ないもんなぁ・・」という悲しみの気持ちが、念話で仔猫に流れ伝わる。


《・・。ニャニャン》

《ぇ》

《ボクの名前。ニャニャンだよ、よろしくね》

《・・よろしく、ニャニャンちゃん》

《ぅん。よろしくね、裕子ちゃん》

《・・自己紹介したっけ・・?》

《んーん?ま、精霊の能力のひとつかな♪》

《・・へぇ・・すごぃ・・》


直に繋がっての念話によって、ニャニャンには裕子からの純粋な感動が伝わっていた。

元々言うつもりも無いが、裕子の純粋な感動を感じたコトにより、ニャニャンは尚更に言えない。

裕子の自宅に勝手に入った際に色々家探ししたし、不可視化して裕子を監視していた際にニャニャンは裕子の日記とかアルバムとかスマホとか、勝手に見ていた。

多分、裕子の母親よりニャニャンの方が、今の裕子のコトを色々と知っているハズだ。

着替える姿とか お風呂とかゴニョゴニョ・・。

裕子が知ったら絶対にニャニャンを許さないに違い無い。

だからニャニャンは余計なコトは言わない。


純粋無垢な感動を向ける裕子に無言で微笑みかけたニャニャンは、タブレットの画面をパシパシと叩いた。


《さ、選んじゃお♪》

《ぅん》

《どんなの選びたいの?》

《・・迷ってるの・・オススメとか・・。・・ぇと・・ニャニャンって呼んで良いかな・・?》

《ぅん、呼んで呼んで♪》

《じゃ・・・ニャニャン》

《うんっ》

《ニャニャンのオススメとか・・ないかな》

《ボクのオススメで良いの?》

《ぅん》


ニャニャンがタブレットの画面を覗き込む。


《んー・・コレとー・・コレとー・・・コレもでしょー・・あとー・・コレもオススメかなー・・?》


タブレットのモニタを仔猫がポチポチ触っている姿に少し身悶えしていた裕子だったが、ニャニャンが選んでいくラインナップを見て苦笑する。

ぃゃ、若干引きつった顔にも見えた。


『靴に入った仔猫』

『ルドリアとイッパイアルノヨ』

『注文し難い料理屋』

『魔王候補の宅急便』

『バイオリン弾きのゴンザレス』

『老猫の事務室』

『ネコとハムスター』

『ピンクの毛並みの猫と御客様』

『わっちは猫でありんす』

『100回生きたかった猫』

『猫とスライム』

『摩訶不思議の国のアリョーシャ』

『トミーとジェシカ』

『ツートンカラー動物記』

『南極から来てしまった猫』

『シフェル様と仔猫』

『101匹猫ちゃん大昼寝』

『ナマステ・ケイティ』

『誰も仔猫に気付かない、ぃゃ、気付けない』

『黒猫探偵』

『10匹居たネコ』

『伯母様とネコ』

『後進国の猫鍋』

『お宅のミケ、知ってるよ』

『機械仕掛けにされてしまった仔猫』

『ネコを王と崇めよ』

『ねこレストラン』

『猫と作る三味線』

『明後日の猫町ちゃん』

『猫をかぶった彼女との付き合い方』

『ロスト・キャット』

『猫を繋げ、犬は解き放て』



《・・・ぁはは・・》


えっとー・・?

『猫』以外も選んで?

『猫』しか無いじゃん?

どんだけ『猫』好きなの?

いや、アナタ『猫』だもんね・・?


裕子は若干遠い目をしつつ、黒板を見る。


ニャニャンが選んでくれているラインナップは、絵本や児童向けや古典文学やアニメが元だったり、とにかくバラバラだ。

『猫』が主役だったり主題だったり主材にされてしまっている解説本すら混じっている。

黒板には、『好きな本を選びましょう』と書かれている。

まぁ、マジメに感想文を書いて出せば問題は無いだろう・・きっと。



結局、裕子はニャニャンのチョイスした中から『魔王候補の宅急便』を選んだ。

本来は読書出来ていたハズの時間に読めなかった分、この作品ならズル出来るからだ。

この作品はアニメ映画化されていて、県営民放局の火曜ロードショーで毎年放送していたし、夏休みの小学校『夜間映画会』の上映作品にもなったコトがあった。

近くの公民館で『芸術の秋の上映会』をやる際にも時折上映されていた。

つまり、裕子は何度も観たコトがあったのだ。


大まかな内容は知っているので、スクロールで流し読みして、「映画では●●でしたが、原作では●●●でした。次に映画を見る時には違う見方ができそうです」といった感じで何パターンか書いて原稿用紙を埋めて提出した。


ちなみに、裕子が提出に教壇に向かった際、ちょっとした騒ぎが起きた。

ニャニャンがタブレットをスクロールさせていたのを隣の席の男子が見て「オバケ!?」と騒いだのだ。

『不可視』魔法によってニャニャンは見えない。

つまり、隣の席の男子からは、無人なのに勝手にタブレット画面がスクロールされて見えたのだ。

その男子が騒いだ瞬間にニャニャンはスクロールを止めた。

つまりもう、勝手にスクロールされている画面の証明は出来ず、その騒ぎはウヤムヤに終わった。

まぁ、その男子が裕子を好きらしいのはクラスの女子内では公然の秘密だったので、「裕子の気を引きたくて騒いだだけだろう」との見方をされたのも大きかっただろう。



2時間目も終わり、その後の授業も無事に終わっていく。

授業中にニャニャンが質問し、裕子が答える。

その逆もあった。

そんな訳で、裕子は知らなかったコトをいくつも知れた。

ニャニャンの方は、まだ『裕子が精霊のコトを隠している』線が捨てきれず、探りを入れる質問ばかりになった。

本当に精霊の居ない裕子に答えられるハズも無く、ニャニャンからの質問は空振りや明後日の方向へ飛ばされるばかりに終わった。


もっとも、この認識の齟齬は、ニャニャンの善意により起きた齟齬だった。

ニャニャンは精霊であり、根本の精神構造や倫理観は人間とは全く異なっている。

直に触れての念話状態の為に、ニャニャンがその気になりさえすれば、裕子の精神の奥底まで覗き込める状態なのだ。

裕子の尊厳を踏み躙って気軽に覗き込み そのまま黙っていれば、魔力抵抗の概念すら知らない裕子が気付くコトなど無いだろう。

ニャニャンは裕子との念話のやり取りの途中に そのコトに気付いていたが、あえて対話で知ろうとしていた。

ソレが何故なのか、ニャニャン本 (ニャン)にも分かっていなかった。

分かっていたなら、後に あの選択肢は選ばなかっただろう。




午前中の授業が終わり、裕子は給食前にトイレに向かっていた。

女子トイレの混む時間帯だが、配膳係がクラス分を運んで来るより前には教室に戻れるハズだ。


ニャニャンから聞けた魔法少女の新情報は役立ちそうなコトばかりで、裕子は内心かなり興奮していた。

今夜の自主鍛錬が捗りそうだった。


《ニャニャンも給食、食べる?》

《んーん。()・・アーシャのトコ戻んないと》

《・・そっか・・》

《・・いつか、アーシャと一緒にお出掛けしてよ。その時に一緒に食べよ♪》

《・・アーシャちゃんの予定とか、分かんないから・・》

《アーシャ、帰宅部だし。放課後なら時間取れるかも?キミは?》

《・・放課後なら・・大丈夫だと思う・・》

《そっか・・じゃ、ボクからアーシャに聞いとくよ♪》

《・・ぅん、ありがと・・》

《じゃ、またね♪》

《・・ぅん。また・・》


名残惜しそうに手を振る裕子に両前脚を振って返したニャニャンは、スウッと飛んでいってしまった。

ニャニャンが真っ直ぐ飛んで行った為に、裕子はスマホを取り出してマップアプリを起動した。

ニャニャンが飛んで行った方向に有る小学校で、『隣』と言えそうな距離に有るのは一校だけだった。


その小学校は、端愛(はまな)市立 山上(やまがみ)小学校。

裕子の通う端愛(はまな)市立 平原(ひらはら)小学校の姉妹校だ。

男子は兄弟校と言い張るが、ソレはどうでも良い。



アーカーシャ・リリィやニャニャンが知る裕子のコトは、かなり有る。

魔法少女としての活動を始められるのさえ まだまだなのが、裕子の現状だ。

『卵のカラをかぶったままのひよっこ』という言葉があるが、裕子の場合、『産み落とされていない卵』なのだから。


知られ過ぎていて、むしろプライベート剥き出しにされている感すら有った。


しかし、逆に裕子が知るコトは、ほとんどと言って良いくらいに無かった。

なので、コレが初めて知ったコトと言えた。

それもまた、魔法少女アーカーシャ・リリィこと斎木(さいき) 夏樹(なつき)のプライベート情報だったのだから、なんとも皮肉なコトだろう。



■■■■■to B PART■■■■■

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