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VS?おじ様


 フィルモントは面白くなさそうに魔導士長エンフィを見やる。


「ちぇ~。この魔法が破られるのか~。」

「フィルモント。破るもなにもその精霊?とやらを出している間に、結界内に入っただけだが…………。その、魔法の具現化は、非効率だと言っておっただろう?年長者の忠告を聞かない奴だ。」

「ふんっ。僕の魔法は芸術なんだよ~。まじ頭固いよね~。だから王都魔導士、やめたんだよ~。」

「こちらとて、異端は要らん。」


 エンフィは眉間にシワを寄せながら呆れるように話す。どうやらフィルモントも魔導士団と関わりがあったようで、2人は知り合いらしい。で、魔法の具現化ってなんだ?と私は首を傾げる。


「…………そいつは精霊使いと名乗っているが本当はただの魔導士だ。この世界に精霊や妖精の類いなどいない。勝手に精霊を魔法で作り出して召喚した気でいるんだ。まともにしていれば強力な魔力を持つのに、無駄にMPを消費しまくる残念な奴だ。」


 また、いつの間にか石化が解けた王子が解説してくれる。私が話についていけず漏らした言葉を拾ったらしい。


 え~。じゃあ、あの女性達は…………彼の魔法。うぉ、精霊使いの召喚魔法はMPがガン減りするのはそのせいか。何処に精出してんだか。あぁ、何か、10プレRPGの裏を垣間見た気が…………。いや、魔法やドラゴンありなら精霊とかも作っとけば良かったんじゃ?…………手を抜いたな。


 RPGがつくづく雑だなと感じつつ、芸術と魔法を称したフィルモントはただの女好きか、と陰ながら評する。


「まあ、そんなことはどうでもいい。邪魔者は、しばし大人しくしていろ。」


 エンフィがヒユッと手をフィルモントに向けてかざすと、フィルモントの足元の地面から数本の蔦が伸びてきてあっという間に彼の体を縛り上げた。


「うわぁ~。何すんの~。僕はこんな趣味無いんだけど~~。」


 フィルモントが焦った声を上げる。確かに蔦に縛られるその格好は一部のマニア受けしそうな姿で…………。げふん。


「その蔦は魔法吸収があるから魔導士には逃れられんぞ。魔法防御力のあるローブをダサいと言って羽織らんからすぐ捕われるのだ。煩い口も封じるか。」

「うわっ。や、んん~~。」


 エンフィの一言でシュルンと蔦が更に伸びて、フィルモントの口に猿ぐつわのように巻き付く。こ、これは。卑猥度MAXです。乙女ゲームじゃありえんでしょ、これ……………。いや、いけるのか??萌えは多種多様だと言ってた(友人談)。


「あの姿……………。私の姫だといいのに………。」


 王子が後ろでボソッと下世話なことを言う。えげつない事、聞こえましたがっ!!姫…………は私ではない、勇者だ、そうそう勇者。何となく背中に視線を感じるのは気のせいだと私は暗示をかけた。


 フィルモントのあられもない姿に目を奪われていると、ガシッと大きな手に頭を捕まれた。見上げればすっかり忘れてた片割れのおじ様、騎士団長ドルトスがニカっと豪快に笑っていた。


 ひぃっ!もう一人居たんだった!逃げ損なったーーー!!!


 勇者達は逃げられなかった。どこかにそんな文字が浮かぶかのような状況に血の気が引く。もう、選択肢は戦うしか残ってない……………?むぐぐと無い頭から知恵を捻っていると、ドルトスがいきなり私の頭をグワシグワシ撫で回す。


「ガハハハッ!面白い小娘だ。勇者と名乗るからには、鼻につく高慢ちきかと思えば、俺達にしっぽを巻いて逃げ出すとはな!!それも王子が引きずられて!!!その後ろ姿といったら、もう、間抜けすぎて、ハハッ。笑うのを抑えるのに、苦労したぞ!!!」


 笑いながら話すドルトスに殺気などなど無く、撫で回されながらきょとんと眺めてしまう。あれ?追っ手…………だよね?


「ドル。止めろ。驚いている。」

「おおっと!すまん、すまん。女の子の扱いにはどうも慣れてなくてな。大丈夫かい?」

「は………あ。」


 王子の声に素直に従い手を引っ込めるドルトス。私はグチャグチャな髪のまま、ポカンと阿保づらで立ち尽くす。


「アスナ、心配ない。この2人は大丈夫だ。ドルとエンにはちょっとした小芝居を打ってもらってたんだ。」



 王子たち曰く、さっきのいざこざはドラゴン討伐部隊を帰還させるための策だったらしい。私達勇者が現れた事で立場を脅かされかねないと考える国家騎士団と王都魔導士団は、城へのドラゴン襲撃に惜敗したと王子に偽りの報告を行っていた。そして、王子を唆して城に私達を足止めし、出し抜くつもりだったようだ。そして、予定通り王子も連れ立ってドラゴン討伐と出陣したわけだが、この場でドラゴンに遭遇、落ちてきた私の真情報に部隊の実力がさらけ出された。このままだと敗北が濃厚だと判断した王子は、退却命令を素直に聞き入れる受け入れる連中ではない事を重々承知なので、あのような物言いをしたらしい。で、思った以上の反感を買い生命の危機的状況になってしまった。王子としても部隊員に怯むわけにもいかず対立。ドルトスさんとエンフィさんには王子がテレバス?みたいな魔法でこの後処理を指示したらしい。どおりで、静かだったドルトスさんが急に先頭に出刃ってきたわけだ。


「私は………余計なことをしたんですね………。」


 フィルモントに干渉がどうのとか言われたのを思い出し、その通り邪魔しただけだったのかと愕然とする。しかし、ドルトスはガハハと笑い飛ばすと、バンバンと私の肩を叩く。イテテッ。勇者ですが、女子の体は繊細なんですよっ。


「いやいや。勇者殿はとてもいい仕事をしたぞ。あのまんまだとどっちも引けねぇから収集つけるために多少の怪我は厭わないと言われててもさ、騎士としちゃ王子を傷つけるわけにいかないし、どうしたもんかって思っていたんだ。そこに、勇者殿が王子を連れて逃げ出してくれたから大助かりだ。このまま見失ったって事で片が付く。いやぁ、良かった、良かった。」

「王子ともあろう者が姫に庇われたうえ、逃亡。王子としての威厳が……………。」


 ドルトスの威勢のいい声とは対照的に王子が盛大なため息混じりで呟いた。そうだった。まず計画ズタボロにしたことを王子に謝らなければと、ドルトスの手痛い励ましに涙目のまま、私は王子に向き直り頭を足れた。


「私のせいで計画を無にしてしまい、申し訳ございませんでした。」

「っ!!ち、ちがうっ。それは、いいんだ。だが、しかしっ、その。」


 王子は私を見るなり思い切り狼狽してしまった。


 えっと、なにが違う?土下座したらいい??ファンタジーで日本式は通じる?


 考えあぐねていると、くいっと私の顎を持たれ顔の向きを変えさせられる。


「え、エンっ?!」


 焦る王子の声のとおり、こちらにいつの間にか近づいていたエンフィに探りを入れるような痛い視線と私は強制的にかち合わされた。けど、目線を外せばフィルモントのような目に合わされるかもとじっと直視していると、満足したのかフッとエンフィの口元が緩む。


「異世界人のため身分も礼儀・教養もないが、その分、貴族の令嬢達のようにしがらみや陰謀が無い。王子に対しての敬意の無い態度は、逆に誰にも分け隔てがないとも考察できる。淑女らしさは大いに欠けるが、勇者に求めるものではないし……………まあ、及第点か。」


 私はエンフィに半分くらいけなされながら何かの合格をもらったらしい。話が見えませんが??聞こうとした矢先、ドルトスの声に遮られる。


「おうっ!勇者殿がエンフィの御眼鏡に適うってのか。」

「ええ。直情的な勇者殿は立場を重んじて考えすぎる王子にはいい刺激になるでしょう。それに、勇者殿の潔く逃げ出せる強さは私達も見習わなくてはなりません。」

「は?!そこをか?!!」


 私の事のようだが、私は眼中に無いらしく2人だけで話が続く。


「そうです。勇者殿はこの場を一滴の血さえ流さずに治めたのですよ。あなたもさっき感心していたではないですか。」

「あ、いや、そうだが。我等、騎士としてそれはどうかと思うのだが………。」

「その高すぎるプライドのために、無謀にもドラゴン討伐に挑もうとしたり、主君に刃を向けようとしたのでは?無論、我ら魔導士も同様ですが。」

「うむっ…………。」


 エンフィの言葉にドルトスが詰まる。この話を総合するに逃げたことがエンフィの高評価を受けたようだ。ただ、逃げたってだけなのに………。いたたまれないが、挟まれていて身動きがとれない。


「逃げる強さ…………かぁ。こいつはかなり習得するのが難しそうだな。が、今回のような主君を裏切るような失態は2度と許されん。これから、帰還したら騎士団を一から鍛え直して、徹底的に頭と体に教え込まなきゃな。」

「こちらも、任せろと豪語していた魔導士達があんなふがいない魔法で魔力の枯渇、果てには騎士達を止めるどころか煽る始末ですからね。私もしっかり躾直すと致しましょう。」


 久々の大仕事だな、と言いながらフフフと不穏な笑いを零すドルトスとエンフィ。あのっ、逃げる事を教えるんですよね?なんでそんなギラついてるんですか。ついでに王都で悪さをしてきた部隊員も締め上げるかとか聞こえてます。並々ならぬやる気出ちゃってますよ。

 ちょっと引き気味に見ていた私に、不意におじ様2人がこちらに目線を寄越した。そして、胸に手を当て恭しく一礼する。


「「ということで、王子をお願いいたします。勇者殿。」」


 はいいっ?ということって、どういうこと?!!!


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