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3話 力の片鱗

 早々に床に就いた零弥だったが、慣れない場所や環境のせいなのか、中々に寝付けなかった。何度か寝返りを打ちながらも結局は仰向けになる。

 羊でも数えようか、などと思いながらも余計なことを考えると却って眠れなくなりそうなのでそれもやめよう。あれこれ思いながら再び寝付こうとしたその時、小屋の外からなにやらヒソヒソとした声が聞こえてきた。



「なあ爺さん、それって本当なのか?」


「ああ確かじゃ。この前たまたまお役人様から聞いたんでの、確かな話じゃ」



 ――どうやら男二人が話してるらしい。声からして中年の男と老人のようだ。二人は話を続ける。



「ならさっさと締め上げて引き渡そうぜ? 最悪殺しても構わねえんだろ、なんで今やらねえんだよ」


「まあもう少し待つんじゃ、下手に抵抗されると面倒じゃろうて」



 ――殺す!? 引き渡す!? 一体何のことだ!!?  男達の話に零弥は動揺を隠しきれない。しかし、会話の内容からして自分の命が危険にあることは明白だった。――逃げなきゃ……早く逃げないと、殺される!! そう思いながら零弥は勢いよく起き上がり扉に目を向け立ち上がろうとする。



「あっ……」



 ――目が合った。 小屋の中は暗がりではっきりとは見えないが木製の扉の隙間からは、確かに血に飢えた獣のような(おぞ)ましい眼光がこちらに向け覗いている。



「殺せぇ!!」



 老人がそう叫ぶと同時にバン!! と音を立て勢いよく扉が開きまずは老人が襲い掛かる。手には(くわ)のような物を持っておりこちら目掛けて大きく振り上げる。



「キエェェイ!!」



 そう何処かで聞いたことのある奇声を上げながら鍬のような物を勢いよく振り下ろす。しかし何とか体を捻り(すんで)の所で振り下ろされた鍬をかわす。だが休んでる暇など全く無く、ガタイのいい中年の男がこん棒を振るう。



「オラ!大人しくしろやっこのガキィ!!」


 こん棒が左右から勢いよくスイングされる。大男が振り回すそれを一度でも受ければ、一貫の終わりだ。



「うぁあああっ!!」


 ガッ バキバキ!! 


 周囲の一切合切を蹴散らし、こん棒は、苛烈に壁へと突き刺さる。


 ゴッ! ヒュン バ!!

 木片が頬を掠めチリリと熱くなる。

 何度も頭を目掛け、しつこいくらいにこん棒が振り回されるが必死にかわす。

 が、零弥いよいよ壁際に追い詰められる。すると中年男の後ろから老人の、甲高い声が響き渡る。



「そこを退()けい! 儂の取って置きで始末してくれる!!」



 そう叫んだ老人の手からは、勢いよく鋭利な氷柱が弾き出され零弥に目掛けて襲い来る。


「ッぁあああぁアア!!!!」



 左腕に突き刺さった凶器に目を向けながら、地面でのたうち回る。中年の男が馬乗りになり零弥の首に手を掛ける。



「フン、手間を掛けさせやがって。今楽にしてやる」




 ――何だコレ。こんな訳の分からない場所で、訳の分からない理由で、俺は死ぬのか……男の手を払いのけようと必死で抵抗するも、徐々に力が抜けていくのが零弥自身にも分かった。



「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」



 ――だがやはり死にたくない、こんな所で死ぬなんて御免だと、最後の瞬間まで抗おうと覚悟を決めたその時――




「っつ!!!?? ぬぁあああああああああああああああ!!!!」



 突如として男の体が燃え上がる。男は苦悶の叫びを上げながらその辺を転がり回る。



「なん、じゃと!? 何が起こったんじゃ!!」




 涙を流し遠い目をする零弥。呆然と立ち尽くす老人も大男と同じように老人は燃え上がり、絶叫する。しかしそんなことはどうでもいい。焼けた人形のようなものを尻目に全力で小屋から飛び出して行く。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ハァ、ハァ、ハ、ハァ、ッ!! 」



 狂気の現場を飛び出し、村から森へと脱出した零弥は息も絶え絶えになりながら動けなるくらいに走り続けてから、ようやく足を止め、仰向けで大の字で地面へと崩れ落ちる。頭の中はサラダボウルをぐちゃぐちゃにかき混ぜたみたいにグルグルと錯綜している。



「クソッ! 何、なん、だっ。ハァ、ハ……」




 ――さっきのあれ、俺がやったのか? いきなり二人とも燃えて必死で逃げてきたけど、自分でもどうやったのか分からない。

 ていうかあの二人は死んだんだろうか――いや、だとしても俺は悪くない、悪くない!殺そうとしてきた向こうが悪いに決まってる! 二人がああならなければ、自分が殺されていた!

 それに、撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ。ってよく言うじゃないか。漫画とかでよく聞く気がするけど実は、アメリカの小説が元ネタらしい――




「まあどうでもいいか」



 そう呟き、意識が、事切れた。



























































































































































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