パーティーメンバー変え方
「お願いします…………って。ぇえっ!!王子様のお世話なんて無理・無理、無理です。」
はわはわと両手をふって困惑顔でドルトス達に否定の声を上げる。
「いやいや、世話ではなくてパートナ、っ!」
「パーティーメンバーに、勇者殿の仲間に加えて頂きたいのです。」
ドルトスが言いかけた言葉をエンフィが遮り引き継ぐ。その際にドカッとドルトスの向こう脛をエンフィが踵で蹴った。ドルトスは苦悶の表情で必死に堪えてますが、それ痛かったですよね。でも、ドルトスをエンフィは見ることなくニコニコと話を続ける。
「ちょうどお連れの方もいないようなので。いかがでしょう?」
「おわぅ!!!そうだっ!私、逸れたんだー――!!!」
エンフィの一言に、私はドラゴンに連れ去られてアル達とは大分離れてしまってる事に気づいた。す~~っかり忘れてた。……………うん、まぁ、命の危機とかだったし、仕方なかったよな。
「今、ちょっと離れ離れになっちゃってますが、そのうち合流できると思いますので、そのお話は。」
「おや?パーティーメンバーはいつでも変更できると思いますが。今のお仲間に何か特別な思い入れでも?」
「特別?とかはありませんが、割とバランスはいいのかな……………と。」
「それは他の方とも組んでみた結果ですか?王子とは、まだですよね?それで決めてしまうのは時期尚早ではないですか?」
「そうですね……………。」
それは一理あるな。でも、組み替えて最良を探すの、めんどくさいよなぁ。それにリアルにはメンバー同士の相性とかもあるだろうし、ほら、王子様とアルは険悪っぽいとか思ったし。
「やっぱり、やめときまっ。」
「では、メンバーの方と合流するまで、ではどうですか?こんな森の中、女性の一人旅は危ないですよ。護衛だと思って。」
「そうそう。ああ見えて剣術も魔法もできるぞ。俺達がしっかり鍛えているからな。」
お断りをしようとした私をエンフィが遮り、復活したドルトスも加わってくる。これ、拒否権無いですよね。たぶん何を言ったとしても言いくるめられてしまう事が容易に推測された。こちらが折れるしかない………。
「分かりました。しばらく…………、でいいんですよね?」
「……………かなり貶められた気がする。」
おぉ、お久しぶりに王子の声が聞こえました。その声に私が振り返ろうとした途端、ドルトスとエンフィが風のように私の横をすり抜けるとガシッと王子の両脇を捕まえ、距離をとった。そして、3人の密談が始まってしまった。
ポツンと取り残された私。話が終わるまでしばらくかかりそうなので、これからどうしたものかと考える事にした。行くか留まるか戻るか、これもひとつの大切な選択だ。慎重に考えねばならない。
さて、アル達に合流するには………。そういやロークに貰ったネックレスってどこまでの距離感知できるんだろう?う~ん、戻ったり、留まったりするのは下手すると行き違いになる可能性があるなぁ。目的地は決めてあるんだし、ここは進むか…………。
そう考えていると、いきなりふわりと後ろから腕が現れてぎゅっと抱き着かれる。
「僕も~~連れてって~~。」
「うぎゃぁぁぁぁああああーーー!!!」
私は大声で叫び声を上げると、反射的にシールドブレスを発動し弾かれた相手に呼び出した剣を構えた。
「ストップ、ストップ!僕だってばぁ~。」
「フッ、フィ、フィィィルゥ……………。」
そこにはエンフィの蔦に捕まっていたはずのフィルモントがフワフワと浮いていた。私の震えは別の震えに移行する。
「こんな靄の中にその台詞でフワフワってニュッてガシッてきたら怖いんだよぉぉーーー!幽霊かと思ったじゃないかぁ!きさまは精霊じゃなくて幽霊使いかぁぁーーー!!!って、待て、こらーーー!」
「わぁお。怖~~い。僕こんなハードプレイ趣味じゃないのにぃぃ~~。でも、愛しの天使ちゃんなら許しちゃおうかなぁぁ~~~。」
寿命が縮むくらい怯えて泣きの入った私を怖いとかフィルめ、懲らしめる!!私の猛追をひらりとかわし靄に姿を消すと、別の場所からフッと現れるフィルモント。これ完全に幽霊だろうが!!それにしても、ここはフィルモントの作り出した結界の中だから、幻覚術でも使ってるんだろう、ちょこまかとすばしっこい。だがしか~し、こちらも勇者っ!身体能力で魔導士には負けん!私はスッと目を閉じるとフィルモントを気配で探す。
「そこだぁ!!」
ひょっと背後を振り向きざまに右手で空を掴む。手応えあり。フィルモントの服に手がかかった。グイッと引っ張るとなぜかとても軽い。
「はい。天使ちゃんの負け~~。」
「え?」
フワンとフィルモントに背中にのしかかられる。私の手の中にはフィルモントの着ていたはずの真っ白な服だけがあった。ま、まさか…………。
「フィル。今、なんか着てる?」
「ふふっ。見たい?恥ずかしいけど、天使ちゃんならいいよ~。」
「す、直ぐに服返すから着て!!」
「じゃあ、メンバーに入れてくれる~?僕、勝ったし~。」
「これとそれとは話が。」
「…………ブ~。なら、着ない。」
「この、破廉恥男、姫から離れろ。」
わいわいと背中にくっつくフィルモントと騒ぎ立てているうちに、おじ様に連れ去られていた王子が帰ってきて、第一声を発すると私の首に絡まったフィルモントの腕を掴みにかかる。なので、私はそれをするりとかわした。
「…………姫?」
空を掴んだ王子に不信顔をされる。そして、また掴みにかかるのを、私は後ずさりながら避けた。
「なぜ逃げる?」
「だ、だって、フィルを剥がすと、恐ろしい事がっ!!」
「なんだ、それは??」
「こ、言葉にできない悍まし事態が起こるのです…………。」
「わけがわからんぞ。はっきり言わないか。」
「……………泣いてもいいですか?!」
「な、なぜ泣くのだっ!!」
泣くぞで狼狽した王子が止まってくれた。良かった。ホッとしてため息を漏らすと、フィルモントが耳元で怪しく囁いてくる。
「メンバーにしてくれるまで、このままだぞ~~。」
「……………了解。仲間にします。」
敗北感にうちひしがれながら承諾すると、フィルモントはやっり~と笑いながら私の手から自分の服をとり、正面へと躍り出た。その素早い流れるような行動に目を閉じる余裕もなく、フィルモントの姿が私の視界に入る。
「!!!?!!」
私は唖然と固まった。フィルモントは上半身は裸だが、七分丈の白いズボンを穿いていた。彼はニヨニヨしながら私の手から戻った服に袖を通すと前を合わせて腰紐を巻く。すると、ズボンはすっぽりと隠れてしまった。
騙されたーーー!!だって、ズボンなんて見えなかったから、あの服とったらって…………。1人で変な誤解してたのか!!だから、王子も普通にフィルを引っぺがそうとしたんだ。なら、破廉恥男とか言うなよ………。あ、抱き着いてたことを指してたのかな。……………冷静になって、わかったよ。
さっきまでの焦りは何だったのか、私はあははとから笑いして、この件全てを流すことにした。だって、フィルモントに文句を言えば墓穴を掘るだけだし、わかってない様子の王子にまでばれる。話題転換、とばかりに視線を外して違和感に気づく。
「あ、あれ?そういえばドルトスさんとエンフィさんは?」
「ん?2人なら姫が私のメンバー入りを了承したのでもう用は済んだし、部隊員を帰還させて再教育すると息巻いて帰ったが?そういえば、私をよろしく頼むようにと言っていたが、なに気を使うことはないぞ?」
ちょっと頬を赤らめながら王子が爽やかに、おじ様達の伝言を伝えてくれる。
な、なんと!!こちらにも嵌められた気がするんだが!!
こうして、私のパーティーメンバーは、王子と精霊使いに変更になった。
パーティーメンバーとは、もっとこう、戦闘バランスとか考えて組むのでは…………。などと、適当に初期メンバーを選んだ私が言うのは間違っているのかな。




