表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/7

1話 異世界へ

 いつもと変わらぬ朝。平穏な日常の風景。そんないつもと同じように過ごすはずだった少年の日常は、唐突に、呆気なく崩れ去った。



「どこなんだ……此処は、一体何が起こったんだ?」



 少年は周囲を見渡し、状況を理解しようとする。周りは生い茂った木々に囲まれており、建物らしき物や人影も見当たらない。お日様はまだ高く、耳にするのは草や葉が風に擦れる音くらいで、辺りは静かだ。



「森……なのか、此処は。何でこんなとこに居るんだっけ。全然思い出せない」



 家を出て学校に向かう途中までは覚えている。しかし、それ以降の事が思い出せない。まさか拉致でもされたのか、こんなところに?



「いやいや落ち着くんだ俺、待てあわてるな。まずは腰を落ち着けよう……俺は上代かみしろ零弥れいや 。ごく普通の高校二年生で、人様に恨みを買う様な事はしていないはず……」



 やはり少年――零弥には何故こんな状況になっているのか見当が付かない。

考えれば考える程に分からなくなる。



「ともかく、まずは母さんに電話して……」


 零弥はスマートフォンの電源を入れる。だが――



「いや嘘だろ、圏外……」



 こんな状況あり得ない、そう自分に言い聞かせてもう一度試す。



「ダメだ、電話もネットも繋がらない……一体何なんだ、この状況は。どこなんだ? 此処は……」



 家を出た後の記憶が無く、スマートフォンも使えない状況となって混乱していたとはいえ、心のどこかでは何とかなるだろうと楽観視していた零弥は、呆然とする。スマホの他に彼の手持ちにある物は学校で使うカバン、とその中にある筆記用具と教科書、それと昼食で食べるはずだったコンビニで買ったパンが3つに、ペットボトルのジュースくらいだ。




「いや、でも仮に身代金目的で拉致とかされたんじゃ、こんな森に捨てていくようなことなんてしないよな普通……特に拘束もされてないし周りには誰も居ないし……」




 訳の分からない状況に変わりはないが一先ず(ひとま)、今すぐに殺されるだとか、その様な心配は無さそうだ。だからと言って状況が最悪であることに変わりはない。今いる場所が何処なのか、何故このような場所に居るのか、そもそも此処が日本なのかどうかすらも分からない。今は安全だからと、命の補償など何処にもない。



「クソ、考えていても仕方ないな。とにかくまずは人を探そう」



 ――何より、このまま何もせずにいるとネガティブな事ばかりを考えてしまい、気が滅入る。水も食料も少ないし。




 零弥は、そう思い直して立ち上がり、歩き出した。






 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 あれから、どれくらい歩いたのだろうか。歩き始めた頃はまだ日が高く明るかったが、日は大分落ちてきておりもう少しで夜だ。



「クソ、日が沈むまでに責めて寝る場所くらいは探さないと……」



 普通の高校生だって夜の森が危険なことくらいは何となく分かる。だが、今に至るまで人里や民家も見つけることは出来なかった。



「早く何とかしないと本当にヤバイんじゃないか、これは……」



 今後の見通しが一切つかず、焦燥感が体を支配しようとしていたその時――



「おや、そこのお若いの。珍しい格好をしてるのぅ。こんな所で何をしているんじゃ?」




 何者かの声に気付くと視線をずらす。振り向くと、そこには老人の姿があった。




































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ