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念願の温泉見つけました。2

 岩場に腰掛け足湯状態でお湯を揺らす。


 着替えたいが、焦ってポロリはまずい。けど、もたつけばいつ気付かれるとも知れないしなぁ。


 落ち着いて着替える方法を模索していると、スッと月光が陰る。ほぇ?と阿保づらで見上げればカウザーが私の後ろから興味津々で湯舟を見つめていた。


「オフロってそんなにいいのか?」

「え………あぁ。癒される…………気がするけど?」

「へぇ。俺も入ってみようかなぁ。」


 ぼそりと呟いたカウザーの言葉にキランと目を輝かせる。追い払えないなら全員風呂に入れてしまえばいい。


「いいと思うよ~。ものは試しに入ってみたら~。」


 私が猫なで声で薦めてみれば、単純なカウザーはいいかもなと乗ってきた。


「オーーイ!!おまえらもオフロってやつに入らねーか?!」


 ありがたいことにカウザーが他のメンバーまでも誘いの文句を投げてくれる。よしよし、いい流れ。


「わぁ~。私も興味ある~。」


 まだ追いかけっこをしていた3人でその提案に食いついたのはロークだった。トトッとこちらにやって来る。彼は前に湖に潜ったし、水への抵抗はないのだろう。しかし、あの時に苦手っぽい反応をしていたアルフレッドとケインはやはり嫌な顔をした。


「「水……………。」」

「あ~。そっかぁ、アルとケインは水はトラウマだっけ~。洗濯機で回ったんだよねぇ~。」

「げ、直接知らねぇけど、最悪なやつだよな。」


 私はまた彼らのみに分かる不思議な話かと軽く聞き流す。それにしても、洗濯機で回るって……どうよ?


「でも、今は人だし。水なんて問題ねぇだろ。」

「ですねぇ~。それにオフロに入れるようになれば~、今後はアスナちゃんと一緒に入れる機会があるかも~?」

「「!!」」


 ロークの言葉にアルフレッドとケインが私を見る。うん!絶対にそんな機会は訪れないよ!!と心の中で断言しながらも私は曖昧な笑顔を作った。ちょっと勘違いしてもらえるように。


「そうだな。明日奈が毎日入ってたくらいだもんな。いいか………も?」

「苦手克服は大事ですよね。壊れる心配もないし、試してもいいでしょうかね。」


 混浴に釣られたのかはわからないが、覚悟を決めたようで2人もゆっくりとこちらにやって来た。


「よっしゃ!入ろ、入ろ!!」


 カウザーは楽しそうに声を上げると、ガシャンと大きな音を立て背中のでっかい剣を下ろす。うっわぁ、見た目以上に重そうな剣。などと呑気に観察していたらバサリと今度は真っ黒なコートが地に落ちる。はっとして見上げればカウザーはもう上の服を脱いでいて、めちゃくちゃたくましい上半身を晒していた。


 カウザーって着痩せするタイプなのね………腹筋割れてる、すごっ、私もそのうち痩せれるだろうか…………って、違うーー!!


「バカァァァァーーー!!まだ、脱ぐなぁぁーーー。」


 私は叫びながら慌てて岩の後ろに隠れる。まじまじと観察してしまった。頭がまたクラクラしてくる…………目の毒だ。


「お嬢?」


 私がものすごい勢いで逃げ出したしたことを驚いたようなカウザーの声。


「おまえが裸なんか見せつけるからだろうがっ!!」

「あ?オフロは裸で入るものなんだろ??」

「…………悪気が無いぶん面倒ですね。」

「うわあ~。こういう人って、やりづら~~い。」

「は?それより早く入ろうぜ!俺いっちばーん!!」


 メンバー達の呆れる声に響く事もなくカウザーの発言後、ドッバーンと派手な水音がする。どうやらカウザーは飛び込みやがったようだ。そして、うぉぉ!すげえ気持ちいい!!と雄叫び、感動している。

 

「おまえらも来いってマジいいぞ!」

「………じゃあ、次、私~~。」


 ロークの声がして、しばらく後にザブザブと入っていく音がする。やがて、あ~。良いですねぇ~。と年寄りのように緩んだ声がした。


 よっしゃ、2人済み。あとは問題の2人か………。長くなるかな~。


 私は岩陰に潜んだまま音だけを頼りに状況を確認していた。流石に見て確認はするのは憚られる。


「2人は~、どうですか~?」

「分かってるよ!急かすなよ!!」

「本当に大丈夫なんですよね。これ。」


 アルフレッドとケインの声がしてパシャと静かめの水の音が数回した。そして、割と平気ですね。やべ、ハマるかも。と明るめの声が漏れる。


 すごっ………え、もうトラウマ克服なの?………へ~、男性って強いんだなぁ。


 私は陰ながらアルフレッドとケインの凄さに尊敬の念を抱いた。私ならかなり渋った末にやらないなんて事もざらにあるよ。なんて、そんなことに悠長に考えている場合ではない。と思考を切り替えて速やかかつ慎重に服に着替えた。彼らは結構お風呂が気に入ったようでワイワイと賑やかに愉しんでいる声が聞こえる。スチル画が開いたかなと想像して、恥ずかしくなり慌てて素早く打ち消した。

 この場に居ることがいたたまれなくなった私は、ちょうど喉も乾いてるなと近くを流れる川の上流の方へ進み、その水を掬って飲む。冷た過ぎない水は風呂上がりの火照った身体に染み渡るようだった。


 でも、せっかくならコーヒー牛乳が飲めたなら。…………あ~、魔法で出せないかな。


 なんて妄想しながら暫し夜風に吹かれていると、はたとあんなに賑やかだった男性陣の声がしなくなった事に気付いた。もう上がったのかしらと躊躇いながらこっそり近づいて岩陰から確認する。決して覗きではない。確認だ。そして、覗いた先では…………湯舟に浸かったまま全員がぶっ倒れていた。


「え?魔物???……………うぎゃ、しまったぁぁ!!これみんなのぼせてるんじゃないかぁぁ!!」


 私は叫んで頭を抱えた。彼らは人生初の入浴だったというのに長湯するとのぼせるとなぜ注意しておかなかったのか………、これは私の落ち度。


「て、反省している場合じゃない!!先ずはお風呂から出さないと!!」


 え?どうやって??


 私は頬に手をやり顔を青ざめさせる。男4人………。勇者力って男1人持ち上げられる力は………?


「落ち着け~。別の方法を考えろ~。……………!!お湯を抜けば?」


 わたわたしていた心を落ち着かせて、考えを巡らせるとピンと閃きが舞い降りた。早速剣を呼び出す。要はお風呂が熱ければ川から水を引き込もうと思った事の逆をやれば良いのだ。4人の隙間を狙って川下へと剣を振り下ろす。途端にピシッと岩が割れ、先の地面が裂けて川に繋がるお湯の排水路ができあがった。ドバドバと音を立ててお湯が天然露天風呂から抜けていく。もったいない、と悲しい目で下がっていく水位を見ていて私はとても重大な事に危うく気付くのが遅れるところだった。


 ン?そういや、皆、何か穿いてる?


 ぱっと見て彼らの上半身は裸であるのは分かっているが、下ってタオルとか巻いてるのだろうか?そこでロークやケイン、カウザーまでも言っていた言葉を思い出した。こいつら絶対真っ裸だ!!


「うわぁぁーー!待たんかぁぁーーー!!こんなの乙女ゲームでもありえないシーンでしょぉぉー。クソゲーっっ!こんなの誰得だーー。」


 私は真っ赤になって焦りながら、カウザーとアルフレッドのコートとロークとケインのロープをかき集めて、バサバサと彼らを見ないようにそれぞれの身体にかけていく。ま、間に合った。精神をかなり削られながらも無事に体を隠せたことに一息つくと、次は頭を冷やさなきゃと城でいただいた布の余りを川で濡らして彼らの額に置いた。


「お、終わった?これで回復する?かなぁ。」


 あとは意識が戻ったら水を少しづつ飲ませて………、お風呂嫌いにならないでくれると良いなぁ。


 4人とも苦しそうでは無い事を確認してから、近くの木にもたれ掛かって座る。なんか疲れたなとハアッと大きく息をついてからそのまま目覚めるまで待機することにした。




「・・・・スナ、アスナ。」


 声にふっと目を開けるとすごい間近でカウザーが私を覗き込んでいた。あ~、寝ちゃってた。目覚めた私と目が合うと彼はニッとはにかんだ。


「看病してくれたんだな、ありがとな。明日奈には助けられっぱなしだ。」


 ワシャワシャと頭を撫でられる。カウザーは服を着込んでいたから忘れてたが温泉で倒れてたんだったと思い出し、不安げに見つめ返す。


「体調は大丈夫?気持ち悪くない?水飲んだ?急に動いちゃ駄目だよ。」

「ははっ、もう大丈夫だよ。これでも体は頑丈なんだ。あいつらも軟じゃねぇ、もうじき起きるさ。」


 目だけを露天風呂に向ける。まだ、3人はお休み中だった。基礎体力が1番高かったカウザーが最初に回復したようだ。


「ゴメンね。長湯はのぼせるって言ってなかったから…………。どうか、嫌いにならないで欲しい………。」

「んな!!そ、そんなちぃせぇ事で嫌いになるわけ、な、ないだろっ!!」


 なぜかカウザーは真っ赤になり、目が泳がせた。でも、温泉を嫌いにならないと言ってくれた。良かった………。私は微笑みながらありがとうとお礼を言う。


「あ、あっ、と、俺はもう行く、な。こ、今回はあいつらの意識も無ぇし、め、メンバーチェンジの件は、つ、次に。」


 すっごいしどろもどろな口調でカウザーはそう言うと、一度ゴホンと小さく咳ばらいする。そして、大きく息をつくと、急に凄んでるような鋭い目でこちらを見据えた。


「次は絶対離さねぇからな。明日奈」


 カウザーの顔が近づいてきたかと思うとチュッと私の唇を何かが掠めた。それがカウザーの唇だと理解するのにはしばらくの時間がかかった。その間にカウザーはじゃあなと再び笑うと、また軽く私の頭を撫でてから立ち上がり、森の茂みへと消えていった。


「そうだ。今度オフロにも一緒に入ろうぜ!!」


 カウザーは途中で思い出したかのように一度振り返り、そんな言葉までも残して…………。一連を、唖然と見送り姿が消えてもしばらく私は停止していた。


 キス……………した。キス…し…た。キスした。キスした!キスしたぁぁぁぁ!!!


 やっと再起動した私は一人で軽く脳内パニックを起こす。軽く寝ぼけていたと今更ながら自覚もした。じゃなきゃ、カウザーとキスなど…………。

 そんな折、不意に視線に気付き、ばっと倒れているはずの3人に再度目を向けた。でも、彼らはまだ覚醒していなかった。あれ?と不思議に思うと今度はクスッと笑う雰囲気を感じる。


 4人目達成だね………どこかでそんな声が聞こえた気がした。



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