始
「本当に、いいのか」
少女は問う。少女の背後には人の大きさほどの機械が置いていある。この時代の人々で知らない者は居ない、それほど名の知れた機械だ。
良い意味で知られているのではない。完成時は奇跡とまで称された機械だったが今では悪魔の機械とまで言われている。
製作者である彼女も今では詐欺師とまで言われてすっかり疲弊しきっている。
「こいつは、人を、不幸にしかしなかった。争いしか、産まなかった……それでも、使うのか?」
問われた少年は静かに頷く。
「何故、お前は、私たちを苦しめたこいつを使おうと、いや、使えるんだ?私は今すぐにでもこいつを叩き壊してやりたいくらいなのに!」
少年は笑って答える
「何故って、これを使えばみんな救うことが出来るんだ。使わない手はないよ」
「何故!お前は笑ってそんなことが言える!?何度も言うがこれは人を不幸にしか出来ない!私たちを苦しめた!今私がこれを壊さないのはお前が止めるからだ。でなければ……!」
少女は激昂する。
苦しんだ過去に。争いを始めた人間に。何より火種となった機械を作り出してしまった自分自身に。
「……ほんの少し、世界が変われば良いと思ったんだ。こいつでみんなが平等になれば、なにより父さんと母さんに胸を張って生きたかっただけなんだ。なのにっ……」
少女がうつむき、涙を流しながら話す。その言葉はまるで赦しを乞うかのようだった。
「解ってる。だからこそ、僕はこの機械を使わなくちゃいけない」
少女は思わず顔を上げる。そこにはさっきと同じように笑う少年の顔がある。
「僕たちは確かにこいつに不幸な目にあわされた。だけど僕は、こいつを最低の機械のままにしておきたくないんだ」
そう言って少年は機械の側に歩いて行き右手の甲でコンっと軽く機械をこづく。
「このままじゃあ姉さんも、こいつも報われない。それにみんなは僕たちに未来を託していったんだ」
少女は思い出す。仲間たちが最後に残した言葉を。皆最後に自分たちに未来を託すと言って倒れていったじゃないか。
であれば、今、自分に出来ることは。
「未来、か。私は肝心な事を忘れて居たようだ。フフフ、私も案外単純なんだな」
目に溜まっていた雫を拭い去る。その顔はかつての活き活きとした少女の顔だった。
「お前が覚悟を決めたなら姉である私も覚悟を決めなければな……お前のアクセスはいつでもこいつに接続可能だぞ」
そういって少女は機械を立ち上げる。轟々と音が鳴り正常に作動している事を確認した。
「それじゃあ僕は---------」




