#6『私を認めて・・!裕子の奮闘!』Aパート
■■OP:『Don't stop.Don't look back.』歌:斎木 夏樹■■
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「・・・」
黒板に書かれる内容をノートに書き写しながら、魔法少女アーカーシャ・リリィこと斎木 夏樹は、小学校の授業を受けている。
机の端には小さなネコが丸まっているが、周りのクラスメイトや教壇の先生から注意されることは無い。
丸まるネコは、彼女のお供の精霊のニャニャンだ。
『不可視』のスキルを使っている為に、夏樹以外には見えない。
クラスメイトに魔法少女が居たらバレバレになるだろうけれど、幸い、夏樹のクラスどころか、夏樹の通う小学校に居る魔法少女は夏樹だけだった。
■
普通の人達は、『魔法少女』というモノに夢を見過ぎだと思う。
アニメや実写ドラマで観るみたいな、夢溢れるモノなんかじゃないのに。
あの子が『黒』に襲われているのを救けてから、5日経った。
3日持たずに夜空に飛び立つかと思っていたけど、あの子は3日、学校を休んだ。
部屋のベッドの上で寝息を立てる姿は、何度か見に行った。
寝るフリして何かしているかと、『認識阻害』を最大にして侵入した。
寝息を立てる寝顔と、上下する布団を見ながら、「私、勝手に入って何をしてるんだろう・・・」と何度も思った。
何度か見た着替える姿に罪悪感を抱きながら、それでも『お見舞い』と自分に言い聞かせて侵入した。
そんな中、ついに、あの子の母親を目撃した。
何の為に帰宅しているのか分からない、そんな印象を持った。
リビングのテーブルの上に お金を置いて、手書きの簡単な手紙を残す。
そしてシャワーを浴びて着替えたら出て行く。
その間、娘の部屋に立ち寄る素振りも無かった。
たぶん、娘が部屋で臥せっているコトにも気付いていないんじゃないだろうか。
あの子が寝込んで2日目、授業中に、『まさか!?』というコトに気付いた。
あの子を監視していた期間、あの子はコンビニ生活だった。
部屋で寝込んでいては買い物にも行けない。
急ぎニャニャンに見に飛んでもらえば、案の定、ロクなコトになっていなかった。
買い置きだったのか、カップ麺が主食になっていた。
起きてカップ麺を食べ、寝て、起きたらカップ麺。更に寝て、起きたらカップ麺。
3日目、給食を食べていたら、気になってノドを通らなくなった。
魔力人形を代理に残し、真っ昼間の住宅街を飛んだ。
あの子の家のマンションのベランダから入り、テーブルの上にあったお金を確認し、記憶にあるピザ屋に電話した。
認識阻害を強めに放射しつつピザ屋の対応をしたから、真っ昼間の学校に行ってるハズの時間帯に魔法少女がピザを受け取ったとは認識していないハズだ。
「届けたけど相手って どんな人だったっけ?」と首をひねって、5分もしたら完全に記憶から消されているハズだ。
あとは勝手に部屋に入り、驚くあの子の枕元にピザの箱を置いて、「買ってくるからお金・・!」と手を差し出すだけだった。
驚きつつ口をパクパクさせていた あの子は、ベッドから降りると、服入れの奥から貯金箱を出し、千円札を10枚ほど、出した。
真っ昼間のスーパーの店内を魔法少女が歩いていても、レジに並んでいても、特に騒がれたりはしなかった。
魔法少女の常時発動スキルの『認識阻害』は便利だ。
数日は持ちそうで栄養のありそうな食べ物を買い込み、飛んで戻ると、リビングでピザを食べている姿があった。
買い物袋をテーブルの上に置き、余った千円札を7枚と小銭が数百円ちょい、キチンと返した。
「・・ぁの・・」
何か言いたそうにしている姿に背を向け、ベランダから飛び立った。
そんなコトもあったけれど、今日は5日目だ。
「3日は寝てなさい」と言ったけど、あの子は5日も寝込んでいた。
あの子が『黒』に遭わされた目を考えれば、弱気になるのも無理は無いだろう。
しかし、心配にはなる。
学校帰りに、あの子の住むマンションに寄ってみるコトにした。
マンションの中に入る前に歩きながら『認識阻害』を発動させ、エレベーターで あの子の住む部屋のある階に行き、手当たり次第にドアノブを ひねってみた。
3部屋目が開いていたので、ドアを開けて入り、中を通り、ベランダに向かう。
認識阻害の効果で私のコトは分からないハズだけど、20代くらいのお姉さんがテレビを見ていた。
真っ昼間でも、カギもかけないのは不用心で心配になった。
「・・・」
部屋らしき中に入って、衣類ダンスをぶちまけた。
下着を点々と玄関方向に向けて落としておいた。下着の何枚かは「ごめんなさい」と心の中で謝りながら、炎系魔法で燃やして消滅させた。
これで、下着泥棒に侵入されて盗まれたと認識するだろう。
あと・・・。
ドン・・!
入口のドアを軽く蹴飛ばしておいた。
「ぇ!?なに!?」
テレビを見ていたお姉さんが来て、散らかる衣類や下着を見て慌てる。
『認識阻害』のおかげで、すぐ横に居る私には気付かない。
ついでに、土足のままだけど、魔力の力場に包まれているから床は汚れない。
これで、明日からはキチンとカギをかけて生活してくれると思う。
安心してベランダに行き、『浮遊』を発動させつつ、あの子の部屋のベランダまで、ベランダ伝いに移動する。
吹き付けて来る風で、スカートがめくれにめくれる。
かなり気になるけど、認識阻害の効果で誰にも見られてはいないハズだ。
同じ『魔法少女』なら見えてしまうかもしれないけど、この時間なら・・・・たぶん、きっと、見られてないハズだ。
そう信じたい。
ベランダから覗き込むと、あの子がテレビ前でパンを食べている姿が見えた。
数日前に私が買ってきたパンだ。
食べてくれていて良かった。
安心して、ベランダの柵から手を離した。
「顕現」
落下しつつ魔法少女に変身し、そのまま空に飛び上がった。
まぁ、たまになら、空を飛んで帰るのも良いかもしれない。
■
宿題を終えて、魔法少女としての日課に入る。
自分の魔力を薄め、身体全身から周辺一帯に向けて放つイメージで広げる。
これに引っ掛かる『何か』を調べに行くのだ。
他の魔法少女の場合もあるし、『黒』の場合もある。
「・・・・・・」
ハズレを引いてしまった。
いま感じたのは、弱々しいけれど、『黒』の反応だ。
「ニャニャン、『黒』みたい。行こ」
「うん、行こう♪」
ベッドの上でコロコロ転がって遊んでいたニャニャンに声を掛け、私も準備する。
「顕現・・!」
魔法少女に変身し、魔力人形を出し、自動操縦にして、窓から飛び上がる。
感じた『黒』の反応までは、たぶん1キロくらいだ。
方向的には、あの子の住んでる方向に近いと思う。
範囲で見れば、あの子が担当するべき場所だと思う。
でも、こないだ見た感じだと、『黒』の対処は まだ早いと思う。
幸い、感じた反応は小さめだった。
気付かれないとは思うけど、あの子に気付かれる前にパパッと終わらせてしまおう。
「アーシャ、居たよ!」
「ぅん」
感じた通り、弱そうだ。
たぶん、侵食されたばかりだと思う。
■
魔法少女アーカーシャ・リリィと、お供の精霊ニャニャン。
夜の暗がりであっても尚更に暗い、滲み出す『黒』に向けて。
夜闇に、黒いウェディングドレスが ひるがえる。
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