新メンバーと
霧が晴れて周囲の景色が見えるようになったため、イエロードラゴンが住家としているであろう東の果て山の方角に向かって私たちは森の道沿いを歩いていた。
「ちょっと、フィル。勝手にウロチョロとしないでよ!」
「僕のテリトリーだから心配ないよぉ~。」
「そんなこと言って、さっきまで迷子だったんだからね。」
「あれは霧のせいだって~。もう、バッチリだって~。」
それが信用ならないんだよ。けど、言ったところで堪えるはずもなく、あっちこっちへフラフラするフィルモント。お陰で目が離せない。
「うわぁ!カウザー!!何処行く気!!」
いきなりガサッと茂みに入ろうとする音を聞いて、ぐいっとカウザーの黒いロングコートの裾を反射的につかんだ。
「あの向こうに強そうな魔物が見えたんだ。行ってみようぜ!」
「いや。戦闘範囲に入ってない遠くにいる敵に、わざわざこっちから仕掛けなくていいから!」
こちらも何度目かになるやり取りだった。剣士が仲間になるとエンカウント率が上がるのは、こいつがめちゃくちゃ遠くにいる魔物を目敏く見つけ、積極的に戦闘に向かうからだと知った。
「苦労するなぁ。」
人事のように王子は呆れた様子で話してくるが、あんたも大概だから!!とツッコミそうだったのを飲み込む。
実は、カウザーのメンバー加入後、昼食の調達をしようという話になった。すると、王子が霧が晴れたのなら任せておけとパチンと指を鳴らすと何処に居たのか数人の執事さんが現れた。そして、どっから持ってきたっていうテーブルやら食器やらが並べられ素晴らしい早さでセッティングされ、いつの間に作ったのか温かな料理が振る舞われたのです。………ココドコデスカ?呆気にとられながら皆で美味しくいただいたのだが、その後王子に聞けば彼らは遠征に連れてきた執事さん達だそうで、戦闘もできるらしく弱い魔物くらいは先回りして倒してくれるらしい。そう、王子を仲間にすると弱い敵に会わなくなるのはこういうカラクリだったわけだ。
もちろん、私はすぐに執事さん達を帰らせるように王子様にお願いした。王子のお世話をしていただけるのはとても有り難いが、彼らに命の保障も無い危険な旅を強いるのは申し訳ない。迷惑はかけませんと渋る彼らを頑張って説き伏せた。本音はドラゴン戦を見せるわけにはいかないからだ!!口止めする人数は少ないに越したことは無い。
「はぁ~~~。」
どでかい溜め息が出た。それを見た元凶3人は私が疲れたと思ったらしく、ここらで野宿するかという話になった。確かに精神的に疲れたし、この森を抜けたら東の果て山への登山となる。日暮れ近くでもあるし、休んで明日に備えるのが良いだろう。
って、ことで少し開けた場所で夕食の準備。執事さん達は帰したので、自分達でだ。魔導士はなぜか植物に詳しいので、フィルモントが野菜や果物の調達を。カウザーは肉の調達を買って出てくれた。疲れたとされた私と野宿経験の無い王子で薪拾いの軽作業をする。
「どうして、地に落ちている枝を拾い集めるんだ。木の枝を切れば手っ取り早いだろ。」
「そうですね。でも、生木は燃えにくいんですよ。それに、木が傷付いてしまいますから。」
「へぇ。博識だな。」
「いえいえ。アル達にいろいろと教えてもらっただけです。皆さん戦闘だけじゃなくアウトドアスキルも高くて凄いですよね。」
「騎士……か。姫はそういう男がいいのか。」
しゅんとした声音に振り向けば、薪を両腕で抱えた王子様がしょぼくれていた。何持ってても王子様だなぁ~。なんて微笑ましくて頬が緩んだ。
「確かに憧れはしますけど、なんでも得手不得手ってあるじゃないですか?自分に出来ることを精一杯やればいいって思いますよ?王子様には王子様の良さがあります。………って偉そうなこと言える立場じゃないですが。」
柄にもないこと言っちゃったとはぐらかすようにえへへっと笑うと、王子もつられたのか「私の良さか」と嬉しそうな笑みを零す。はうっ!!キラッキラです。薪持ってても様になる立ち姿…………、眩しいっす。
のんびりし過ぎたのか、野宿場所ではフィルモントとカウザーが下準備をしていた。すぐに私達も参加する。といっても、薪を並べて、王子が魔法で点火してと、火起こしはあっという間に終わった。肉の塊は香草を塗して葉っぱで包み火に焼べる。芋?のような実も同じように。後は果物類だが、それは食後ってことで出来るまで他愛のない話をする。一見個性が強く単独行動が得意そうな面々だが、話せば割とうまく噛み合っているようだ。
出来上がった料理は何かの肉の香草焼きと蒸した芋で、カウザーが手持ちのナイフで葉の上に肉を分けてくれる。この世界ではナイフ・フォークで食べるのが基本だが、野宿なので手で食べる。
「トビューの肉は嫌いだったか?」
カウザーが料理に手をつけていない王子に聞いた。トビューって何!?と妄想しそうになるのを口に入れた肉とともに飲み込む。深く考えては食べれなくなる。
「いや。料理というより手で食するというのが………。」
「ああ。それならナイフ使うか?」
カウザーがナイフを差し出すが、王子は首を横に振って断った。そして、王子は意を決して手づかみを試みようとしているが、上品に育った人には過酷かもしれない。
う~ん。フォークなんて無いしなぁ。木で作るってのも難しそう………。おお!!箸なら!この私でも作れるんじゃないのか?!
私は早速カウザーからナイフを借り、近くにある木の細くて真っすぐな枝を数本適当な長さで切って、皆のところに戻る。そして、小刀で鉛筆を削る要領で先を細くなるように削っていく。こういう作業は好きだったなぁと懐かしく手が動く。3人は興味深そうに私の作業を眺めていた。なんちゃって箸を作って、フィルモントに軽く魔法で洗ってもらう。そうそう、フィルモントは水の魔法が得意らしい。
「できた!これは箸っていう、私の元の世界でご飯を食べる時に使う道具なんです。こうやって使うんですよ。」
出来たての箸を王子に握らせると、上から手を添えて使い方を指導する。やはりいきなりで使えるわけはなく、何度かの練習が必要だった。けれど、顔を赤らめながらも王子が頑張ったので、私の手がなくても掴めるまで上達するのは早かった。
「姫!これでどうだ。」
「はい。できてますよ、王子様。凄いです!」
フルフルしながらも箸で肉を掴んで持ち上げられた王子に、私はぱちぱちと拍手して感無量ばかりにジ~ンとしてしまう。
「何だろう~。いちゃついているようなのに、嫉妬心湧かないなぁ~。」
「あぁ。あれは男女のやり取りというより………」
「「母と子」」
フィルモントとカウザーが冷ややかな分析をしてるとも知らずに、私と王子はスポ根のように盛り上がって夕食を終えた。
そして、就寝の時間となった。フィルモントは大きな木にフワフワと上がると頑丈そうな枝に寝そべり、カウザーは幹に寄り掛かって眠る体制を整える。私もいつものように大地にコロリと横になると王子がびっくりした表情で話しかけてきた。
「こ、このまま眠るのか?!」
「はい。何かまずいですか?」
フィルモントには魔法で周辺に結界を作ってもらっているので魔物が来る心配はない。万が一でもカウザーは勘が良さそうだし、何とかなると思うが?キョトンと不思議に王子を見上げていると、王子は徐に自分のマントを外すとそれを地面に広げた。
「地に女子がそのまま横になるなど、身体が冷える。気休め程度だがこの上で休め。」
「あ………うわ。ありがとう。」
今までになかった女子扱いにちょっとドキドキする。まあ、いつもロークとケインのローブで蓑虫状態だったから、それで充分だったのだけど………。王子様からのせっかくのご厚意なので、有り難く使わせてもらうことにして、マントの端に寝転べばもう1人くらい入れるスペースがあった。
「王子様もこちらにどうぞ。」
「え、いや。私は。」
「王子様のマントなんですから、遠慮しないで。………はっ、私の隣は嫌ですよね。」
真っ赤な顔をして拒否る王子に、今更ながら気づいてしまった。雑魚寝など日本式の風習であって、この世界の常識とはかけはなれてるんじゃないかと。しまったと青くなる顔を隠そうとすると、隣にスッと王子が寝転がる。
「邪魔する。」
「……王子様。ありがとうございます。」
私に恥をかかないように気遣ってくれた王子にお礼をいうと、王子は耳まで真っ赤になり天を仰いでいた。今日の夜空も星が沢山で、同じ空を見上げているかもしれないアル達の無事と明日からの新メンバー達との旅が上手くいくように祈り、目を閉じた。
またしても、王子との絡みが多くなってしまった………。
推しメンじゃないんだけど、お世話が必要だからかな??




