イタリアン×ジャンケン
イタリアン×ジャンケン
イタリアン×ジャンケン
目覚め
意識を取り戻すと全身が痛い。
「おぉ、ようやく目を覚ましたなゼノール!」
薄暗い部屋。目の前にはピピエールが、拳銃を持って立っていた。
耳の奥に、もわんと膜がはっているようで聞こえずらいが、ピピエールは話をやめない。
「まさかオメーが裏切り者だったとはな! 今でも信じられないぜ! あんなにオメーの事を可愛がってやったのによ」
ピピエールはわざとらしく言った。コイツは相変わらず口が達者だ。
反論してやりたい!でも、それは叶いそうもないみたいだ。
僕は布でさるぐつわされていた。
カビ臭い部屋の中で、ピピエールの声だけが響く。
「ボスがよ! オメーの処理をして来いって、俺に頼むわけよ!」
ピピエールは新しい弾を拳銃に詰めながら話す。まるで僕に見せ付けるかのように、わざとらしく丁寧に詰める。
「どうかしてるぜ、あのジジイ! 俺を試してやがる。仮にも二日前まで弟分だったオメーをだよ、兄貴の俺が処理するってのはよ、オメーの裏切り行為に俺が裏で糸引いてんじゃねぇかって、疑ってるってことだろ!」
馬鹿みたい吠え、燻し光した銃を片手に持ち、格好をつけながら僕に向かって銃口を突きつける
逃げたい! 痛みと痺れが襲う手足。狭まる視界、支えておくのがやっとの首。逃げようとしたって、身体はボロボロだ。
それ以前に願いは叶いそうにない。僕の身体は椅子に縛られていた。ご丁寧に手は後ろで組まされたまま縛られ、ロープが食い込み、体を圧迫する。
逃げられそうには……ない。
二日前まで僕はマフィアだった。
シチリア島で最大勢力を誇るゼリアファミリーに籍を置き、マフィアを全身で楽しんでいた。皮肉なことに、その時の直結の兄貴分が、俺に銃口を向けているピピエールだ。
諸事情ありまして、僕はファミリーを裏切る事になった。理由は今考えると糞みたいな理由だ。ちょっとのボタンの掛け違いで、僕の裏切り行為は密告された。人生、転がり落ちたら後は早い。あっという間にゼリアファミリーに追われて、捕まった。そんで、死ぬ一秒前までボコボコにリンチをされて、気がついたら……こうなった。
本当に早い展開だ。
昔の仲間だろうとなんだろうと裏切り者には徹底的なのがマフィアだ。容赦のない暴行に三回ほど意識が飛ぶ。それ以降は数えるのをやめた。
何故こんなヘマをこいたのか。それは僕も裏切られたからだ。僕の裏切り行為を密告した奴がいる。そいつはだいたい検討がついている。この危機を脱出したら、僕は真っ先に奴の指を折る!
イタリアン×ジャンケン
「オイ! 聞いてんのか、ゼノール!」
僕の名前を呼ぶピピエール。話を聞く態度が気に入らなかったのか、前髪を掴まれおもいっきり引っ張り上げられた。僕はピピエールを見上げる形を強制的にとらされる。首の辺りにできた打ち身が一気に痛さを脳に伝える。付加のかかった首は耐えられず、僕は声にならない悲鳴をあげた。
それで意識がある事を確認したピピエールは、また口を動かす。
「俺は悲しいぞ! オメーがファミリーの裏切り者だったなんて!オメーを立派なマフィアに育てようと務めた結果がこれだもんな」
何回、同じ事を言うんだ。さっきの台詞がまだ耳の奥に残っている。陶酔するようなピピエールの喋り方に反吐が出る。兄弟分であった頃から唯一苦手だったのが、この芝居がかった喋り方だ。
僕が受け付けないことなど知るよしもなく、ピピエールは話を続ける。
「ただ、どんなに可愛がってやった弟分でも、《ボスの命令》は絶対だ!」
ピピエールは僕の前髪を離す、僕はそのままうなだれた。
「わかるよな、ゼノール。俺はここで裏切り者ゼノールを処理する。それがボスの命令だ」
睨み返すと、顔の前に銃口が突き出されていた。それが縦に揺れる。
「もし命令を遂行できなければ、明日にはオメーと同じような姿で銃口を突き付けられるわな。俺はそんな最後は嫌だ」
一拍の沈黙。
「なあゼノール、オメーも一応ゼリアファミリーの一員だ。最後はゼリアファミリーの名を背負ったまま散りたいだろ。一流のマフィアは散り際も華麗に演出する。わかるよな」
ピピエールは眉を吊り上げる。
「チャンスをやる!」
ピピエールの濁った目が光った。
「イタリアン×ジャンケンをするぞ!」
ピピエールの不気味な顔が焼き付いた。演出を気にしているのか、やけに芝居口調が強くなる。
「オメーもマフィアやってたんなら知ってるだろ。昔からあるジジイ達が好みそうなゲーム」
正直なところ名前ぐらいは聞いた事はあるが、詳しい内容までわからない。
僕は首を横に振った。
「嘘をつくなよぉ、知らないのぉ。まっ普通のジャンケンとそんなに変わらないんだけどよ」
探るような口ぶりのピピエール。演出がますます濃くなる。
「とにかくオメーが負けたら、即天国!その代わりオメーが勝ったら全力で逃亡しろ。俺が許す。金の工面も俺がしてやる。約束だ」
これは勝負をしろと言うことだ。マフィアの誇りをかけた勝負。
「これだったら、オメーが万が一に負けて天国に逝っても、オメーは俺との勝負に負けて逝った事になる!けして、無抵抗のまま機械的に逝った事にはならない!」
汗がじわっと吹き出す。それがチャンスなのか罠なのか、身体が緊張と興奮に包まれた。
「自分の最後は自分で決めろ! それが俺のできる兄貴としての優しさだ!」
ピピエールは顔を近づけた。
ルールー
「そんじゃルールを説明する。一回しか言わないから聞き逃すな。」
ピピエールは僕と少し距離をとった。革靴の踵が床を叩いて音が鳴る。
「イタリアン×ジャンケンってのは、目でするジャンケンだ!!」
空いている手の指でこめかみの辺りをぽんぽんと叩く
「オメーの顔に付いている目でグー、チョキ、パーを表現するんだ!」
その説明に、僕は何故か瞬きをした。
「これなら、今のオメーにでもできるな?」
今度は首を縦に降る。
「俺は片手が空いているから、わかりやすいように右手でグー、チョキ、パーを作る。反対の左手は、オメーの頭に拳銃を向ける。いいな」
意外に普通のルールで安心した。その反面、運を引き込まなければならない。
「勝負は三回だ!三回で決着をつけよ」
今度は空いている手の指を三本立てる
「三回のうち一回でもオメーが勝ったら、オメーは逃亡できる。
逆に三回のうち一回でも負けたらオメーは天国だ」
ピピエールは芝居がかった説明を続ける。いちいち憎い。
「それと特別ルールで、三回アイコが続いた場合もオメーの負けだ」
ピピエールは昔から勝負事のルールには細かく、しっかりしている。予測して起りうる展開には、全てルールをくっつける。「後で揉めない為にあらゆる不測の事態をイメージして対応しろ」よく言われた台詞の一つだ。
「今の立場でも解るように、決して公平なジャンケンじゃねぇ!」
確かにそうだ。
「でも少ない可能性で勝つ事も可能だ。その可能性に生涯を捧げろ!」
真剣勝負の始まりだ。
グー チョキ パー
グーは石の様にギュッと目を塞ぐ
チョキはハサミの様に目を鋭く細める
パーはパーっと目を全開にして開ける
「ルールは頭に入ったかい?」
僕は首を縦に振る。
そして勝ち逃げしてやると企んだ。
「それでだ! このゲームには第三者の加入が必須なのはわかるよな? 互いが何を出したか、わかるようにしなきゃならない」
確かに誤って天国行きなんて反吐が出る!
芝居がかった口調はまだまだ続き、ピピエールは部屋の外に向かって声をかける。
「おーい、ララ! 入って来い、審判をやれっ!」
建て付けの悪い木製のドアが悲鳴をあげながら開く。褐色の肌が肩口を晒す。赤い紐のストラップが肩にかかり、全体のラインを強調したワンピース姿の女が、リズムよく靴を鳴らして入室してきた。
薄気味悪い笑顔を浮かべて登場したのはララだ。視界に捉えた瞬間、僕の身体の内側に怒りが走る。
「あらぁ、素敵な顔に仕上がってるじゃないゼノール。この顔だったら天国でモテモテね」
ララは余裕な態度を示す。ふざけるな! テメーが密告者だってのは察しがついてるんだよ。
僕がララに感情を向きだしにしていることなどお構い無しに、ピピエールはゲームを進行させる
「それじゃ始めるか。ララ、オメーはイタリアン×ジャンケン知ってるよな!」
「そんな昔のゲームをやるの? 確かソレって大衆向けのゲームじゃなかったけ?」
しゃーしゃーと喋るララ。コイツは俺がこんな不様な顔になっても、なんとも思っちゃいない。憎しみが湧く。
「そいつは違うぜ! こうやって少人数でやるのが元祖だ」
だんだんと部屋の空気が重くなる。焦らせるようにピピエールはララに配置に付くように指示を出す。形勢が整い、再びピピエールは僕に話し掛ける。
「さて、ゼノール! 生き抜きたいなら、お祈りしてないで頭を働かせろ」と強い口調で言った後に、雰囲気をがらりと変えて「後は度胸かな」と安い芝居を見せてくる。
神に祈るなら、頭を働かせろといったところか。望むところだ。
「じゃあ、アタシはここに立つよ!ゼノールの表情は見えるから。ピピエールさんは右手を天井に向けて上げて下さい」
ララはピピエールの斜め後ろに立つ。
「よぉし、それじゃあ始める。あっ、そうだゼノール!俺は《チョキしか出さない》からな」
突如、ピピエールが心理戦を求めてきた。
開戦
「チョキしか出さない」
このピピエールのブラフをどの方向から解析するかが問題だ。素直に、それとも裏を、痛む頭を働かせて、勝負に勝つ為のヒントを探る。
「それじゃあ、掛け声いきますよ! ジャン……ケン……」
人の生涯がかかっているのに、この女はサバサバとゲームを始めやがった。ルーチンワークじゃねぇんだよ! サラっと勝負を始めんな。
そんな心の叫びは、この場ではなんの力にもならない。
ララが勝負の口火を切った瞬間、僕の命は勝負の天秤にかけられた。どうする。ここは素直にピピエールの言葉を信じてみるか。勢いに任せて僕はグーを出そうとする。
もしかしたらピピエールは、僕を助ける大義名分でイタリアン×ジャンケンを持ち掛けたのではないだろうか。そんな風に仮説を組み立てた。
自分を信じてグーの表情をしようとした時、僕違和感が走った。
《チョキしか出さない》
《チョキしか》
《しか》
しかってなんだ!
チョキを出す! じゃない。チョキしか出さない!
ピピエールは短期決着を想定していない。最初から連戦を想定している。大義名分で助けるなんて事を考えた自分を恥じた。
違う、グーじゃない。体が異常に発熱し始める。呼吸の仕方が細かくなる。痛み出した脳細胞をフル活用して、情報を修正していく。
僕が出さなきゃならない表情はなんだ。グー、チョキ、パーが高速で廻る。
「ポンっ!」
ララのだらしない声がした。呆気ない合図に僕の思考は間に合わなかった。
理屈じゃなく、ただ強く頭の中に残ったモノ、それが僕の表情にあらわれた。「チョキを出す」ピピエールの言葉のせいで強い印象が残っていた。
そしてピピエールは……。
「ゼノールがチョキ」
まずは僕の表情を発表するララ。僕は生唾をゴクリと呑んだ。
続いてララはピピエールの手を発表する。
「ピピエールさんが、チョキ」
何っ?
「チョキとチョキでアイコです」
勝機を……、勝機を逃した。
ブラフ
「信用されてねぇな。なっ、ララ、俺はそんなに信用できないかい?こんな純粋無垢な心を持ったマフィアはイタリア中捜したって、一人しかいねぇぜ」
調子のいい事を言うピピエール。完全に僕を馬鹿にしている。それを聞いて、ララは軽笑している。この場で一人の男の命がかかってるなんてわかっていない。下品な奴め。
「純粋? 本当の純粋な人は、そんな趣味の悪いシャツを着ないわよ」
「何を言ってやがる。このシャツは高級ブランドなんだぜ」
「あらそう」
雑談なんかするな。畜生、なめやがって!
「さぁ次だ。ララ掛け声ヨロシク」
あっさりとゲームを進展させるピピエール。
僕は勝機を逃した事への落胆、二人のお気楽ぶりに苛立ち、それが複雑に混ざりあって、胸の内をぐちゃぐちゃに掻き回される。
「それじゃ、いきますっ! ジャン……」
ララは締まりのない声で言いはじめた。
今度こそ僕はグーを出そうと心に決めた。勝つんだ!このイタリアン×ジャンケンに勝つんだ。
その時だった。
いつだったかの記憶がフラッシュバックした。
昔、祖父が言った言葉が脳裏に浮ぶ。喉が潰れたようなしゃがれ声で、祖父が僕の頭に手を置きながら言った。
「いいかいゼノール。マフィアと対面したら、どんなに怖くても勇気を出して睨みつけろ。それが長生きのコツじゃ」
なぜか祖父の言葉が素直に受け入れられた。そして不思議と不安感が消えていくのがわかる。僕は祖父の言葉に全てを委ねる。不思議な力が僕を引き込んでいく。
僕は自分の考えじゃなく、祖父の言葉に同意してしまっている。
「……ケン……ポン!」
ララの気の篭っていない無機質な声が響いた。
僕は必死の形相でピピエールを睨む。気持ち悪い汗で全身が濡れている、心臓が有り得ない速さで音を立てている。
ただ、さっきとは違う。不思議な力が僕に宿る。祖父の言葉が僕を護ってくれるように感じる。強く、強く、睨みつける。顔の痛みを無視して睨む。
「ゼノールがチョキ」ララが僕の方に目を向ける。
「ピピエールさんがチョキ。チョキとチョキでアイコです」
さっきと同じ手だった。さっきと同じ手だというに、僕の心臓は破裂しそうだ。勝機を逃したというより。僕は生き延びたという感覚に陥った。祖父に、祖父に救われた。僕は祈らずにはいられない。
決断
「しぶといねぇ。ただ用心深いのが仇になっちまったな」
ピピエールが銃口を揺らす。
僕は、さっきの表情から顔が硬直していた。
「オメーの勝機は三分の一になっちまったのは、理解したな」
ピピエールの目が真剣だ。
「ゼノール! 俺は卑怯、汚いと言われようが立派なゼリアファミリーの一員だ。勝負に水を差したことは一度もない。だからオメーが勝負に負けた時、何の感情も持たずに撃つ」
次に何を出すかが問題だ。負けたら天国、アイコでも三回アイコで天国なのだから。
血圧が上がるのが実感できた。
「ゼノール! これが最後だ! 俺はチョキを出す。いいな!」
ピピエールは宣言した。それはもうブラフなのか、それとも僕を助ける大義名分なのかわからない。
さっきから頭が上手く回らない。どうにでもなれと投げ出したい思考にギリギリでブレーキをかける。ようはプレッシャーに飲まれているんだ。それでも僕の運命は数十秒後に決まる。
揺らぐ気持ちをまったく察しないララの無邪気な声が耳につく。まったく集中できていない。
「それじゃラストよ! ゼノール、天国に逝ってもワタシの事を怨まないでね」
勝手な事をぬかすな! テメーはどんな事をしてでも復讐してやる! 糞っ集中できてねぇ。
「ゼノール!勝負に勝て!」ピピエールが声高に叫ぶ。
僕は鼻から空気を無理矢理吸い込んで、脳に酸素を送る。
この勝負は負けられない。
「ハイッ!ジャン……ケン…………」
淡々と放つララの憎い声。ピピエールの言葉を信じるのならば、パーを出せば負け。チョキでも三回アイコで負け。選択は限られてくる。
遠くまで意識を持っていく。頭の中に色々な風景が浮かび上がり、ぐるぐると回る。
ピピエールとは楽しく遊んだり、馬鹿騒ぎもしたり、毎日を謳歌した。ララとは週末深酒をして、愛だ恋だの色恋話をして深い時間を過ごした。
見覚えのあるシチリアの太陽と海が飛び込んで来る。僕の街だ。口の中いっぱいにリゾットの味が蘇る。全ては数日前までの現実なんだ。ここから離れたくない。
僕はまだ、この世界で生きる! 生きる!
この勝負に勝って僕は生きる!
全ての感性を一つに集中して、勝負に出る。
何も聞こえない、何も見えない、何も感じない。この暗闇から一点の光に向かって突き抜ける。
僕はグーの表情をした!
一気に世界が広がった。シチリアの海の音が聞こえる。心地良い静けさだ。眩しい太陽の光が僕の顔を射す。それがくすぐったい。全身の強張りが切れ、緩くなる筋肉はある種の快感へと変わる。全ての不安や悩み等の負の物が堕ちていく。そこで僕は悟る。
僕はゲームに勝った。
現実
死神が鎌を振り下ろす時、誰もが耳を塞ぎたくなるような音が鳴る。
耳の奥が傷つけられたように痛い。ピピエールは片目をつぶった。
近くで死神が鎌を振り下ろしたようだ。
「ゼノール!」
芝居がかった巻き舌で、名前を呼ぶ。
「目を閉じたらダメだろ。相手が何を出したか、確認できないじゃないか!」
赤ワインよりも濃い赤に包まれたピピエールを前に、ゼノールは表情を変えない。というより、もうそこに表情はない。
「ララ、俺の右手はどんな形をしている?」
銃声の余韻が静まり返った頃を見計らって、ピピエールが声をあげた。
一見落ち着いた様子に見えるが、ピピエールの心臓は破裂しそうなくらい脈を打っていた。 それを見越してか、ララは優しい声でピピエールを落ち着かせた。
「そうねぇ。異国では勝利のサインを意味する手になっているわ」
「ゼノール! よく覚えておけ」
ピピエールの体内から抑え切れない興奮が溢れ出る。
「これはマフィアのゲームだ!最初から勝者と敗者は決まっているんだ。拳銃を持っている者はチョキを出していれば、負ける事はない」
なんの反応もしないゼノールに対して、ピピエールの拳銃は揺れている。
「それを踏まえて、拳銃を向けられた側の表情を楽しむといったゲスなゲームなんだよ」
ララの耳にも聞こえるような深呼吸をするピピエール。
「相手がパーを出せば負けて即天国。相手がチョキを出し続ければ三回アイコで天国逝き」
少しずつ興奮が散布され、落ち着きを取り戻す。ようやくピピエールの嫌らしい表情が浮かび上がる。
「相手がグーを出したら、俺が何を出したかわからないよな。可哀相だが天国に、逝ってもらう」
全ての始末を終えた後だった。
「どうだ、ララ!この後、海岸通りにあるレストランでリゾットでも食べに行かないか!」
「フフッ、どんな神経しているのかしら? この光景を見せられた後にデートだなんて」
「ダメかい?」
「ダメじゃないけど、気分は悪くならないの?」
「いいや、最高の気分さ! ゼノールはゲームに勝ったまま天国に逝ったんだからな!」
「本当かしら?」
「あぁ本心だ。ただ、勝負には負けたけどな。」
その日、ウミネコが鳴いた。
真実
イタリアン×ジャンケンのルーツを探ってみる。
その発祥はマフィア同士の内紛でおこなわれたと言われる。
最初から、処刑する側とされる側に分かれていた。ジャンケンをして、相手が負けた事により処刑するという理由のこじつけで、処刑する側の心理的ストレスを減らす為の措置だった。勿論、処刑される側がジャンケンに勝った場合は、処刑は中止になる。そのまま解放される。
ただ一つだけ検証されていない事がある。
どんなに古い資料を見ても……。
《アイコが三回で負け》というルールは、発見されなかった。
完




