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アスナの受難 2

「ロ、ローク?」

「こう見えても割と傷つき易いんですが………。」


 後ろから抱きしめられたまま、耳に唇が触れる程の距離でため息まじりに囁かれる。


「いや、あの。そんなつもりじゃ。」

「………ふっ、わかってますよ。あなたは私を選んでくれた、それだけで充分です。」


 慌ててロークに振り向けば、色気だだ漏れで優しく微笑まれた。そして、私は目の前のロークの瞳に捕らえられ、ほうっと放心状態になる。


「………明日奈?………あぁ、私の目に弱いのでしたね。そういえば、こうやっていつもあなたは私を見つめてくれてましたよね。わかりますか?私は、あなたの・・・・ですよ。」


 ロークは魅惑の瞳を少し細めるとそっと私の頬に手をあてた。


 れ?またしてもノイズ?


 ぼやける思考の中でまた胸が痛む。そのまま、私の顔にロークの顔がゆっくり迫って来る。ホワンとした空気感に微動だにできずキスを甘受する。最初のうちは軽く啄むようだったそれは、段々と深く誘うように重ねられた。


「ふっ………んんっ。」


 息苦しさに目を閉じれば、ロークの瞳からは解放されたがもう頭は冴えない。スルリと右手の指にロークの指が絡まり、もう一方の手が腰に回る。私は彼に縋り付くように空いている手で服を掴んでいた。


「はぁ……かわいいです、明日奈。んっ、理性が、吹っ飛びそうです。」


 蕩けるようなキスの合間にロークが言葉を漏らす。


 リ………セイ。………あぁ、理性………か……。確かに………飛び……………!!!


 そこで私はビクッと体を跳ねさせた。いつの間にかロークの手がシャツの下に入り込み背筋をなで上げてきた。


「脱がせてもいい?」

「ふぇっ、…………ん。」


 聞いたくせに返事をする隙もなく唇をまた塞がれて、シャツの裾を巧にまくり上げにかかる。


 あ、あれ?今度は………ロークと…………いたすの?な、何?このパターン…………???


 またしても、サァッと目の前が真っ白になった。もしかして、次、ケイン?と思っていたら優しく髪を撫でられる。ふっと視野がクリアになれば、やはり目の前にはケインがいた。

 ベッドに横になった状態で、くすぐったくなるような手つきで何度も髪の毛を梳くケインがうっとりと私を見ている。同じような流れになるのね。と、視線を軽く下ろすとケインが服を着てない事に気づいた。シーツは腰のあたりにかかっているが、上は男らしい裸体がそのまま晒されていた。


「え?は、はだっ…………か。」


 ブワッと真っ赤になって慌てて手で顔を隠すと、ケインがクスクスと笑いだす。


「今更なに言ってんだ。お互い隅々まで見てんだろ。」

「えっ、…………う。」


 私は自分には肩までかかっているシーツを覗き、今度は真っ青になる。


 ひぇっ、着てない…………。こ、これって、事後…………?


「明日奈………?まだ、痛むのか?回復魔法が足りなかった?」


 私の顔色が悪くなったのに気づいたのかケインが不安げに聞いてきた。そうか、違和感はあるけど割と平気なのは回復魔法のせい………。やっぱ、事後か?


「体は大丈夫………。あの………私たち、…………やった?実は、よく覚えてなくて。」

「…………。」


 事実確認がしたくて漏らした私の言葉にケインが固まる。そして、みるみる穏やかだった顔が不敵に変わっていく。しまった。なんて、後の祭りだ。


「へぇ。じゃあ、僕が・・・・だって言った事も?愛してるの理由も忘れた?」


 またしてもノイズが発生した。それと共に胸に引っ掛かかる痛み。本当、これは何なんだろう。ぼうっとなった私の反応が気に入らなかったのかケインに急にぐいっと抱き寄せられる。


「初めてだったから、手加減してやろうと思ったのに、煽られちゃしょうがねぇな。頭も体も忘れられないようにしてやるよ。」

「う″………んっ!」

 

 私はケインに噛み付かれるようにキスされた。密着する素肌にゾワリと体が震える。情事を思い出したようでじわじわと熱を帯びていく体に私は戸惑うばかりだった。それと同じくして視界が白く染まった。


 やっと………わかった。…………これが、プレビューか!!


 視界が晴れていく。と、システム文字が目に入った。文字は誰と同室になりますか?に切り替わって、そこに漂っている。元に戻ったと理解した私はギリッとシステム文字を睨む。


「エロゲーーー!!!何してくれてんだテメーーッッ!!実感湧かないからって、プチ体験なんて誰が頼んだーーー!!!リアルな感触がまだ残ってんだろうがぁ――!いくら知識豊富でも、こっちは未経験の乙女なんだっつんだよっっ!!」


 一気にまくし立てるように叫んで、ハッとする。そういえば、元に戻ったということは………。視線を少し下にずらせば宿屋のカウンターに3人が痛い子を見るような目線で私を眺めていた。


 ◇☆@★□#!!?!


 さっきまでのプレビューを思い出して、私は恥ずかしさに顔から火が出るほど真っ赤になる。さらに、私はなんて言葉を撒き散らしたんだぁと頭も沸騰しそうなほどだった。

 もう、卒倒してもいいんじゃねぇの?な展開なのに私は意識を失うことはなかった。


 どうやら、勇者は身も心もタフなようです。

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