名前を与えましょう
指摘してくださった方、ありがとうございます!!
多分また間違えるだろうので、よろしくお願いします
「........」
「…………」
あれから3日程たった今日までシオンは寝たきりだった、それが今日の朝方に目を覚ましたと聞いたからシオンが寝ている部屋に来たのだけれど、その部屋は執事やメイドたちも他の用があるらしくシオンしか居なかった。
そして、なに?この沈黙……
私がなにか話すべきなのかしら?もうこの沈黙を10分以上もやっている。
「…はぁ、ねぇ、もう体調は大丈夫なのかしら?大丈夫なら、なぜこの屋敷に迷い込んでいたのか教えてくれる?」
「ッ…!!ぁ…」
私がため息をするとビクッと身体を揺らしたシオン。なに?私何か変な事したかしら?
そんなに怖がらなくてもいいじゃない。
「なぜ、そんなに怖がっているの?何もしないわよ。それより、質問に答えて?」
「…ぇ…ぁ、体調は、大丈夫です…あの、何故僕は生きているのでしょうか…」
「え…?」
その目はとても苦しそうで、そして悲しそうな目だった。シオンは遠慮がちに、でもしっかりと私の目を見つめ、答えを待っている。
なぜ…?自分が生きていたことが、そんなに嫌なのかしら?それとも大きな事情が…?
でも、そんなに追求しない方がいいのかしら?うん、そうよね…私たちはお互い親しくもない全然知らない他人なのだから。
でも……
「なぜ?分からないわ。あなたがどうして生きているのかなんて、3日前あなたがこの屋敷の庭に迷い込んだ、そして私がそれを見つけて気絶したあなたを手当するように家のものに頼んだ。なにかいけなかったかしら?…その、死んだ方が良かったなんて顔をするのはやめなさい。生きていてよかったじゃない、生きていなければ明日が来ないもの、大切な人にも会えなくなってしまう。」
「………大切な人なんて…いません。」
「……私は何も追求したりしないようにするわ。ただ、あなたが何故この屋敷に迷い込んだのか、なぜあんなにボロボロだったのかを教えてくれないかしら?それと名前も、私はアイリス・べルーティ……」
「…僕は……シオン…この屋敷に、なぜ迷い込んだのかは分かりません。でも…」
それからシオンはゆっくりとなぜ自分がボロボロだったのか、とか。自分はある屋敷の召使いで、両親はシオンが生まれてすぐに亡くなった。それでそのある屋敷に引き取られて召使いになった。けれどその生活はあまりにも辛かった。だから数日間ずっと逃げていたのだと教えてくれた。
はっきり言ってびっくりした、シオンにそんな悲惨な過去があったなんて。
「そう、だからシオン、という名前だけなのね。」
「…はい。」
その屋敷では召使いなどにはきちんとした名前が与えられないらしい。ちなみにシオンというのはシオンの両親がつけた名前らしい。
ぁ、ここで何とかすればフラグに少し亀裂が入ったりして………
「分かったわ、ならこうしましょう?これから貴方の名前はシオン…シオン・カルドナル…うん、意外としっくりこないかしら?」
「………ぇ?」
シオンは元々大きくてぱっちりしている…目を更に大きくして驚いた。
「なぜ、名前をつけるのか?とでも思ったのでしょう?…シオン、あなたがいた屋敷であなたがどんな仕打ちを受けていたのかわからないけど、この屋敷ではそんな事しないわ。みんな優しい人たちよ?だからその証拠にあなたにきちんとした名前を与えるわ…否定はなしよ?せっかく名前を与えたのだから」
「………と………ぅ」
「え?聞こえないわ、どうしたの?迷惑だったのかしら」
「…ありがとう、ございます……迷惑、なわけないです…」
シオンは声を震わせて………泣いていた。
それも嬉しそうに。その光景はあまりにも綺麗で、私は目を奪われた…私はこの時、シオンを守りたいと思った。…いえ、守らなければ…と。