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フィルモントの本性


 まて、まて、ENDはいいけど、BADは駄目だ。BADは。


 まだ、助かる方法はあるかと恐る恐るフィルモントを見れば、彼は顎に手をあててブツブツと呟いていた。


「…………あれ?おっかしいなぁ~。今、流行りのヤンデレって、こうじゃなかったっけ?好きで好きで、心を病んで、死んでも愛してる。……………合ってるよ?じゃ、なんで恋に堕ちない?リサーチしたはずなのに……………??」


 えーーーっと。ちょいちょい。心の声が全てダダもれてますよ。それに、ヤンデレは我が友が最近推してるタイプだけど、私は遠慮したい。ついでに言えばヤンデレって死んでもじゃなく殺してでも愛してるだったかと。………………殺してでも。うひょぉぉぉぉーーーー。オッケー、そこは誤解させときましょう。


「………………よかった。これは、本当のフィルじゃないんだ。」


 さっきまでのヤバいのは演技だったんだと知れて、安堵のため息とともにホロッと言葉が零れた。すると、フィルモントの目がキラリと輝いて、くすんでいたグレーの瞳にシルバーのような鋭さが宿る。あれ?キャラ変?まるで獣のような目。魅入られそうになるのも束の間、せっかく離したフィルモントがまた抱き着いてきた。そして、スリスリと頭を擦り寄せてくる。


「さっすが~、僕の本性、お見通しだね~。やっぱり僕の天使~。」

「いやいや、さっき自らゲロってたじゃん!!あれなら、誰でも分かるって!!ちょっ、フィル。懐きすぎ。猫みたいに擦り寄って来ないで、くすぐったい!!」

「ほら、ちゃんと本当の僕を分かってるじゃないかぁ♪僕らは強い運命で結ばれてるんだね~~。嬉しいなぁ、だ~い好き。うにゅ~~。」


 え~、これがフィルモントの本性?いや、全然わかんないんだけど。う~む。よしよししたくなる可愛さはあるよ。ワンコじゃなく、にゃんこ…………。拾った覚えないんだけど~~~。


 気づくと私はフィルモントの頭を撫でていて、彼はゴロニャンと嬉しそうに顔を擦り寄せている。まあ、危機は回避できたっぽいし、いっか。一見落着して、なんかスースーするなと、視線を自分の身体に向けてびっくり。服がボロっボロになっている。かろうじて、大事なところは隠れてるけど、破廉恥過ぎだろってくらいに。そして、プルプルの水スライムもまだ身体に纏わり付いている。


「ふ、フィル!!まだ、魔法かかってるよっ?!」

「ん?あ~、そうだったかな?じゃあ、ん~~~。」

「ん~?」

「交換条件~。アスナからチューしてくれたら、解いてあげる~。シールドブレスのせいで僕からはできないから、ねぇ~?」


 にまぁと笑うフィルモントに私はぐっと息を飲む。先程、濃厚なのをしたんだから、問題ないと言えばそうなんだが、自らというのは覚悟がいる。しかし、裸体を晒すよりは………………。


「か、軽く、……………な、ら。」

「……………ん~。ま…………い~よ。ん♪」

 

 スッと目が閉じられ綺麗なフィルモントの顔が向けられた。考えるより先に行動だ。とチュッとその唇に一瞬だけ口づけた。と、同時に肌を伝う水スライムが普通の水に戻る。フィルモントは約束通り魔法を解いてくれたのだ。


「はぁ~、本当にちょぴっとなのなぁ~~。………………でも、すごい。あれだけで首の傷が癒えちゃった~。さっきキスしたときもなんか回復してるなと思ったけど、それ勇者の特殊スキルだよね~。あ!そっかぁ。だから、命懸けてもなびかないわけか~~。」


 おおっ!!そうだった!!私、治せるじゃん!殺さないでいけるじゃん!!これもすっかり忘れてた。焦ると全部ぶっ飛ぶわ。気をつけなきゃ………………。


 フィルモントはちょっと不満顔を見せたが一人で納得すると、またスリスリと顔を擦り寄せてくる。私もフィルの言葉に自分の能力を再認識していたので、そのまま受け入れた。


「へぇ~。この感じで迫ると、無防備なんだなぁ~。なら、じっくり腰据えて堕とすか………。ふふっ。焦らされる狩りも悪くないねぇ~。」

「え?何?フィル?」

「ん~ん。何でもな~い。……………あったかいなぁ、小さいけど。」


 フィルモントがまたブツブツ言っていたが今度は聞こえず、聞き返すとはぐらかされた。そして、聞こえた小さいって……………。見下ろすとフィルモントが顔を寄せているのは。


 てめぇ、こら!!どさくさ紛れにどこに顔を埋め……………。埋まらねぇけどぉ。くっ。シールドブレスめ、これセーフなのか、えぇ!!


「悪かったな。小さくて……………。」

「何怒ってんのぉ~。全然問題ないよ~。小さくて可愛い~って褒めてんだよ~。い、いやだあぁぁ~、離れないぃぃ~。」


 ぐいぐいとフィルモントの頭を離させようと力を込めてみるが、がっちり身体をホールドされて反発するように更にぐりぐりと顔を胸の谷間?に押し付けてくる。


 嫌みか~てめぇ~~。はっ、押してもダメなら引いてみろ??


 拒むのがダメなら受け入れろってことかな。押しのけようとしていた腕を逆にフィルモントの頭に絡めてギュッと抱き寄せてみる。すると、ゴロゴロとフィルモントは心地良さそうに喉を鳴らしはじめた。


 あれ?なんか間違ってる気が……………?でも、殺すとか犯すとかないなら、…………いっか。




「はぁ、これからどうしよう。ここを出たら、また、Gと追いかけっこかなぁ。」


 しばらくして私がぼそりと呟くと、ピョコンとフィルモントが顔を上げた。


「それなら、僕にまかせて~。ちょうどここには水がいっぱいあるし、魔力も明日奈に回復してもらったし、久々頑張っちゃうよぉ~。」


 フィルモントは得意げに言い放つと、いきなり私たちの身体が水の塊に押し上げられた。


「えぇ!!ちょい待ち。こ、これ、まさかっ!」


 水はどんどん膨張し、私たちは上へ上へと上がって行く。先には水の斜面が出来て、元来た場所とは違う別の暗い穴に向かっていた。………………そう、まさに天然ウォタースライダー。


「レッツゴー♪」


 高らかなフィルモントの掛け声とともに、私たちの身体が滑り降りる。


 イ”ヤ”アアァァァァァーーーー。


 私はフィルモントに抱き着いて硬直。途中、役得~~♪とか聞こえたけどそれどころじゃない。もうやだ!このパターン!!

 やっと何処かに辿り着いて、私は脱力して地面に横たわる。ずぶ濡れなのもフィルモントがいまだに張り付いていることもどうでもよかった。


「お~い?生きてる~?意識ある~?」

「あ~、生きてま~す。残念ながら、勇者は失神しないようなので意識もありま~す。」

「へぇ~、何やっても意識飛ばないの?それいいねぇ~。」


 いや、全く良くねぇし!そんな私をフィルモントがによによと笑って見つめた。何か良からぬことを考えているのだろうが、聞くのは怖い。突き落とすとか勘弁してくれよ。


「あぁ、空。外に出られたんだ。よかった。」


 話題を変えようと見上げた景色に声が漏れた。青い空にホッとする。洞窟は大きくてもやはり息苦しいものだ。私は立ち上がるとう~んと背伸びしながら、深呼吸した。すると、フワリと温かな風が吹き抜け、濡れていた服が瞬時に乾いた。シーンチェンジしたからか、服も元通りに戻っている。さっすがゲームだ!!


「ありがとう。フィル。」

「乾かしただけだけどね~。だって、濡れたまま抱き合ってると冷たいし~。」


 フィルモントはお礼にくすぐったそうに笑うとフワリと私の背後から首に巻き付いてきた。抱き合ってはいないかな~、と思うも特にフィルモントを振り払おうとは思わない。浮いてるから体重かかって重いわけでもないし、まぁ、いっか。


「よし。カウザーと王子様、探しに行くか!!」


 気合いを入れ直して私が言うと、フィルモントがそれなら問題ないよ~とやる気のない声を出す。へ?と見返すとゴゴゴっと洞窟から地響きと音がして、私達が先程出てきた穴からドッと水と共にカウザーと王子が排出されてきた。流れ着いたカウザーは直ぐには状況が掴めずキョロキョロ、王子は相変わらず延びている。王子、ずっと失神できて、なんか羨ましいっすよ!

 どお?偉い?と背後で聞いてくるフィルモントをよしよしと頭を撫でてやり、カウザー達の元に駆け寄った。


「よかった。カウザー達も無事だったみたいだね。」

「ああ。まあな。あ!さっきの洪水みてぇなのは、フィルモントの魔法か!」

「そうそう!!すごいでしょう~。」

「でも、あの精霊?みたいなのは見えなかったが?」


 カウザーからの指摘に私もギョッとした。そういえば私達を運んだ水魔法でも綺麗な半透明のお姉さんはいなかった。


「だって、もうここに理想の女性がいるんだから、幻影は要らなくなったんだ。」


 私の耳元でフィルモントはいつもより低い色気のある声でそう宣った。カウザーはふーんと答えたが、意味は分かってないようだ。私はというと、言葉と同時に耳をペロリと舐められてまた硬直していた。はむはむすんな。


「…………?なんかお前ら関係変わったか?」


 カウザーが小首を傾げる。いつも鈍感なくせに、たまに察しがいい奴だ。


「そ~お?変わらないよぉ?イチャイチャしてるだけ~。いいでしょ~、羨まし~でしょ?」

「いや、なんか……………それ、背後霊みてぇだなって。」


 フィルモントの自慢に気付くことなく、カウザーが思ったことを口にした。私はカウザーの言葉にゾクッと寒くなり、慌ててフィルモントを振り落としにかかる。しかし、フィルモントはそうはさせまいとしがみつく。私とフィルモントは暫く離れろ!離さない!と攻防を続けるのだった。



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