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そして、…………6人目あらわる。


 ……………………飛行魔法習うべきだったか、でも、自ら飛びたくねェェ。


 ちょっと意識の逃避行をしてみる。私は今空を飛んでいる。大きな足で身体全体を掴まれているせいで、案外安定していた。風もそこまで当たらず、呼吸もできる。高さも思ったよりは高くなく、平行移動になってからは割と落ち着いたフライトだ。ふふっ、半狂乱じゃないのかって?顔面蒼白でこのまま死にそうですが…………あまりにも怖すぎて逆に吹っ切れてしまいました。


 あー、あの大きな山、あれが東の果て山だろうか。そして、巣に着くと私は喰われる。

 BAD END。…………終わったな。


 大きくそびえる岩山を見ながら未来を考えて、ため息がでた。


 私なんか食べても病気治らないだろうになぁ……………。

 ん?そうなると何も状況改善されない。私ただの犬死に?

 駄目だ。それ駄目。どうにかして、イエロードラゴンにわかってもらわなきゃ!!!


 私が策を練ろうとした矢先、グラッと地震に遭ったように身体が揺れ、視界がぶれた。


「グアッオォオオオ!!!」


 ドラゴンが大きな叫び声を上げ空中で急に止まったのだ。見れば下から幾千もの氷の矢がドラゴン及び私に向かってくる。けれど、容易くやられるはずもないドラゴンは、直ぐに身体を帯電させて一気にその雷を放出させた。パパパンッッと雷に当てられた氷の矢は脆く壊れ飛散して、キラキラと空中で輝く。


 すごっ。テレビで見たことあるスターダストみたいだ。


 呑気にそんな感想を漏らして氷の矢が飛んできた方を見る。森の中にある拓けた平地、そこには10数人の馬に乗った軍団がいた。そして、その先頭に一際目立つ白馬に乗った男性。


 あ、ミスリム王子……………。


 遠くてはっきりと顔形はわからないが醸し出す煌びやかな雰囲気で王子だとわかった。そういや遠征に出たとか言ってたな、とアルフレッドの言葉を思いだす。


 お!王子達もイエロードラゴンのいる東の果て山を目指してるのかな??やべぇ!!そうなるとあれ討伐部隊じゃないのか!!


 私は攻撃された意味をやっとのことで理解する。すると、今度は火の石つぶてが大量に向かってきた。バチバチっとドラゴンの雷が安々と石を破壊、砂塵と化す。これもなかなかに綺麗で花火のように散っていった。にしても、10数人、それも私のパーティーメンバーより強いとおじ様方が豪語してた人々が戦っているのに全く歯が立ってない?こんな強いドラゴンと私達4人パーティーを対峙させるとか、やっぱりパワーバランスおかしいよねぇ?そんなことを感じていると、ドラゴンの帯電が高まりはじめる。さっきのまでの電気の比じゃない。


 イエロードラゴンの反撃!!ダメだ!このままだと、人を傷つける。ドラゴンが悪者になる!!!


 私は咄嗟にシールドブレスを発動させた。バシッと巻き付いていたドラゴンの足を私の体が弾いた。いきなり足元から襲ってきた衝撃にドラゴンは驚き、帯電をすぐにやめ、上空高く高く急上昇して飛び去る。ドラゴンから解放された私は…………もちろん物理的に落ちる。


 ウギョェェェェェーーー!!!できればこの選択はしたくなかったぁぁぁぁーーーー!!!


 パラシュートの無いスカイダイビング?だ。実はこれ、連れ去られている最中に逃げる方法として一度考えた案だった。でも、その後の展開に妙案がなく瞬時に却下したが、これならドラゴンを傷つけずに驚かしてここから飛び去らせることできるのではないかと思ってしまったのだ。


 作戦成功。この戦闘は避けれた。後は、アル達か意志を継いでくれると、いいな。


 死を覚悟すると自然と心が落ち着いた。さらに、死の直前は全てがスローモーションになると聞くように、さっきから落ちるスピードがとてもゆっくりになっていた。私はいつの間にか閉じていた目を開ける。すると、スケスケのおねぇさん2人が私を囲んでいた。スケスケ、透け透け、姿がうっすらで向こうの背景が透けている。


 死んだ…………。この人達は天使?私は天国に連れて行ってもらえるのだろうか?


 ニコリと微笑まれたのでニコリと返す。2人はその顔に満足したように私の両腕を支えると私を地面の方へ向けさせる。そこには、水色の長い髪を風に揺らす、グレーの神秘的な瞳の綺麗なおねぇさま天使の姿があった。透けてない彼女は神話に出てくる神様のような白い服装で、両手を広げてゆっくりと落ちる私を受け止め抱きしめてくれた。


「やっと、出会えたね。僕の天使。」


 いや、天使はあなたでしょう。…………ん?僕??


 抱かれている胸が平らなことに気付く。お、男?!顔をじっと凝視すれば、女性に見間違えるが確かに顔も男の人の様相を呈していた。


 大天使様は男の人で実体なのか。あ、温もりもある。


 さっきの透けてるおねぇさまにはなかった人間味を感じて、ホッと息をつく。まあ、死ENDだったけど痛みは感じなかったからいいか。と目の前の大天使に微笑んだ。


「ふふっ。そんな無防備な顔しちゃってると、襲っちゃうぞぉ~~。」


 天使ともあろう者からありえない言葉が漏れる。こいつエロ天使か?!目を丸くして固まると彼は朗らかに笑った。


「こっちでは始めましてだね~、アスナ。僕は精霊使いのフィルモント=バルリエ。フィルって呼んね~。」

「てっ、10プレメンバー!!」


 言われて思い出した職業、精霊使い。精霊を魔法召喚して戦う10プレメンバー。強力な魔法が使えるが、MP消費量も俄然多いのが難点だ。


「え?あなたは天使じゃないの?」

「あはっ。天使は君だよ~。やっと、僕の元に堕ちてきてくれたねぇ~~。」

「彼女を助けたからといっていつまで抱き着いている。アスナは私の姫だ。」


 後ろからの声に振り向けば、そこには馬を下りてこちらに向かってくるミスリム王子がいた。


「え“。ミスリム王子?!王子様も死んだの?!」

「…………。錯乱してるな。誰も死んではいない。それより、何故空から落ちてきたんだ?」

「天使の羽を失っちゃったんだよねぇ~?天使は恋すると羽をなくす。そして僕に堕ちてきた~。」

「貴様は黙れ。余計に混乱するだろう。」


 王子に手を取られてフィルモントの腕の中から引っ張り出される。握られた手は力強く、王子が現実にいることを肌で感じられた。


「生きて……る?」

「そうだ。ほら、分かるか?」


 私を安心させるように私の手を王子が自分の胸へ当てさせる。手の平を通じて彼の心音が伝わる。


「良かったぁ。生きてる…………。」

「っ!!!」


 私は涙目で勢いよく目の前の王子に抱き着いた。生きている証をもっと実感したくて、顔を王子の胸に擦り寄せる。トクトクと鳴る心音…………?あれ?バクバクいってる??不思議そうに顔を上げると王子は真っ赤になっていた。


「ゴホン。勇者殿。淑女が公衆の面前で男性に抱き着くというのは、いかがなものかと思いますが。」

「えぇ。異世界では、当たり前なのかも知れませんが…………。その、もう少し貞淑に。」


 王子の後方からの呆れたような声に視線を向けると、以前に城で会った国家騎士団長のドルトスさんと王都魔導士長のエンフィさんを先頭に十数人が困ったように目線をさ迷わせていた。そういや王子は今、部隊率いてたんだった。


「も、申し訳ありません!!」


 いかん。アル達と接するのが常だったから男性との距離感がわからなくなってる。


 私は真っ青になりながら身を引くと、王子は赤くなったまま硬直していた。城ではあんなに大胆だった王子様がこんなことになるとは、やはり女性が迫るのはレアなのか…………。いや、迫ってねぇんだけど!!1人脳内ツッコミしているとフィルモントから声がかかる。


「助けたの僕の風精霊さんなんだけど~~。僕へのギュッは~~??」


 フィルモントが両手を広げて待ち構えてくるが、さっきおじ様方にはしたないと窘められたばかりだし、冷静に考えれば私も安々と男に抱き着くタイプではないのだ。それに、どさくさ紛れにフィルモントには抱きしめられたよなと思いだし、最後の言葉は受け流すことにして私はその場で深々と頭を下げ礼を言う。


「精霊使いさん、助けて頂いてありがとうございました。おかげで命拾いしました。」

「む~、はぐらかされた~。まぁ、いいけど。あと、呼び名はフィルね~。天使ちゃん。」

「フ、フィル…………。なら、その私を天使って呼ぶのもやめて貰えませんか?勇者なんですが。」

「え~。だって明日奈は絶望の淵にいた僕に舞い降りた天使なんだも~ん。」


 フィルモントがすっごく悦に入った目を向けてくる。たぶんこれ以上言っても堂々巡り気がする。私は彼の説得を早々に諦めた。


「ふん。おかしな男だ。アスナは私の姫だ。」

「あの、勇者なんですが…………。」

「照れなくてもよいぞ。さっきの積極的な姫は悪くなかった。」


 石化が解けたらしい王子がフィルモントに訂正を入れる。それも違うと私が返すも妙に煌めく笑顔を向けられた。う~ん、またあらぬ誤解を生んだか………?まあ、別に呼び名くらい何でもいいかと、途端に面倒になった私は王子の説得も諦めた。そこで、やっとドラゴンの事を思い出す。


「うわぁ、そういえばイエロードラゴンは!!」

「あぁ、奴には逃げられた。住家だと思われる東の果て山に向かったようだが…………。落ちてきた事と関係あるのか?」

「は、はぁ。それがですね…………。」


 私はドラゴンとの出会いからここに来るまでの経緯を王子達に簡単に説明した。さすがにドラゴンとお近づきになろうとした事などについては伏せたが………………。



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