ちょい話 王子と騎士
勇者登場前、ちょいと昔のお話を。
数ヶ月前から国家騎士団に入った騎士が、また揉め事を起こしていた。城内には多くの人数が働いているので、ただの一騎士の顔も名も王子の私が覚えることなど無いのだが、奴の素行は否が応にも私の耳にも入ってきていたためよく見知っていた。
ちょっと息抜きにと中庭に出た際、数人の騎士と奴が口喧嘩をしている所に出くわしてしまった。少し離れた場所には2人のメイドが困った顔でおろおろとしている。それで大抵察しがついた。騎士がメイドをナンパしているところを奴が見つけ、咎めたのだ。職場恋愛など良くあること。ましてや、城内勤務の騎士達の出会いなど職場を抜きにすると見合いしかない。メイド達とて好まない男をいなす方法くらい心得ている。このくらい放っておけばいいのに、やけに騎士道に固執している奴にはできないらしい。
「アルフレッド=クレイブ。また、問題を起こしているのか。」
「ミスリム王子……………。」
私を見て、その場の皆が恭しく頭を下げる。だが、奴が不本意そうな顔で俯いたことはバッチリしっかりお見通しだ。お前と私では雲泥の身分差があるのだぞ!とは思うが、私はそのくらいのことを気にかける小物では無い。王子然とした笑顔でその場を丸く収めてやった。奴は剣の腕も人柄も悪くないと聞く。周りとの協調性をもって柔和な考え方をすれば、もっと生きやすいだろうにと少し同情した。
奴はその後、騎士道を貫くあまりに、ついに国家騎士団を追い出される羽目となった。追放命令は私とドルトスの名を勝手に使用されたが、奴は騎士団という集団には合わないと前々から思っていたので留めることはしなかった。
もう、会うことも無いだろうと思っていたはずが。まさか、奴が10プレメンバーに選ばれ、勇者のパーティーにいるとは、縁とは異なものだ。
―――――――
小さい頃から憧れた国家騎士団に入団したが、実状は悲惨なものだった。崇高な思想も無く、力や権力に執着し、欲や女に溺れる。堕落した騎士達に日増しにイライラが募る。
たまたま、城内移動中の中庭でメイドの女性を引っ掛けている騎士達に遭遇した。今は職務中だろうに、本当に腑抜けている。先輩だろうが上司だろうが、見つけたからには正さなくてはいけない。ちょっと注意したつもりが、彼らは意気がって絡んできた。女子の前だからいい姿を見せたいのだろうが……………もっと違う勇姿を見せれば良いものを。そうしていると、1人の男が茶々を入れてきた。
「アルフレッド=クレイブ。また、問題を起こしているのか。」
「ミスリム王子……………。」
反射的に頭を下げる。彼はこの国の王子だ。まあまあ私に預けてとその場を納めてくれたが、そもそもこんな堕落した騎士団に成り下がった要因は王子達上層部がしっかり管理していないからだ。なのに、この目にも鮮やかなキラキラ王子はなぜだか人望があり、有能な人に囲まれているためかこれでも国は概ね順調に回っている。
その後も度々いざこざを起こしたせいか、ついに退団命令が下された。もう辟易していたので出て行くことに異論は無いが、正しい方が処罰を受けることには納得いかない。しかし、王子の勅命に蟠りを残しつつ城を去った。
勇者のパーティーメンバーに選ばれ、いずれは城に出向くことは分かっていた。が、王子が10プレメンバーだったとは予想だにしていなかった。
―――――――
サウスの街で出会った。運命………なんて呼びたくもない。
相変わらずキラキラと眩しい王子だ。
相変わらず堅苦しい不躾な騎士だな。
お互いアスナの見えない火花を散らす。
その後もアスナに寄せ付けまいとする騎士と、アスナに近づこうと試みる王子の攻防が静かに続く。
そして、城での夜、鉢合わせすることになった。
そこで騎士は知った。王子が地位と権力で慕われているだけではなく、繊細な危うさと純粋な勘違い思考に助けてやりたいと皆が不思議と惹かれることを。
そこで王子は知った。騎士があんなに固執していた騎士を手放してもいいと言い切った変化に。それは、色に狂っているわけでもなく、投げやりでもなく、枷が外れたような穏やかさだった。
全く、厄介だ。仲間ならいざ知らず、恋のライバルとは…………。
てなわけで、別に喧嘩してるわけではないから、実はパーティー組むこともできます。




