#6 RAPIDLY GO HOME MAN
前回までのあらすじ
そっとスタンガン
ヨド「えっ、新聞部がおしまいって、どういうことですか?」
アヤミ「あら、聞かれてましたか。わりと小さくつぶやいたつもりだったんですけれど・・・耳いいんですね、文吉さん」
ヨド「いや~それほどでも・・・ってそんなことはどうでもよくて!何で俺が新聞部に入らないだけでおしまいなんですか!」
アヤミ「それは・・・部員の人数が規定に満たないからです」
ヨド「え?」
アヤミ「去年まで部員の規定人数は3人だったんだけど、最近この高校に部活が増えてきてね。管理が大変だっていう理由で、部活数削減の意味を込めて規定が4人になったの。今年度からね」
ヨド「は、はぁ」
アヤミ「だから3人しか部員のいない新聞部は、これで廃部。今週中に4人に満たないと、文字通りおしまいなの」
ヨド「いや、おかしいでしょ!あと1人部員が欲しいんなら、誰かしら勧誘すればいいじゃないですか!俺じゃなくても!」
アヤミ「ゆずちゃんも言ってなかった?部長はあくまであなたに固執しているの。あなた以外は入れるつもりはないんだって」
ヨド「・・・俺が入部しないなら、新聞部はなくなってもいいと?」
アヤミ「そう、部長って妙にこだわりが強くて、とくに自分の直感に自信があるみたいなの。あなたに興味を抱いたから、もうあなた以外を入れるつもりはなくなってしまったみたい。『淀緑が入部しないなら新聞部は廃部!』ですって、変なこだわりでしょ?」
ヨド「分からない、なんでそんな発想に陥るんだろう・・・」
アヤミ「部長にとって新聞部というのは、他人の不幸を見つけて優越感に浸るための部活。いわば、部長のことを満足させるために作られた部活ね」
アヤミ「でも、最近はあんまり他人の不幸も起きなくて、退屈な日々が続いていたの。そんな時、あなたが現れた。メシウマを呼び寄せてくれそうな逸材を見つけて、どうしても入部させようと心躍る気持ち、ちょっとは分からない?」
ヨド「微塵も分からないですね」
アヤミ「だよね~、ふふっ」
ヨド「・・・」
アヤミ「ね、おかしいでしょ?でも、そんな新聞部が好きなんだ~私」
ヨド「やめてください、胸が痛くなるじゃないですか」
アヤミ「ん~、心臓病?」
ヨド「そういうことじゃないです!罪悪感でですよ!」
アヤミ「なるほど~、どうして罪悪感を感じるの?」
ヨド「だって、アヤミ先輩は新聞部にいて楽しいんですよね。俺が入らないせいで新聞部が廃部になって・・・まるで先輩の居場所を奪うような気がして、申し訳ないんですよ」
アヤミ「なんだ~そんなことか~」
アヤミ「そんなこと気にしなくていいんだよ~、無理矢理勧誘しようとわがまま言ってるのはこっちなんだから~」
ヨド「でも・・・!」
ゆず「うぅっ、千歳ちゃん・・・」
ヨド「!」
アヤミ「あら、寝言かしら?ゆずちゃん」
ゆず「やだよぉ千歳ちゃん・・・アタシを置いていかないでよぉ・・・」
ヨド「!」
アヤミ「まぁまぁ、部長がどこかに行ってしまう夢でも見ているんですかね?」
ゆず「アタシが悪かったから・・・お願い、許してよ、千歳ちゃん・・・!」
アヤミ「は~いよしよし、大丈夫ですよ~ゆずちゃん。部長は怒ってなんかいませんから~」
ヨド「・・・」
ゆず<アンタが入部してくれないと、千歳ちゃんが悲しむから・・・それじゃあ千歳ちゃんを幸せにしてあげられないから・・・!>
アヤミ<変わってるでしょう?でも、私はそんなゆずちゃんたちを見るのが楽しいんですよ~>
アヤミ<・・・これで、新聞部もおしまいだね、ゆずちゃん>
ゆず<やだよぉ千歳ちゃん・・・アタシを置いていかないでよぉ・・・>
ヨド「・・・ますよ」
アヤミ「へっ?文吉くん、いま何か言った?」
ヨド「入りますよ」
アヤミ「えっ、何に?」
ヨド「っ、新聞部ですよ!新聞部!!」
アヤミ「えっ!?どうして急に?」
ヨド「だって・・・ずるいんですもん、皆さん」
アヤミ「ずるいって、何が・・・って文吉くん、なんで泣いてるの?」
ヨド「うっ・・・な、泣いてませんよ!!」
アヤミ「でも、その頬を伝ってるのは・・・」
ヨド「こっ、これは・・・サンテ40ですよ!!」
アヤミ「はて、どうして目から目薬が・・・逆流?」
ヨド「もういいじゃないですか!とにかく俺入りますから、新聞部!」
アヤミ「そ、そう・・・でもよかったわ!これで部長もゆずちゃんも喜ぶわ!これからよろしくね、文吉くん!」
ヨド(・・・)
ヨド「はい、よろしくお願いします・・・」
こうして俺は、新聞部に入ることになった。決して積極的な入部ではなかった。むしろ入部なんてしたくなかった。
でも、ゆず先輩の涙と、アヤミ先輩の寂しそうな顔を見ていたら、入部せずにはいられなかった。人助けといえばそれまでだ。
人助けをして感謝されたいとか、達成感を得たいとか、そういう感情はない。ただ、俺のせいで誰かを不幸にするのは、もうゴメンだったのかもしれない
だが、結論から言おう。俺は新聞部に入るべきではなかった。
Episode1「新聞部に入ろう!」
終




