第1話 プロローグ
第1話
「ふう…やっと猪1匹倒せた」
村外れの開けた林で少年がつぶやいた。
少年の名前はレアス。両親は早くに他界し、今は冒険者になるために村の外で食材調達を兼ねて毎日魔法の練習をしている。
猪1匹あれば1週間は肉に困らず暮らせるし野菜は農園からもらってくればいい。だから、週初めに狩った猪以外は血抜きをある程度して近所の食堂に買ってもらっている。
猪1匹で5,000ブロン。
この世界には小さい順でブロン、銀貨、金貨があり100ブロンで果汁ジュースが買える。
そしてこの少年が目指す冒険者は様々な村や都市、ベテランになれば国からの依頼をこなすことで生計を立てる職だ。目指すことは誰でもできるため副業として依頼をこなすものも少なくはない。ただし、メインの職にするとなると話は変わってくる。魔獣狩りではすこしのミスが命の危険になりかねないし採取依頼だとしても採取地への行き来の際に魔獣に襲われて命を落とす可能性だってある。その分、命を懸ける代わりに報酬は最低貨幣がシルバーと生活に困ることはない。
冒険者とは、死を覚悟しなければならない職である。
「今日は頑張ったしステーキにするか!」
近くの平らな岩にめがけて火球を放つ。ボッ、と岩全体が炎に包まれ次第に火が消えて熱された岩ができる。そこに、手作りの薬草の粉と塩を少し厚めにスライスした肉に振ってから乗せる。片面の焼き時間は30秒。先ほどの火球の余熱で一気に焦げ目がついてミディアムレアのようになるのだ。
4年がたったこの日、レアスは10歳になり村から離れることができるようになる年齢
になった。離れるというのは村から出て他の町に移り住むという意味での制限だ。無事に近くの都市へ馬車をチャーターしていくための20000ブロンつまり銀貨2枚をためることもできた。もちろん、冒険者になるためにコツコツと毎日溜め続けたから銀貨10枚くらいは貯金してある。このお金は役所で冒険者登録したりある程度の魔導士としての服装を見繕うために使おうと考えている。
この世界では冒険者になるためにギルドで登録するのではなく役所で自分の身分証明書の中に冒険者と登録する必要があるのだ。各ギルドで冒険者を管理するよりも国として管理するほうがギルドとしては大きな責任を負うことなく仕事をあっせんすることに専念でき、国としては役所で登録するというハードルから盗賊などの悪人が冒険者になって権利を振りかざして追いはぎするような犯罪をある程度抑止するという働きがある。
馬車で数日揺られ都市へ入るための審査を受けるんだが・・・・・・。
あ′′っ!!身分証明書なんて持ってない!!