胸の痛み
~自室にて~
「あの……お嬢様」
「あぁ、そういえばねシオン!魔法の授業でね?ネズミや小さな動物を花に変えるっていう授業があったの!これが可愛くって!…ほんとに、可愛かったのよ?」
「………」
無言…ですか。うん、怒っているのね。オーラでわかるわ。でも怖いんだものシオンが…話を逸らしてしまったのは仕方が無いと思うの。あの後雰囲気的にすぐに違う話にもちこんだ。
それでお父様からこの半年で変わったことなどを聞いた。この半年で変わったことは隣の国のケーディル王国との貿易が有効に進むようになったこととこの屋敷で育てていた白馬の女の子が子供を授かったということ。
その白馬というのは私の愛馬でもあるのでとても嬉しかった。
ここまではいい報告だった。だがその後の報告は悪い報告、弾んでいた気持ちが一気に重くなる。
その内容というのは。二年前に私を暗殺しようとして失敗して半年ほど前まで地下牢に囚われていた暗殺者が逃げ出したということだ。それもどうも魔法を使って逃げたらしい。
この点でおかしいのだ、私が二年前襲われた時は魔力なんてなんも感じなかった、ただ私が経験不足だったからなのかもしれないが、一応この屋敷にいる魔法担当の先生がきちんと調べたはずだ、でも捕まっていた暗殺者が、魔法制御の道具を身につけられていなかったということはベテランの先生なおも騙すほどの魔力の持ち主という事だ…ならこれは大きな失態なのではないか。
どちらにせよ決してどこから見てもいい事とは見ることが出来ない問題ごとだ。
そしてもしその暗殺者がまだ私を狙っているのであれば学園生活では常に気を張らなければならないし出来れば自身の周りに結界も貼りたい、だが結界をはるというのは魔法を使うということ、だが、学園内では授業以外では基本魔法の使用は深く禁止されていてもし使っているのがバレれば即重い罰を受けることになる。
罰を受けるのが私だけならまだいい……だが、それがお父様やシオンに関わる可能性が大だ。、というか確実なのだ。
だからこそこれから出会う人々をきちんと観察しどれが暗殺者なのかきちんと見分けなければならないのだが。
その肝心の暗殺者の顔がわからないのだ。
二年前にあった時前髪や髪全体が長くて片目の真っ赤な瞳しか見えなかったのだ。ただ一つの手がかり…だが、その暗殺者が、本当に魔力の強い人間ならば話は別。
魔力の強い人間は魔力を使う時や本当に感情が奮いだったりした時には瞳が赤くなるらしい。だからこそもう私には暗殺者を見分けることが出来なくなったということだ。どうしたものか……。
ただ一つ確実なのは髪の色。確かに紺色の……そう、とても綺麗な髪をした人。どこかで見たことのあるような…。
あの時は少し焦っていて相手が大人の男性のように見えたけれど、いま考えたら雰囲気からして少年だった。、普通よりも身長の大きい、パッと見大人のように見えるけど……はぁ、分からないわ
アイリスは眉を潜めて大きなため息をついた。
どうせならちゃんと顔を見ておけばよかったと過去の自分に深く後悔をする。
なんて考えているとグイッと不意に腕を掴まれ引かれるから倒れそうになってしまったがなんとか耐えた。
もちろん腕を引っ張ったのは今のいままで考え事をしている私を無言で不機嫌極まりないオーラを放って見つめていたシオン、あぁ、これは完全に怒っているわね。
不機嫌なオーラには気づいていたけれどこれからのことを考えるのに必死だったからあまり気にしないように、悪くいえば無視をしていた。
ここは正直に謝っておこう。
「あの、ごめんなさいシオン、考え事をしていて無視をしてしまったわ。」
その後数分シオンは無言で。相当怒っているんだろうと気まずい中数分やっと口を開いたシオンが言ったのはよくわからない内容だった。
「お嬢様は…ガザニア王子の事がお好きなんですか?」
「は?……何を馬鹿なことを言っているの?有り得ないわ……それに第1私もガザニア様もまだ10歳よ?何かあるわけないじゃない。」
「そう…ですよね。ですがお嬢様は自分では気づいていないだけてとてもお綺麗で可愛い方です…気をつけてください。…あと、あのお嬢様は気になる方とか、いるんですか?」
何を言っているんだこの従者は。
「なに?私を好く殿方でもいるとでも?真逆よ?私も、びっくりしたけれど、異国の方お偉いさま方からは私は冷たく冷酷な人間だと思われているもの。……気になる人…いないわよ?そういうシオンはどうなのよ?」
「……そうですか。そうですよね」
なんだか一瞬凄く落ち込んだ様な様子になるシオン。どうかしたのかしら?
「俺は好いてる人…心からお慕いして生涯を捧げれる方がいますよ。あなたもよくお知りでしょう」
私の知っている、それでもってシオンも知っている女の方はメイド…かお母様くらいだ。お母様はもう亡くなっているしメイドかしら?…そうでないのなら…まさか?!
「シオン……ガザニア様とかじゃ。ないわよね?」
いやいやそんなはずわない。、確かに前世ならとても美味しすぎる展開で萌え転がっていただろうけど。今はそうだとしても萌え転がったりなんかしてはいけない。
当のシオンは口をポカーンと開けて硬直していた。
え、まさか本当なの?図星なの??
でも取り合えす何があったとしてもシオンの相手はきちんとしている方じゃなければ許さないし認めない。私の大事な従者なのだから!!
「お嬢様……あなたは馬鹿ですか。、俺が男を好きになる?ありえないでしょ。、」
プルプルと震えだし怒ってますオーラ全開のシオン。、これは危ない
「そ。そうよね、ごめんなさい私が変な勘違いを…」
流石に危ないと思ったのか焦り出すアイリス。
すると急にアイリスの腕を強く掴むシオン。
それにビックリして身を縮めるアイリス。
「いっ…痛いわシオン!?」
い、痛い。ほんとに、ギィと骨が軋んでいるわ。こんなに力強かったのねシオン。、お願いだからもう少し力を緩めてくれないかしら。
目で訴えようとするがシオンは俯いているのでシオンの表情を確かめようとも無理がある。
すると急に今まで以上に強く掴まれて本当に腕がもげそうになる。
「アイリス様……俺は。主人としても、一人の人間としても心からお慕いしています。あなたに私の命を差し出せと言われたら喜んでお渡しいたします。」
「シオン?あなた何を言って…命を大切にしないといけないとあれほど……!!」
「ですが…!?俺は…俺はアイリス様、あなたの事が……あなたの事が。誰よりも……ッ」
と今にも泣きそうなほど涙目に、切なそうに、私を見つめるシオン。その大きく揺れる瞳が私の姿を映し出す。それをみてどうしてだろうか、とても胸が苦しくなった。苦しくて苦しくて。私まで涙目になりそうになった。
その後、シオンは唇を噛み締め逃げる様に私の側から、わたしの部屋から出て言ってしまった。
部屋にたった1人残された私。何故か心が押しつぶされそうなほど痛かった、そのまま痛みをかき消すように眠りに付いたが私は何が最低なことをした気がした。
理由はわからない。原因は分からないけれど守りたいと思ったシオンのことを、傷つけてしまった。
お母様……私はどうすればいいのでしょうか。




