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戦わないドラゴン戦2


『おや?聞こえてないかい?人間と話すのは初めてだからねぇ。』


 ぽかんとしていたからか、イエロードラゴンが再び話しかけてきたので、私は慌てて返事をする。


「いや、聞こえてます!すいません。クレと話し方が違いすぎて驚いてしまって。」

『クレ…………。この赤い奴の名かい。ははっ。若造のくせに我だなんて偉そうな喋り方だもんねぇ。』

「わ、若造って、クレ、若いの?!!」


 私はガバッと隣にいるクレに目を上向けると不満顔でクレは目を細め、威圧的に見下ろしてきた。


「失敬だな。いくつに見えるんだ。」

「え…………。ドラゴンの年齢なんて、わかんないよ。それに、その喋り方だからお年寄りなのかと。」

「うむっ。そうだったのか……………。我はまだまだ若いぞ。人間でいえば取り巻きの男共とさして変わらんと思うが。」

『全く、こんな偉そうなガキにあたしが叱られちまうなんてね。とんだ赤っ恥だわ。………………っと、そんなことはどうでも良かったわね。』


 どや顔するクレを呆れるようにイエロードラゴンがため息混じりにごちると話題を戻す。


『こいつから話は大まかに聞いてるわ。わたしは龍玉の代わりにあんたの呼び出しに従って力になればいいのよね。』

「あ、はい。できましたら、よろしくお願いします。その、魔王戦の時だけ力を貸していただければ助かるのですが…………。」

『ふっ。欲が無いのねぇ。わたしの命だけでなくこの子の命まで救ってくれたのに要求はそれだけかい。あっ!そうだ、ドラゴン族にはね、好感度』

「うおっ!それ、要りません!!」


 私は断りと同時に反射的にイエロードラゴンの口を押さえた。脳内会話だから関係ないんだけど、条件反射だ。イエロードラゴンは私の行動に一瞬固まるが、何かを察したのか、すぐに楽しそうにその口元を緩めた。


『うん、そうだねぇ。好きな奴はそんな数値で決めるもんじゃないわね。はぁ、いいわねぇ。甘酸っぱい恋愛なんて、青春だわぁ。』

「………………あ、いや…………ちょっと、ご想像とは違うかも…………なんですが…………。」


 ピンクな妄想に悦に入ってるイエロードラゴンに私は声を小さくしながら否定してみたが、恥ずかしがらなくても分かってるわよと取り合ってくれなかった。自己完結してくれてるみたいなので、私もここは深く突っ込まないでおく。


『それじゃ、当初どおり呼び出しに応じるくらいしかできないわ。ちょっとつまらないけど…………。いいわ、あんたの剣をここに出しなさい。』


 イエロードラゴンはそう言うと首を持ち上げる。私が言われたとおり剣を呼び出せば、クレの時と同じようにチョンと前足をあてた。


『あんたの呼び出しに応じるわ。用があればいつでも言いなさい。』


 言うと同時に私の持つ剣が黄色い光を放ち直ぐに消えた。クレの時と同じだ。文言はかなり違ってたが、多分同じ効果をもたらす魔法がかけられたのだろう。


「ありがとうございます。これから、よろしくお願いします。」

『ああ、いいよ。お安い御用さ。おおっと、大事なこと忘れるとこだったわ。よかったら、あたし達にも名をつけてくれないかい?』

「達?」

『この子も愛称が欲しいんだとさ。あんたを気に入ったみたいだね。悪いけど、頼めないかい?』

「わ、私なんかでよければ、が、頑張ります。」


 コテンと可愛い仕草で首を傾げる親子のイエロードラゴンに、私は悶絶しそうになりながら名付け親になることを了承した。


「えっと、お母さんは煌めいてるから…………キラ。で、お子さんは黄色いから…………キィちゃん。なんて、…………ダメですかね?」


 やっぱりネーミングセンス無いなぁと搾り出したはずの名前に自分で言っててへこむ。が、イエロードラゴン親子は嬉しそうな顔になる。


『いいね、気に入ったよ。この子とキで重なってるところも親子な感じでさ。名前があるのは割りといいもんだね。』

「き、気に入っていただけて、良かったです。」

『それじゃあ、これで用は済んだし、私達はもう帰るけどいいかい?』

「はい。ありがとうございました。」

『あぁ、そうそう気兼ねしないで呼んでくれて構わないからね。わたしはお節介焼くのは大好きでさ、恋愛相談も受け付けるよ?』


 ニマリとイエロードラゴン改めキラは含みのある笑い顔と捨て台詞を残して、その巨体を優雅に翻し飛び去った。キィちゃんを頭にのせて。


 やった!!2匹目のドラゴンさんとも仲良くなったぁぁぁ!!!


 キラの去っていく後ろ姿をほくほく顔で見送ると、視界にヌウッとクレが顔を覗かせた。ん?と目を合わせれば不平を漏らしてくる。


「我以外にも名を授けるのか…………。」

「あれ?駄目だったの?」

「別に。ただ我だけではないのだなあ……………と。」

「拗ねない、拗ねない。」


 ぽんぽんと顔をなぜてやるとクレは複雑そうな顔をする。


「ううむ。このままではやはり駄目だな。アスナ。次はもっと汝の側にいられるようになるから、待っていろ。」

「う、うん。」


 クレの言う意味はわからなかったが頷くと、我も帰るよとクレは来たときと同様に赤い光に包まれて消えていった。存在感のある巨体のドラゴン達がみんな去って一気に静けさが漂う。


 何だか、怒涛の如く話が進んだけど……………、うん。今回のドラゴン戦も誰も傷つかなくて良かったな。


 不戦勝の達成感に大きく伸びをして深呼吸をして、爽快な気分で後ろを振り向けば……………。どんよりムードのメンバー達がいた。さらに、王子はなぜか後ろを向いていじけてしまっている。


「決着ついたけど、どしたの?みんな。」


 暗い雰囲気を明るくしようと元気に言ったのに、刺さる目線。なに、この暗雲。


「勇者さまはどうしてドラゴンには簡単に唇を許すんですか。」

「そうだよ~。私は命懸けでやっとだったのに~~。」

「僕は毒まであおったぞ。」

「へぇ~。僕は強引に奪っちゃったけどぉ~。」

「俺は約束の証に軽くだが………。」


 アルフレッドを皮切りに私とのキス話を暴露するメンバー。そして、それを聞いた王子が涙目でこちらに振り向いた。


「何故!!私だけなんだぁ!!ドラゴンにも先を越されているとかぁぁぁ!!」


 やべぇ、やぶ蛇だった。ここは迅速に修羅場回避とばかりに、さらに明るく努め別話で流れをぶち切る。


「ま、まあまあ。あ!中ボス戦も終わったし、ここにはもう用は無いよね!さってとぉ!!次の旅いこーかー!!次はどっこかなーー!!」


 私はオーバーリアクションで風景を見るふりをした。すると、アルフレッドが小首を傾げる。


「そういえば、合流したんですから、俺たちがここから勇者さまのパーティーメンバー復帰ですよね?」

「ふぇっ?!」

「え~、それは無いよ~。だってもう僕たちがメンバーに入っちゃったも~ん。天使ちゃんは僕たちをわざわざ外すようなことしたりしないよぉ~。」

「ええっ?!」


 アルフレッドの意見にフィルモントが涼しい顔で反論。すると、さっきよりもっとメンバー達のの雰囲気が悪くなった。


「そもそも、僕らが最初から選ばれてんだ!!お前らはたまたま運よく空いてたからメンバー入りしただけだろ!!」

「でも、お嬢の承諾は得てるぜ。無理矢理じゃねぇし?それに気は変わるってもんだろ。」

「そうなったら~、シャッフルも有り得るよねぇ~。私は誰とでも仲良くできるよぉ~。」

「私はメンバーを譲る気は無いぞっ!!口づけを貰うまではっ!!いや、それ以降もだがっ!!」


 私がオロオロしている間に、ケインにカウザー、ローク、王子へと話が飛び火していく。


 これは、必ず火の粉が降りかかる!!………やっぱ逃げとく?


 私はススッと後ろへと下がろうとすると、察したのかザアッと6人に取り囲まれる。八方じゃなく六方塞がり。何でこういう事においては連携凄いんだろ、こいつら。


「今度は…………逃がしませんよ。アスナ。」


 黒い、黒い、怖い、アルさ―――ん!!


「あ、あの。全員…………。」

「メンバー無しは、許しません。きちんと誰と組みたいのか決めてもらいます。」


 はうっ。早くも逃げ道を塞がれた。


 目のやり場を失い上空に目をやれば、システム文字が誰をメンバーにしますか?と浮かんでいる。こいつも要らないところでばかり出てくるんだよな。私は蛇に睨まれた蛙の如く、円の中心で冷や汗をかきまくる羽目に陥った。


 中ボス戦終わって、勝ちを喜ぶところなのに…………、何で修羅場。

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