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私にシリアスは無理


「ドラゴンに捕われていたのに私達は攻撃してしまったのか。」

「仕方ないですよ。知らなかっんですし。それに全く当たりませんでしたから怪我もありません。」

「なに?攻撃が当たってすらいない…………。」


 説明した後、申し訳なさそうに王子が言うもんだから、フォローのつもりで発した私の言葉にひっかかった王子がジトリと後ろの部隊員を見やる。


「い、いきなりドラゴンが現れたので、なぁ?」

「そうです。体勢が不十分だったので…………。」

「そもそも、ドラゴンには魔法耐性がありますし。」


 部隊員の約半々の魔導士らしいローブを着た人達が口々に言い訳じみた答弁をするのを、残りの騎士らしい人達が鼻で笑う。


「ハッ!やはり、魔導士など役に立たないな。前回もそうだった。」

「なにっ。そっちこそ、前回、ドラゴンには歯が立たなかったじゃないか。」

「「どちらが強いのかハッキリさせようか!!」」


 部隊内で口喧嘩が広がり、騎士VS魔導士の構図ができあがって、ついには一触即発寸前といった様相になる。この騒動の引き金となったであろう私はオロオロするしかできない。これ、前にも似たことあったような………。


「静まれ!!今の話はどういう事だ!!城ではドラゴン戦は奇襲だったため、惜敗したと報告だったではないか!!よもや私に偽りの報告など行ってはいないだろうな!!」


 王子の鶴の一声にその場がぴしっと凍りつく。いつもの煌びやかさを残しつつ威厳のある姿で、王子は部隊員たちを見据えた。騎士団長ドルトスと魔導士長エンフィも押し黙っている。


「私は王子という名ばかりのお飾りだ。実際には、国に忠誠を誓う国家騎士団と王都魔導士にて安泰があるものと考えていた。ゆえに、多少の悪事は見逃してきたが、自らの力量すらも判らぬ腐った部隊に成り下がっていたとはな。使えぬ部下は要らん、城へ帰れ。なお、これまでのこと全て王に報告し、厳重に処罰させてもらう。」


 王子がそう言い切ると、ザワッと部隊がどよめいた。


「……………おめおめと帰れ…………と。」

「……………全て失うではないか。」

「……………王子に…………口封じを。」

「「「そうだ。亡き者に…………。」」」


 誰からともなくそんな声が上がり始め、集団化する。そして、騎士達の手におのずと剣が握られ始める。私はギョッとするも、王子に驚きはなく小さなため息が漏れた。


「私の命令にも従えぬのか、ならば仕方ない。」


 王子は携えている、細身の剣を引き抜いた。それを見てドルトスが僅かに眉を潜める。


「王子…………どうかそのような考えは捨て、剣を納めてください。でなければ…………。」

「ドルトス……………。お前までも…………。だが、私は引く気はない。」

「わかりました。では、せめて痛みは最小限と致しますので。」


 王子の説得をやめたドルトスは覚悟を決めたように抜刀する。


 おかしい、おかしい、おかしい……………。さっきまでの仲間だったのに戦う………とか。…………何でこうなってんの?………わかんないんだけど?!!でも、とにかく!!


 私はいつの間にか王子の前に立ちはだかっていた。ドルトスがククッと顔を歪ませ、ツッと私に剣の切っ先を突きつける。


「ほう。王子をお守りになるのか?勇者殿の正義では、私どもは悪かな?」

「…………私には何が良くて、何が悪いのかなんて判断できる頭はありません。……………だから、私は私のエゴで動きます。」

「「「!!」」」


 私は宣言すると供に、王子の手を捕まえると部隊とは反対方向へ一目散に逃げ出した。いわゆる、敵前逃亡っっ!!私はRPGで魔物が強くて、こちら分が悪いと思えば迷わず逃げるを選択する。さらにHPがぎりぎりだったら、回復スポットまでひたすら逃げまくるのだ。

 ここは少し行けば森へと潜り込める場所。森に逃げ込めば、大勢でも撒くこともできるだろうと考えて、奥に広がる森に足を進めた。幸い、部隊員たちは逃げ出すとは思わなかったようで、まだ唖然としている。


「え~。これから面白くなりなそうなのに、逃げるの~。」


 フィルモントがフワリと私の横に来て、浮かびながら唇を尖らせる。


「私は誰かが傷つくのも、死ぬのもヤなの。」

「ふふっ。聖人みたいだね~。でも、王子様を救うなんてできるの~~。」

「はぁ?救うなんて大それた事できるわけないじゃん。だから、逃げてんでしょ。」


 不思議そうにフィルモントを見ると、彼は無邪気な笑みを零す。


「アハハ、干渉しといて、責任とらないの~~?」

「責任?!!なんで?私、悪いことしてる?」

「さあ?どうかな~。でも、君が望むなら………僕はな~んでもしてあげる♪」


 心酔しているように見てくるフィルモントの瞳に悪寒か走った。途端に私達の前に白く透けた女性が現れる。ゆ、幽霊!!苦手物体出現に走っていた私の足がすくむ。すると、その女性はスウッと私達の周りを円を描くように廻ると消えて、辺りが濃い霧に霞んだ。


「迷いの霧。これで、しばらく僕等の姿は見つけられないよ~。僕の精霊さん、すごいでしょ~。綺麗でしょ~。」


 フィルモントは楽しそうにそう言うが、いきなりの精霊召喚はお化けにしか見えず、私の心臓には悪いです。


「貴様ら……………勝手なことを…………。」

 

 背後からの王子の声に、そういや、待てとか離せとか言ってたのを完無視して引き連れてきてしまったと、叱られるのを覚悟で振り返る。しかし、彼は不服顔ではあるが怒り心頭とまでいってなかった。これは先手必勝とばかりに王子の手を両手で握りしめる。


「ごめんなさい、王子様!!私、ただ王子様には傷ついてほしくなかったんです!!」


 だから、許してね?と眉を下げて上目遣いで見上げると、ボワッと王子は顔が真っ赤にしてまたしても硬直した。あー、言葉かなり省略したかも…………でも、お説教は回避できそうで良かった。


「勇者殿は王子以上に予想外の行動をとりますな。」

「おかげで労せず決着しそうで、助かりますがね。」


 霧の中から2人の人物が現れた。騎士団長ドルトスと魔導士長エンフィだった。私は石化した王子を背に隠す。


 しまった。王子様固まってるし、逃げれん。てか、フィルの魔法って、へっぽこなの~~。


 横のフィルモントをチラ見すると彼も予想外だったのか、頬を膨らませていた。美人顔………崩れてますよ。

う~ん。シリアスはやっぱ無理………。

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