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魔法少女 ノーブル・リリィ  作者: 散桜


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#6『私を認めて・・!裕子の奮闘!』Bパート

ズルリ・・・・・




「・・?」


ベッドに横になっていた裕子は、ふと、何かを感じた。

何か心当たりのある感覚に、「何だろう・・」と思っていると、寒気が走った。

感じたコトと似た感覚を思い出したのだ。


5日前の夜、立派な魔法少女になる為の練習中に遭遇した『黒い何か』。アレに感じたのと同じ感覚だったのだ。

思い出した途端に、寒気と一緒に、震えがやって来た。


あの恐怖を思い出した。

あの圧迫感を思い出した。

ノドの奥からドロっと血が溢れた感覚を思い出した。

口の中に広がった血の味を思い出してしまった。


ズルリ・・・・・・


布団の中に潜り込んで丸まった。

ずっとベッドに居たから、布団は裕子の体温で温まっている。

しかし、その温かさを感じられなかった。


ズルリ・・・


布団の中で丸まり、あの感覚が消えてくれるのを待った。

しかし、消えてくれない。

遠いのだけれど、すぐに辿り着けそうな距離。そんな距離を動いている感じがして、その感覚が消えてくれないのだ。


「・・はやく・・・行って・・」


かすれた声で呟き、目をキツく つむり、両手で自分を抱き締めた。

脚ももっと胴体に寄せ、足の指もキツく丸めた。


ズルリ・・・・・・


「・・だれか・・・」


消えてくれないイヤな感覚を感じ続け、裕子は無意識に救けを求めていた。


ふと。

黒いドレスが頭をよぎった。


暗い森の中、得体の知れない『黒い何か』と戦う、そんな黒いドレス姿が脳裏を よぎった。


「・・っ」


布団の中で、重い身体を持ち上げて。

布団を跳ね除けて、ベッドの上から転げ落ちる様に、裕子は床に降りた。


あの日、勇敢に戦う黒い後ろ姿に感動したんだ。

夜闇の中で踊る様に戦う姿に見惚れたんだ。

『こうなりたい』と思ったんだ。

『すごい』と思ったんだ。


こんな、布団の中で震えているだけだから。

こんな、指先だけでなく全身、震えているだけだから。

こんな、涙がポロポロポロポロと、止まらないから。

怖くて怖くて堪らないから。


だから私には、マスコットも居ないんだ・・!

こんなダメダメだから、何も出来ないんだ・・!!


涙が止まらない。

悲しくて堪らない。

自分の何か、言葉にできないけど、そんな何かが許せなかった。


『アナタは魔法少女失格』


「・・ぅ゛ん・・!」


『アナタは魔法少女失格』


「そぅ・・!」


『アナタは魔法少女失格』


「わたし・・ダメダメだ・・!」


『アナタは魔法少女失格』


「・・ぅん・・わかった・・!」


『アナタは魔法少女失格』


言われて当たり前だ、と心の底から理解してしまった。


『アナタは魔法少女失格』


「・・っ」


聞こえ続ける幻聴に頷いた。

何度も、頷いた。


涙が止まらない。

気付けば、ベランダまで出て来ていた。

ベランダから見える街並みは真っ暗だ。

でも、感じた。


どっちの方なのか。

目で見えている訳じゃない。

でも分かった。


どっちから感じるのか。

そして、その近くに居る誰かの存在も。


それが誰なのか、分かってしまった。


きっと、当たり前なんだ。

誰かに知られる訳じゃ無いのに・・!

誰かに褒めてもらえる訳でも無いのにっ!

こんなに怖いのに・・っ!!


魔法少女なら当たり前なんだ、きっと。

それが出来るから、彼女はスゴいんだ。

『ああなりたい』と思ってもらえるんだ。


あんなにスゴいんだ。



「・・っ」


すぅ・・・っと、すぅ・・っと、すぅ・・・・っと。

何回も、何回も、深く息を吸った。

吸って。

苦しくなって吐いて。

また吸って。

また吐いて。


涙は止まっていた。

身体の震えも収まっていた。


「・・私は」


深く息を吸って。

吐いて。


「・・魔法少女失格なんだから・・!」


深く息を吸って。

目を閉じて。

手をギュウッと、強く握りしめた。


「・・・けんげん・・!」


目を開けて、自分の身体を見下ろす。

パジャマから魔法少女の服になっていた。


裕子はベランダの柵に手を掛け、怖い感覚のする方向を見た。



「弱いね」

「・・きっと、ホントに、なりたてだったんだよ」

「・・」


アーカーシャ・リリィとニャニャンは、『黒』を最初に見つけた街中から、人気の少なそうな公園の方向に『黒』を追い立てていた。

いま居るところは、自分の学区ではない。

しかし彼女は、普段から頑張って周辺の地図を見て頭に叩き込んでいる為、ある程度の地理は把握している。

自宅から10分以内くらいの飛行範囲の大雑把なコトなら、クラスメイトの誰よりも きっと詳しいハズだ。

夜中のパトロールや休みの日の昼間にだって、『認識阻害』魔法を使って飛んだ。

道を歩いているだけなら気付かなかっただろう近道や抜け道だって分かっている。


きっと、この辺りに昔から他にも魔法少女が居たのなら、ここまでしなくても済んでいたハズだ。

彼女に色々と教えてくれた先輩みたいな魔法少女は、遠くに転校してしまって、もう居ない。

その先輩以外、辺り数十キロくらいで、魔法少女を見掛けるコトは無かった。


ほんの少し前までは。


弱くて、(いびつ)で、訳が分からない。

そんな魔法少女に出会った。


きっと、まだまだ これからなんだ。

だから、弱い彼女を責めたりはしない。

自分にだって・・。

・・・・・・・。

・・・・。

・・・・あそこまでヒドくなかったと思うけど、弱い時期はあったんだから。

それは間違いないんだから。

だから、責めない。


・・こないだビンタしちゃったけど、アレは責めた訳じゃない。


「・・」


『魔法少女失格』と言ってしまい傷付けてしまったが、非力を責めたりはしない。


「この辺りで大丈夫そうだね」

「・・ん」


ニャニャンから言われた通り、周りに人気は無い。

『認識阻害』の範囲を広げ、一時的に周囲から人払いをする。


コレをやると、その広げられた『認識阻害』の範囲に入りそうになる手前で「そちらには行きたくない」と思わせられる様だ。

範囲の中に取り込んでしまった場合も、その範囲から出るコトしか考えられなくなるらしい。

建物の中に居た場合は、建物から外を認識しなくなるらしい。


強い相手の場合、『場所の範囲』自体に指定する強めの別の魔法を使うのだが・・、今回の様に相手が弱く一時的にで大丈夫な場合は、『自分からの範囲』で限定指定して短時間で終わらせる。


『認識阻害』を広げたアーカーシャ・リリィが、『黒』を追い込んだ公園の中を歩く。

広げられた範囲内のコトは、手に取る様に分かった。

小さめの公園全体を包む範囲内で、『黒』は砂場の砂の中に潜り隠れている様だ。

夜の街灯だけの暗い公園だから見分け難いが、昼間なら砂の変色で即座にバレる隠れ方だ。

やっぱり成り立てだからか、なる前の習性は消えていないようだ。


アーカーシャ・リリィが左手を前方に向けて広げた。

手の平の前に、3センチくらいの黒い球体が現れた。

そのまま砂場に近付いて行く。


「  」


「?」


何か聞こえた気がしたけれど、耳をすませてみても聞こえない。

気を取り直したアーカーシャ・リリィが更に砂場に近付く。

左手の前に浮いた黒い球体は楕円形になり、砂場の方の先端が細くなる。


「   !」

「・・」


・・間違い無い。

今度は聞こえた。

誰かの声が近付いて来ている、と気付けた。


声が聞こえた気がした方向を見たアーカーシャ・リリィの目が、こちらに向かって猛スピードで近付く姿を捉えた。


その姿は見る間に近付き、減速無しに突っ込んで来た。


ボフンッ・・!!


かなりの音を立てて、砂場が爆発した。

減速無しに突っ込んで来る姿が見えたアーカーシャ・リリィは、即座に砂場から跳び退いていた。

しかし、爆発する様に飛び散った砂がバラバラと降りかかって来る。


「・・ぃた・・」


砂場にクレーターを作った何かが動く。


飛び散った砂が全て落ち、砂場に居る姿がハッキリ見える様になった。

砂まみれで、魔法少女装束からも髪からも、ザラザラと砂が落ちていく。


「・・・何しに来たの」


砂場にクレーターを作った者に、アーカーシャ・リリィが語り掛ける。

家で寝ているハズなのに、何故か砂場に突っ込んで来た者に向けて。


「・・私も戦う・・!」


アーカーシャ・リリィを見て、少しにらむ様な視線のまま、裕子は言葉を絞り出した。


「・・・頑張って」

「っ・・ぅ、ぅんっ」


裕子は止められると思っていたのに、アーカーシャ・リリィは呆気ないくらいに軽く口にして、砂場から離れ、近くの遊具に腰掛けた。


裕子がアーカーシャ・リリィから視線を離し、這いずる様な感じのする方に目を向ける。


砂場に突っ込んで来た裕子を覆っていた力場により、砂場に潜っていた『黒』は弾き出されている。

警戒心も(あら)わに、『黒』からは唸り声も聞こえる。


その頭?は裕子の方を向いている。

裕子は何度か深呼吸して、気持ちを落ち着けていた。

そんな裕子の後ろで、アーカーシャ・リリィがニャニャンに こっそりと何か頼んでいた。

アーカーシャ・リリィの肩からフワリと浮いたニャニャンは、『黒』を挟んで裕子の向かい側に浮いた。

そのニャニャンの左右から斜め向きに、上から見れば くの字に見えそうな感じで、壁の様に空間の歪みが伸びた。

『黒』は後ろを気にし、ニャニャンの方向には逃げられないと悟った。

裕子の後ろでも、アーカーシャ・リリィが隙の無い視線を向けている。


ニャニャンから放射されている壁の様なモノを見て、裕子はアーカーシャ・リリィの方に振り向いた。


「・・ありがとう」


これだけ御膳建てされたのだ。

緊張しつつも、更にヤル気が沸いてきていた。


懐に手を入れた裕子が取り出したモノを見て、アーカーシャ・リリィとニャニャンは首を傾げた。


「・・・ベルト?」


そう。微かな唸り声を上げる小さな『黒』に向けて裕子が手にしていたのは、ベルトだった。

女の子のスカートやワンピースによっては一緒に付いてくる、そんな細いベルトだった。

ベルトの金具の方を持ち、裕子は手を振り上げ、斜めに振り下ろした。


「GnYA…¡¿」


ベルトの先が当たり、『黒』が微かに後退った。

しかし、すぐに前に向けて歩き出す。

その小さな身体?から、黒いモヤが燃える様に溢れた様に見えた。


どうやら、裕子の半端過ぎる攻撃に腹を立てた様だ。

半端な分、かえって変に効き目があったのかもしれない。

効き目など欠片も無くて、そんな攻撃に後退りした自分に腹を立てているのかもしれない。


『黒』からしても、まず裕子を何とかしないと、逃げ道が無いのだ。

ニャニャンの方に逃げようにも、裕子を飛び越えるか脚の間を走り抜けるかしても、次の一手は自分が先に差されてしまう。


裕子がまたベルトを振り抜く。

今度は、先程よりは当たった。しかし、やはり逆効果だった。

『黒』の身体?が歪んで、それまでと形を少し変えた。

ソレを見て、アーカーシャ・リリィの顔が曇る。

よくない方向に向かっていたからだ。

『黒』を倒すどころか、感情的にして変化を促してしまっていたのだ。


「それじゃあ効かない・・!ベルトに『力』か魔力を流し込んで!」

「っ!」


後ろから聞こえた声に振り向くと、アーカーシャ・リリィが裕子を見ていた。


「わかった!」


どうすれば良いか、まるで分からない。

「チカラかマリョクを流し込んで」と言われても、流し込み方が分からないので、裕子はひとまず、ベルトに熱を移動させるイメージを込めた。

手が冷える様な感じと、腕が伸びる様な感じがした。

裕子はベルトを振り上げると、そのまま一歩踏み込み、ベルトを振り下ろした。

ベルトは今度はキッチリと、黒い固まりに直撃した。

ベルトの端が巻き付く様に絡まり、裕子が腕を引いたら少し持ち上がり、少し離れた場所に落ちた。


そのまま同じ攻撃を数回繰り返していると、黒い固まりは動かなくなり、闇夜に溶け込む様に崩れ出し、そのまま あっけなく消えていった。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、と肩で息をする裕子が ゆっくり振り向くと、後ろに居たアーカーシャ・リリィが軽く頷いた。


気が抜けた裕子は その場にへたり込んでしまい、地面に両手をつくコトで かろうじて、倒れ込むのだけは防げた。

体力的な問題なら、ここまで疲労困憊にはならなかっただろう。

しかし、魔力枯渇で昏倒(からの寝落ち)するコトに慣れている裕子には、少し精神的余裕があった。


荒く呼吸する裕子は、急に寒くなったのを感じた。

よく見てみれば、すでに魔法少女服は消えていてパジャマ姿に戻っていた。

魔法少女としての姿を保つ魔力も、使い果たしていたのだ。


「・・・まだまだよ」


微かに聞こえた声の方を見ると、アーカーシャ・リリィが裕子の方に歩いて来ていた。

裕子は うなだれてしまったが、その手を掴まれ、引っ張られる様に立たされた。

アーカーシャ・リリィは裕子の腕を自分の首に掛ける様にし、更に腰を引き寄せて支えた。

腰に くすぐったさを感じて、裕子が脚をモジモジするが、すぐに足下の状況が変わっていく。

裕子の足が地面から少しずつ離れていたのだ。


そのまま裕子を抱え、アーカーシャ・リリィは空中に浮かび上がる。


公園の上空10メートル程まで浮いたアーカーシャ・リリィが片手を前に出すと、手の前辺りから、うっすらと黒く丸い空間が広がり出した。

そして、裕子と『黒い固まり』が戦っていた砂場周辺を包む。


「・・」


無言でアーカーシャ・リリィが手をグッと握ると、黒い空間内が強風でシェイクされる様に吹き荒れた。

そして黒い空間が消え、裕子が砂場に盛大に作ったクレーターは(なら)され、強風で砂場が荒れた様に見えなくもない感じになっていた。


その光景を裕子がポカンと眺めていると、いきなりガクンと負荷がかかり、景色が流れ出した。

アーカーシャ・リリィが飛びだしたのだ。


「ぇと、ぁの」


裕子が何か言おうと思って口をパクパクさせている間も、アーカーシャ・リリィは どんどんと飛んで行く。

しかし少しして、アーカーシャ・リリィが向かっている先が分かって裕子は口を閉じた。


裕子の住むマンションのベランダに着き、アーカーシャ・リリィが裕子を支えていた腕をソッと離した。

ベランダに降りた裕子は、意を決して口を開く。


「っ・・・ぁのっ・・・ごめんなさいっ・・!」


アーカーシャ・リリィの顔を照らす蛍光灯の明かりによって陰影が出来ていて、裕子からは あまり表情が見えなかった。


「・・・ら・・」

「ぇ?」


アーカーシャ・リリィが何かボソッと、口にしたのは分かった。

しかし、ほとんど、ベランダに吹く夜風に吹きさらわれてしまって、聞き取れなかったのだ。


「・・・私も、初めは同じだったから・・」


今度は聞き取れた。

裕子がアーカーシャ・リリィの顔を見ると、プイッと背けられてしまった。

しかし、髪の隙間から見える耳が赤く見えた気がした。


「私、がんばる・・!強くなるからっ!」

「・・ん」

「ぇと・・・私、裕子!アナタのこと、アーシャちゃんって呼んで良いかな・・?」

「・・・別に。・・好きにして」

「ありがとう・・私も、魔法少女の名前、早く決めるね・・!そしたら一番に教えるからっ」


裕子が はにかみながら口にしたコトを聞いて、アーカーシャ・リリィの肩に乗っていたニャニャンが首を傾げた。


「・・じゃ、帰るから」

「ぁ、アーシャ、待って・・!」


ニャニャンがアーカーシャ・リリィに何か言いかけていたが、彼女は そのままベランダから飛び立ってしまった。


「またね〜♪」


裕子がベランダから手を振る姿に 軽く手を振り返し、アーカーシャ・リリィは自宅方向に飛び去って行った。




■■ED:『希望の一歩』歌:宇津馬(うづめ) 裕子(ゆうこ)■■


■■■■■This program is brought to you by the following sponsors.■■■■■


ニャニャン「あれー?」

アーカーシャ・リリィ(以下、アーシャ)「どうしたの、ニャニャン」

ニャニャン「百合展開は?」

アーシャ「だから、無いってば!?」

裕子「そんな怒らなくっても・・アーシャちゃん・・私のコト・・キライ・・?」

アーシャ「ぇ。そんなコトないけど・・」

裕子「じゃあ・・愛してる?」

アーシャ「重っ!?いきなり重過ぎない・・!?」

ニャニャン「ね、裕子ちゃん裕子ちゃん・・」

裕子「なに?」

ニャニャン「コレはアレだよ。私は女の子が好きなんじゃない、裕子が好きなんだよ!ってヤツだよ・・!」

裕子「ぇ・・♡」

アーシャ「ソレも違うからね!?あと、何でそんなに嬉しそうなの・・!?」

ニャニャン「コレがツンデレってヤツか・・」

裕子「も〜♪アーシャちゃんの照・れ・屋・さ・ん♡」

アーシャ「ちっがーう!!次回は!次回は!?」


裕子「次回♪第7話♪『自分に出来るコトを探して、裕子の挑戦!』です♪」

ニャニャン「次回こそ・・!ね!」

裕子「そうだね♪私、がんばる!アーシャちゃんも「頑張って」って言ったもん!」

アーシャ「戦い!戦いのコト!た・た・か・い!」

ニャニャン「またね〜♪」


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