2話 村へ
――やっと見つけた! 目が覚めてから、ずっと歩き通して焦燥感が身体を支配しかけたが、一先ずは落ち着いた。
「あの、すみません! 近くに人が住んでるところってありますか!?」
少し言葉足らずだったかもしれない。しかし今、一番知りたい事だ。真っ先に言葉を投げ掛ける。
「なんじゃお前さん、他所から来たのかい? 近くには村があって儂はそこに住んでおるが」
――やった! やっと見つけたぞ!! ようやく人が居る場所を見つけた!! 零弥は続けて問う。
「それともう一つ聞きたいんですが、此処って何処なんですか? もちろん日本ですよね?」
老人は不思議そうな顔をしつつ返す。
「え? ニホン……とはなんじゃ? よう分からんがここは帝国領内に決まっとるじゃろ」
――帝国? 何を言ってるんだこの爺さんは。いや、だって日本語通じてるし日本に決まってるじゃん。そう思いつつも、今は絶対に老人の機嫌を損ねるわけにはいかない。零弥は疑問を一旦封じ込める。
「あのすみません、俺、田舎から出てきたばかりで道に迷っちゃって今日、泊まるところも無いんです。もしよければ村に泊めてもらえると有難いんですが……」
本当は色々ともっと聞きたいことはあるのだが、今はともかく寝泊りできる場所の確保が最優先だ。
零弥は文字通りに腰を低くしてお願いをする。
「ん、ああ。それは構わんぞ。人間同士困った時はお互い様じゃからな、儂の家に泊まるといい。今ちょうど村に帰るところじゃ、付いてきなさい」
若干含みのある言い方に聞こえなくもなかったが、ともかく願ったり叶ったりだ。この国? がどうやら日本じゃなさそう、などの不安もあるが今日はともかく体を休めたい。零弥は、老人と一緒に村に向かうべく歩き出した。
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――体感で10分くらいだろうか、しばらく歩くと村に到着した。
「ほれ、此処じゃ。此処が儂の住んでる村じゃ」
村の周囲には木材を中心とした柵で囲われており、出入り口には簡素ながら門もある。
ようやく村に到着して零弥は改めてほっとする。
ちなみにこの村はローソン村と言うらしい。どこのコンビニだよ。
――あれれ? 村って言うからもっとこう、辺鄙で何もないような更地みたいな場所かと思ったけど……などとナチュラルに失礼な事を思いながら――
「村っていうからもう少し人が少ないのかと思ったけど、活気ありますね」
と柔らかい声で言う。
「まあの。この村には100人は住んでおる。小さいが商店もあるし、たまに近くの街から行商もやって来るんじゃ」
ふわっとした白い髭を撫でながら老人は話す。そう言いながら老人はついて来いといった感じで歩き出し、少し歩くと老人は――
「今夜はここを使うといい。少し小さいがちゃんと雨風は凌げるし、一人で使う分には問題ないはずじゃ」
と言いながら老人が指差した先には木で作られた小さな小屋があった。確かに若干ボロいが、壁の隙間などは少なくて思ったよりもしっかりとした作りに見える。
扉を開けると真っ先に、藁を敷いた簡素な寝床が目に付いた。
「ありがとうございます。本当に困ってたんで凄い助かります。」
老人は顎を撫で、笑いながら話す。
「フォッフォッ。まあ今日はゆっくり休みなさい」
そう言って老人はその場を離れてしばらくすると、有難いことにスープを持って来てくれた。
零弥は感謝しながらそれを受け取り食べ終えた後、横になってあれやこれやと今日一日を振り返り、明日以降どうすべきかを考えた。
だが如何せん帝国とやらの事を全く知らないし、何より疲労感で頭が回らない。
とりあえず今後の事は明日考えようと思った零弥は、少し早いが眠ることにしたのであった。